尊敬する我が師、サー・マーティン・ジョージ・アストンへ。
生きて帰ってきました。
生きて帰ってこられました。
一昨日以上に手が恐怖で震えています。
公使館に戻り、宿舎の自分の部屋に入るまでは何ともなかったのですが、ペンを持った途端に手が震えだし、止まりません。
今更になって身体が自分が死の目前にいたことを認識したようです。
本来ならば手の震えが止まってから書くべきなのでしょうが、今は死が目の前に迫った恐怖を忘れないために、これを・・・魔獣を目の前にした星欧人の魔種族魔獣研究家が書き残すべきこの手紙を書いています。
先生、紳士たる者がこの様な美しくない文字で手紙を書くことを何卒お許しください。
今日の朝になるとジンギカンから迎えが来ました。
なんと驚くべき事にツノダ女史が自らが、鎧を身に纏い、秋津洲でもこんな巨大な馬がいるのかと思うほど、7フィート3インチはあるであろう彼女の体格に劣らない大きな立派な馬体をもった馬にまたがり、先日拝見したものではない巨大なカナボウを持っていらっしゃいました。
そして彼女は共として、こちらはポニーのような秋津洲らしい馬に乗った、先日私を案内してくださった狐系コボルト氏と巨狼族2頭を連れていました。
私はジンギカンのトップである彼女が直接いらしたことを驚きつつも、彼女を我が公使閣下とオルクセン公使閣下に紹介してから出発しました。
今日の私は三つ揃いの紳士かつ外交官らしいスーツではなく、写真技師らしい市民服を着ていましたが、秋津洲側は私のことを外交官として扱ってくださいました。
先頭は私の個人護衛となりつつある3人の警官が騎乗でつき、その後に狐系コボルト氏、そして私とツノダ女史が並び、その後ろに騎乗の通訳氏がつき、最後尾は2頭の巨狼族でした。
昨日魔獣が、この首都の南端とはいえ暴れ回ったにもかかわらず、秋津洲人の市民達は既に日常に戻ってました。
そして時折、ツノダ女史に向かって歓声を上げていました。
私は半ば呆れつつ、半ば感心して彼らを見ていました。
それに気がついたツノダ女史は、今日も相変わらず美しい声と素晴らしい発音のキャメロット語で『どうかされましたか?』と私に話しかけました。
私は正直に『昨日恐ろしい魔獣がこの町で暴れ回っていたというのに、数日中にまた再度現れるかもしれないというのに市民達が既に日常生活に戻っているのに驚きました』と正直に話しました。
それを聞いたツノダ女史は『皇帝が、軍が、警察が必ずや魔獣を打ち倒すと信じているからです。私達は民を魔獣から庇護しているからこそこの地位を得られているのです』と、大変真剣な顔で、しかしその顔は私が今まで見たことがない美しい女性の顔で言いました。
一昨日と違い順調に進んだこともあり、約1時間半程で一昨日魔獣が暴れ回っていた場所に到着しました。
私はまず、オルクセン公使館へ行き、外からでしたが建物が全くの無事であることを確認しました。
門も閉まったままなので、不届き者達が強引に公使館内押し入った形跡もありませんでした。
一応数人の警官が警備についてくれているのも確認できました。
続いて私達は魔獣が暴れ回った中心点にやってきました。
昨日、砲撃が始まったときは凄まじい砲撃だと感じたのですが、あちこちに空いている砲撃痕をみる限り、さほど大口径ではない大砲だったようです。
海の方に目を向けると海岸から30ヤード程の距離に鉄道を通している築堤がありました。
その上にはま、我が国の物に比べるととても小さな可愛らしいとすらいえる客車や貨車が数両残っていましたが、私はそれが我が国が輸出した物だと知っていたので、少々複雑な気持ちになりました。
そして同時に『どうして海岸線から大して離れていない場所にわざわざ埋め立ててまで鉄道を通したのだ?』と思いました。
すると狐系コボルト氏が『キャメロットのお客人、不思議でありましょうか?何故あの様な場所に鉄道を通したのかと』と少々訛っているキャメロット語で話しかけてきました。。
私は正直に『はい』と答えました。
すると狐系コボルト氏は『いま私達がいる瓦礫の山はシーマズ公の首都邸宅でございます。政府は最短距離でニイバシとタテハマの間に鉄道を作るにあたりシーマズ公に気を遣い、公の屋敷をそのままとするために海の上に鉄道を通しました』と言いました。
私はそれを聞き、どこの国も有力貴族の領地に手を出すのは面倒なことだと感じました。
ツノダ女史は私から離れ、彼女に比べると小人のようにみえる軍人達と話していました。
