自重せねば。
3.
*
シャトルは、ゆっくりと大気圏に突入する準備を始めていた。
シャトルの中でツバサは窓の外に見える宇宙を眺めていた。
乗客のほとんどは、早朝の便というだけあって、寝ている人たちが多く、まるでこのシャトルの中だけが夜の静けさのように感じられた。
ツバサは、星々や、地球から惑星間へ伸びている大型建造物を眺めていた。
これから、これらに携わる――。そう思うと、ツバサが担う研究の重要性を今一度認識していた。
地球までは残り一時間ほどだろう。
それまで少しでも睡眠をとっておこう――ツバサは、窓を閉め、軽い眠りについた。
*
「おお、どうやらあのシャトルのようですなあ」
メトロポリスにあるシャトル発着場の窓から、ウチダはコウダに向かってそう言った。
特別研究員を乗せたシャトル――エスポワール号は地上から肉眼で確認できるところまで近づいていた。
「話によると、向こうは乗り遅れることはなかったそうだ」
コウダは、ウチダにそう言った。
「ははは。乗り遅れていたら、それこそ我々がここにいるために割いた時間と私の努力が水の泡になってしまいますよ」
「そうだな。まあ、でも、あり得るかもしれないだろ? 相手はまだ少年なんだからな」
「遅刻は許す……と?」
「怒って許す」
実際は許してほしくないのだが、とウチダはそう思いながら苦笑した。
子供とはいえ、特別研究員だ。子供の代から大人と同じ土俵で挑むわけだから、あまり子ども扱いはしたくないのがウチダの考えだ。だが、それを差し引いても相手は初めての地球であるということを考えれば、初心者相手には優しくしようともウチダは考えていた。
シャトルがゆっくりと着陸していく。シャトルには、着陸時に人間と機械の間でしっかりとサポートがなされている。事故はそうそう起こらないだろう。
シャトルが無事に着陸すると、中から乗客がぞろぞろと降りてきた。
その中から本人を見つけ出すのは、二人にも容易だった。
たった一人だけ――恐らく地球の重力に違和感を抱いている、不安な顔をして、辺りを見回している少年がいた。
*
『エンジン出力345から110まで減速――重力安定機構を地上へ移行――オーケー、オールクリア』
機長室から若干の声が漏れていた。
それは、ツバサが学んだ知識の中で聞いたことのあるもの――宇宙航行学の一つ、シャトル運航の際の着陸時の管制塔との確認作業の一つだった。
いうなれば、ツバサは乗ったことはないが、「飛行機」と理論は大体同じだ。
エンジン出力の減少の際に少しの間シャトルは左右に振動する。振動が完全に止まると、着陸が成功した証なのだ。
振動が消えたと同時にアナウンスがなった。
「お待たせいたしました。当機は、メトロポリス国際空港へ到着いたしました。どなた様もお忘れ物のないようにお願いいたします。本日は、地球火星間定期シャトル、エスポワール号をご利用いただきまして、誠にありがとうございます」
ツバサは、手荷物を全て持ち、シャトルの外へ出てみた。
「……ん?」
ツバサは体に違和感を覚えた。
体が地面に引っ張られていくような感覚。足の裏が地面に吸い付いているような――まるで足の裏を糊でくっつけられているような不思議な感じだった。
火星にいる時よりも体が重く感じだ。自分が持っている荷物も重い――体重計で計った重さより重いのでは、と感じるほどだった。
体が重いと、少し動きづらい――ツバサは辺りを見回した。
他の乗客はそれほど苦にもなっていないようだった。淡々と荷物を持って、到着ロビーへ足を進めている。
どうやら地球に来たのが初めてなのは自分だけのようだ。ツバサは、何とかついていこうと、足を進めた。
これが重力か――ツバサはヒカリの言葉を初めて痛感した。姉もこの「儀式」を通過したのだろう。
だとすると、いずれ慣れるものなのだろう、と少し気が楽になった。
ツバサは、迎えが来ているという到着ロビーまで足を速めていった。
大型荷物を持って到着ロビーへたどり着くと、ツバサは再び辺りを見回した。
話によると、TPC宇宙開発局の人が迎えに来ると言っていたが、はたして一体どこにいるのだろうか……。
やはりTPCの服を着た職員だろうか、と思って周りを見るが、TPC職員はそれなりにいるのだ。
恐らくそれぞれが別件で来ているだろうから、誰が誰を待っているかなんて判別は出来ない。
だが、その中に、明らかにこれだ、と思える人物がいた。
ツバサが見つけたそこには、恐らく誰も知らない者はいないだろう――男がいた。
男はツバサと目が合うと、手を振った。多分――いや、間違いなく自分に対して振っている――ツバサは試しに手を振り返してみた。
男は、笑いながら、やっとみつけた、と言わんばかりに歩みを速めてツバサに近づいて行った。
ああ、まさか……まさか……とツバサは内心焦っていた。
いや、焦るだろう?
確かに宇宙開発局の人が来るとは言ったが――。
まさか、宇宙開発局のトップであるコウダ・トシユキ参謀が迎えに来るなんて一体誰が考えようか!
アスカを知っている人間なら、その仲間たちのことまでは知らないという人はいない。
元S-GUTSの副隊長にしてアスカと共に組むことが多かったのがこのコウダ隊員――もといコウダ参謀なのだ。
「よ、お前が俺たちのところで働く研究員か?」
コウダはツバサに聞いた。
参謀とは思えない口調。まるで先輩が新しく入った後輩に話しかけているようだった。
ツバサは、緊張しながらも敬礼してコウダに着任報告をした。
「は……はい! マドカ・ツバサであります! TPCの特別研究員としての着任を報告します」
コウダは、何かにツボに嵌ったのか、ツバサの言動を聞いて笑い出した。
「えっと……あの……」
ツバサは、まだ状況を飲み込めていなかった。
「ああ、悪い悪い。そんなに固くなるなよ。特別研究員とはいえ、お前は俺たちにとってゲスト様なんだから、着任報告なんて必要ないぞ」
「は……はあ……」
「むしろ、ゲスト様で何も分からないんだろ? だったら分からないまま堂々としてればいいさ。大抵のことは全部ウチダ副参謀が教えてくれるだろうから」
突然、自分に全て投げつけられたウチダ、目を丸くして、自分で自分の方に指をさした。
どうやらこのウチダ副参謀は、コウダ参謀にいいように振り回されているようだ、とツバサは内心気の毒に思った。
「出来ればゆっくり話せたらいいんだけどな。生憎これから会議でな。行かなくちゃならないんだ。すまないな」
コウダが簡単に謝ると、ツバサは慌てながら答えた。
「ああ、いえ! わざわざ参謀殿が直接迎えに来てくださったことは本当に恐縮でありましたが、光栄です! お忙しい時間の中、わざわざ僕の為に……」
「いいってことさ。参謀本部が期待を寄せている若者を預かるんだ。これくらい当然のことだ」
コウダは、そう言って、腕時計を確認した。どうやらもう時間がないようだ。
「じゃ、俺はこれで。ウチダ、後は任せるぞ」
「はい。参謀もお気をつけて」
「おう。あー、参謀なんて面倒くさい。誰か変わりをやってくれないものか」
参謀にとってあるまじき発言をしながら、コウダは去っていった。
ウチダは、呆れながらその姿を見送った。
「……やれやれ、相変わらずだ」
ツバサは、ウチダの言葉に苦笑した。
「ははは……でもなんていうか……気さくな人だとは思いますよ」
「だが、上に立つ者としてはもう少し自覚があってもいいと思うんだが……まあ、あれでも職員たちは多大な信頼を寄せているんだから、まあ一応、リーダーとしては申し分ないのかもしれないが……」
ウチダは、おっと、と思い出すようにツバサの方を向いて言った。
「申し遅れた。私は、TPC宇宙開発局副参謀のウチダだ」
「どうも、マドカ・ツバサです」
「マドカ……? ひょっとしてマドカ・ダイゴの?」
「ええ、息子です」
ウチダは驚いた表情を見せた。
「そうか……息子がいたのか。いや、以前、娘のヒカリ君は何度か会ったことはあったんだが……もしかして、君は……」
「マドカ・ヒカリは僕の姉です」
「やはりそうか。いや、まさか弟がいたとは思っていなくてね」
ツバサは微笑した。
「僕は火星から一歩も外に出たことはなかったので……知らないのも仕方がないでしょう」
「そうか……子供たちも全員がTPCにか……何というか、不思議なご縁だな」
「副参謀は、父のことをご存じなんですか?」
ツバサが尋ねると、ウチダは笑って返した。
「いやあ、直接話したことはないよ。君のご両親がGUTSにいた頃は、私はまだ一職員たからね。知らないという人がいたとなると、まだTPCに入って日が浅い職員くらいさ」
そうだったんですか、とツバサは納得した。
「まあ、ここで立ち話もなんだ。これから君の寝床と君が携わる事業について車の中でじっくり説明させてもらうよ」
ウチダは、ツバサの大型荷物を持つのを手伝いつつ、ツバサを車の場所まで案内した。
車の中で、ツバサは緊張した様子で、自分から話を切り出すことが出来なかった。
ただ窓の外をちらと見ては、メトロポリスの街々に驚くくらいしかできなかった。
火星とは違って密集した高層ビル街、より整備された道路や遊歩道、行き交う人々、どれも火星で見たものよりはるかに壮大だった。
これが地球――しかもこれはほんの一部なのだというから、他の都市には何があるのだろうか、と期待に胸を膨らませていた。
ウチダは、ツバサの気持ちを察したのか、話を切り出そうとした。
「まあ、これから休日になれば好きな場所へ行けるから、じっくり堪能するといい」
ツバサは、ウチダの気遣いに嬉しく思い、面と向かって礼を言った。
「さて……これから君は、宇宙開発局と科学局の両局の仮配属となって、それぞれのプロジェクトに参加してもらうわけだが……」
ウチダは、手元に取り出した資料などを見つめながら言った。
「今、ネオフロンティア時代において、我々と科学局が人類の技術における最前線で仕事をしているのは知っているよね?」
ツバサは頷いた。
「……ネオフロンティア時代の終局ともいえる現在、地球とその他の惑星間をつなぐコスモネットの強化と拡大、そして、さらなる半永久的エネルギーの確保のために発電システムを兼ね備えた惑星間をつなぐ宇宙エレベーター建造、十四年前に消滅してしまった惑星を復活させるために、小惑星を核とした人工惑星の創造、そして、科学局では、ゼロドライブ航法理論の完全理解と利用……ですね」
