ウルトラマンティガ THE SECOND   作:ヤステル

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分量が多いのは、もう癖なんです。
逃げられないカルマなんです(白目)


其の2

   3.

 

 ツバサは、言われた通りに新聞を開き、沖津浩三のニュースを探していた。

「お、新聞か。わざわざ買ったのか? フリースペースに有名どころのものは全部あるのに」

 シンイチがツバサの横で言った。

 なん……だと……!? ツバサは思った。買う必要なんて全く無かったようだ。

 ただでさえ懐が寂しいのだ。百円単位でも痛い出費なのに。

「しかし、いきなりどうしたんだ? 食い入るように見てるぞ」

「さあ、知りませんよ。あたしにはあいつの脳味噌なんか分かりっこないですし、分かりたくもないですし」

 ヒロキとマリナの会話が耳に届く。

 マリナ隊員め……! 絶対聞こえるように言いやがったな!

 ツバサの眉間の皺が寄る。

 だが、ツバサは真面目に受け取らず、目の前のことに集中する。

 そして、社会面の一覧にそれはあった。

 大きさからして三つめのトピックス――そこに、沖津浩三教授が死去したことに関する記事が書かれていた。

 内容は簡単だった。

R大学名誉教授の沖津浩三が自宅で亡くなっているのが助手によって発見された。七十九歳だった。死因は心筋梗塞。警察では孤独死によるものではないかと、考えている。沖津浩三は電磁波遮断機構の基本構造や電磁波による調査年代測定を成功させた人物であり、文化勲章を含む多くの受賞を受けていた――端的にそう書かれていた。

「何だ、何を読んでいるんだ?」

 フドウが覗いた。

「ああ、いえ。知っている教授が亡くなったと書いてあるので、びっくりしているんですよ」

 ツバサがそう言うと、フドウとシンイチが新聞を覗いた。

「沖津……ああ、この人か。何かテレビとかで名前は聞いたことがあるな」

 フドウが言うと、ヒロキがふと反応した。

「へえ、どんな人なんですか? 俺は初耳ですね」

 どうやらヒロキは本当に知らないようだ。

 ツバサは、簡単に説明する。

「まあ、かなり有名な大学教授ですよ。多分ヒロキ隊員も聞いたことがあると思いますよ。四年前に、電磁波を用いて遺跡や物体の年代を月単位まで正確に測定する機械を開発して、それで沖縄の海底遺跡が人工物で、あれの作られた年代を測定したというニュースが大々的に報じられていましたから」

 ツバサが、そう説明すると、ヒロキが思い出すように言った。

「ああ、あれか! そう言えば、当時のニュースはそればっかりだったな」

 でもさあ、とマリナが間に入った。

「確か、その人ってかなり偏屈な人って聞いたことがあるんだけど。あたしはテレビで本人が出たところなんて見たことがないわね」

 マリナがそう言うと、フドウやシンイチ、ヒロキは、そう言えば、と不思議がる。

「まあ、偏屈と世間では言われているからな。噂では、他人と接触したがらないし、実際、四年前の発表の際も、それ以外に論文を発表するときも、何時も本人じゃなく、助手が代理で発表していたから」

 とにかく、外界の全てを遮断して生きていた、と世間一般では言われている――天才とあれは何とやらだ。

「まあ、何がともあれ、人類の財産がまた一つ失われたというわけだ。南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏……」

 シンイチは、両手を合わせながら言った。

 ツバサは、また記事を見返す。

 後で記事を切り取っておいて、簡単な詳細を纏めておこう。

 それよりも重要なのは――。

 どうやって沖津教授の調査をするかということだ。

 打つ手はあるものの、こういうものは公にやるべきではない。それこそ人間の死に関しては警察の仕事だ。

 それに、公にしたくないから、あの男はテレパシーを使ってまで自分に頼んできたのだ。誰にも知られずに動くのが適切だ。

 だが、勝手に単独で動くことは難しい。イルマ参謀に話はつけられない、とツバサは考えていた。

 ティガであるツバサの情報統制をしてくれているのは、ユザレとそしてイルマのおかげだ。こんなにも簡単に正体を知られたと伝えるのは、あまりにも申し訳ない気持ちでいっぱいになる。

 すぐに言えば対策を考えてくれるだろう。だが、それとは別に、ツバサのプライドがそれを許してくれなかった。

 別の解決方法があるのなら、自分自身でそれを見つけて、自分自身で決着を付けたい、というツバサのプライド。

 そして、今まで出てきた情報を分析して浮かび上がった、一つの可能性と安心。

 それらを全てひっくるめても、ツバサは自分一人で解決したいのだ。

 だから、今あるカードは、すぐに使うべきだ。

 ツバサは、フドウに言った。

「隊長。次の実験に事なんですけど……」

 フドウはツバサの方に振り向く。

「ああ? 昨日の空の実験が終わったから、次は海と建物内と地上でだったか? それだと、民間企業と、国にまた実験許可の申請をしないといけないよな?」

 そうだ。

 ツバサのシステムνの実験は、空、建物内、海、そして地上の四か所に分けて実験を行わなければならない。

 あらゆる状況下で問題なくシステムを使うことが出来て初めて実用化が出来るのだ。

 だが、知ってのとおり、ツバサが抱く不信感――企業への協力がうまくいかないことから、次の交渉も難航しているのは言うまでもないのだ。

「企業に関して何ですけど、一つ、もしかしたら快く協力してくれる会社があるのですが……」

 と、ツバサは言った。

「本当か? しかし、それならTPCと協力している企業がいくつもあるからそこに協力を要請してもいいと思うんだが……」

「ええ。ですから、その内の一つです。面識がある人がいまして、明日直接交渉してみようと思っているんです」

 ほう、とフドウは言った。

「なるほどな。なら、上層部に伝えないと。まあ、俺の方から言っといてやるよ」

 フドウがそう言うと、ツバサは礼を言った。

 さて、これで準備は整った。

 交渉は多分確実に成功する。それは後からでもいいわけだ。

 実験の前に、朝方からがいいだろう――男の頼み事を並行して調べることが出来る。

 まずは、今集まっている情報を、後で、自室で纏める事にしよう――ツバサは、そうプランを立てていた。

 

 その夜。

 ツバサは、集めた情報を元に、沖津浩三教授のプロフィールを纏めていた。

 

 沖津浩三

 

一九五五年一一月一一日、宮崎県牧園町(現・霧島市)生まれ 出生と同時に京都府京都市に両親と共に移る。

 一九七三年にT大学理工学部入学と共に東京(現・メトロポリス)に居を移す

 一九七八年にT大学を卒業後、木佐貫技術工業株式会社(現・㈱KISANUKIホールディングスの技術部門である㈱KISANUKIテクノロジーコーポレーション)に入社

 一九八五年 同社理工研究部部長に就任

 同年 木佐貫寛一社長(現・故人)の娘である木佐貫清子と結婚、婿入りし、姓を木佐貫に変更する

 一九八七年 息子悠仁誕生

一九八八年 電磁波による年代測定研究及び考古学研究に着手

 一九九五年 取締役に就任

 二〇〇三年 同社代表取締役社長及び㈱KISANUKIホールディングス取締役に就任

二〇〇五年 グループに復帰 新書「携帯電話の今後における依存と危険性」を発表

二〇〇七年 電磁波における人体への影響を纏めた論文「電磁波人体破壊論」を発表

 同年 電磁波から人体を守る、電磁波遮断機構を開発

二〇〇八年 電磁波遮断機構を全世界に展開

 二〇一〇年 妻清子 息子悠仁が交通事故で死去 姓を沖津に戻す 以後三年間行方不明

 同年 同社代表取締役社長退任及び㈱KISANUKIホールディングス取締役退任 ㈱KISANUKIホールディングスを退職

二〇一二年 R大学理工学部客員教授に就任

二〇二〇年 R大学名誉教授及び理事に就任

二〇二八年 R大学理事長に就任

二〇三一年 電磁波年代測定において沖縄海底都市が人工物であること、かつその年代を月単位まで測定することに成功

同年 「電磁波年代測定における遺跡の調査概念」、「古代遺跡の常識を覆す」など、論文、著書を多数発表

二〇三三年 民間人として初めて大勲位菊花章頸飾を受賞また、旭日大綬章、瑞宝章、文化勲章も同時受賞する

二〇三五年 死去 死因は心筋梗塞 孤独死と断定

 

「……」

 ツバサは、その経歴を見て改めて沖津教授の偉大な足跡を目の当たりにした。

 理工において、若いころから頭角を現し、すぐに部門トップに上り詰めている。

 キャリアにおいては順風満帆だ。ビジネスマンとしては、理想な形の生き方だ。

 だが、その人格は変人と呼ばれていたと世間では言われている。

 とにかく、人付き合いを極限に嫌っていたという。会社でも、殆ど一人で職務に励み、部下からの信頼は皆無だったといわれている。だが、それでも会社の利益となりえる実績を上げてきたおかげか、キャリアは順調にステップアップすることが出来た。

 それは大学教授になってからもそうだった。

 基本、論文の発表は常に助手に任せ、講義すらも代理として助手が講義をするという事態だった。

 沖津教授を紹介する際に写真を使おうとしても、本人は大の写真嫌いで、会社の社長紹介では、入社当時の若かりしころの写真を――大学教授の紹介では、やむを得ずその写真を使うしかなかった。そのため、沖津教授が叙勲で渋々現れた時は、その老いた姿を目の当たりにして多くの人がショックを受けたのほどであった。

 だが、沖津教授の功績は、それらを除いても見劣りすることのない――むしろより一層輝きを増して見えるダイヤの如くその存在を誇示している。

 正に研究者として一つの理想の形だ。

 だが――。

 

 本当に、そうなのだろうか?

