「やあ、楽郎。バレンタインはどうだった?」
「別に毎年おなじみの義理チョコのチ〇ルチョコだよ。というか秘密にしているとはいえ恋人がバレンタインチョコを貰ってることについては何もないんだな」
「ふふん、僕はそんな心の狭い人間じゃないからね。あと僕もチョコを貰う立場だからね。せっかく用意してくれているのに思いを無下にすることもないし」
僕の両手にはチョコがいっぱいに詰まった袋があった。
「相変わらず凄い量貰ってんなあ。しかもこの後検品するんだろ。この後暇だから手伝うぞ」
「ありがとう。じゃあ僕の部屋に行こうか」
「これは大丈夫、こっちも大丈夫。はぁ、まだ半分以上もあるよ……」
机の上にはまだ検品の終わっていないチョコが積み上げられている。
流石に疲れてきた。検品してる合間合間にチョコを食べているが、混ぜ物がないか警戒しながら食べているから全く疲れが取れない。
「京極、こいつは既製品だから多分大丈夫だろ。」
横から手渡されたのは有名メーカーの板チョコ。
「甘いね、楽郎。最近は手口が巧妙になってきてるんだ」
そう言いながら手にあるチョコを割ると人の爪のようなものが落ちる。楽郎は信じれない目をしてチョコを見てた。
「なあ、少し休憩がてら俺が貰ったチョコ食うか?義理だから変なもの混ぜられているってことはないだろうし」
「そうだね、ちょっと休憩しよっか。チョコ貰っていい?僕も警戒せずに甘いもの食べたいから 」
「この袋の中に入ってるから適当に取ってくれ」
袋の中にはたくさんのチ〇ルチョコが入っていた。でもよくよく見ると大きさこそはチ〇ルチョコと変わらないものの、明らかに手の込んでいる包装のチョコがちらほら見える。
楽郎は学校一かっこいいとは言わないが顔は整っていて、しかも人当たりがよく密かに人気がある。隠れファンも居るはず。
そんな人達から義理チョコに見せかけた本命チョコを渡されたのだろう。当の本人は鈍感だから全く気付いていないけれど。
「取ってくるものがあるから少し待ってて」
僕は立ち上がりながらそう言った。
「おう、わかった」
僕は恋人なんだ。嫉妬ではない。だけど君には僕だけを見て欲しい。
冷蔵庫から楽郎に渡すチョコを取り出し戻る。
「おまたせ」
「おっ、早かっ……」
手元のチョコをひとつ口にくわえ楽郎の口にねじ込んだ。
少しの時間が立ってから離れて言った。
「ハッピーバレンタイン、楽郎」
口にはどんなチョコレートより甘い味が残った。