ウチダは、その通りと答えた。
ネオフロンティア時代最終楽章と謳われているこの時代――人類は、かつての太陽系を取り戻し、さらなる発展を遂げるために、様々なプロジェクトを打ち立て、実行に移していた。
十四年前、球形生命体によって太陽系のいくつかの惑星が消滅した。そのため、太陽系の範囲が極限まで狭まった。
そこで、これまで技術の随意を結集させ、太陽系に浮かぶ小惑星を星の核として使用し、そこから人工的に惑星を造り出そうとしたのである。
現在はまだ、ペーパープランではあるが、準備が整い次第計画が実行される段階にきているのである。
そして、それを並行するように、惑星が完成した暁には、現在建造中である宇宙エレベーターをそれぞれの惑星間に繋げ、人類が自由に移動出来るようにするという計画も始動したのである。
半永久的に発電出来るシステムを兼ね備え、さらに人物、物資を運ぶエレベーターは、人類の移動手段としても正に最終形態であり、完成に期待がかかっているのである。
そして、十四年前から確率していた大阪にある民間企業との共同開発によって完成したコスモネット――これを人工惑星とも繋ぎ、太陽系全ての惑星間の通信ネットワークシステムを完成させる――。
これらのプロジェクトを総称してネオフロンティア時代最終楽章というのだ。
そして、最後に、ゼロドライブ航法である。
光そのものを推進力として、光速のスピードで移動が可能になる手段――マキシマオーバードライブまた、これを利用した武器の開発――これらが十四年前から行われていたものだ。
その発展形がゼロドライブ航法なのである。
だが、これらを人類が完全掌握したとは言い難かった。
ネオマキシマオーバードライブを搭載した心臓母艦を異星人によって乗っ取られ、それによって一つの島を壊滅的な被害を被ってしまったこと、ネオマキシマ航法の次世代航法として期待されたゼロドライブ航法――その試験飛行で一人が時空の彼方へ消え去ってしまったこと、さらには、始めてマキシマオーバードライブを搭載して実験した時に、禁断の技術と評され、謎の浮遊島と機械人形に破壊されそうになったこともあった。
やがて、これが禁断の武器として一時期封印されたこともあるなど――人類には身に余る技術であると長年放置されてきた。
だが、それでも、ツバサが憧れるアスカ・シンがゼロドライブ航法による決死の試験飛行で活路を見出したことで、研究が飛躍的に進んだのだ。
「ツバサ君。これから君に携わってほしいのは、宇宙エレベーター建造のための管理官と、ゼロドライブ航法の完全掌握を手伝うことだ」
ウチダの言葉にツバサは、力強く頷いた。
ようやくだ、ようやく僕もそこに携わることが出来るんだ、とツバサは長年の夢が実現できる瞬間を感じ取っていた。
宇宙エレベーターももちろんだが、憧れであったアスカが携わったゼロドライブ航法の完全掌握――これを研究する人々にとっては最大の壁。机上の空論かと言われていた技術を実用段階に持ち込むことが出来れば、時空の彼方への行き来も可能になり、新たな開拓地を見出すことも出来る。
そして、出来るのなら、アスカが向かったとされる場所へ行き、アスカを探し出せるかもしれないのだ。
それはツバサだけではなく、アスカのかつての仲間たちの悲願でもあった。
だからこそ、人々は、ツバサに期待を寄せているのだ。
ツバサは、自分に課せられた責任の重要性を再確認していた。覚悟を持った瞳、まさに少年とは思えない――立派な研究者の顔だった。
ウチダは、ツバサの顔を見つめながら、感傷に浸っていた。
「いやはや……君はすごいな」
ウチダがふと言葉を漏らす。
「この歳で、これからの人類のことを自分自身で考え、実行するなんて昔じゃとても考えられなかった。ましてや私自身とは正反対だ」
ウチダがそう言うと、ツバサは慌てて言った。
「そんなことはありませんよ。副参謀だってずっとTPCに務めていたんでしょう? それは自分でやりたいことがあったからなんでしょう?」
ツバサがそう尋ねると、ウチダは、笑いながら否定した。
「いやいや、違うよ。私は父の言い分に従っただけさ。まあ、確かにこれには興味はあったが、自分の判断でここで働こうとは思わなかった。父が私に行け、と言わなければ、決断もすることなく、流れるように生きていたかもしれない」
全て父の一言のおかげなんだ、とウチダは言った。
ツバサには分かる気がした。
自分も、ここに来る時に、父――ダイゴの言葉に押されてここまで来た。やはり父親の言葉は偉大なのだ。
「いいお父様だったんですね」
ツバサがそう言うと、ウチダは少しだけ頭を垂れた。
「まあ、尊敬はしているね。ただ最近ボケてしまっているけど、やたら私や兄弟の仕事には口出ししてくるから、まあ、五月蠅い親父ではあるかな」
ウチダはそう言って笑った。ツバサも、
「でもいい人ですよ。僕の父も僕のやっていることに何かと心配してアドバイスとか言ってきますからね」
と、付け加えつつ笑った。
そして、TPCの管轄内にある施設の中に車は入っていった。
しばらく進むと、宿舎らしき建物が見えてきた。車は、宿舎の前に止まった。
「着いたぞ。ここが、これから君が四年間――君が十四になるころまで暮らす家だ」
宿舎、とだけあって平均的なものだと想像していたが、これは中々大きかった。
以前、コスモネットで調べたことがあったが、地球の高層マンションという高価な建物と対して変わらない。
「まあ、ここには研究者も多く暮らしているからな。部屋に研究できる環境を整えている分、部屋は広く作られている」
と、ウチダは説明してくれた。
「さて、今日は、荷解きをして終了だが、明日から、早速だが研究員として存分に君の能力を奮ってもらう。少年だからとて、私は、贔屓はしないからな。監督代理として、君を含め全ての研究者を監視しているから、覚悟するように」
ウチダは、力強く言った。
ツバサは再度敬礼して、
「激励の言葉として有難く頂戴いたします。これからよろしくお願いいたします」
と、言った。
ここからツバサの夢が始まったのである。
*
マドカ・ダイゴの記録が少ないように、同様に息子であるマドカ・ツバサの記録は情報局でも極端に少ない。
情報局の記録によると、マドカ・ツバサが研究員としてTPCに携わったのは、わずか一年弱であった。
彼は、一年後、十五回目の『アスカ記念日』に死亡したと記録されたからである。
*
4.
ツバサが特別研究員として、地球に滞在してから一年の時が過ぎた。
ツバサはすっかり地球の重力にも慣れ、地球での当たり前に着々と慣れていった。
火星とはまた違った環境に、最初は焦ったが、ツバサの環境適応能力の高さからか、すぐに馴染むことが出来た。
研究は一年では上出来といえるほど進んだ。
宇宙エレベーターの建造の際に外部からの攻撃に備えるための特殊シールドの開発計画の推進することが出来た。
これによって、防衛上の困難性を事実上回避できることが出来るようになった。
そして、科学局では、S‐GUTS科学班主任のナカジマ・ツトムと共にゼロドライブ航法によって時空の彼方へ飛ぶ際にどの時空へ飛んでいくのかを計算式で割り出すことに成功した。
まだ、机上での計算だが、これが各国の議会や研究者会議で賛成を得られれば、ゼロドライブ航法の掌握に一歩近づいたことになる。
だが、一研究者の提唱した理論が完全に理解されるまで幾年の月日がかかる。そもそも実験そのものが危険なのだ。計算式が本当に机上の空論かもしれない。
そもそも、ツバサが生きている頃に実現できるかは分からない。だが、ツバサが提唱した説に多くの研究者が修正してくれれば、それは不可能なことではないはずだ。
もしかしたら、残りの三年でその方法を見つけることが出来るかもしれない、とツバサは楽観的に考えていた。
だが、それもつかの間だった。
十五回目の『アスカ記念日』。
この日は、自分の研究に集中しつつも、毎年恒例のヒビキ総監の演説を聞いていた。
他の職員たちは、殆どがモニタールームへ移動した中、ツバサは、手を止めたくない一心で、黙々と研究を進めていた。
その時だった。
遠くから急ぎ足でこちらへ向かってくる人影が見えた。
ツバサは、気になってその方に顔を向けた。
「あれは……」
見間違えるはずがなかった。
一年の間、何度も顔を合わせている人だった。常に近くにいて、ツバサを含め、多くの研究者を監督していた人。
「ウチダ副参謀……!」
ツバサもウチダの元へ駆けた。
「ああ、ツバサ君か! ここにいたのか!」
「副参謀、どうしたんですか? そんなに慌てて……!」
ウチダは息を切らしていた。どうやらずっと走ってきたらしい。額には汗が流れていた。
ツバサは、持参していた水をウチダに渡そうとした。ウチダは、首を横に振って、結構と言った。
「それで、どうなされたんですか? 僕の研究に何か問題でも?」
「違うんだ! 研究のことではない」
「では?」
「君に最悪のニュースがある」
「最悪の? ニュース?」
ウチダは、かなり迷った表情をしていた。言うべきか言わないべきか、ずっと迷っていたが、だが、彼の為には言わなくてはいけないことだろう、と決意してここまでやってきたのだ。
「今、火星から連絡があった。……火星基地マリネリス及び火星街が、球形生命体の襲撃を受けたとのことだ」
それを聞いて、ツバサの時間が一瞬凍結した。
今まで頭の中で描いていた理論や計算が全て抹消され、頭の中が空っぽになっていった。
言葉による理解がその時だけは、出来なかった。
気づけば、ツバサは両膝をついていた。
「だ……大丈夫か?」
ウチダがツバサの体を倒さないように支えた。
ウチダの体温でようやく我に返ることが出来た。
「ああ……ええ……何とか」
ツバサは、頭の中で整理を開始した。
火星が怪獣によって襲撃された。
それは、ツバサが生まれてきて今まで一度もなかったことだった。
十四年前の球形生命体の襲撃を最後に、人類に大きな侵略は一切なかった。時たま、地球で地下に住む怪獣が地上に現れて、それを追い払うということはニュースで度々見たことがあったが、それ以外に異星人の襲撃や怪獣による大規模侵攻なんて一つもなかったのだ。
ましてや火星には何もなく、ずっと平和だったはずだ。それがどうして……?