 

 ツバサは、纏めたプロフィールからいくつかの違和感を覚えていた。

 さらりと見る程度には、何の見劣りもない経歴だが、何故だろうか――所々、不自然な所がある。

 確かに普通に見ておかしい部分もあるが、それ以外に何か引っかかる。年表には見えない何かが、この年表をおかしく見せているのか。

 聞く限りでは、なんら不思議はないが、こうして改めて一人の生き様を確認すると、どうしても疑問に思ってしまうことがいくつか確認できてしまうのだ。

 偶然か、はたまたこれが必然だったのか。

 いや、もし……。

 男が調べてほしいということが、この違和感に関係しているとしたら……。

 沖津教授の死を調べるということは、おかしいことでも何でもない。むしろ、調べなくてはならない事柄であるということが納得できる。

 調べてみる価値は十分にある。

 ツバサは、PCの電源をオフにして、床に就いた。

 そして、ふと思う。

 あの白衣の男……どこかで見たことがあるような気がする、ということに。

 

   4.

 

 昼の定期パトロールにツバサも乗車した。

 ツバサは、昨日言っていたある人に務める企業に向かうために、足を確保しようとした。

 とりあえず、シンイチがこの日の市内パトロールとなったため、それに便乗する形で行くことにした。

 場所はメトロポリスの中心街。ここにお目当ての場所が二か所ある。

 一つは、実験の協力を仰ぐことが出来るかもしれない企業。

 そして二つ目は――。

 ツバサがゼレットⅡから降りると、運転席からシンイチが言った。

「まあ、今日は休暇だと思ってゆっくり交渉してくるといい。たまには骨休めも大事だぞ」

 どうやら気遣ってくれたようだ。

 ツバサは、礼を言った。

「はい。有難うございます」

「夕方頃には迎えに行くから、それまでどうぞごゆっくり」

 じゃあな、とシンイチはツバサに一時の別れを告げてパトロールに戻っていった。

 さて……。ツバサは辺りを見回した。

 お目当ての企業は、歩いてすぐだ。

 ツバサは、実験器具や必要なものを用意したバッグを確認した。全て入っている。

(念には念を入れなければならないとな……。どこに敵がいるか分かったものじゃない)

 ツバサは、早速歩き出した。

 

 アールサイバネティックコーポレーション。

 全世界へ電子機器やあらゆる交通機関の部品の製造、販売を行っている一大企業の一つであり、年間七千億円の売り上げを叩き出している。

 だが、それとは別に、ツバサはTPCに入ってから分かったのだが、極秘ではあるがTPCと協力関係にあり、TPCに配備されている戦闘機の部品をこの企業が九割提供している。

 三十階はくだらないだろうその高層ビルの入口を進み、一階の中央に設置されている受付センターに足を運んだ。

「あら、こんにちは。どうしたの、坊や? ここは、関係者は入れないんだけど」

 どうやらツバサを迷い込んできた子供だと思っているようだ。

 まあ、実際、顔は少し童顔で子供に見えなくもない。それに、TPCとの協力関係は極秘―であることを懸念して、私服でかつバッグを担いているのだから、分からなくもないが……。

 ツバサは、懐からTPCのIDを提示した。

 受付嬢は、それを見てIDに載っている顔とツバサの顔を比較した。まさか、こんな子供がTPCの――しかもS‐GUTSの隊員だとは思いもしなかっただろう。

「し……失礼いたしました。まさか、TPCの方だとは露知らず……」

 頭を下げる受付嬢にツバサは、落ち着いて答えた。

「ああ、いえ。むしろ混乱させるような格好で来てしまって申し訳ありませんでした」

「いえ、そんな……」

「それに……実際、まだ子供ですし」

 ツバサは小さく聞こえないように呟いた。

「えっ?」

「ああ、いえ。こちらのことです」

 ツバサは本題に入った。

「実は、アポイントメントを取っていないのですが、至急お会いしたい人がいまして……。出来れば取り次いでいただけないでしょうか?」

「ええ、向こうの都合が合えば呼ぶことは出来ますが……誰をお呼びいたしましょうか?」

 受付嬢の質問に、ツバサは一時おいてから丁寧に答えた。

「アールサイバネティックコーポレーション部品販売部長であり常務取締役であるエンジョウ・カノコを――僕の母を呼んでいただけないでしょうか?」

 

 会社の二十一階にある会議室の一室にツバサは案内された。

 社員の一人だろうか、スーツ姿の男はツバサを会議室に案内すると、

「常務はすぐに来ますのでここでお待ちを」

 と言い、出ていった。

 ツバサは、窓からメトロポリスを見下ろす。

 相変わらず、人々の足は止まることを知らない。

 あの中に、人類を脅かす者がいる――そう考えると、自分がどれだけ大きな使命を背負っているのか改めて感じられた。

 ツバサが外を眺めている間に、カノコはやってきた。

「常務、こちらです」

「有難う。もう結構よ」

 またあの男だ。男は、カノコに言われた通りに下がっていった。

 男が「常務」と言って改めて母親が偉いのか確認できた。

 家にいた時は、あまりに親ばかを発揮する甘い母親だと思ったが、ここでは人が違う。言葉に威厳があり、リーダーとしての風格もある。フドウとは違うリーダーシップだ。

 ……と、ツバサは思ったがすぐに撤回することになる。

 カノコは、ツバサを見つけるなり、思い切り抱きしめたからだ。

「あー! 久しぶりね、ツバサー! 暫く会えなかったから寂しかったよー!」

 ……威厳もへったくれもない。

「……あの、エンジョウ常務?」

「何言っているの? 『母さん』でしょ? 何時ものように呼んでよ」

「いや、ここではそう呼べないですよ……」

「敬語まで使っちゃって……まさか……」

 カノコは、はっとしてツバサから一歩退く。

「もう母さんたちのことを飽きてしまったのね! そうなのね!」

 カノコは、両手で目を覆って泣く――ふりをした。いくら何でもばればれの演技だ。

 ああ、何だか面倒くさくなってきたな……。ツバサは溜息を吐きながら答えた。

「違うよ。ここではこの会社の常務として振る舞ってほしいということだよ。僕も一応TPC代表としてここに来ているんだから」

 ツバサの言葉に納得したのか、カノコは、あはは、と笑って言った。

「ちょっとおふざけが過ぎたかな?」

「過ぎるどころじゃないよ……」

 ツバサは、そう言うと、唐突に以前のやりとりを思い出して、驚嘆した顔で言った。

「そうだよ! ちょっと僕や家族に対して少し甘くないか!? 前も家で食事している時に、ちゃっかり会社とTPCが協力関係になっているようなこと言っていたよね?」

 そうだっけ? とカノコ。身に覚えがないようだ。

「そうだよ! 後々で、それが極秘だって言うことを知って驚いたんだから!」

「別にどうってことのものじゃないじゃない」

「いや、どうってことあるってば。産業スパイが家に盗聴器を仕掛けているかもしれない。情報が漏れたかもしれないし!」

 ツバサが抱いている危機感は尋常ではない。場合によってはカノコの職どころかお縄になるかどうかの問題なのだ。

 だが、カノコはけろっとしていた。

「本当に大丈夫なんだけどなー」

 どうして、そんなに楽観的なのか、ツバサには理解できなかった。気が付けば、ツバサも役柄を忘れ、ただの親子としての会話になっていた。

 カノコは、理由を説明した。

「だって、わたしのことを調べても、わたしの情報なんて出てこないもの」

 カノコの言葉に、ツバサは喉を詰まらせる。

そうなのか? いや、しかし、会社常務ということは取締役会で株主らにも姿を見られているから、外部にカノコがこの会社の重役であることはすぐに分かってしまうはずだ。

 なのにどうして情報が出てこないのか、不思議でならない。

ツバサがそう言うと、カノコは答える。

「それこそ、産業スパイ対策で、わたしは――TPC関連の部門にいる重役はみんな取締役会なんて出ないわよ。本当の役職を決めるのはどうせデータ上だし。TPC関連の取引をしている社員はみんな社員情報をあえて作ってないのよ」

 合理的ではある、とツバサは理解する。だが、しかし、それでも穴はある。ツバサはそれを指摘した。

「でもそれじゃ、仮にばれたとして、誰かが変装した場合に対処出来ないじゃない」

 ツバサが聞くと、カノコは特に表情を乱すことなく答えた。

「それも平気よ。TPC関連の部門の人のIDだけはTPCで使っているIDを使うのよ。社員情報も全部そっちに――アカシックレコードに記録されているの」

 カノコがそう説明すると、ツバサはようやく納得した。

「つまり、母さんたちは形式上TPCの職員の扱いになるってことか」

 そういうこと、とカノコは言った。

「TPCの情報は外部から閲覧することも盗むことも出来ない。これはTPCと提携している企業全てに当てはまるのよ。仮に産業スパイが盗聴器でわたしが秘密を言っても、わたしがどこの企業で働いている誰か、なんて掴めっこないもの」

「拉致された場合は?」

 カノコは、微笑みながら答えた。

「ツバサが助けに来てくれるよね?」

 ああ、なるほど、とツバサは納得した。その場合は、S‐GUTSを含めたTPCの戦闘部隊が救出するという仕組みになっているのだ。形式上TPC職員であるため、救出の大義名分が下る――よく出来ている。だが、それでも穴がある。

「そんなことより、ツバサが来たのはそんな話をするためじゃないでしょ?」

 カノコがそう言って、ああ、そうだと思い出した。

 一体誰の所為でこうなったのか……いや、そんなことはどうでもいい。母の場に引き込まれたのは自分だ、とツバサは反省する。

 ツバサは、手持ちから資料を取り出し、本題に入った。

 

