廃人ハンターのテイワット生活 作:バルファルクの襲撃に怯えるゴリラ
「もう食べられないわ……」
『どんな夢見てるんだコイツ』
夜霧(俺製)の中で、ここをキャンプ地としました。依頼主が見た目相応の寝言を言ってて軽く脳がバグるなどしていますが、稲妻旅は現状順調。ナヒーダって確か500歳くらいだろ、どうしてこんなにガキっぽいんだ。ずっと引き篭もりバリアに閉じ込められてたからか。もっとガキっぽくてもええんやで(優しさ)。
『マジで、神にこの所業とか。獣扱いで狩って良いだろアイツら』
まぁそんな事やったら多分ナヒーダが怒るし泣くし他の七神様方に締め上げられそうだからやらないんだけどさ。
『はぁ……暇だな、ノートでも読むか』
懐からボロボロの方のノートを取り出して、適当なページを開く。
テイワットに帰って来てから、かつての俺が書いたこのハンターノートをよく見るようになった。いつかの俺がテイワットへの帰還を果たした時に必要であろうと、当時の俺が思いつくことを全部書き記したであろうコイツ。
当時の俺に賞賛を送りたい。実際、今の俺は当時の事をほぼ何も覚えてない。こんなボロボロのノートよりも、ボロボロな記憶しかない。
長い時間を共に過ごしたはずの璃月の彼ら彼女らの事だって思い出すのに数秒かかったくらいだし。まぁ、俺って死なないだけの一般後期高齢者だから仕方がないよな、年金くれよ。
こうやってすぐにくだらない事を考えるのは俺の悪い癖だな、うん(自省)。
『……にしても、なんでこんな未来予知みたいなことまで書いてるんだろうなこのノート』
例えば夜叉は多分だいたい死んでるとか、金髪の旅人がどこかに居るとか、バアルは死んでバアルゼブルに代替わりしてるとか、雷電将軍のおっぱいソードに気を付けろとか。
夜叉の事に関しては間違ってた気がするが、他にも結構な事が書いてある。今から見れば500年前の事でも、当時の俺からすれば千年単位で未来の出来事なのにどうして知ってたんだろうか。
あと最後のヤツはなんなんだよ、昔の俺はバカなのか? おっぱいソードってマジでなんなんだ。
『マジで意味わかんねぇ……』
それに加え、だいたい国ごとにまとめて書かれているというのに、どうしてスネージナヤのナド・クライだけ別の国として書かれてるんだ。月の少女ってなんだよ、約束ってなんだよ。なんで必須品に自然派お菓子って書いてるんだ?
なんも解らん。
『奇妙な事と言えば、スメールについての記述も……だよな』
予言の書かってくらいになんでも書いてあるこのノートだが、こうして俺の隣で呑気に寝てるナヒーダという存在は一切書かれていない。
いや、それ以前にスメールについての記述は全て過去のことしか書いていない。ナヒーダのこと以外も、スメールに関する事は予言染みたことが一つも書いていない。
モンドについても、璃月についても、稲妻についても。フォンテーヌもナタもスネージナヤもナド・クライも。ありとあらゆる国には当時の俺からすれば知りえなかった未来の情報が書いてあるというのに、スメールについてだけは一切書かれていない。
まるで書いてはいけないモノかの様に、徹底的に避けられている様にすら思える。あまりにも不気味。当時の俺が怖い。
どうにか理由を思い出せないか、それか理由を推理することが出来ないか。毎夜ノートを眺めながら頭を捻るが思い出せない思い付かない。
『やっぱり解んねぇな……うん、俺バカだから解んねぇや』
でもまぁ、多分何とかなる。何とかする。どうせノートに何か書いてあってもナヒーダの事は誘拐してただろうしな俺。あんなに楽しそうな事は我慢できない質だからしょうがない。
さてさて、明日はどうするか。なんか面白そうな事ノートに書いてないか――ん?