「火星は甚大な被害を被ったそうだ」
「行方不明者は?」
ツバサが問うとウチダは冷静に答えた。
「今、情報局や警備局らでそれらを調べているところだ。今のところの連絡によると、君も知っているだろうが、火星には万が一に備えて地下に避難シェルターがあるが、ほぼ全員がそこに避難できているようだ」
「そうですか……よかった」
だとすると、両親も、友人たちも皆無事である可能性が高い。ひとまずツバサは胸を撫で下ろした。
「被害は抑えられたが、戦闘機やシャトル、発着場が全壊したそうだ」
となると、火星への行き来が不可能になったということだ。エレベーターは、まだ開発段階で実用化されるまでまだ時間がかかる代物だ。
「向こうの特務チーム……S‐GUTSマーズはどうだったんですか? 彼らがいたのに迎撃出来なかったんですか?」
「もちろんすぐに迎撃に向かった。球形生命体は迎撃出来たが、どういうわけか、奴らの裏を欠いて怪獣が一気に戦闘機やシャトル、発着場を破壊したそうだ」
「そんな……」
ツバサは、肩を落とした。
怪獣が裏をかいた? つまり、球形生命体の行動の裏を突いたことになる。
そんなに用意周到な怪獣がいるのだろうか? そもそも一体怪獣はどこから来たのだろうか。火星のどこに怪獣が隠れられる場所があるというんだ? 地下にしても地上にしても、マリネリスのレーダーがとらえられないはずがないのに、一体何故?
ツバサの脳裏に様々な疑問が浮かぶ。
今、自分は何をすべきなのか、自問自答していた。
今は、詳しい情報が来るまで待機しているべきなのか、それとも、自ら情報を集めるべきなのか……いや、そんな独断をウチダ副参謀含めて許してくれるはずがない。
様々な考えが頭に浮かび、ツバサ自身ではもはや処理できるものではなかった。
ツバサは混乱していた。
ウチダが色々言葉をかけてくれているが、ツバサの耳には一切届いていない。
そんな中だった。
ツバサの整理しきれない考えの裏から、それらを吹き飛ばすように、鮮明な考えが、脳裏に過ったのだ。
火星に戻って現状を把握しなければ――
今までの考えよりも鮮明な考えだった。まるでガラスを割れたように、衝撃を受けた。はっきりとそれが浮かび上がってきたのだ。
ツバサの中に迷いが無くなっていた。頭の中で閃いた瞬間――それに酷似している現象だとツバサは確信した。
ツバサは、ウチダに礼を言うと、駆けだしていた。
「あ……ツバサ君! おい! 戻りたまえ! 君は待機していろ!」
もはや、ウチダの――上の言葉ではツバサを止めることは出来なかった。
ツバサはTPCの施設を飛び出し、近くを走っていたタクシーを捕まえ、空港へ向かった。
空港へ着くと、ツバサは時計を確認した。
確か、この時間帯に火星へ向かうシャトルがあったはずだ、とツバサは思い出した。
ツバサは時刻表を除いた。良かった。登場時刻までまだ十分ある。
ツバサは、急いでチケットを購入すると、飛び乗るようにシャトルへ駆けて行った。
どうやらツバサが最後の乗客のようだった。他の乗客はツバサを怪訝な顔で一瞬見つめると、すぐに目をそらした。
だが、今のツバサにはそんなことなど気にするほど余裕がなかった。
シャトルは定刻通り、出発した。
火星まで、定刻通りなら三時間弱で到着する。
ツバサは、周りを見回した。
皆、火星へ行こうとしている――つまり、ツバサと同じく、家族の安否が気になる人たちなのだろう。
一秒でも早く、家族の無事を確認できなければ、研究なんて手につかない――そんな風に考えているのだろう、とツバサは思った。
ウチダ副参謀には悪いことをした、とツバサは反省していた。
だが、今は、家族の安否を確認してから、言い訳や謝るセリフを考えておこう。今は、とにかく、家族だ。
数多の修羅場を切り抜けてきた両親だ。多分、無事だとは思うが、それでも心配だ。
とにかく落ち着こう――。
ツバサは座席にもたれ、深呼吸をする。
……頭が軽くなったような気がする。
そして、それと同時に、ふと疑問に思った。
あれ、僕はどうして火星に戻ろうしているんだ?
いや、別に疑問に思うことじゃない。家族の安否を確認するためにはこうするしか――火星の情報なら、情報局に問い合わせれば分かったのでは?
いや、だって突然の襲撃なんだぞ。家族がもし死んでいたらと思うと、気が気でないじゃないか――火星には地下シェルターがあって、ほぼ全員が避難したと副参謀が言っていたではないか?
いや、待て。このシャトルの人たちはどうだ。この人たちだって家族の安否が不安だから乗り込んだんじゃないか! ――そもそもこの事態に何故、シャトルが平常通りの運航をしているのだろうか?
疑問に答えようとすると、それに疑問で帰ってくる。
どういうことだ? と、ツバサは頭を抱えて考えた。
若干は混乱していたかもしれない。しかし、それでも、自分が間違った判断をしたとは言い難いのではないか? きっとそうだ。自分の判断は間違っていない。
――本当にそうなのだろうか?
そうだ。今までの自分の行動は……何もかも間違っているのでは? いや問いかける必要もない。
僕の判断は、明らかに間違っていた! いや、違う! そもそも僕は一体、誰の考えに従ってここに来たんだ?
脳裏に過った考えに従ってきたじゃないか……。なのに、僕はどうして自分の判断に疑問を感じていると思っているんだ?
まるで、火星に戻るという考えが僕の考えじゃなかったようじゃないか!