 ツバサが考案したシステムνの説明を受けたカノコは、ツバサが出した資料を読み込み、感心した上で言った。

「さすがツバサね。これ、是非とも企業でも買いたいくらいのものよ」

「有難う」

「要するに、このシステムのテストの為にこの会社の部屋を貸してほしいということね」

 うん、とツバサは頷いた。

 だが、カノコは悩んだ顔になっていた。

「うーん……でもねえ。うちは輸出もやっているから、外貨価値の増減を常に観察してるのよね。ツバサの言うテストは一時的に周辺の電子機器諸々が使えなくなるってことでしょ?」

「まあ、そうなるかな」

 ツバサは、カノコが言いたいことを納得していたが、あえて言わない。

「だとすると、こっちも困るのよねー。PCも一時的とはいえ使えないとなると、外貨価値が分からないから売り時を逃す可能性が僅かでも出てきちゃうから、いくらツバサの頼みでも了承はしづらいかなー」

 やっぱりそうか、とツバサは呟く。

 まあ、輸出入は需要供給という天秤の上の取引だ。一時的でも外貨取引の情報が途絶えたら、その天秤を崩す可能性が小さいながらも出てしまうのはツバサも分かっていた。

 だが、肉親が重役をやっている会社なら……という淡い期待がツバサの中にはあった。それは甘えだったが。

 だが、カノコは、何とかしようと手帳を取り出して何かを探し始めた。

「ちょっと待ってねー……ああ、そういえば、これがあったなー」

 スケジュール帳を見ているようだ。

 カノコは、手帳を見ながらツバサに聞いた。

「ねえ、また二週間後にここに来ることってできる?」

 二週間後、と言われ、ツバサは手持ちの物から個人用の端末を取り出した。

「えっと……。まあ、スケジュール調整をすれば何とか。実験の為だったら向こうも喜んで予定は変更できると思う」

 なら、良かった、とカノコは言った。

「なら、そうして頂戴。二週間後ならここで実験してもいいから」

 カノコの言葉に耳を疑った。いいの? とツバサは尋ねると、カノコは、いいわよ、と答えた。

「ツバサ、運がいいわよー。丁度二週間後に、会社のPC端末を全て新製品に変えちゃう予定なのよ。そのためにシステムとかも全部別支店に一時的に移動させちゃうからこっちは何もない状態になるのよ。その時なら実験してもいいわよ」

 どうやら実験を許可してくれるようだ。

 ツバサは、ほっとした。

 元々母親が重役をやっているとはいえ、こういった会社全体の頼み事は基本ダメ元だ。条件付きでも叶うのなら願ったりかなったりだ。

「しかし、よく作ったわねー。これだけ膨大なデータを見せてもらったけど、結構楽しくやっているようね」

 カノコが嬉しそうに言う。

「まあ、個人的趣向なことはやっていないけどね。全部組織に必要なものしかやってないし。それに基本は防衛任務とかが主だから自分で研究する機会は、家にいる時より滅法減ったかな」

「でも楽しそうよ。家にいる時よりずっと」

 そうかな、とツバサは思った。やっていることは同じだが。

「家に帰ってきたら是非話してもらいたいわね」

 カノコはそう言うと、ツバサは頷いて約束した。

 そして、ふと、ツバサはあることを思い出す。

「ああ、そうだ。実はもう一つ頼みたいことがあるんだ」

「頼みたいこと? それってまた実験関係?」

 ツバサは、どう答えようか迷った。

「それとは違うんだけど……。個人的と言えば個人的かな。ああ、でも、いずれTPC全体の問題になりかねないことかもしれない」

 言葉を選ぶのが難しい。うまくカノコに伝わったのか自信が無かった。

「要は事前準備かな。最悪なことが起こらないように」

 カノコは、真剣な表情になった。

「ツバサが何を伝えたいかは、何となく分かったわ。これから起こるかもしれないことに重要なものなのね」

 ツバサは、安堵した。カノコには、事の重大さを感じ取ってくれていたようだ。

 ツバサは、「それ」を伝える。

「ふーん。なるほどねえ。でも確証とかはツバサにはないのよね」

「ない。あくまで全部僕の想像だよ。でも、保険は無いに越したことはない。他の会社と縁がある母さんにしか頼めないことだから」

 カノコは、右手を胸に当てて言った。

「任せない。その頼み事、絶対叶えてあげるから」

 これ以上ない、母の強い信頼の言葉だった。

 

 アールサイバネティックコーポレーションを後にした、ツバサは、本来の目的を遂行するためにある場所へ向かった。

 メトロポリス警察本部。

 政府の省庁として設置された警視庁の後任の組織である。

 怪奇的や怪獣、異星人騒動を除いて、一般的な事件や事故の全てを扱う警察組織の本部である。

 ツバサは、本部に入っていき一階にある受付に自身の身分を明かし、尋ねた。

「先日起きた沖津教授死亡に関して何ですが……どこが管轄をしていたのかご存知ですか?」

 少し時間が掛かったが、ツバサは沖津教授の死亡事故に対応した管轄所の情報を貰うことに成功した。

 そして、ツバサは、少ない給料を嘆きつつも、タクシーを呼んで目的の管轄所へ向かった。

 

「TPCの人が警察署に来るなんて分からないなあ。こっちに来る理由なんてあるのかい?」

 刑事は、ツバサと出会うなり開口一番にそう言った。

 

警察署は、本部から車で三十分ほどの場所にあった。

 中規模でどこにでも見たことのあるような署だったが、これで複数の区を管轄するのだから見た目で判断は出来ない。

 ツバサは、中に入り、再びTPCのIDカードを見せて沖津教授死亡事故に携わった刑事と話が出来るようにコンタクトを取った。

 すると、丁度休憩を終えてきた刑事が現れたのだ。

「あ? どうしたんだ。もしかして道にでも迷ったのか?」

 ふてぶてしい態度だった。だが、ツバサは何とも思わない。

「あ、違うんです。どうやらこの人、TPCの人らしくて沖津浩三の死亡事故について話があるそうなんです」

 受付がそう言うと刑事は驚いて、ツバサを二度見つめた。

「こいつが? 本当かよ」

 刑事はどうやら信用してなかったようだ。ツバサはIDを見せた。

 偽物じゃないだろうな、と疑り深く見つめる。ツバサは、苦笑しか出来なかった。

 

「まあ、俺が刑事のイガワだが……一応沖津浩三の死亡事故を担当した」 

 ツバサは礼をする。

「TPC本部S‐GUTS隊員科学技術担当を務めているエンジョウ・ツバサです」

「よりにもよってS‐GUTSかよ……戦闘部隊のエリートじゃねえか。それで、今日は沖津浩三の死について何か知りたいのか?」

 イガワは面倒くさそうに聞いた。

 これは少し手ごわいかもな、とツバサは確信した。だが、慌てることはない。説明することは得意分野だ。きっと納得してもらえる。

 ツバサは、話し始める。

「ええ。実は……」

 ツバサは、間をあけて言った。

「沖津教授の死は、もしかしたら異星人が関わっているのではないかと考えています」

 ツバサの言葉に、イガワは、はあ!? と声を荒げた。

「異星人だって? 一体どういう根拠でそう言っているんだ?」

 どういう根拠だって? ツバサは内心焦った。まさか、テレパシーを使える男に、沖津教授の死はこの先の災厄に関わっていると言ったところで信じてもらえるだろうか。

 とりあえずは強要でも構わない。とにかく無理にでも納得してもらおう。

「こちらの情報ですので、詳しいことはお伝えできません」

 何だよ、それ……、とイガワは皮肉を吐く。

「TPCはいつもそれだよな。俺たちには情報を取っていくのに、そっちは情報を与えてくれない。そんな不公平で、互いに連携が取れるのかって言いたいんだよ」

 ツバサは、何も言えなかった。

 イガワの言っていることは正しい。確かに、向こうからしてみれば不公平だ。

 だが、だからといってここで決められたルールを破るわけにはいかない。ツバサは心を強く持った。

「詳しい発表は、後ほどあると思います。ただ、この情報にどれだけ信憑性があるかは定かではありません。ガセネタならそれで構いません。ただ、真偽のほどを確かめさせてもらえれば、そちらにも今後もありますので、情報は渡せると思います」

 誘導しているような感じではあるが、納得はしてもらえるだろう。調べたら教える、という見返りを条件にしたのだ。

 イガワは、腕を組んでツバサを見つめた。

「……まあ、このまま断ってもまた同じこと言われたらたまらないからな」

 イガワは、溜息を吐いて言った。

「こいよ。案内してやる。ただし、期待はするなよ。俺はあの状態の心筋梗塞なら、孤独死としか思えないんだからな」

 ツバサは頭を下げて礼を言った。

「有難うございます」

「……よせよ。俺は別に何もしていない。ほら、さっさと行くぞ」

 イガワは、振り向かずに呟く。ツバサは、イガワの性格が何となく分かった気がした。

 微笑ましいと思いながら、イガワの後をついていった。

 

