ペルソナのニャルをコズミックホラーと誤解した男   作:清流

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長期休載のお知らせ

 「よし飯島、自己ベストだ!次の大会は表彰台も狙えるな。あの時のは本当になんだったろうな?」

 

 美雪のタイムを計測していた顧問から声がかかる。美雪としても、会心の走りだっただけに、その言葉は嬉しいものだった。とはいえ、未だ覚醒した時に走った時のことは完全に風化していないのはいただけない。まあ、今では火事場のクソ力的な、なんらかの原因で一時的に肉体のリミッターが外れたのだろうという話になっているが……。

 

 「ありがとうございました。今日はこれであがらせてもらいます」

 

 「ああ、話は聞いている。気を付けて帰れよ」

 

 顧問や先輩後輩をはじめとした陸上部員に声をかけ、皆より一足先に帰り支度を整える。今日の早上がりは、予め伝えておいたのでスムーズで、特に文句も出ない。足早に部室に向かい、神社関係の仕事の際だけ特別に使用を許可されているシャワーを使って、素早く身を清め、みこに渡されている巫女装束に手を通す。当初は戸惑いや照れがあったものの、今では最早慣れたものだ。素早く着替え終わる。鏡で見れば、そこには一端の巫女に見える少女がそこにいた。

 

 (みこさんや先輩にはまだまだ足元にも及ばないけど、わたし達も成長はしているんだよな)

 

 今やすっかり着慣れた巫女装束に、美雪はそんなことを思う。彼女の世界はかつてとは完全に変わってしまっていた。そこに未練がないとは口が裂けても言えないが、後悔はしていない。悪魔の脅威になにもできず無力感と恐怖に震えることしか出来なかったあの時、あの自分達を守る為に立ち塞がる背中に魅せられたその時から、彼女の進むべき道は決まっていたのだから。

 

 「美雪ちゃん、こっちだよ」

 

 馴染みの声に顔上げれば、校門のところで同じく巫女装束に身を包んだ愛と見知らぬ先輩らしき女生徒の姿がある。察するに、あれが今回の依頼者なのだろう。

 

 「ああ、今行く」

 

 美雪は短く応えて、今や彼女にとっての本来の世界である非日常へと歩みを進めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 橘真由美にとって、今回のことは正直不本意極まりないものだった。受験勉強が必要がない中高一貫の卯月学園生にとって、中学3年とはボーナスタイムだ。一番自由で、一番無責任に馬鹿なことがやれる時期と言っても過言ではない。高校生になれば、それなりの自覚と責任を求められることを考えれば猶更だ。

 

 仕事で家を空けがちの両親から、ほぼ放任されている真由美にとってもそれは同じことだった。いや、むしろ、放任されていることをいいことに好き放題やっていたと言うのが正しいだろう。処女など速攻で捨てたし、売春こそしなかったものの、男漁り染みたことすらしていたのだから、世間からすれば彼女は問題児そのものであろう。

 

 しかし、明るく物怖じしない性格と本質的に優しいところも手伝って、真由美の友人関係は広かった。お行儀のいい優等生達にこそ倦厭されたものの、それ以外では彼女の評判は決して悪くなかった。やっていることはあれだったし、公言すらしているので、ひかれることも少なくなかったが、すすんでいる女と見られていることには、彼女に少なからず優越感すら抱かせたし、頼られることも少なくなかった。

 

 今回の発端は、親の都合で急遽引っ越しをするという友人の思い出作りに付き合ったことだった。その友人は大のオカルト好きで、心霊写真や心霊スポットを訪れるのが趣味だという陰気な娘だったが、けして他者にまでそれを強制してこないので、ある例外を除いて、そういうオカルトを全く信じていない真由美とも普通に付き合えた。いや、親の都合で振り回される彼女とほぼ放任されている真由美は、シンパシーすら感じていたのもあって、不思議と話はあった。

 

 その友人が転校する最後の思い出に、『こっくりさん』をやりたいと言って、ちょうどなんの予定もなく暇だったのもあり、最後だからということで付き合ったのが、全ての元凶だった。