ツバサは、窓の外を見た。
シャトルはおろか、エレベーターの建設作業に従事する人すら、見当たらない。間違いなく、このシャトルは誰もが避難した宇宙空間――今まさに襲撃されてもおかしくない危険領域を航行しているのだ。
しまった……、とツバサが思った時には、もう遅かった。
眼前に、巨大な顔が見えた。
明らかに巨大な生物だった。鳥? いや違う。確かに翼はあるが、それは鳥ではなかった。
鋭利な爪に、尖った嘴。その生物の大きさは、シャトルと同等か、いや、それよりも大きいかもしれない。
それはほんの一瞬だった。ツバサの眼前に閃光が迸った。
*
ユミムラ・リョウは、マリネリスに赴いていたコウダ参謀と共に、昨年と同じように、カリヤが作った特製コーヒーを飲みつつ、休憩スペースでヒビキの演説を聞いていた。
毎年のように相変わらず、と口々に言いながら、ヒビキの熱のこもった演説を聞いていた。
今年は去年ほど感傷的にはならなかった。それ以上にアスカへの想いをより強く感じ、受け止めていた。
その中で、リョウとコウダの前に座る一人の隊員服をラフに着こなしている男がいた。
男は、テーブル上に表示された球体のモニターをタッチしながら何かをしていた。雰囲気からして遊んでいるようにも見えた。
「誰だ?」
コウダが、尋ねた。リョウは、新人です、と答えて、男の名を教えた。
タイガ・ノゾムであった。
タイガは、日程通りに、ZEROを卒業し、晴れて今季からS‐GUTSマーズの隊員として入隊することになった。
破天荒な性格ではあったが、リョウはどことなく、その雰囲気がアスカによく似ていて、内心親心とはいかないものの、目をつけていたのだ。
タイガが席をはずし、いなくなった直後だった。
突然、警報音が鳴り響いたのだ。
ここ十年以上鳴るはずのなかった警報音が施設に響き渡った。
職員が一斉に走り出す。リョウとコウダも、すぐさま立ち上がり、司令室へ駆けて行った。
その時、リョウは、去年の会話を思い出していた。
もしかしたら、これが始まりなの? と、あるはずのないそれからの未来を予想していた。
火星基地マリネリス司令部。
ここにS‐GUTSマーズの作戦司令室があった。
隊員は隊長のリョウ、副隊長のカリヤ、科学班主任のナカジマやタイガらを合わせて、計八人。そして、複数人の職員も任務としてチームを支えていた。
リョウは作戦司令室に入ると、ナカジマがすでに火星に迫りくる敵の正体をつかんでいた。
スクリーンにその正体が映し出される。
「スフィア……」
カリヤの予想は当たった。球形生命体スフィアが群れを成して襲撃してきたのだ。
スフィアは、マリネリスを一斉に攻撃開始した。スフィアの攻撃は、素早く、迎撃システムは展開される前に悉く破壊されていった。
基地壊滅は時間の問題だった。
だが、スフィアの思惑は完全に瓦解されることになった。
マリネリスには、戦闘機を格納するためのハンガーが無数にあった。その中の一つ――七番ハンガーからガッツイーグルα号が発信したのだ。
当然、リョウは出撃命令を出していない――明らかな無断発進だった。
だが、リョウは、何も言わない。
α号の動きは、基本に則らない、自由な飛行だった。動きが独特で、スフィアもこの動きについてこれない。α号のジークが確実にスフィアを撃ち落していく。
α号が渓谷に入り、スフィアに追われる形になった。だが、α号は落ち着いていた。
渓谷の行き止まりに差し掛かり、一気に、噴射をかけて直角に上昇していった。洋装外の動きにスフィアは止まることも出来るに渓谷に激突して四散した。
α号の動き――ハチャメチャだが、どこか懐かしい感覚がナカジマやカリヤにはあった。
そう、まるでアスカが似たような操縦で相手を翻弄していた時のように。
「誰が乗っているんだ?」
コウダが尋ねた。
カリヤとナカジマはどうやら知らないらしい。だが、リョウは、通信機から、その操縦者に向かってアドバイスした。
「タイガ。実践において最も大事なことは、必ず生きて戻ることよ」
タイガ・ノゾム。彼が操縦していたのだ。
あの性格からあの操縦。確かに、誰の目から見ても納得できるものだった。
タイガは、リョウの言葉に従った。α号はさらにスフィアへ追撃をつづけた。
上空へ急上昇しながらも、一体一体確実に撃ち落していく。そして、スフィアが急降下すると同時にα号も一気に急降下していった。
だが、その時だった。
α号が謎のロストをした。
「どうした? 一体何がどうなっている!」
コウダが叫ぶ。
モニター上に出た「LOST」の文字。カリヤがモニターや映像からの情報から、タイガが別の次元へ消えたと推測した。
まるで、アスカがいなくなったように。
「タイガ……タイガ!」
リョウが通信からタイガを叫ぶように呼ぶ。だが、通信からタイガの声が聞こえることはなかった。
タイガがいなくなったと同時に、残ったスフィアが一斉に姿を消した。
「どういうことだ? 奴らは一体、何が目的なんだ?」
基地は守られたのか? と誰もが疑問に思っていた時だった。
それが第二波なのか分からない。レーダーに謎の物体を感知した。
「北東に七キロの地点に謎の生命反応です!」
ナカジマが叫んだ。
その影は、非常に巨大だった。レーダーからの影を目測すると、六十メートルはした。
「なんて大きさだ……」
カリヤがレーダー越しにそう言った。
「この様子だと、間違いなく怪獣反応です、隊長!」
ナカジマがリョウに向かって叫んだ。
「怪獣はどこに向かっているの?」
リョウの質問にナカジマはレーダーから怪獣の進路を予測した。
「今は北東七キロの地点で静止中です」
「こちらの出方を伺っているのか……?」
カリヤがナカジマの予測からそう予想した。
リョウは、考えていた。
タイガがいなくなった。タイガは一体どこへ向かったのか、まだそれすら調べることも出来ない状況だった。だが、相手は、それを調査することすら許してくれない。
リョウは歯ぎしりを噛みながら命令した。
「とにかく、時間がないわ。ナカジマ隊員とカリヤ隊員はわたしと一緒にガッツイーグルにて出撃。他の隊員たちはサポートお願い」
リョウの命令に、隊員達は、拳を握り、親指を立てた。
「ラジャー!」
「待ってくれ! 俺も行かせてくれ!」
コウダは、リョウを引き留めると、そう進言した。
「ですが……」
「参謀として、ここで黙って見ているわけにはいかない。俺がお前らと一緒に戦ったのは十分知っているだろう?」
コウダは、リョウを説得しようと必死だった。
コウダは、アスカと組んで出撃する機会が多かった。それ以上に、今回のことを見過ごしたくはないのだろう。
リョウは、分かりました、と頷いた。
ガッツイーグルは、それぞれα、β、γ号に分かれて出撃した。α号にコウダ、β号にカリヤとナカジマ、そして、γにリョウがそれぞれ乗り込んでいた。
怪獣の姿が見えてきた。
「鳥型の怪獣……?」
コウダがそう呟いた。
それを聞いて、誰もがそう疑わなかった。
両手に翼。そして鋭い鉤爪。鋭い嘴に丸く、鋭い眼光。
リョウやカリヤは今まで見たことがなかった怪獣だった。
「怪獣の骨格や姿からして、これはどう見ても、地球環境に適した怪獣ですねえ」
ナカジマが、怪獣の映像を見ながら言った。
「それじゃ、元々は地球にいた怪獣だっていうのか?」
カリヤが問うとナカジマは、
「まだ、断定はできませんが、この姿を見る限りは、どう見ても宇宙の環境下で進化したものとは考えられないんですよ」
一体どういうことだ、と隊員たちが疑問に思っている中、
「怪獣の映像は確認できる?」
リョウは、ナカジマに尋ねると、
「はい。最大望遠映像を出します」
ナカジマはすぐさま、広角レンズによってとらえた怪獣の映像を出した。
肉眼で見るより、はっきりと怪獣の姿が分かる。より鮮明に分析することが可能になった。
ガッツイーグル各機は、上空で怪獣の周辺を旋回しながら様子をうかがっていた。怪獣は、それに対抗してか、ガッツイーグルを目視しているが、特に動き出す気配は見せなかった。
それを見て、リョウは、この十数年間、怪獣という言葉とは縁がなかったが、まさか、こうもかつての激動の日々を思い起こさせるような大事態を一気に引き起こしてくれたわね、と怪獣に向かって心の中で叫んだ。
ふと、ここでカリヤが何かに気が付いた。
「ちょっと待ってくれ? この映像、拡大できるか?」
カリヤがナカジマに向かってそう叫んだ。
「出来ます。今出します」
ナカジマが、すぐさま映像を拡大する。
「カリヤ隊員、一体どうしたの?」
リョウの問いかけと同時に拡大された怪獣の映像が映し出された。
「ああ! これって……!」
ナカジマは映像を先に見たためか、先に気づいたようだ。
「……リョウ、映像をよく見てみろ」
「え……?」
リョウはカリヤに言われた通りに拡大された映像を見た。
「これって……」
それは見てリョウもすぐに理解した。
怪獣の関節部分や四肢の繋ぎ目に、銀色の物体がこびりついていた。いやこびりついているというより、怪獣と融合していると言った方が正しいかもしれない。
銀色で、所々に六角形の不気味な文様があった。
それは、リョウとカリヤがかつて何度も目にし、何度も戦ってきた相手だった。
「スフィア……」
リョウが呟いた。
「おいおい……ということは、こいつ、スフィア合成獣か!」
カリヤが呆気を取られたように言った。
「じゃあ、もしかして、さっきのスフィアは全部囮だったというんですか?」
ナカジマがそう言うと、カリヤは、ナカジマの予想を参考にして自身の予想を言った。
「スフィアによって迎撃システムを破壊された。つまり……」
カリヤがそう言うと、コウダが続くように言った。
「それを見越しての基地への襲撃!」
この光景を見て、リョウは簡単に決断することが出来た。
リョウは通信機より、指令を出した
「各機に通達! フォーメーションデルタにて攻撃開始! 目標、スフィア合成獣!」
その指令は、ただの攻撃命令ではなかった。これからの行動で火星の命運がかかっている――それだけ重要なものだった。隊員たちは、それぞれラジャー、と叫び、フォーメーションを組みつつ怪獣に急速接近していった。
リョウは、眼前にいるスフィア合成獣を見て、去年のカリヤのやり取りを思い出した。
カリヤが調査したスフィアに似た波長……あれは、やっぱり……このことを意味していたんだ、と。
タイガがいない今、残った自分たちが何とかしなければ……! と、リョウは胸に秘めていた。
それぞれがフォーメーションを崩さずに、ミサイルを含め、ジーク、ボルキャノン、ガイナーを放つ。
だが、怪獣は、攻撃を一回食らった後、羽を広げ、空中へ飛び立ち、第二射を全てよけた。
怪獣は、ガッツイーグルの動きを察知し、裏をとった。