 沖津の自宅は、署から車で二十分の場所にあった。

 閑静な住宅街が立ち並び、近くには商業施設もあり、暮らす分には一切困らない場所だった。

 その中に、沖津の一軒家があった。

 二階建ての家とその隣に平屋の家があり、中で行き来が出来るようになっていた。

「確か、沖津教授は一人暮らしだったはずですよね? それにしては広すぎるような……」

 ツバサは家を見るなり言った。

「まあ、これは元々奥さんと亡くなった息子と三人で暮らしていた家だからな。二人が亡くなった後もずっとここに住んでいたらしい。そして、あの平屋だが……」

 イガワは平屋を指さして言った。

「見たところだと研究用の道具があった。建設会社によると自宅でも研究出来るようにしてほしいと言われて増築したんだと」

 へえ、とツバサは呟く。

「何だ? 知らなかったのか?」

「プライベートなんて謎でしたからね。KISANUKIグループにいた時から、自分自身を世間に出すことは一切しなかった人ですから」

 ツバサはそう言った。

 自宅の前には規制線が張られていた。既に警察官は全員引き払っていて、警察の規制が解除されるのも時間の問題だった。

 イガワとツバサは、規制線を跨ぎ、玄関にたどり着いた。イガワは予め持ってきた鍵を使って扉を開けた。

「さてと、まずは沖津の死体があった場所に行こうか」

 イガワはそう言って玄関の目の前にある階段を横に進んでいった。ツバサも後を追った。

 そこは書斎だった。

 正面には広い机。椅子は机から離れ、横向きになっていた。横には巨大な本棚があり、部屋中を埋め尽くしていた。

 唯一空いているスペースには扉があり、曰く、増築された研究所に繋がる通路らしい。

 ツバサは鳥肌がたった。

 ここが、憧れの科学者が研究していた城か……! と、不謹慎ながらもその圧倒的な雰囲気に押され、感動していた。

 イガワは、わざと咳き込んで、ツバサの意識を戻す。

「もういいか?」

「ああ、はい。すみません」

 集中を取り戻したツバサは、前を向く。

 イガワは、指を指した。

「丁度ここだ。沖津は、ここでうつ伏せに倒れて死んでいた」

 イガワが指を指したのは、椅子の左川の近くの床だった。

 ツバサは、椅子に近づいた。椅子は回転椅子で、机から離れ、左に時計でいうと九時の方向に回転していた。

「沖津教授は心筋梗塞で亡くなったんですよね?」

 ツバサが聞いた。

「ああ。そうだ。司法解剖もしたから間違いない」

「とすると、机で作業していた時に、胸が苦しくなって、机から離れ、体重で椅子が左に回転してそのまま床に倒れて事切れたということになりますね」

 ああ、そうだ、とイガワは言った。

「ぶっちゃけて言うと、それが警察の最終見解だ。年齢的にも心筋梗塞はおかしいものじゃない。それに、どうやら沖津は前々から心臓を悪くしていて、研究を止めるように言われていたらしい。司法解剖の結果を見たが、心臓以外のも他の臓器もかなり傷んでいた状態だった」

 なるほど、とツバサは言う。

「それでも、教授はそれを無視して研究をしていた……と」

「頑固者だったんだろうな。まあ、俺にはこういう業界の人間がどういうプライドを持っているのかは分からん。命に代えてでも成し遂げたいことがあるんだろうな」

 と、イガワは呆れ顔で言った。

 ツバサは、辺りを見回す。特におかしい所はどこにもない。

「さて、これで異星人が関わっているというそっちはどう思うよ?」

 イガワから率直な質問が飛んできた。

 ツバサは、特に慌てる様子もなかった。予想通りと言えば予想通りなのは、分かり切っていた。

「まあ、異星人が関与したどころか、教授以外に介入した人すらいませんね」

 ほらな、とイガワは言う。

「好きに調べても構わないが、俺は自信をもってお前の言い分は間違っていると言い切れるからな」

 ツバサはもう一度、辺りを見回した。

 飾りといった小物も何一つなく殺風景としていた。研究一筋の人なのが良く分かる。

 本棚を見渡す。机の右側にある本棚は、研究用の著書や参考用に使っていたであろう学術書などが並んでいた。そして、左側には、ファイルが並べられていた。

 ファイルは、それぞれ本棚に綺麗に並べられていて、それぞれにアルファベットと数字が書かれているタグが貼り付けてあった。

 よく見ると、同じアルファベットと数字のラベルが複数あった。数字の横にさらに小さく数字が書かれていた。原則的にアルファベットと最初の数字が肝心なようだ。

 ツバサは適当に『E-3』と書かれたファイルを手に取った。

 

 Economics

 

 さらにツバサはページを適当にめくる。

 ……

1 Trading way and trade policy in Australia

 

From 1980s to 1990s, the fundamental objective of the trade liberalization policy in Australia was constructing the global free trade system according to the rule of World Trade Organization (WTO). Australia did not agree with North American Free Trade Agreement (NAFTA) leading to the protectionism and regional FTA like EU. However, after the agreement proposed by WTO started, the awareness of the regional FTA or the bilateral FTA was raised rapidly by the reflection from the Asia Pacific Economic Cooperation (APEC) Bogor Declaration, etc, (preventing from increasing the protection standard in the trade/investment liberalization process and keeping the current regulation as it is), because the free trade was not introduced by the protectionism policy of each country. Especially, after the WTO Seattle meeting in April 2000, the bilateral FTA was actively promoted.

Australia was directed the attention to not only the trade or economy between other countries in specific area, but also the mutually complementary bilateral FTA including other factors, because of the global trade as the first choice, the local trade as the second choice, and the closer relationship including the security terms as the third choice (US terror incident in 2011, Afghan war, Iraq war, instability of Solomon Islands as neighboring area).

When the Federation was established in Australia, the tariff was so high and the protectionism which added quotas to tariffs was strong. Whitlam Government in 1973 cut tariffs by 25 per cent across the board, Hawke Government in 1983 set about opening up the Australian economy to competition, Prime Minister Hawke and Treasurer Keating maintained the tariff reduction program. As a result, the economic base was built.

 

……  

 

「おい、大丈夫か?」 

イガワの声ではっ、と我に返った。

「随分読み込んでいたが、大丈夫か?」

「ああ、いえ……大丈夫です。ちょっと魅入っちゃって……」

 イガワは横からツバサが読んでいたものを覗いた。

「うわ……英語かよ。お前、これ分かるのか?」

 まあ……とツバサは恐縮しながら答えた。

「面白いものなのか?」

「まあ、面白いというより、興味深いと言った方がいいかもしれませんね。沖津教授は、専門は電子工学ですが、あらゆる学問に精通していたと聞いていましたから、こうやって実際に見てみると、やはりすごいと実感してしまうんですよ」

 そういうものなのか、とイガワは呟く。

「好きな漫画家がいたとして、その漫画家はバトルものが代表作だけど、他のジャンルの漫画も描いているといったものでしょうか」

「ああ、なるほどな。気持ちは分かったよ」

 ツバサは、ファイルを閉じ、そのまま元の場所に仕舞った。

「すみません。お手数をおかけして」

 別にいいよ、とイガワは返す。

「隣の研究室も見るか? お前なら興味のあるものがあるんじゃないか? まあ、俺には興味を持つものなんて一切なかったがな。鑑識もあまり手をつけていない」

 イガワがそう言うと、ツバサはこみあげる嬉しさを抑えきれずに、微笑みながら、

「お願いします」

 と、答えた。

「分かりやすい奴だな。こっちだ」

 イガワは、横の扉を開けた。

 中に入っていくと、電子工学で扱う機械や部品が置かれていた。乱雑そうに見えて、ツバサやそれに精通している人から見れば、正しく配置されていた。

「これが、沖津教授の研究室……」

 偉大な権威がここで研究していたことを思うと、胸が高鳴った。頭の中で、沖津がどのように動いて、何を研究していたのか――その妄想をするだけでも楽しい。

 ツバサは、目を輝かせながら研究室を回った。

 その中で一際目に入ったのがあった。

「これって……」

 ツバサはそれに近づく。

 大きさは、中くらいの段ボールほどの大きさだろうか。立方体らしき機械があった。

「何か、手がかりがあったのか?」

 イガワがツバサに近づいていった。

「いえ……これって……電磁波遮断機構の本体……」

「電磁波遮断機構? ああ、確か世界中に張り巡らされているっていうあれか?」

「はい。電磁波による人体への影響を完全に遮断させるためのもの装置です」

 ツバサは、詳しく眺めた。

 電磁波遮断機構は、外壁がなく、内部が見えていた。恐らく、分解している途中だったのだろう。所々がむき出しになっていて、中核にある制御システムも見えていた。

「すごい。元々、これを開発する段階での設計図では、半径百メートルのエリアをカバーするのに一つの街を占めてしまうほどの巨大なものになるはずだったのに、それをここまでコンパクトにすることが出来るなんて……」

 機械の素晴らしさに余韻に浸りつつも、ツバサの目はその違和感をとらえていた。

 あれ……?

 ツバサは目を凝らした。

 どういうことだ……? 

「焦げるはずのない場所が焦げている……」

 ツバサは、辺りを見回し、急ぎ足で、研究所内を見て回った。

「おい……おい! 一体何なんだ?」

 ツバサは、早急かつ正確に研究所内にあるものを全て頭に叩き込んだ。そして、自分が持っていた知識と照合させる。

「……やっぱりない」

 ツバサは、イガワに聞いた。

「あの……沖津教授の持ち物って、全部ここにあるんですか?」

 持ち物だあ? とイガワは唐突な質問に若干焦る。

「いや……研究所内は何も触っていない。死亡現場の書斎のものなら、一応最初は事件や事故を想定していたから、鑑識に回すために署に置いてあるが……」

 なるほど、そうか、とツバサは納得する。

「もし良かったら、その証拠品も見せてもらえませんか?」

「証拠品を? ああ、まあ構わないが……」

 イガワはツバサに急かされながら家を出た。そして、そのまま署へと戻って行った。

 