周りでは沢山の兵士達が瓦礫を片付けつつ、彼らが身を隠すための壕を掘り、あちこちにとても小ぶりな大砲を据え付けていたりしました。
築堤上には、歩哨であろう兵士達が立ち、さらにその向こうでは、おそらく軍艦だと思われる帆走汽船が数隻ゆっくりとしたスピードで行ったり来たりしていました。
そしてその間をぬうように秋津洲の伝統的な帆走船が北へ南へと進んでいました。
私は時折、撮影しつつ様子を観察し続けました。
しばらくそうしていると私の護衛のようについてくれていた2頭の巨狼族突如として海の方を見てから、揃って遠吠えをしました。
私は何事かと思い、彼らと同じ方向を見ました。
築堤の上に貨車や客車とほぼ同じが、それより少し大きな何かがいました。
私はそれと目が合った気がしました。
一瞬の静寂が回りを支配した後、突如として銃声や私には何を言っているか理解できない秋津洲語が飛び交い始めました。
私は呆然としながら写真機のシャッターを切りました。
同時にこちらに向かって『ウシオニ』が海に飛び込みました。
続いて私は突如として強い力で引っ張り上げられました。
最初は理解できませんでしたが、ツノダ女史が私を肩に載せて担いでいるのだと気がつきました。
そして気がついたのと同時に壕の中に押し込められ『伏せてください!』と彼女は言いました。
私は言われるがまま、その場で這いつくばりました。
凄まじい爆発音が聞こえました。
少し後れて私は海水のシャワーを浴びました。
私は立ちあがって海の方を見ました。
回りでは兵士達が歓声を上げていました。
この時の私は何が起きたのか全く理解できていませんでしたが、後ほど通訳氏から説明を受けたところ、築堤と海岸の間に設置していた電気発火式の機雷を陸上から爆破したのだと教えられました。
ツノダ女史は隣で無言のまま海を見つめていました。
首から吊していた最新型の小型写真機は無事のようでした。
私は半ば呆然としたままノロノロとした動作でガラス乾板を交換し、何かを写そうと写真機を覗きました。
そして写真機越しに、海岸に上陸した無傷にしかみえない『ウシオニ』とまた目が合いました。
一瞬の静寂がまた訪れた気がしました。
私は無言でシャッターを切りました。
同時に、悲鳴か何か判断がつかない秋津洲語が回りから沢山聞こえ、銃声がまた鳴り響き始めました。
ツノダ女史が凄まじい声をあげながら、彼女の身長の半分程度しか隠す事ができない、彼女にとっては浅い壕から飛び出し、カナボウを振りかざしウシオニに向けて駆けていきました。
私は、おそらく人生で2度と出せないであろうスピードで写真機のガラス乾板を交換すると、彼女のカナボウがウシオニの顔面に叩きつけられる瞬間にシャッターを切りました。
ツノダ女史を打たないためか、銃声は止まりました。
ツノダ女史はウシオニの周辺を激しく移動しながらカナボウで殴り続けていました。
ウシオニはツノダ女史を追い払おうと、激しく脚を振り回し、さらになんとかツノダ女史を身体の正面にしようとしていたのか、まるでその場で回転するかのような激しく動き回りました。
しかしツノダ女史はそれ以上のスピードで動き回り、決してウシオニの正面に位置することはありませんでした。
気がつけば、私の回りに銃を構えた姿勢で通訳氏と護衛の警官3人、さらに巨狼族が1頭が集まってくれていました。
通訳氏は『逃げてください!下がってください!』と繰り返し私に向けて言い続けていましたが、その時の私の耳はその言葉は入るものの、何故か言葉の意味が理解できませんでした。
私は凄まじい表情でウシオニをカナボウで殴り続けるツノダ女史をじっと、撮影するのも忘れて見ていました。
しかしとうとうツノダ女史にウシオニの脚があたり、兜はどこへともなく飛んでいき、彼女自身は私達の方に吹き飛ばされました。
彼女は倒れたまま動きませんでした。
その瞬間、私はウシオニが笑った気がしました。
いや、確かに笑いました。
50ヤードは離れていたというのに笑ったと理解できました。
私はその瞬間、先生が提唱し定義した魔獣を魔獣とする『意思の疎通が全くとれない、明らかに生物の摂理に反した特殊能力を有する大型動物を魔獣』は正しいと思いました。
あいつらは私達人間族や魔種族と会話が出来ないだけで、意思の疎通がとれないだけで、それなり以上の知性を有していると私は確信しました!!
ただそれだけが、意思の疎通がとれないということだけが、それだけが魔獣を魔獣としてたらしめているのだと!!