「しまった!」
敵は裏を取った。だが、機体に向かって攻撃することは一切せずに、飛び立った。
「わたしたちは一向に無視ってこと?」
リョウが怪獣を見てそう言った。
「恐らくそうでしょう。さきほどの怪獣のデータも合わせて確認しましたが、そもそも怪獣は迎撃態勢をとってないんです」
ナカジマの分析が各機に知らされる。
「それって……どういうことだ?」
カリヤが問うた。
「分かりません。しかし、奴は我々を相手にしていないのは確かです」
「ちょっと待て、もしかして、怪獣が向かった場所って……」
カリヤが叫んだ。その言葉の続きは、他の隊員にも分かった。
「予想通りだ! あいつ、基地の方へ向かっているぞ!」
コウダが叫んだ。
リョウは、再び命令を下した。
「全機! あいつを何としても止めるわよ!」
「ラジャー!」
ガッツイーグルは全速力で怪獣を猛追する。
だが、一向に距離が縮まる気配を見せなかった。むしろ、距離が離されていっている。
「何てスピードだ! これじゃ追いつけない」
コウダが怪獣の速度に驚きを隠せないようだった。
「だったら、追尾ミサイルで!」
リョウは、γ号に搭載されているミサイルを数発発射した。
自動追尾システムを兼ね備えた高性能ミサイル。速度は怪獣に追いつけるはずだ。
だが、それも無意味だった。
怪獣は、ミサイルを認知すると、急旋回をして追尾ミサイルを振り払おうとした。
乱雑な飛行が、ミサイルの正確な追尾を狂わせているのは間違いなかった。
そして、怪獣が、横へ避けると同時に、ミサイルが怪獣を追尾することなく、地上で爆発四散した。
「こいつ……ミサイルの軌道を全部読んだ?」
ナカジマが怪獣の飛行データを基に計算した結果を見て驚愕した。
「学習しているってこと……?」
リョウが呟く。
「恐らく十四年前からの我々の戦いを分析していたんだろう。中々頭のいい奴になってやがる」
カリヤは、離れていく怪獣の姿を見てそう言った。
怪獣は、マリネリス、そして火星街の上空を一回旋回すると同時に、目から怪光線を発射した。
光線は基地の戦闘機を格納しているハンガーに直撃し、そしてその直後に大きな轟音と共に爆発した。
突然の怪獣の襲撃にTPC職員たちは適切な対応が出来ずに全てが後手とまわってしまった。
反撃など出来るはずもなかった。スフィアの攻撃ですでに迎撃システムは意味をなさないのだから。
怪獣は徹底的にハンガーを攻撃していく。ガッツイーグルが到着する頃には、基地のハンガーの大半が壊されていた。
リョウは、基地に残った他の隊員が気がかりだった。
「ユミ隊員、ユミ隊員? 応答して!」
リョウは通信機からオペレータークルーのユミ隊員の名を叫ぶが、司令室から通信が返ってこなかった。恐らく、攻撃を受けたと同時に司令室から離れてしまったかもしれない。
リョウは、ユミが持っているW.I.Tに通信を入れた。
「……はい! こちらササベ!」
ユミの声だ。良かった、無事のようだ。
「ユミ隊員? 無事だったのね!」
「はい! すぐに避難指示が出たので、職員たちとシェルターへ移動したんです。今は住民の避難を手伝っています」
「分かったわ。そのまま任務を続行して。わたしたちは何としてもあいつを止めるわよ!」
隊員たちは、一堂に、ラジャー、と叫び、任務を続行した。
だが、リョウの鼓舞は、その場限りの気合いにしかならなかった。
怪獣は、こちらの機体の攻撃を全て読んで、攻撃を避けた。
その動きは、まるでアスカやタイガが操縦しているような動きだった。機体を急旋回するにも大幅なGがかかる。咄嗟の動きで相手を翻弄することは不可能に近かった。
無力だ……なんて無力なんだ……! と、リョウは自分たちが怪獣に対して対抗策にもなっていないことを悔やんだ。
それでも、目の前にいる怪獣に攻撃を食らわせて止めなくてはならない。だが、攻撃は全て避けられる。無意味な行動だった。
こんな時に、あいつがいてくれれば……、とリョウは内心思ってしまった。
だが、それは、甘えであり、裏切りだった。
決して思ってはいけない言葉だった。
もうアスカはいない――ウルトラマンはもういないのだ。ウルトラマンを――アスカを頼ってばかりでは、人類は前に進めない。それはアスカに対する、いや仲間たちや人類に対しての裏切りだった。
だが、それでももうそれだけの弱音を吐かなくてはならないくらい、無力さを痛感させられているのだ。
怪獣は、S-GUTSマーズの攻勢を嘲笑うかのように、マリネリスのハンガーとそして、惑星間の唯一の交通網であるシャトルと発着場が破壊された。
そして、そのまま飛び立った。
「どういうことだ。基地のハンガーばかりを壊しやがった。奴は一体何が目的だったんだ?」
コウダが怪獣を見上げながら言った。
「ちくしょう……これじゃあ、地球との物資搬入がほぼ不可能になってしまった……」
カリヤは、頭を下げた。
これは、完全な敗北だ。何一つ応戦することも出来ずに地球への生命線が殆ど断ち切られた。
隊員たちが項垂れている。だが、リョウだけは、上を向いていた。
「駄目……。駄目よ! 全機、怪獣を追って!」
リョウの叫びに隊員たちが目を覚ましたかのように顔を上げた。
「どうしてだ、リョウ。今は、人々の安否が大事だろう?」
カリヤが、問うた。
「違う! まだ終わってない! あの方角……あいつ、地球へ降り立つつもりよ!」
「なんだって!」
カリヤは怪獣が飛び去った方角を見た。ナカジマは、怪獣の飛行ルートをデータに入力し、怪獣の降下予測ポイントを計算した。
「ああ……、このままだと、メトロポリス湾岸部に降り立ちます」
ナカジマがそういうと、カリヤは、
「そこは確か、今、TPC各国の首脳会議が行われているはずの施設があるはずだ!」
リョウは、カリヤの言葉など聞いてはいなかった。カリヤの言葉を遮るように再び指令を下した。
「ガッツイーグルを合体させ、ネオマキシマを始動させるわ! 何とかあいつの地球侵攻を阻止するわよ!」
リョウの指令の元、ガッツイーグル三機を合体させた。三機が合体すると、ネオマキシマを始動することが出来、その速度はマッハ五十まで跳ね上がる。
恐らく、怪獣の速度はそれと同等かそれより少し早い。立ち合いをうまくやれば怪獣を止めることが出来るかもしれない、とリョウは考えたのだ。
ガッツイーグルはネオマキシマを始動させ、怪獣のいる場所まで飛んだ。
怪獣は、真っ直ぐに地球へ向かっていた。
既に怪獣出現の命令が出ていたために避難したのか、普段いるはずの作業員や宇宙船はその航路には一つもなかった。
この状態なら、トルネードサンダーを打って足止めが出来る。
――そう思った矢先だった。
ナカジマは、レーダーに一つの機影を確認した。
「何だ、これ!」
「新しい敵か?」
カリヤが尋ねた。
「いえ、敵じゃありませんね。これは……そ、そんな馬鹿なことが!」
「どうしたの、ナカジマ隊員。何があったの?」
リョウの問いかけに、ナカジマは震え声で答えた。
「た……大気圏近くに地球惑星間シャトルが航行しているんです!」
「何ですって!」
リョウが驚愕の言葉を漏らした。
「馬鹿な! こんな非常時にシャトルを運航するなんてあり得ないはずだ!」
カリヤの言う通りだった。
非常事態宣言が発令された――それはつまり、TPCの研究部門、民間企業も含め、全ての業務を停止させ避難するという一つの義務だった。その間は、TPCの戦闘部隊が戦闘をスムーズに行えるように、全ての企業や一般人は例外を除いて協力、または避難をして一切の邪魔をしてはいけないという暗黙のルールがあった。
だが、あのシャトルはその義務を全て無視して強引にシャトルを航行させたことになる。
だが、それもまたあり得ないことだ。
では、一体誰がシャトルを運航させた? それが最大の疑問になる。
だが、ナカジマはそれよりももっと重大な事実を突き止めた。
「あのシャトルの中に少なくとも七十名ほどの乗客がいると思われます!」
「拙いわね……!」
怪獣の向かっている先にシャトルが航行している。
このままでは、シャトルは怪獣に為す術もなく轟沈してしまう。
通常、一般のシャトルには武装は一切ない。その代り、航路を離脱して、近くの惑星間に緊急着陸するためのサポートシステムがあった。
だが、それは、外部から操作することは出来ない。シャトルを動かしている機長がシステムを発動させなくてはならないものだった。
リョウは、すぐさま、シャトルの通信回線を開き、パイロットに呼びかけた。
「こちらS‐GUTSマーズ隊長のユミムラ! そこにいるパイロット? 聞こえたら応答してください! 怪獣がそちらへ向かっています。直ちに緊急離脱シークエンスをとってください!」
リョウが叫ぶも、相手から応答はなかった。奇妙なノイズだけが響き渡り、シャトルは一切の動きを見せなかった。
「シャトル! 応答してください! このままでは全員死んでしまいます!」
リョウは何度も呼びかけた。だが、シャトルからは一向に応答がない。
パイロットも乗客も逃げたのだろうか? と、リョウは考えたが、タヤマはすぐにそれを否定した。まだ乗客は誰一人として脱出していないという。
「シャトル! 応答してください! シャトル!」
「リョウ! もうだめだ!」
カリヤがリョウの必死の呼びかけを止めた。
「怪獣の進路を強引に変更するしかない。全火力を全て怪獣に集中するしかない!」
カリヤの提案は強引な方法だった。だが、シャトルが自ら動かないとなると、もはやシャトルではなく、怪獣の動きを変えるしか方法はなかった。
リョウは、覚悟を決め、全ての攻撃を怪獣に集中するよう命令した。
光線やミサイルの雨が怪獣に降りかかる。
怪獣は、またも攻撃を見切ったのか、大半を躱す。流れ弾が当たっても、それは怪獣には何らダメージになっていないようだった。
「くそっ! 駄目だ!」
カリヤが、攻撃を発射しながら言った。隊員たちは苛立ちを隠せないようだった。
怪獣とシャトルの距離が狭まっていく。
「駄目……」
怪獣に良心は一切ない。目の前のシャトルも怪獣にとっては邪魔者も同然だ。
「逃げて……」
迷いというものが怪獣にあるのだろうか? という無駄な疑問がリョウの頭の中に過った。今まで戦ってきた怪獣に迷いはおろか、人類に対して同情心もなかったではないか。無意味なことだ。
「殺さないで……」
今までも多くの名も知らない人間たちが死んだ。命乞いなど怪獣が聞き入れるわけがないというのは分かり切ったことだ。
だが、それでも――。
「やめてええええええええええええええええええええええええええ!」
リョウは叫んだ。
もう二度と失いたくない。いなくなっていくのなんて見たくない。誰かが悲しむ姿はもう見たくないのに……!