 署の証拠保管室にたどり着くと、お目当ての証拠品が段ボール箱に入って準備されていた。イガワは、取り出した証拠品を他の鑑識と共に丁寧に並べていった。

 証拠品はそれぞれビニールでくるまれていた。メモ帳やペン立て、便箋と数本のペンと万年筆やそれ以外に細々したものまで様々だった。

 淡い期待がツバサにはあったが、だが、ツバサが探しているそれは証拠品の中にも入ってなかった。

「やっぱりない……」

「なあ、一体何を探しているんだ?」

 イガワが尋ねるが、ツバサは語ろうとしない。まだ確証があるわけではない。もしかしたら、元から無かったのかもしれない。

 それにあの焦げ……。何か引っかかる……。疑問を解消するには、まだ情報が足りていない。

「お前、何か隠しているのか?」

 イガワが尋ねた。

「別に隠しているわけではありません。あの電磁波遮断機構が妙に気になっちゃったものでしたから……」

「そうか? だが、それにしても証拠品を確認するほどのことだったから、余程のものなんだろ?」

「沖津教授は発想が奇想天外ですからね。常識にとらわれていてはどうしようもないですから。僕が気にしていることは、もしかしたら、教授はその観点から研究していたかもしれません」

 まだ、確証がないんです、とツバサは言った。

 イガワは何かを察したのか、そうかい、と言ってそれ以上は聞かなかった。

「他に協力出来ることはあるか?」

 ツバサは考えた。今、自分が出来ることは一体何だろうか。

 そういえば……、とツバサはイガワに思い出すように聞いた。

「近隣住民から話とか聞いてないんですか?」

 イガワは、ああ、と淡白に答えた。

「一応な。まあ、事件として扱っていなかったから簡単に聞いたくらいだ。返ってくるのは似たようなことばかりだったぞ」

「似たようなこと?」

「元々近所付き合いも殆どない所為か、外で見かけたことは殆どなかったそうだ。いつも助手が被害者の手足みたいなもので、買い物から何から何まで全部やっていたそうだ、とそんな感じの回答ばかりだったよ」

 なるほど、とツバサは呟く。

 簡略的に聞いたのなら……次にやることは一つしかない。

「それがどうかしたのか」

 イガワが尋ねると、ツバサは、微笑みながら答えた。

「いいえ、何も」

 

 時刻は夕方になろうとしていた。

協力してくれたイガワに礼を言って、警察署を後にする。

 次のやるべきことは決まった。まずは、それからやり始めることにしよう。それから先はまた後だ。

 そして、ツバサは、またもなけなしの金でタクシーを拾い、メトロポリスの中心街へ向かうわけだが……。

 カノコから少しだけ金を借りた方が良かった、と今になって悔やむのだった。

 

   5.

 

 翌朝。

 ツバサは仲間たちに、知り合いの企業との交渉にもうひと押ししてくる、と適当に考えた理由を述べて自由行動の許可を貰い基地を後にした。

 今度は、不本意ではあるが、いざという時とのためにとっておいた非常用の金を用意して再び沖津の自宅のある地区へ向かった。

 S‐GUTSと知られないように、制服は脱いで一応スーツを着る。上に白衣を着て、しっか

りとボタンで留めて中身を見せないようにした。

 ツバサは、まず手始めに、沖津の近所の家から聞き込みを開始した。 

 

チャイムを鳴らす。

『はい。どなたですか?』

 中年くらいだろう女性の声が聞こえた。

「すみません。R大学理工学部の者なんですけど、沖津教授についてお伺いしたいことがございまして……」

 我ながらうまい嘘だ。インターフォンはカメラ付きだから、身なりをきちんとしていれば怪しまれることもない。

 インターフォンが切れると、すぐに扉が開いた。

「ああ、どうも。突然お邪魔してすみません」

「大学の生徒さん?」

「はい。沖津教授のゼミに在籍していまして、教授はこのあたりにお住まいだと代理の宣誓から聞きました」

「それなら、もう三ブロック先の家ですよ」

 どうやら道に迷った、と勘違いしているようだ。

「ああ、違うんですよ。それで実は、近所の人々に教授のことを聞きまわっているんですよ」

「聞きまわっている?」

「はい。先日教授が亡くなったというのは、多分ご存じかと思うんですが、実は大学で追悼のために教授の特集を新聞部の人達と合同でやることになりまして。それで、実は大変恥ずかしいことなのですが……教授は日頃から大学に来ないで、いつも代理の人が来ている状況だったので、教授がどういう人だったかというのは、著書の人物紹介でしか分からないんです。ですから、周辺に住んでいる人たちなら教授の意外な一面を知っているのでは、と思って聞いて回っているんです」

 ツバサは、そう説明すると、女性は特に疑うこともなく、そうだったの、と言った。

「つい先日警察が来てね。その時も沖津さんについて聞かれたのよ」

「警察も……ですか?」

 ツバサは知らなかったように聞く。

「ええ。でもごめんなさい。多分力になれそうにないわ。沖津さんって、近所付き合いとかあんまりなくて私たちもどんな人なのか知らないのよ」

「やっぱりそうですか……。実は他の家でも同じようなこと言われたんですよ」

 やっぱりそうなのね、と女性は頷く。

 ツバサは、また聞いた。

「沖津教授が亡くなった日なんですけど、彼を見かけてはいませんか?」

「いいえ、見てないわ」

 と、女性は即答した。

「あの時は、家の草むしりをずっとしてたけど誰一人として見なかったわね。途中で警察が来て、一体何があったのかしら、と思ったわ」

「そうでしたか……やっぱり人付き合いが悪い人だったんだなあ」

 ツバサは、残念がるように呟いた。

 

 それからというもの、一軒一軒聞き込みをしていったが、返ってくる言葉は同じようなものだった。

 やはり沖津は、思っている以上に人付き合いは限られたものだったようだ。やはり彼と親しかった人達に話を聞いた方がいいのかもしれない。

 だが、それでも情報を直に聞けて実に有意義だ。

 もうそろそろ近所と呼べるには距離が遠いか……、ツバサは最後の一軒を訪れた。

 そこでも、言うことは似たようなものだった。

 だが、そこで今まで無かった新しい情報を掴むことが出来た。

「時々見ても、不愛想に一人でとぼとぼ歩いていたから、きっと一人ぼっちなのね、とずっと思っていたわ」

 でも、とその家に住む女性は言った。

「実際、沖津さんって隅に置けない人なのよ」

 女性がそう言うと、ツバサは耳を疑った。

「隅に置けないというと?」

 女性はツバサの顔に近寄りお周囲を気にしながら小声で言った。

「あなたの話を聞いて思い出したのだけど、三か月ほど前だったかしら。沖津さんが若い女の子と一緒に歩いているのを見たことがあるのよ」

「女の子と……ですか?」

「そう。紛れもなく若い女の子よ。十代くらいのね」

 十代くらいの女子と一緒にいた……今まで聞いたことがない。

 沖津は子供がいたが、それは息子だ。しかもすぐに亡くしていて、それ以降子供は作らなかったはずだ。

 しかし、研究一辺倒の沖津が他の人と――ましてや若い女子に興味を抱いていたというのはあまりにも不可解だ。イメージが湧かない。

「それって、どんな女の子か分かりますか?」

 女性は、ツバサの質問に間をあける。どうやら思い出している最中のようだ。

「えーっとねえ……確かショートヘアーの……何て言うんだっけ? ショートなんだけど、全体的に髪が丸まっている感じの……」

「ボブカットですかね?」

「ああ、そうそう。そんな感じ」

 ボブカットの女子……か。しかしそれだけではあまりに曖昧すぎる。

「年齢は……十代ぐらい……。具体的には何歳くらいでしたか?」

「そうねえ……身長は……あなたより四、五センチ下かなあ。年齢は思い出せる感じだと高校生って感じだったわね」

「今まで見たことは?」

「ないわね。初めて見たわ。このあたりには住んでいないんじゃないかしら」

 高校生くらいの……しかもボブヘアーの女子か……。ツバサは、自分自身が知っている人物の中に一人だけ該当する人物がいることに気づいた。

 まあ、偶然だろう、とすぐに考えを振り払った。

「その女の子と……ですか? 沖津教授はどんな感じだったんですか?」

 ツバサが尋ねると、女性は待ってました、と言わんばかりな表情になって言った。

「そうなのよ。今までずっと不愛想な顔をしているから、びっくりしちゃったのよ。沖津さんったら、その子と一緒に笑っていたのよ」

「笑っていた?」

「そう。あの人が笑うなんて想像も出来ないけど、確かに笑っていたのよ」

 笑う沖津なんて……確かに想像はつかない。

 しかし、その子に笑う姿を見せていたということは、沖津は随分とその子には自分の感情を表に出していた人物のようだ。

「あの笑っている顔を見て、よく分かったわ。あの子は沖津さんの歳の離れたそういうのじゃなくて、多分家族の類なんじゃないかって?」

 家族の類? とツバサは聞いた。

「そう。あの安心した顔は、なんていうか、家族と一緒に入れて幸福を感じているような、そんな感じよ」

 女性はそう説明した。

 ツバサは、先日のカノコの事をふと思い出した。家族に出会って、素をさらけ出す姿――昨日のカノコのようなものなのだろうか。そんな姿を、沖津が安心してさらけ出せる人物――確かに家族のような存在にしか見せられないが……しかし想像できない。

「やっぱり沖津さんも人の子なのよねー。出来ればあんな時の沖津さんと話がしてみたかったわ」

 

 話を終えて、ツバサは情報を整理する。

 手がかりが殆どなかった状態で、前に進める手がかりが見つかったのは大きい。

 沖津はただ一人ひっそりと死んだ、という状況的に納得できる現象が、ツバサの脳裏で瓦解しようとしていた。

 沖津が誰かに殺された可能性がある――それが今までの調査で現実味を帯びてきていた。

 それに沖津といた女子……もしかしたら……、とツバサの脳裏である人物が浮かび上がっていた。

 よくよく考えたら、色々当てはまる人物がいる。偶然かどうかは分からないが、聞いてみる価値はある。

 ツバサは、端末を取り出しあることを調べ始めた。

 沖津の葬式がどこでやっているのか、その情報ならニュースでも取り上げているはずだ(無ければ、アカシックレコードを用いてでも無理矢理調べだすが)。

 どうやら、情報では、葬式は丁度今日のメトロポリスのA葬儀場で行われているらしい。まあ、有名人が多数そこを使っているだけあって、沖津もその部類に入る人だ。使うのも理解できる。