 いや、それ自体は別にいいのだ。ちょうどおまじないの類がはやっていたことも事実だったし、真由美も話のネタにはなるだろうと軽い気持ちで受けたことは否めない。実際、それは大したものではなかったのだろう。それが本物で失敗しなければ……。

 つまるところ、そこに集約されるだろう。勝手に動く10円玉は中々のホラーで背筋に嫌な汗が流れたが、得難い経験だったと思う。まずかったのは、こっくりさんをちゃんと終わらせられなかったことだ。

 

 放課後の教室でやっていたせいで、教師に見つかり、強制的に中断して帰らざるをえなくなったのだ。いつもと異なる様子の教師がやけに強権的で、中止せざるをえなかった。つまるところ、こっくりさんは失敗したのだ。

 

 後に聞かされたことだが、この手の儀式は、呼び出して帰すところまでワンセットであるらしく、それが行われなかったことで、こっくりさんは帰ってくれなかったらしい。

 

 結果、帰らなかったこっくりさんは、儀式参加者である真由美に見事に祟った。しかも、正確には真由美に憑いていたこっくりさんは、可愛がっている弟に憑依するという最悪の形で……。

 

 今や弟は獣ような奇声を上げて、人とは思えぬ凶相をうかべる存在になりはててしまっている。自分が原因じゃないと真由美は思い込もうとしたが、そうなったのは間違いなくこっくりさんをやって帰ってきてからなのだ。弟の普段の様子や素行から考えても、それ以外に説明がつかなかった。

 

 こっくりさんをやった他の面子にも確認したが、特に問題は無いと思う。むしろ、本気でびびっているのかと茶化される始末だった。唯一転校した発起人の友人が、それは狐憑きかもしれないと教えてくれた。こっくりさんは狐狗狸とも書き、その字の如く狐や狸の霊を呼び出してお告げを聞く交霊儀式でもあるのだと。本来、呼び出した霊には帰って貰うのだが、中断されたことで帰らず、一番波長が合った真由美に憑き、真由美よりさらに波長の合う弟に憑依したのではないかと興奮気味に教えてくれた。友人はオカルトに対しての興味や知識などは人一倍あるが、霊感はゼロらしく、そういう心霊現象とは無縁だったらしい。転校で色々忙しくないなら、すぐにでも駆けつけたいという友人に、真由美は心底げんなりした。

 

 当初真由美は、自分が唯一信じるオカルトである卯月徹に頼もうと思っていた。彼の霊感少年ぶりは、ここら辺に住む界隈では有名であったし、実際自分も親関係のことで拗れきらないで済んで助かったという経験もあったからだ。

 とはいえ、小学生の頃はともかく、中学生になってからはとんと交流がない。彼が神社に婿入り*1が決まって、神山みことべったりになってたから付き合いづらかったというのもある。しかし、それ以上に真由美は、神山みこが嫌いであった。なぜだかは分からないが、自分とは根本的に合わないだろうという確信があったからだ。なので恋人であり婚約者だと目されている彼にも近づきたくなかったというのが本音だった。

 

 (神山には絶対に頼りたくない!卯月の奴に頼っても同じことだよね。でも、どうしたら……。そうだ!)

 

 嫌っている女に頼るのは死ぬほど嫌だった。よく考えなくても、卯月徹に頼ることは同じことだと思ってしまい、真由美は袋小路に陥った。それでも、可愛い弟の為だ。それしか手段がないとなれば、真由美はみこに土下座でもなんでもして頼んだろうが、幸いにまだ当てがあった。それは最近有名になっている二年の後輩の占いだ。よく当たるという評判だが、一人につき1回一万円で、生涯で3回までしか占わないと公言している。その高額*2さ故に、余程のことでなければ頼らないだろうが、占ってもらった人閒からの評判はよく、一切文句は出ていないという本物だ。なんとなくではあるが、真由美も本物だと感じていたので、それに頼ることにした。

 

 ホームルームが終わってすぐに真由美は駆け出し、占いをやっている後輩の教室へと走る。彼女はホームルーム終了後15分だけ待ち、その間だけ占いを受け付けているという。弟は学校を休ませているというか、自室に閉じ込めている。なんとしても、親にバレる前に早急な解決が必要であった。