それでも、そんな思いすらも怪獣は無残に打ち砕く。
宇宙空間に響き渡るように、その空しく、渇いたリョウの決死の懇願は――届くはずもなく。
奇跡など起きなかった。起こる筈もなかった。
頭を項垂れるリョウ。全てが砕け散った。
リョウは、気力のないその手で通信を取った。
「……こちらS‐GUTSマーズ隊長ユミムラ。本部、応答願います」
『こちら本部』
なんて言おうか、とは考えられなかった。不思議と頭が整理できていた。嘘偽りを言うことなんて出来るはずもない。
リョウは、頭に浮かび上がった言葉をそのまま口にした。
「……大至急メトロポリス国際空港役員幹部、及び、TPC最高司令部に伝えてください。空港より出発した地球火星間定期シャトルが、怪獣によって破壊され、恐らく、乗客全員が死亡したと推測されます」
5.
メトロポリス湾岸部に位置する場所に、巨大な会議場がある。ここでTPCの参謀クラスや各国の首脳陣の会議が時より行われており、今まさにそれが終了したころであった。
そこに窓際沿いの廊下を急ぎで歩く一人の女性がいた。
イルマ・メグミ。
TPC情報局参謀を務める数少ない女性参謀だ。
イルマは、ある人物に会うために事前に時間合わせを行っていた。その時間にようやく、その人物と会うことが出来ることになったため、イルマはその人物がいる部屋へ急いでいた。
イルマは、その人物にどうしても伝えなくてはならないことがあった。
他の参謀には決して話すことが出来ないほど重要な伝言――自分が絶対に信頼できる人物にのみ話そうと決めていた。
いや、そうするように指示されたのだ。
イルマがその部屋にたどり着いたとき、中に人のいる気配がした。どうやら、先に到着して待たせてしまったようだ。
イルマは、軽く扉をノックすると、中から豪快な声が聞こえた。
イルマは、少しだけ肩の荷が下りたように感じ、緊迫した感情は少しだけ和らいだ。
「失礼します」
と、イルマは入り際に言った。
そこに、窓の外に見える水平線を眺めながら、両手を後ろに組んで待っている男がいた。
「やあ、イルマ参謀。お待ちしておりました」
男は、イルマが入ってくるなり、イルマに歓迎の言葉を述べた。
「申し訳ありません、総監。私からお呼び出ししたのに、当の本人が遅れてしまいまして」
「いえいえ。待っている間、海を眺める機会に巡り合えましたから、何てことはないですよ」
イルマは、その男――ヒビキ総監の言葉に微笑した。
互いに椅子に座る。
「こうしてみると、以前も二人で話をしたことが何度かありましたな」
ヒビキが突然昔の話を切り出してきた。
もちろん、イルマもそれを覚えている。
「ええ、そうですね。確か、F計画に関する情報をお伝えしたんでしたね」
ええ、とヒビキは頷いた。
かつて、光の巨人の砂――通称アークを用いて人造のウルトラマンを造り出そうとTPC警備局が主流となって極秘裏に計画が進められていたことがあった。その際に、イルマはヒビキにその情報を伝えていた。
「あの頃は、私がまだS‐GUTS隊長で、イルマ参謀とは位が逆転していましたね」
「そうですね。でも今は、あなたが私たちのトップですから。時間が過ぎていったんですね」
「ははは。まあ、私は今でもあの頃のままですよ。総監の座についてからも、隊員気質が抜けている気配がないですから。きっと他の奴らも同じでしょう」
イルマは、それを聞いて、少しだけ羨ましく感じた。
「ああ、失礼。世間話をしている場合ではなかったですね。確か、イルマ参謀から重要な情報があるとか」
「ええ。これはまだ誰にも知らせていないので。総監の胸の内に置いておいてくれると有難いです」
「ふむ。他の人には言わなくても大丈夫なのですか?」
「後ほど、私自身が絶対信頼出来る人たちに話すつもりですが、ですまずは総監には是非とも知っていただきたいことがあるのです」
イルマの説明はどことなく必死さをヒビキは感じ取っていた。イルマが若干だが、汗を掻いているのが分かった。
以前にF計画を伝えていた時ほどの冷静さが見られない。普段なら、冷静さを欠くほど声を震えさせるなんて今まで見たことがない。
イルマ参謀をここまでにするということは、よほど重大な情報だということなのだろう。
「情報局で記録されるデータには、作成すると同時に必要のないトラッシュデータが生成されるのはご存知だと思いますが……」
イルマの前ふりにヒビキが確認する。
「ええ。ですが、それらのトラッシュデータは、データ保管時にシステムによって自動的に消去されるものですよね」
その通りです、とイルマは返す。
「それと、これもご存じのことかと思いますが、システムがトラッシュデータ消去する容量が決まっていて、それを超えると、いくつかのトラッシュデータが残ってしまいます」
「ええ。ですから、残ったデータも管理官の下で一時的にデータを移し替え、システムが再びデータ容量を回復させた後で、またデータを元のフォルダに移動させてデータ消去を開始する仕組みのはずですが……」
それが一体どうしたのだろうか、とヒビキは尋ねた。システムが時々、不具合で一時的
に修理されることはしばしばあるが、それ以上の問題はこれまで一切なかったはずだ。
「実は、先日のことです。丁度私が情報整理の為に管理官と共にデータを閲覧していて、一つだけ、妙なトラッシュデータを発見したんです」
「妙なトラッシュデータですか?」
「トラッシュデータにしては容量がとてつもなく重いデータです」
「それは……」
トラッシュではないということだ、とヒビキは予想した。
「正確には、トラッシュデータに見えるように偽装されたデータです」
「つまり……隠されたデータですか」
ヒビキの問いにイルマが頷いた。
データの隠ぺい――紛れもなくTPC内の何者かが何等かの目的で作成したと考えられる。
上層部にも報告がない――となると、明らかに極秘情報の類を扱ったデータだ。作成した本人に何等かの処罰があってもおかしくない行為だ。
「データの解析は出来たんですか?」
「解析係の職員に個人的に依頼はしてみたんですが……どうやら、特殊なアルゴリズムで組み込まれたロックを二重三重と、厳重に封印されている――ブラックボックス化しているデータだと分かりました」
「ブラックボックス……ですか」
「ごく一部の人間を除いて、総監参謀、閣僚クラスの人間にも閲覧することが出来ない最高機密事項の情報を保管する際に利用しているものです」
つまり、イルマでも閲覧する権限を持つことが出来ない重要データがTPCには存在するということになる。
どうやら、TPC内でもそれなりに裏の姿があるということなのだろう――それはかつてS-GUTSにいた頃からは実感していたことであった。
「今ならヒビキ総監になら言える情報もあるのですが……私もかつてサワイ元総監の元で光の巨人に関するデータを最高機密要項として厳重保管した経緯があります。ですが、これは……」
「――情報局主体ではなく、別の局の誰かが無断で情報局に報告せずにブラックボックスデータを作成し、さらにトラッシュに偽造して保管していたということですか?」
ヒビキの予想は大幅に当たっていた。イルマは、少しの間考えるようにヒビキから目をそらし、そして頷いた。
「データは情報局の方でマークはしています。次にデータを使った端末が現れれば、追跡するように準備はしています」
要するに、後は相手がまた餌に食いつくのを待つだけということだ。
しかし、おかしい、とヒビキは思った。
今までのイルマの報告は確かに重要な情報だ。だが、以前のF計画のような一種の陰謀めいた情報と考えると、これは最重要といえるほどのものではない。
まだ何か、イルマは伝えていない情報があるのではないか? と、ヒビキは感づいた。
イルマは、ヒビキの考えに応えるかのように、説明を続けた。
「問題は、データがいつ作成されたかなんです」
「いつ? というと、かなり前に作成されたということですか?」
イルマは頷く。
「情報局がこういったデータを見逃すはずがないんです。現に最終的な確認のために、データを検索する際に私が自身の閲覧権を用いて、アカシックレコードでデータ検索しているはずなのに、これに気づくことが出来なかったのはおかしいんです」
「一体いつに作成されたものなのですか?」
ヒビキが尋ねた。
「……昨年の『アスカ記念日』の前日です」
「『アスカ記念日』の前日……!」
ヒビキがそれを聞いて、思い出したように言った。
「何か、心当たりがあるんですか?」
イルマがヒビキに尋ねる。
「……偶然かどうかは分かりませんが、私の方でも、昨年の『アスカ記念日』の前日にある報告を受けていたんです」
「ある報告……?」
「S‐GUTSマーズの隊員――かつての部下のカリヤがマリネリスの近くで妙な波長をとらえたという報告があったんです」
「妙な波長?」
「ええ。それを解析したところ、あの球形生命体――スフィアと酷似していたということだったのです」
イルマは、口を噤んだ。
「その後は、波長は完全に消え、それ以降も何も起こらなかったことから、一応警戒はしていたんですが、特に何も起こらなかったのです。そして、今年に入って警戒態勢を解いていたのですが……」