 しかし、またタクシーで移動か……。出来れば早くもう一歳年を取れれば、スタッグSGに乗れるのだが……。やれやれ、十五というのはこれだから厄介で中途半端な年齢だ、とツバサは苦言した。

 

 A葬儀場の目の前はすでに大勢の人だかりになっていた。

 入り口の前で名前を記入する人々、それを待つ人々、献花をしに来る人々――多くの人々が入り乱れていた。

 よく見れば、学会でよく見る名のある教授や博士たち――さらには海外から来た学者たちも見えた。

 いかに沖津が世界でその名を轟かせたのかよく分かる。

 ツバサは、予め買っておいた花を用意して突入する。

 芳名帳記入の列には、親族、友人、企業、さらには外来と、一見のゲストも献花をしていいようだ。

 ツバサは外来の列に並んで順番を待った。

 自分の番が来ると、ツバサは自分の名を書いた。

「ん? エンジョウ……?」

 外来の芳名帳を担当していた受け付けの男がツバサの名前を見て呟いた。

「あの……」

「はい?」

 ツバサは男の顔を見やった。

「あの……、もしかして僕は入っちゃ駄目でしたか?」

「ああ、いえ……違うんです。もしかして、あなたはアールサイバネティックコーポレーションに関係者がいませんか?」

 アールサイバネティック? とツバサは呟いた。ああ、そうか、この人はもしかして……、とツバサはすぐに察知した。

「ええ、一応母がそこの常務ですけど……」

「ああ、そうでしたか! やはりカノコさんのご家族の方でしたか!」

「はい……あの……あなたは?」

 男は今までの表情とは一変して、明るい顔でツバサに言った。

「実は私は、あなたのお母様と同じ販売部門に務めている者でして。エンジョウと聞いてもしかして、と思ったんです」

 ああ、そうだったのか、とツバサは納得した。

「どうぞ。お入りください。今さっきですが、お母様が入っていきましたよ」

 ツバサは礼を言って会場へ入っていった。

 ああ、そうか。よくよく考えれば母さんがここに来るのはおかしいことじゃないんだよな、とツバサは己の予測の甘さを反省した。

 KISANUKIグループもTPCの協力企業の一つで、またアールサイバネティックと時より提携して商品を発表していたことをツバサは思い出した。そうなれば、会社関係者が葬式に来るなんて当然のことだ。だったら、カノコがいないはずがない。

 あの母のことだ。自分がいることは勘で読み取れるはずだ。

 ツバサが、そう思いながら献花の列に並んでいると、

「あれー!? ツバサじゃない!」

 ほら、やはり。

 カノコはあの長い列にいたツバサをピンポイントに見つけ出し、近寄ってきた。

「ツバサ! どうしてここにいるの?」

「ああ、いや……。沖津教授って確か元KISANUKIグループの人なのを思い出してさ……。確か母さんの所の会社と縁があるのを思い出して、一応献花しようかなと」

 ついさっき思い出したことを口にした。あまりにぎこちないのはツバサ自身でも分かった。

 だが、カノコは一切疑うこともなく、

「そっか。そういえば、ツバサって沖津さんの本を結構読んでいたわよねー」

 と、言った。

「そ、そうなんだ。僕の憧れの人の一人でさ……」

 ツバサはそう言うと、もう一度列に並びなおして献花した。

 ツバサは溜息を吐きながらカノコの元へ戻る。

「ここに来るなら昨日言ってくれれば良かったのに。そうしたら、一緒に行けたのにね」

 あはは、とツバサは苦笑いをする。

「本当に思い出して急いで来たからさ。言えなかったんだよ。母さんだって仕事があるだろうし」

「仕事なんかそっちのけで家族を優先してあげたのに」

 いやいや、それは家族としてはいいのだろうが、仕事をする人としては時と場合があるだろう、と言いたかったが、ツバサは喉にその言葉を引っ込めた。

「そういえば、母さんは沖津教授のことをよく知ってるの?」

 ツバサが尋ねると、カノコは右手を頭の後ろに添えて、目を逸らした。

「あー、実はそんなに知らないのよね」

「ああ、やっぱり?」

「うん。わたしが沖津さんのことを知ったのは、会社に入った時で、その頃は沖津さんが会社を辞める二、三年前くらいだったかな。会社の合同祝賀会で初めて顔を見たんだけど、笑わないし、覇気はないしで……本当に一会社の社長なのかなって疑ったほどだから」

 そうなんだ、とツバサは言った。

「ああ、でも、沖津さんのことをもっと知っている子なら知っているわよ。聞くならその子に聞いてみたら?」

 カノコの口からかなり有意義なことが漏れた。ツバサは思わず、聞き返すほどに。

「本当に?」

「うん。ついさっき話していたから……」

 と、カノコは周辺をきょろきょろした。

「あれー? どこ行ったかな?」

 カノコがその子の姿を探している間、ツバサは、その一点を見つめていた。

 特別なことではない。そこに異星人がいたとか、人類が知るにはまだ早い世界の秘密がそこにあったとか、そんな大層なものではなかった。

 ただ、そこに、ツバサが予想していた人物がそこにいたから、思わずその姿を凝視してしまったにすぎない。

 当然、向こうもツバサの姿に気が付いた。だが、ツバサとは違い、驚嘆していた。そこに自身のチームメイトがいるとは微塵も考えていなかったのだから。

 その子は、ツバサの元へ一直線に駆けていった。

 駆ける音に気が付いたのか、カノコもその子の方へ顔を向けた。

「あーいたいた。おーい。こっちこっち」

 その子は、ツバサの前で立ち止まって息を切らした。

「あの……大丈夫?」

 ツバサが、声をかける。

 息を切らしながらも、その子は驚きの顔を隠さないで、ツバサに言った。

「え? どうして? 何でツバサがここにいるの?」

 その疑問にどう答えればいいかツバサは迷った。ツバサは、相槌を打ってどう答えようか迷っていた。

 対するカノコは、その子が何故ツバサの名前を知っているか理解出来ていなかった。

「えーっと……、もしかして二人はお知り合い?」

 ツバサは、不思議そうにカノコに聞いた。

「あれ? 母さんは知らなかったっけ?―」

「うん。多分、色々忘れちゃってるかも」

 ツバサは、笑いながら言った。

「聞いたら思い出すと思うよ。彼女は、同じS‐GUTSの隊員のキサヌキ・エミって聞けばね」

 

 葬式会場の外のベンチでツバサとエミは座った(その陰でカノコが二人のやりとりを隠れて見ているのは言うまでもない)。

「驚いたなー。まさかツバサがここにいるなんて思いもしなかったよ」

「それは僕も同じだ。まさかエミが沖津教授の親族だなんて思いもしなかった。それにまさかあのKISANUKIグループがエミの一族の会社だとは思いもしなかったよ」

「とは言っても、わたしは基本会社にはノータッチだし、あまり関係はないのよね」

 それはそうと、とエミは言った。

「ツバサのお母さんがカノコさんだったなんて。エンジョウって聞いたときもしやとは思っていたけど」

「まあこっちも基本母さんの仕事には一切関わってないからね。どうやって偉くなったのか聞いたら、『ずっとそこで仕事をしていたらいつの間にか常務になっちゃった』って言うくらいだし」

 エミはくすくすと笑った。

「相変わらず面白い人ね」

 全くだ、とツバサは答えた。

「でもどうして母さんを知っているんだ? エミの立場なら母さんに近づくきっかけが見つからないんだが」

 ツバサがそう聞くと、エミはすぐに答えた。

「ああ、それはねー。わたしがTPCに入る前に色々ソフトを作って売り込みをしていた時に、カノコさんのところでソフトを卸してもらったのよ。それ以来ずっと付き合いがあったのよ」

 なるほど、とツバサは納得した。そういえば、エミの経歴にソフトの売り込みをしていたことが書いてあったな、と思い出した。

「ねえ、もしかしてわたしがKISANUKIの一族の関係者って気づいてた?」

「正直に言えば、今の今まで気づいてはいなかった。苗字でそれだと結論づけられないし」

 そっか、とエミは空を見上げた。

 悲しそうな顔だった。もういない誰かを想っているのだろうか――エミの表情は、そんな悲壮感を漂わせていた。

「沖津教授のことを大事に思っていたんだね」

 ツバサがそう言うと、エミは頷いた。

「わたしにとってもう一人のお祖父ちゃんだったからね。わたしの今の在り方は殆ど大叔父さんの影響が強かったから」

 エミは力強く言った。

 エミの言葉は、ツバサに響いた。今の生き方に大きく影響した沖津を、死して尚もエミに大きな影響を及ぼしていたのだ。

「よく遊びに来てくれてたなー。わたしが行く機会もあったけど、もっぱら大叔父さんがこっちに来てくれていたな」

「エミも遊びに行っていたんだ?」

「殆ど数えられるくらいだけどね。最近行ったのは、三か月くらい前だったかなー。大叔母さんと悠仁さんの二十五回忌で家に行ったのが最後だったかな」

 やはり、沖津と一緒にいたのはエミだったようだ。

「いっぱい面白い話をしてくれたなー。集団チャットによる社会的閉鎖に陥る人の増加率の検証とか外部端末の侵入による企業の平均被害総額の予測とか……楽しかったなー」

 ……それ、楽しい話なのか? ツバサは耳を疑う。

「最初はわたしもKISANUKIグループに入って、大叔父さんを助けようと思った。でも、大叔父さんは、自分の行きたい道を選びなさいって言ってくれて、昔から興味を持っていたプログラミングの世界に飛び込んで、高校二年くらいの時に、お父さんやお母さんの助けを借りてネット上での販売を始めたの」