 しかしながら、真由美の願い虚しく、すでに先客がいたらしい。男子生徒が件の占いをするという女子生徒の対面に座っていた。教室の中は他にも人も残っているのというのに、不思議な静寂に包まれている。誰もが占いをする少女の雰囲気と醸し出す静謐さに呑まれてしまっている。かくいう真由美も教室に入ることさえはばかられた。そして、驚いたことに占いをしている女子生徒の声は全く聞こえない。確かに口を開いているのに、対面している男子生徒はうんうん頷いているのに、真由美には聞き取れなかった。別に遮音している様子はないというのに、まるで聞こえない。そこだけが何かで区切られてしまったかのように。

 

 5分程たっただろうか、占いの結果は悪いものだったのか、男子生徒は暗い顔で項垂れていた。だが、解決策を示されたのか、納得できたものだったのか定かではないが、女子生徒に真剣な表情で礼を言って去っていた。いつの間にか音は戻っていた。

 

 「先輩も占いをご入り用ですか?」

 

 突然、件の女子生徒に声をかけられて、真由美は心底驚いた。

 

 「な、なんで?」

 

 「いえ、下級生の教室に一人で、しかもこのタイミングで来られるということは、そういうことではないかと思っただけです。違いましたか?」

 

 「間違ってないけどさあ……」

 

 どうやら、占い少女は頭の回転も早いようだ。なにより、全てを見透かされているような静謐とした目が、真由美は怖かった。底なしの沼、光すら呑み込む闇のようにすら感じられたのだ。

 

 「あっ!失礼しました。これでどうでしょう?」

 

 何かに気づいて瞬きをした後、そんなものが嘘であったかのように、目の前にいたの清楚で可憐な優しげな美少女だった。先程までの恐怖は霧散してしまい、真由美はあまりのギャップに混乱した。

 

 「???」

 

 「いけないいけない。制御がまだ甘いですね。完全に閉じられていませんでした。未熟です」

 

 目の前で消沈してシュンと俯く少女に、真由美はようやく混乱から回復した。

 

 「あんた本物だよね。なら「場所を変えましょう」えっ?」

 

 真由美が勢い込んで話そうとしたところで、占い少女に機先を制された。

 

 「先輩の用事は占いですけど、本質はそこではないですね?」

 

 彼女は確信をもっているようで、それはあくまでも確認だった。

 

 「そうだけど、分かるの?」

 

 「はい、わかりますよ。ですが、そういうことなら、私だけでなく私の親友も聞いた方がいいと思うので場所を変えましょう」

 

 

 

 

 

 すいません、上記は字数稼ぎの為のもので、書きかけのものです。内容の変更修正があり得ます。

 

 本当は、ちゃんと次話を書いて、その前書きか後書きでお知らせしようと思っていたのですが、想定以上に忙しく、いつまでも先延ばしになってしまいそうなので、いくつか感想がきているのを見てこうして書くことにしました。

 

 実は、急遽家業を継ぐことになり、その関係で資格取得の為に勉強に専念しなければならなくなりました。同時に、両親が高齢になってきたため、バリアフリーの住宅を新築することも重なり、その打ち合わせとかで、滅茶苦茶多忙です。正直、ここまで手間暇かかるとは夢にも思っていませんでした。予算と相談ではありますが、家というのはこだわろうと思えばいくらでもこだわれてしまうというか、いや、何事も経験しないと分からないことというのは、あるものですね……。

 

 そんなわけで、申し訳ありませんが、当分の間更新はないものと思って下さい。年内はほぼ不可能だと思います。ただ、これで終わりにするつもりはないので、出来れば二、三話くらいは投稿できたらと思っています。

 後、時間が本当にないので感想に返信はできませんが、しっかり読ませて頂いています。本当に励みになります。この場にて、御礼申し上げます。

*1
完全に誤解であるが、徹にとっても都合が良かったので、訂正しておらず、みこは言うまでも無い。因みに彼を知る誰もがそらそうだろと納得した。実親さえ大いに頷いたくらいである

*2
中学生にとって一万円は大金である

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