これは偶然なのでしょうか……、とヒビキが問いかけた。
イルマは、ヒビキの言葉を聞いて一つの仮説が真実味を帯びていることを確信していた。
だが、それを説明するには根拠が必要だ。相手に納得させるだけの強い根拠が。
しかし、イルマの根拠は、現実的なものではなかった。
だが、ヒビキなら――今まで光の巨人と共に戦ってきたこの人なら――。私の話を信じてくれるかもしれない。
イルマは思い切って、話を切り出した。
「恐らく、それは……偶然ではないのかもしれません」
「というと……何か証拠があるのですか?」
「確証に至るというほどの証拠はありません。何せ……私が昨夜見た夢が、私の言う根拠ですから」
イルマは、昨夜の出来事を話し始めた。
昨夜のことだった。
イルマが就寝したのが、深夜一時を回った頃であった。
その日、情報局で整理されたトラッシュデータを削除していた。
本来なら管理官にやらせるべき仕事なのだが、責任感の強いイルマは、後で管理官に渡す方が、効率がいいと考え、先に終わらせておこう、と決めて作業をしていたのだ。結果、思っていたよりも多く残っていたトラッシュデータを消すことになり、結局深夜までかかったのだ。
あの謎のブラックボックスデータの解析を含めて考えると、全くといっていいほど成果は出ていない――完全な手詰まり状態だった。
そんな矢先だった。
イルマは、眠りにつくのに時間はかからなかった。
目を閉じて、一呼吸入れた頃には、もう完全に眠りに入っていた。
その時、イルマは夢を見た。
夢の内容を話せば、周りからはそれは何て不思議な夢だ、と言うだろう。
だが、イルマにとって、それは三度目であり、特別不思議に思うことはなかった。
イルマは、夢の中で、彼女に――ユザレと邂逅したのだ。
漆黒の闇に瞬く星々。どこかの草原だろうか、星が煌めいていた。
その星々の下で一人、銀色の一枚服を身に纏い、その流れる髪もまた銀色に輝いていた。
服装と髪型を除けば、姿形、その容姿までもがイルマと瓜二つの女性――それがユザレだった。
ユザレは、三千万年前の超古代文明に生きた女性であり、GUTSに怪獣の出現を予言した。
そして、さらに、邪神の復活もイルマに告げ、そしてイルマは知らないが、マドカ・ダイゴに闇の巨人についての警告もしたことがあった。
ユザレは、未来の予言者に等しい存在だった。
そのユザレが、夢の中とはいえ、イルマの目の前に現れたのだ。
「あなたとまた話をするのは、あなたの世界の時間からして『何年振り』と言えばいいのかしら?」
ユザレは、優しそうな声でイルマに呟いた。
イルマは、もう覚えていないわ、と言いながらも、懐かしさからか微笑んだ。
「どうやら、世界は、一つの試練を乗り越えたようね」
「いいえ。乗り越えていないわ。まだまだ、これからよ。これから、本当の意味で光の巨人が現れなくてもいいような世界を作ることで、本当に世界は試練を乗り越えたことになるのだと思うわ」
イルマは、夜空を見上げた。
だが、ユザレは、イルマの言葉を否定する。
「いいえ。まだよ。まだ、あなたたちは本当の意味でこれから起こる災厄に立ち向かわなければならない」
ユザレは、災厄と言った。
それは、一体どういうことなのだろうか、と問いただしたいだろう。だが、イルマは、今まで経験してきた数々の激戦で培った感から、ユザレが次に何を言おうとしているのかが分かった気がした。
「また、新たな敵が来るというの?」
イルマはユザレにそう言った。
「いいえ。新たな敵というのは間違いかもしれない。これから起こる災厄は、今まで以上に強大で、絶望に満ち溢れている」
「絶望……?」
「そう。光の巨人が、わたしたちが命懸けで守ったものが全て無意味だったと思い知らされるほどに」
ユザレのそれはまるで終末への予言のように聞こえた。
これから来る敵は、ユザレや光の巨人を以てしても勝てない、と遠回しにそう言っているように聞こえたのだ。
「今まで起きた戦いの数々は、全てこれから起こる災厄の為の前準備だった。わたしたちはそれを分かっていながら、目の前にある闇にだけ対処をしてしまった」
ユザレは、次々と弱音を吐いていく。
本当に、彼女はユザレなのだろうか、と疑問に思えてくるほど、彼女は弱弱しかった。たとえ、勝てない災厄が起きたとしても、彼女は、イルマたちに道しるべを与えてくれてきた。
だが、今はそれがない。
本当に勝てないから、諦めていいものか? いや、元からそうあってはならない。それは、イルマ自身が、かつての仲間たちから教わったことだ。
イルマの目は、真っ直ぐだった。
「だからと言って、私たちは足を止めることは出来ないわ。例え光の巨人がいないとしても、彼は――ダイゴ隊員は言っていたわ」
『人間は、自分自身で光になることが出来る――』
それは、ダイゴが巨人の力を失った時に言った言葉だ。人は光になれる――それは十四年前に、決して奇跡なんかではないと証明されたものだ。
「だから、私たちは、人類は諦めてはいけないのよ。この先の未来をつかむためにも。新しい時代を築くためにも」
それは、紛れもない、イルマの――人類の言葉だった。
それがユザレにどう届いたかは分からない。だが、少なくとも、古代人の心にも届かせることは出来たはずだ。
ユザレは、イルマにこう告げた。
「近い日に、空を切り裂く怪獣が復活する。それが災厄の序章」
空を切り裂く怪獣。それは、まさか……、とイルマは考えるが、今はユザレの予言を聞くのが先決だ。イルマは再度耳を傾ける。
「だけど、また――再び光の巨人が蘇り、そして、決して勝つことの出来ない大きな災厄と戦うことになる。だけどあなたたちなら、或いは……可能性があるかもしれない」
それが夢の内容だった。
ヒビキは、イルマの夢の内容を真剣な表情で聞いていた。
「まるで馬鹿馬鹿しい夢物語かもしれません。けど、確かにあのホログラフに出ていた『ユザレ』と名乗る超古代の人間だったのです。私の人生の中で三度も現れて、私に予言を残していった。今までの不穏な空気と一緒にこれを聞かされたら、いてもたってもいられなくなって……」
「それで、せめて私だけでも……と?」
イルマは、微笑みながら頷いた。
本当に、根拠も何もない――まるで子供みたいな話だ。参謀としてあるまじきことだろう。
だが、ヒビキは真剣な表情で答えた。
「私は、イルマ参謀の言葉を信じます」
「ヒビキ総監……」
ヒビキはイルマの唖然とした顔に笑いながら言った。
「何を隠そう、私も自分の部下が、光の巨人となって私たちと一緒に戦っていた。それだって、一つの夢物語のようなものです。現実にはあり得ない――本当に馬鹿馬鹿しいことだったかもしれませんが、あれが、私にとってどれだけ大きなものだったか分かりません」
結局我々は、その程度の人間なのではありませんか? と、ヒビキは言った。
イルマはヒビキの回答に少しだけ救われた気がした。
そうだ。
今なら、人類は、大きな障壁だってきっと乗り越えられるはずだ。
光の巨人がいなかったこの十四年間に人類は多くのものを培ってきたのだ。
今ならきっと――。
その瞬間だった。
突然、扉を激しく叩く音が聞こえた。
扉が乱暴に開かれると、そこには、TPCの職員と思しき男がいた。
服装からして、警備局の人間のようだ。
ヒビキとイルマは、職員の形相から、どうやら並々ならぬ異常があると察した。
「どうした!」
「き……緊急事態です! 先ほどマリネリスより通信が入りまして。火星にスフィア及び怪獣が出現、基地及び火星街を強襲したとのこと!」
「何だって!」
ヒビキとイルマは顔を見合わせた。
もしかしたら、イルマがユザレから聞いた予言がすでに始まったことを意味しているのかもしれない。
だが、それを確認することは、今は出来ない。
ヒビキは、総監として、今、やるべきことをやるだけだ、と意思を新たにした。
「被害状況はどうなっている」
「住民、及び隊員たちはほぼ全員避難シェルターへ避難できたと報告を受けています。しかし、反撃が間に合わず、基地のハンガー及びシャトルや発着場が破壊されたとのことです」
「地球への航路を断ったということか……厄介な相手だな」
ヒビキはそう呟いた。
「怪獣はその後どうなった?」
「はい……火星を飛び立った後、今度は地球へ向かっていると」
「ならば、S‐GUTSに出動要請を。怪獣を索敵次第、攻撃開始するように!」
「ラジャーしました」
しかし、火星への航路が断たれたのは大いに痛手だ、とヒビキは痛感していた。あそこはネオフロンティア時代の象徴とも言える場所だ。物資がまともに運搬出来ないとなると多くの人々やプロジェクトに携わっている企業に不安を与えかねない。
「復旧作業にかなりの時間がかかるでしょうね」
と、イルマは付け足すように言った。ヒビキは、そうですね、と肯定した。
宇宙エレベーターはまだ、月と水星にしかまだ繋がっていない。現在火星に向けて工事を進めているが、現段階での物資運搬はシャトルで賄われているのが現状だ。そのシャトルが破壊され、さらにシャトルの代用となる戦闘機まで壊されてし合ってはどうにもならない。