 カノコさんと知り合ったのはその頃だったかな、とエミは言った。

「とにかくいっぱい教えてくれた。笑い話も尽きなかったし、いつも家族や親戚を大事にしてくれてた」

「何か想像がつかないな。僕はそうだけど世間一般では、沖津教授は人付き合いがなくて、助手以外に彼の内面を知っている人はいないって聞いていたから」

「それはわたしも不思議でしょうがなかった。なんでわたしや家族と接しているように振る舞えないんだろうって。大叔父さんは笑いながら、こう答えてくれた」

 

『儂という人物を知っておいてくれるのは家族だけで十分何だよ。他の人たちは、大叔父としての儂ではなく、科学者としての儂を覚えておいて欲しいんだよ』

 

「科学者としての自分を覚えておいて欲しい……か」

 ツバサは呟いた。

 沖津は自分自身をよく分かっていたのだ。自分をどういう了見で覚えておいてほしいか――家族には、ただ優しい夫として、大叔父として、父として。そして世間には、堅物ながらも世界が憧れた偉大な科学者として、彼は世間を相手に演技していたのだ。

「なんだが、自分とは違う次元にいる人のように思えるよ」

「わたしも」

 エミは言う。

「でも、いつかはそこにたどり着きたいな」

 エミの言葉は悲しみもあったが穏やかだった。

 きっと誰もがそう思っているだろうね、とつばさは呟いた。

 ツバサは、沖津という存在をようやく知ったような感じを覚えた。今まで知っていたのは沖津浩三という「記号」だけだった。だが、ようやく、沖津浩三自身を知ることが出来たのかもしれない。

 エミは立ち上がって言った。

「何だか、ツバサに言ったらすっきりしちゃった」

 有難うね、とエミは微笑んだ。ツバサは、役に立てたのなら、と微笑み返した。

「あーそうだ! 良かったら大叔父さんが載ってるアルバムがあるから見ない?」

 アルバム? とツバサは言った。

「そう。実は大叔父さんと一緒に埋葬するつもりなんだけど、まだお葬式は終わらないし、よければ大叔父さんの写真とか見てみないかなーと思って」

 沖津の写真――つまりそれは、今まで写真に写ることを拒み、叙勲で姿を現すまでの空白の期間の姿ということになる。

 中年時代は一体どんな顔なのだろうと、沖津の一つの不思議だ。

 だが、いいのだろうか。

「でも、それっていいのかな? 棺から埋葬する品を取り出すのはなんか気が引けるんだけど」

 ツバサが心配そうに呟くと、エミは、いいんじゃない? と返した。

「まだ棺には入れていないし、献花とかが終わるまでわたしが持っているんだから全然平気だと思う」

 そうなのか、とツバサは呟いた。

 それに、とエミは少しだけ強調して言った。

「せめてツバサには見てほしいんだ。わたしの大叔父さんのことをせめて家族以外の誰か一人にでも……」

 なぜ、自分なのかは分からない。ただ、ツバサは自分が沖津を知ることがエミの頼みのように感じられた。

 ツバサは力強く頷いた。

 

 エミは会場の中の準備室にアルバムが置いてあると言い、そのまま取りに行った。

 ツバサは一人になった。

 色々沖津のことを聞けて良かったと思う。だが、これは沖津の死と何ら関係があるとは言えない。

 矛盾点はあったのに、これだと言える確証が何一つ得られていない。

 何か見落としていないか……警察も考えられなかった見落としが……。

 ぶつぶつ言っていると、後ろから突然誰かに抱きしめられた。

 どーん、と子供っぽく擬音語を言い、ツバサを困惑させる。あまりの突然さに思わずツバサも声が出てしまうほどだった。

 ツバサは振り返る。

 やはりカノコだった。

「母さん……仮にもここは葬式会場だよ。あまりに場違いなんじゃないの?」

 カノコは、ツバサから離れる。

「いやー。しみったれた雰囲気は苦手なのよね。死んだ人だって、自分のことをいつまでも悲しんでいたら、逝けるところも逝けなくなっちゃうんじゃないかって」

 と、カノコは言った。やせ我慢をしていたようだ。

 ただ、カノコの言い分も間違ってはいないと、ツバサは思った。

「死んでみないと分からないかもね。本当に逝けなくなるのかなんて、本人にしか分からないよ」

 ツバサがそう言うと、カノコはそうよね、と言った。そして、突然ツバサの横に座った。

「ねえ、エミちゃんと随分いい雰囲気だったけど、もしかしてもう付き合ってるとかなの?」

 唐突に言われたことにツバサは目を丸くした。

「何言っているんだよ。そんなわけないじゃないか」

「えー。でもあんな風に話してくれるなんて相当の信用がないと無理よ」

「持っている興味の対象が似ているからじゃないのかな?」

 そうなのかなあ、とカノコはツバサの言葉を懐疑する。

「でもエミちゃんって前はかなり淡々とした子だったのよねー。それこそ沖津さんのように顔に表さなかったし、今になってすごく明るくなったし。これってツバサのおかげなんじゃないのかな」

 まあ、それは確かに、とツバサも思った。最初は淡々とした感じがしたが、最近になってそうでもなかったかもしれない。

 ただ、それが果たして自分のおかげかは定かではない。もしかしたら、自分ではなく、危機にさらされているこの世界がそうさせたかもしれないし、はたまた自分ではなく、ティガが現れたからかもしれない。

 そんな答えの出ないことを言っても何も始まらないし、終わりもしない。ツバサは、もうこの話はやめようと促した。カノコはしぶしぶながらも承諾した。

 そうこうしている内に、エミが大きなアルバムを持ってきて戻ってきた。

 

「あれー? カノコさんもいたんですか?」

「なによう! あっ、もしかして二人っきりの方がよかった? わたしお邪魔だったかしら?」

 何言ってるんだよ……、とツバサは呆れ顔で言った。そうですよ! とエミが赤面しながら慌てて否定した。

「もしかしてアルバムってそれのこと?」

 ツバサはエミが持っているアルバムを指さした。

「ああ、うん。大叔父さんの若い時から最近のものまでは全部この一冊に収められていると思うわ」

 エミはツバサの横に座る。中央にツバサ、その左右にエミとカノコがいる。エミはツバサの膝元にアルバムを置いた。

「これが沖津さんのアルバムなのかー。もしかしてわたしは見ない方がいい?」

 カノコがエミに聞く。

「一緒に見てください。大叔父さんはカノコさんならきっといいよ、って言ってくれるはずです」

 そうなの? とカノコは沖津に認められたようで若干照れた。

 ツバサはアルバムを開いた。

 さすがに幼少期のころの写真は無かったが、沖津がKISANUKIグループに入社した時の写真から始まっていた。

 ページが進むにつれて、横に女性が一緒に写るようになっていた。恐らく、妻でありエミが大叔母さんと言っていた清子だろう。

「清子さん綺麗ねー。沖津さんの若い時も初めて見たけど中々男前ねー」

 カノコが呟く。

 ツバサはページをめくっていった。

 ついに子供が写真に現れた。

「これって……」

 ツバサが呟いた。

「息子さんの悠仁さんね。わたしのまたいとこって事になるわね」

 息子……確か清子と同じく二十五年前に亡くなっていたことをツバサは思い出す。

 そして、家族三人、または悠仁が写っている写真が多くなっていった。有体に言えば成長アルバムのようなものだった。

 幼少期、少年期、青年期と成長した悠仁の姿がそこに写っていた。

「やっぱり、子供から大人になると悠仁さんも沖津さんの面影が出てきてるわねー」

 カノコは懐かしそうに言う。

「ですよねー。本当に大叔父さんに似てきたから、年を取ったら大叔父さんと瓜二つになるんじゃないかってお爺ちゃんが言っていたんですよ」

 エミとカノコがきゃっきゃと言っている中で――。

 ツバサは戦慄していた。

 悠仁という死んだ沖津の息子に、ツバサは驚嘆の色を隠せなかった。

 

 どういうことだ……? この人が本当に沖津教授の死んだ息子……? じゃあ、あいつは……あの人は一体誰なんだ?

 

ツバサは、エミに確認する。

「エミ。悠仁さんは、本当に交通事故で死んでいるのか?」

 突然の質問にエミは少し戸惑った。カノコは、ちょっと……! とツバサのいきなりの不謹慎な質問を注意した。

 だが、ツバサは引き下がらない。

「そうだよね?」

「う……うん。二十五年前に確かに。お爺ちゃんもそう言っていたし……」

「確かにこの悠仁さんは、沖津教授の奥さんと一緒に交通事故で亡くなったんだよね?」

「そうだけど……」

「遺体は確認したか聞いたことは?」

「そ……そんなの……」

 エミは答えられなかった。

 ツバサは、まあいい、と言い、質問を変えた。

「その後、沖津教授は三年ほど行方不明になっていると、世間では言われてるけど……」

 ツバサは、続ける。

「エミは、その三年間に沖津教授がどこにいたか知らないか?」

 エミはさらに戸惑った。

「どこにって……」

 エミは無意味に顔を左右に動かした。視点が定まっていない。ツバサのらしからぬ行動に混乱し、エミの頭を以てしてもついていけてなかった。

「ちょっとツバサ! なんてひどいことを言うのよ! エミちゃんの大切な人が亡くなったばかりなのに、そんなことが言えるなんて……!」

 カノコが険しい表情になってツバサに怒鳴った。思えば初めて怒鳴られたかもしれない。 

 だが、ツバサはやめない。信用が失うかもしれない、エミが自分を嫌うかもしれない、などそんなことはどうでもいい。今大事なのは、掴めそうな事実に手が届いているということだ。