『本当の月に気付くな……? んだこれ』
こわ、SCPみたいなこと書いてるやん。そもそも月に本物の月も何もないだ――
【グガッ――】月開花
『なんか大事な事を忘れてる気がする……』
「あっち! あれを見てみたいわ!」
【承知し、た】
なんか忘れてる気がしています。どうも”狩人”です。今日は昨日と打って変わって城下町の散策。ナヒーダが楽しそうで何より。モラについては改めてコッソリ
どこにでも悪いことする
「ふふふ! 何もかもが新鮮で楽しいわ!」
【そ、うか】
ナヒーダずっとこれ言ってる。本当に楽しいんだろうな。もっと楽しめ……500年の孤独を少しでも癒してくれ。
「”狩人”! あれ! あれを食べてみたいわ!」
【分かっ、た……ぐ】
「あら、大丈夫?」
【む、ああ、大丈、夫、だ】
本当に大丈夫だから、なんか起きてから微妙に頭が痛いだけだから。というかそもそも最近は眠らないようにしていたのにどうして今日は寝てたんだ。なんかずっと大事なこと忘れてる気もするし。
まぁ、気にしても仕方がない。とりあえず稲妻旅行を楽しむとしよう。
【大丈夫、だ、から。頭を撫で、なくても、良、い】
「あら? そうなの?」
子供じゃないんだぞ俺。俺が何千年生きてると……癪だけどちょっと頭痛楽になったな。俺子供だったかもしれん。
とりあえずありがとうとナヒーダに伝える。そんでちょっと速足になってナヒーダが指さした屋台へと向かう。
【ほら、どれ、が、食べた、いんだ?】
そういえば、ニッコニコの笑顔でナヒーダは食べたいものを選ぶ……ちょっと選び過ぎじゃないか? 食べれる? あぁ、余ったのは俺が食べるのね、そうですか……まぁ良いけどさ。
「オワァアーーーー!?!?」
野郎の野太い悲鳴とドシャンとかなり質量のある金属と地面が衝突する爆音。全てが白銀で出来ているのではないかとすら思える程の庭園には相応しくない巨大な砂煙がモクモクと立ち昇る。
「クソボケカス帝君がよォ、なにが契約違反だボケ、カス、ゴミ、クソ」
そして、この美しい光景に不釣り合いな暴言を吐き出しながら、砂煙から黒い鎧を着た男が現れる。
「ったく、意味解らん所にバグって飛ばされるしさァ。どこだよここ、マジで覚え無いぞここ。クソが、いつか絶対狩る」
体中に着いた土を払い落としながらも変わらず暴言を吐き散らかす。流石に口の治安が悪すぎる。
「あークソ……マジで解らんどうやって帰れってんだよ」
鎧兜を脱ぎ捨てて、頭をガシガシと掻いて男がボヤく。マジでどうしたもんかな、そんな事を呟く男の後ろに、静かにナニカが降り立った。
「……誰?」
「あ?」
一言で言うなら白。目を閉じた、白く美しい少女であった。
「んだこのガキどこから……オイオイ、人に名前を聞く時はまず自分の名前を言うべきじゃねぇかよ」
「どうやって入って来たの?」
「質問しかしねぇのな、ガキ。礼儀がなってないんじゃねぇの?」
「霜月の子じゃない。そんなに色んな物を背負ってる子は居なかったはず」
「このガキ唯我独尊か? ちょっとくらい俺の言葉に耳を貸してくれよ」
顔立ちに似合わぬ口の悪さで、微かに月の香りがする少女を相手にも暴言を吐き続ける男。声を掛けられるまでこの自分が一切気付けなかった存在だ、得体が知れないとか言うレベルではない。
だというのに、男を真っ直ぐ見据える(目は閉じているが)少女は一切たじろぎもせずに男に質問を投げかけ続ける。
「それで、貴方は誰なの?」
「……ったく、面倒くさいガキだ」
だがこいつならここから帰る方法を知ってるかもしれない。そう思い立った男は、心底面倒臭いと思いながらも少女の質問に答えることにした。
「”狩人”だ。今はそう呼ばれてるしそれ以外で呼ばれる気もねぇ」
「そう、”狩人”って言うんだ」
かりうど、”狩人”……と、少女はその名をキャンディを味わうかのように口の中で転がす。
「そんで、クソガキ。そういうお前は誰なんだ? 後ここがどこなのかと、ここから出る方法も教えてくれ」
さっさと教えやがれガキと言わんばかりな口調の”狩人”の問いに、少女は笑って答える。
「ガキでも、クソガキでも、好きに呼んでいいよ」
「そういう訳には行かねぇよ。んで、何て呼ばれてるんだお前は」
「……クータル、私の事は皆クータルって呼ぶの」
「クータルねぇ……え、クータル? って事は……ここって地球のフィンランド?」
まさかの事実に思い至った事で唖然とした顔の男に、少女はクスリと笑った。
”狩人”:夜霧の中で、念のために月迅竜の装備を傍らに置いていた。そのせいで”本物の月”に気付いた結果、なんやかんやあって頭の中で月開花して1乙した。昔はバカみたいに口が悪かったし、今も結構悪い。
ナヒーダ:美味しいものをたくさん食べてる。楽しいし、楽しい。
クータル:誰やろな。