「そ……それと、もう一つ報告することがあります」
職員の表情がさらに暗くなった。どうやら、火星の被害より重大らしい。
「先ほど、S‐GUTSマーズのユミムラ隊長から報告がありまして……地球から火星へ向かうシャトルが怪獣と接触し……シャトルは完全に撃沈、乗客は全員、死亡とのこと」
「何ですって!」
今度はイルマが声を荒げた。
「どうして、シャトルが……!」
「もしかして、非常事態宣言発令時が、シャトル出発の直後だったのでは?」
ヒビキがそう予想する。
「仮にそうだとしても、すぐにパイロットに帰還するように言われるはず。それなのに何故……」
イルマは、困惑を抑えられなかった。
地球火星間のシャトルは乗客数が平均でも五十人以上だ。となると、それ以上の人を亡くしたことになる――大参事だ。
時が止まったかのように沈黙が流れた。次に誰が口を開くのか、誰にも予想できなかった。
その時だった。開いた扉からもう一人男が現れた。
「――君! いるか!」
イルマと、ヒビキ、そして職員が一斉に声のする方へ顔を向けた。それは誰もが見知った顔だった。
「ウチダ副参謀」
ヒビキがその顔を見てようやく口を開いた。
「あ……ああ、これは総監とイルマ参謀でしたか。申し訳ありません。突然お邪魔してしまって」
「ああ、いや、それは大丈夫だ。それにしても、ウチダ副参謀がどうしてここに? 確かあなたは、今日は研究所にいたはずじゃ……」
「ああ、そうなんですが……ここに特別研究員の子が来ませんでしたか?」
「特別研究員?」
ヒビキが、一体誰のことか一瞬検討も付かなかったが、イルマの説明ですぐに思い出した。
「確か、去年の会議で一人、火星から招待された天才児ですよね?」
「ああ、そうでしたな。確か、火星で植物の研究をしているマドカ・ダイゴの息子とか」
ダイゴ隊員の――、とイルマは聞こえないように小さくつぶやいた。そういえば、特別研究員としてもしかしたら、そちらに伺うかもしれない、ということをダイゴから言づけていたのを思い出した。
結局、会えずじまいになってしまったが。
「彼が一体どうしたんですか?」
ヒビキがウチダに尋ねた。
「いや、あの……火星襲撃の件を彼に話したんですが……。どうやら彼は物凄く混乱していたのか、そのまま研究施設を飛び出していってしまったんです」
「飛び出した? 一体どこに行ったか分かりますか?」
ヒビキが再び尋ねる。
「いや……もしかしたらここに来ていると思ったんですけどね。何やら火星の状況をいち早く知りたがっていたようなので、もしかしたら情報局をあてにして、こちらで会議をしているイルマ参謀に取り入ったと思ったんですが……どうやら違うようですね」
イルマは、会っていないことをウチダに伝えた。ウチダは、じゃあ、一体どこにいったんだ、とぶつぶつと考え始めた。
イルマは、この時、最悪のケースを考えていた。
いち早く火星の情報を知りたいのなら、確かに情報局やTPC上層部から聞くのが定石だろう。
だがもしそれが、すぐに出来なかった場合、一体それ以外でどうやって火星の状況を知ることが出来るのか。
――わたしなら、直接現場に赴く。
では、一体何で?
――隊員なら、特務チームの機体を使うだろう。
だが、研究員の場合はどうなる?
――シャトルを使うのではないか?
まさか、とイルマは、窓の外を見つめた。
もしかしたら、あのシャトルの中にいたのでは、という考えたくもない仮説が頭に過った。
だとしたら、もう彼は……。
ああ、どうしたらいいのだろう、とイルマは思う。ダイゴに一体何を言えばいいのか?
いや、まだ確証はない。だが、確証はなくとも、そうとしか考えられなくなっている。まだ別の仮説があるはずだ。探せ、探せ、とイルマは必死で頭を回転させる。
だが、これを超えるだけの最高の仮説が思い浮かばない。
イルマは、こみ上げてくる焦燥感と戦っていた。
その刹那。遠くから怪音が聞こえた。
イルマも含め、ヒビキ、ウチダ、そして職員が窓の方に一斉に向いた。
「今の声は……」
ヒビキが言った。
誰もが――イルマを除いて聞いたことがない甲高い声。
「嘘でしょ? もう来たというの?」
イルマが、そう言ったその時だった。
空中から、大きく旋回しながら、ゆっくりと速度を落とし、滑走路に着陸する飛行機のように、地上へと、それは降り立った。
大きな翼。鋭い鉤爪と嘴。高い怪声。
「か……怪獣!」
職員が叫んだ。
全員が戦慄した。十四年ぶりに舞い降りた、地球を滅ぼさんとする怪獣。その姿をイルマは忘れられるはずもなかった。
かつて、ユザレが最初に予言した「空を切り裂く怪獣」と称した古代怪獣。
「……メルバ!」
イルマは、そう叫んだ。
超古代怪獣メルバ。かつて、ウルトラマンティガによって倒されたはずの怪獣。何故今になってまた現れたのか。そして、何故地球の怪獣が宇宙から飛来したのか。
その答えは、ヒビキの言葉が教えてくれた。
「怪獣の四肢や関節に付着しているあれは……もしかして、スフィアのものでは?」
「スフィアがメルバと融合した……でも、どうして?」
ウチダが聞いた。
「恐らく、この時を待っていたのでしょう。光の巨人がいなくなった今、残った勢力でも勝てるという算段を立てて……」
イルマはそう説明した。
「あいつが、シャトルを……!」
ヒビキは怒りを抑えながら言う。
「逃げましょう! 総監、参謀! このままでは……!」
ウチダが、ヒビキとイルマに避難するように促す。
「待ってください。まだ避難も何も完了していないんです。私たちが現場を離れるなんて」
と、イルマがウチダの提案を否定した。
「しかし、今は逃げることしか出来ないですよ! 迎撃システムを完全起動させるのに数
十秒。ここからS‐GUTSを要請しても一分はかかります! その間に怪獣がこの施設を襲うのには十分すぎる時間です!」
そう。
万事休すなのだ。
一切の助け舟も、逃げ道を確保するにも、何一つとして、時間が邪魔をしているのだ。
このままだと、全員が殺されてしまう。
だが、ここで引き下がるわけにはいかない。
ヒビキとイルマの覚悟は決まっていた。
「だったら、俺たちが出るまでだ。そうですよね、イルマ参謀」
ヒビキの提案にイルマは微笑んだ。
「ええ。私も、同じことを考えていました。
二人は、それぞれ念のために所持していたガッツブラスターに弾を装填した。
二人は戦う用意が出来ていた。
「ちょ……ちょっと待ってください! まさか、戦う気じゃないですよね」
ウチダは、慌てて二人を抑えようと必死だった。
「やめてください! 総監と参謀が前線に出て、万が一死んだりしたら、元も子もありません! どうかやめてください」
ウチダの言葉は、馬の耳に念仏だった。
「すまんが、ウチダ副参謀。俺たちは一体、どこに所属していたか、知らないとは言わせないぞ」
と、ヒビキはにやりと笑った。
「これでも、元GUTSと元S‐GUTSの隊長よ。それなりに修羅場はくぐっているわ」
と、イルマも続けていった。
「まあ、そういうことだ。俺たちなら怪獣の足止めにはなるはずだ」
「ですが、総監!」
「任せとけ。お前は職員の避難に尽力しろ」
ヒビキが言ったその瞬間だった。
メルバが先に動いた。
メルバは、目に力を溜めた。メルバの代名詞となる怪光線――メルバニックレイを放とうとしていた。
そこから、運命の瞬間まで、走馬灯のようにゆっくりと時が動いた。
「しまった!」
イルマが、叫ぶと同時に、ヒビキが窓まで駆け寄る。
窓を開けて、ガッツブラスターを構える。それに続いてイルマが続いた。せめて、攻撃を一瞬でも止めることが出来れば!
防衛システムの起動も、その一瞬の間が出来れば間に合うのだ。
だが、メルバの動きを止めたのは、ヒビキやイルマの一撃ではなかった。
光が、現れた。
突如現れた光が、一気にメルバの元へ高速で移動した。
速度は落ちない。ただ、メルバに向かって真っすぐと、向かい、そして――。
光は、メルバの巨体を数十メートル弾き飛ばした。
「何だ、あれは!」
ウチダが叫ぶ。
光は、目を覆い隠すほど煌々と輝いていた。職員やウチダが、あまりの眩しさに目をつむった。
「あれは……」
ヒビキが、片手で顔を覆った。指の隙間から、わずかに漏れる光を何とか見つめる。
だが、イルマだけは、顔を覆わず、その光を――光の向こう側いるその姿を凝視していた。
懐かしく、そして皆に希望を与えてくれた――人類にとって最後の砦。
かつて人類と共に、多くの凶悪怪獣や異星人から宇宙の平和を守るために戦った。
もう一度、絶望の淵に落ちた人類に手を差しのべ、わずかな可能性をも無限の可能性に変えてくれる守護神。
イルマは、その姿を見て呟いた。
「光の……巨人……」
やがて、光が消えていく。その輪郭が露わになる。
ああ、それは――皆が知っている。皆が心の中にその姿を記憶している。
忘れるはずもない。忘れられるはずもない。
大いなる闇から人類を救った世紀の英雄――。
ウルトラマンティガが、再び人類を救うために、再び人類の可能性となって舞い戻ってきた。
帰ってきたのだ。
其の2終了
其の3へ続きます。