「知っているなら教えてほしい」

「どうしちゃったの、ツバサ……。いきなり怖い顔になって……」

 エミが怖がりながら言う。

「ツバサ、やめなさい。これ以上は母さんも怒るわよ」

 カノコが立ち上がってツバサの目の前に立って見下ろす。ツバサは、カノコを見上げて反論した。

「母さんは黙っててほしい。これは重大なことなんだ」

 黙れ、と言われ、カノコは驚愕した。ツバサが、そんなことを言うなんて思ってもみなかったのだ。

「どうなんだ?」

 エミは、少し震えながらも答えた。

「聞いた話だと……大叔母さんと悠仁さんが亡くなったショックで、精神病棟に入院していたって……」

 なるほど、入院していたのか、とツバサは呟いた。

「じゃあ、もう一つだ。その三年後に沖津教授は突然戻ってきて、R大学で客員教授になった……そうだよね」

 エミは頷いて答えた。

「うん……。その時の理事長が大叔父さんの大学の同期だったらしくて……彼も大叔父さんが入院していたのは知っていたから、色々助けてあげてたって聞いてるけど……」

 ツバサは間髪入れずに質問した。

「じゃあ、いつも論文発表で公の姿に出ている代理人――沖津教授の助手と言われているあの人はいつから沖津教授の助手になった?」

 沖津教授の助手、と聞いてエミは悩みながら答えた。

「助手って……どっちの方? もしかしてキリュウさんのこと? いつも白衣を着ていた方の……」

 ああ、そうだ。キリュウという名前だ。ツバサはやっと思い出した。

「そう。その人だ。彼はいつから沖津教授と一緒にいた?」

 ツバサの迫る形相にエミは、若干怯えていた。だが、エミは、思い出したように答えてくれた。

「確か……お爺ちゃんが言っていたのは……お爺ちゃんがお見舞いに行った時に、大叔父さんに紹介されたって」

「紹介された?」

「うん。病室に入ってみると、見知らぬ青年がいたんだって。しかもその時、大叔父さんは笑いながらその青年と話していたのを見て吃驚してたって」

 ツバサは、それを聞いておかしい、と呟いた。そして、一つの仮説が頭の中をよぎった。

「本当に見知らぬ人だった?」

 ツバサが尋ねると、エミは、頭を抱えて混乱した。

「えっ? 見知らぬ……人……? あれ……どうだったっけ? 確かに、お爺ちゃんがそう言っていて……あれ? でもどうして……何で分からないの?」

 エミが呪文を唱えるかのように呟く。カノコはエミの背中をさすりながら落ち着きを取り戻させようとした。

「どうしたのエミちゃん? 苦しいの?」

 あれ? あれ? と、困惑した表情から段々と泣きそうな顔になってきた。

 そして、エミはツバサに縋り付いてこう言った。

 

「どういうことなの? わたし、どうして忘れてしまっているの? 何で不思議に思うことが出来ないの? キリュウさんの顔が、悠仁さんと同じ顔なのに、全然不思議に思えないよ!」

 

 ようやく、糸口が見つかった。

 ツバサは、エミをカノコに任せ、そのまま葬式会場へ入っていった。

 まだ献花は行われている最中だった。

 責任者……責任者はどこだ? ツバサは、辺りを見回した。

 だが、エミの親族がどこにも見当たらない。もしかしたら、いるかもしれないが、いちいち確認する時間はない。

 仕方がない、とツバサは棺の所まで賭けていった。

 棺には、沖津が安らかに眠っていた。

 イガワが言うには、司法解剖はすでにしてある状態だったはずだ。解剖の結果、沖津は心筋梗塞だと分かった。そして、沖津の表向きの環境から孤独死したものだと判断された。

 だとしたら……とツバサは思う。

 そして、ツバサはいきなり棺を開けた。そこには、白装束を纏った沖津の死体が置かれていた。

 周囲からどよめきが上がった。

「お……おい! 一体何をしているんだ!」

 誰かが怒鳴った。それと同時にカノコとエミも会場に入り、その光景を目の当たりにした。

「ツバサ……あなた……!」

 カノコが近づいてくる。

「おい! 君! 一体何をしているんだ! 不謹慎にもほどがあるぞ!」

 もう一方から老人の声が聞こえた。

 その声はツバサも聞き覚えのある声だった。ツバサはその声の方へ顔を向けた。

 間違いない。KISANUKIホールディングスの現会長であり沖津の義理の兄である木佐貫善三だ。恐らく、この葬式の主催者だろう。

 責任者が出てきてくれたのなら話は早い。ツバサは周囲に聞こえるように叫んだ。

「このようなご不敬を犯してしまい、申し訳ありません」

 そして、ツバサは木佐貫善三に自分のW.I.T.を取り出して自分自身の身分を明かした。

「木佐貫会長。僕はTPC本部特殊部隊S‐GUTSのエンジョウ・ツバサです」

 TPC? と木佐貫善三は耳にすると、一瞬だけエミを見た。

「もしかして、あんたはエミの……?」

「はい。同じ隊になりますね。最も、僕はまだ新人ですが……」

 ツバサがそう言うと、木佐貫善三は落ち着きを取り戻していった。だが、周囲からはまだ野次が飛んでくる。

「TPCがどうして来ているのか知らないが、死んだ人に敬意を評せよ! あんたらTPCはいつも自分勝手に来ては、極秘とか言って俺たちには全部を隠し通す! 今もどうせ理由があっても教えてはくれないんだろう!?」

 ご尤もな意見だ。最後は何だか自身の不満を勝手にぶつけているように聞こえるが、それは仕方がない。

 ツバサは叫んだ。

「情報を公開出来ないのは、地球を守るためなんです! 無理矢理にでも理解しろとは言えませんが、どうかここは分かってほしいんです!」

 勝手なこと! と叫びが響く。

「怪獣だって今まで出てこなかった! ウルトラマンが戻ってきてからだ! 怪獣や宇宙人が暴れだしたのは! あいつとTPCのおかげで今までの平和が消え去ったんだ!」

 胸が痛い言葉だ。

 だが、ツバサは耐えた。分かり切っていたことだが、そうなのだ――これもまた人々が変化した証拠なのだ。

 だが、今はこの先にある未来を守るために、傷を負ってでもやらなくてはならないことがあるのだ――ツバサは小規模のカメラを取り出した。

「何だね、それは!」

 木佐貫善三が尋ねる。だが、ツバサは答えをはぐらかしつつ、カメラを起動した。

「どうかご理解ください。どうしても必要なことなのです」

 ツバサはカメラを沖津へ向けて撮影する。

 足下から心臓……そして、頭まで。

 そして、すぐにツバサの求めていた答えの一つが見つかった。

「やっぱりそうだった……」

 あの男からこの事件を頼まれた時に、ふと頭の中で浮かんだ想像――それは間違いなかった。

 なら、後はそれを証明するための確固たる物的証拠が必要だ。

 ツバサは、そのまま会場の外へ駆けだす。そして、W.I.T.を取り出しある所へ番号をかけた。

「もしもし? こちらS‐GUTSのエンジョウです。イガワさんをお願いできますか?」

 数分待って、昨日聞いた男の声が響いた。

『何だよ、いきなり。せっかく休憩とっていたっていうのによ』

 不満たらたらにイガワは言った。ツバサは、軽くすみません、と謝りながら、こう頼んだ。

「今すぐ、沖津教授の証拠品を持って沖津教授の自宅へ向かってください」

『証拠品を持って? 一体何でだ?』

「詳しい話はそこでします。とにかく、そこで全ての証拠を集めます」

『ということは、もしかしてお前……』

 イガワは察したようだ。ツバサは、その通りに答えた。

「沖津教授の死が異星人の介入によるものである可能性に現実味が帯びてきました。これから、それを証明します」

 




続きます。
英語の文章の翻訳欲しい人は言ってください。
コメント欄に書くか、このあとがきに追加したらいいのか言ってください。まあ、全く関係ない英文なので読まなくてもいいんですけどね。英文あると何か論文ぽく見えるじゃないですか。

翻訳してほしいという要望があったのでここで書きます。久しぶりの訳なので間違ってたらすみません
以下の通りです。



1 オーストラリアの貿易動向と貿易方針

1980年代~1990年代頃のオーストラリアの貿易自由化政策は、世界貿易機関(WTO:World Trade Organization)のルールに則ったグローバルな自由貿易体制の構築が大原則であった。オーストラリアは保護貿易主義につながる北米自由貿易協定(NAFTA:North American Free Trade Agreement)、EUのような地域FTAに対して否定的だった。しかし、WTOが提言した協定発足後は、各国の保護主義政策による障壁で自由貿易の導入が進まなかったことにより、アジア太平洋経済協力(APEC:Asia Pacific Economic Cooperation)ボゴール宣言等(貿易・投資自由化過程において保護水準を高めるような措置を控え、既存規制を現状維持すること)を反映して、急速に地域・二国間FTAに対する関心が高まった。特に2000年12月のWTOシアトル会合後は、二国間FTAを積極に進めている。
第1番目の選択肢としてグローバルな自由貿易、第2番目の選択肢として地域貿易、そして第3番目の選択肢として安全保障面を含めた緊密化(2011年の米国テロ事件やアフガン戦争、イラク戦争、近隣ではソロモン諸島の不安定)により、オーストラリアは、ある特定の範囲内の国々との貿易や経済だけでなく、他の要因も含めた相互補完的な二国間自由貿易に目を向けることになった。

オーストラリアで連邦制度が確立されたとき、関税は高く輸入割当を課す保護貿易主義が優勢だった。1973年のウィットラム政権による関税の一律25%削減、1983年のホーク政権による競争に対し開かれた経済の導入、1991年のホーク首相とキーティング財務省による関税削減の遂行により、経済基盤の基礎を作った。
 


ということです。ね、全く話に関係なかったでしょう?
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