再び銃声が回りを支配しました。
護衛の警官も射撃していました。
ツノダ女史は倒れたままでしたが、近くにいた、あのデュートネに命を失うまで仕えた老近衛兵の如く勇気と献身に満ちあふれている事が間違いないであろう兵士が4,5人飛びだし、彼女の腕や鎧を掴み、こちらの方にむかって引き摺り始めました。
彼女が壕に押し込まれると同時に、私は誰かに手によって壕の中に押さえつけられました。
今度は砲声が聞こえ始めました。
激しい爆発音も聞こえました。
至近距離にもかかわらず、勇気ある砲兵隊が射撃を開始したのです。
そしてそのような砲声と爆発音が支配する中だというのに、昨日聞いたあのおぞましい鳴き声も再び聞こえました。
私は恐る恐る壕から顔を覗かせると、砲の1つを操っていた砲兵達が、ウシオニの口から吐き出されるあの青い何かを浴びて、断末魔の叫び声を上げていました。
気がつくと、ツノダ女史が隣に立っていました。
額から血が流れていましたが、長い艶やかな黒髪を結っているその顔は大変美しいと、私は場違いながら思ってしまいました。
彼女は何事かを秋津洲語で小さく呟くと、私が耳を押さえなければならないほどの大きな声で何かを秋津洲語で数度繰り返し叫びました。
すると兵士達はゆっくりと下がり始めました。
無事だった砲は砲兵達が自身の力のみで引っ張り始めました。
私はそれをみて、突然の恐怖感に駆られました。
私は自分の意志でもって壕を飛び出し、逃げ始めました。
すぐに街道に出ると、そこにつなぎ止めていた筈の馬はいなくなっていました。
今まで気がついていませんでしたが、緊急事態を伝える鐘があちこちで鳴っているのにようやく気がつきました。
私はキャメロット公使館のある北へ向けて街道を駆け出しました。
振り返ると通訳氏も護衛の警官3人も、そして巨狼族1頭もついてくれています。
しかし1ハロンも走らないうちに、まだ崩れていない建物の軒先に1人の御婦人が幼い子供を2人抱えているのがみえました。
キャメロットの紳士たる者、如何なる状況でも御婦人を子供を見捨てるわけにはいきません。
私は彼女たちの元に駆け寄りました。
彼女はなく2人の幼い子供を抱えたまま、私には理解できない、おそらく同じ意味の秋津洲語を繰り返し口にしていました。
私はキャメロット語で『立て!逃げるんだ!』と2度ほど言いました。
しかしその御婦人は幼い子供2人を抱えたまま、同じと思われる秋津洲語を繰り返しているのみでした。
通訳氏が私に向かって必死な声で『逃げてください!急いでください!』を繰り返していました。
すぐ脇で銃声も聞こえました。
それでも私はその声を、銃声を、おそらく私達をあの恐ろしいウシオニが追っているという現実を無視していました。
私は先ほどツノダ女史が私を抱えたときのようにその女性を肩に、左肩に担ぎました。
御婦人に対して大変失礼な姿であったのは否定できません。
事情を知らぬものが見れば、蛮族が女性をさらっているかと誤解するような姿であったのは否定できません。
先生からは紳士的でないとお叱りを受ける可能性が非常に高いと思っています。
しかしその時の私はそれ以外彼女を担ぐ方法を思いつきませんでした。
私の隣では通訳氏は銃を背負い、残った幼い子供を2人を抱えてくれました。
後ろから犬の悲鳴が聞こえました。
私は振り返りたくないと思いつつも振り返ってしまいました。
そこには、25ヤード程度の距離にウシオニがいました。
脇には立ちあがろうとしてる巨狼族がいました。
おそらく時間を稼ごうとウシオニに飛びかかっていったものの、一撃で追い払われてしまったのでしょう。
私と並ぶ様な位置にいた護衛の警官達が我が軍の精鋭兵の如くの速度で銃を乱射していました。
ウシオニはそれを無視して私達の方に迫りました。
私は死を覚悟しました。
しかし身体はそれに反し生きようとしてくれました。
ウシオニは10ヤードほどの距離に迫りました。
身体が勝手に動き、持たされたものの撃つことはないと思っていた、支給されていた最新型の拳銃をホルスターから片手で抜きました。
弾は既に込めてありました。
女性を担いだまま、片手で狙いを定めて重い引き金を引きました。
最新型のダブルアクションという形式の拳銃はそれだけの動作で火を噴きました。
私は繰り返し引き金を引きました。
一発、二発、三発。
ウシオニはそれや、一歩も引かずに銃を撃ち続けてくれている警官達のライフル弾も無視してゆっくりと近づいてきました。
その様子は追い詰めた獲物を楽しみながら食べようとする肉食獣の如くでした。
四発目を撃ちました。
まだ近づいてきました。
五発目を撃ったとき状況が変わりました。
突如としてウシオニがその場で悶え苦しみ始めたのです!
私は何が起きたのか全く理解できませんでした。
しかし身体は、生きようとする身体は勝手に動いてくれました。
私は御婦人を抱えたまま北に向かって走り出しました。
他の全員もついてきたようでした。
しばらく走っていくと、一昨日警官隊に止められた関門にたどり着きました。
関門にいた兵士達は私達を向かい入れてくれました。
私と私が抱えている御婦人、通訳氏と彼が抱えていた子供2人、護衛の警官3人、そして私が御婦人に話しかけた時に勇敢にもウシオニに立ち向かってくれたのであろう巨狼族全員が無事に関門にたどり着いたのでした。
もちろんここが安全とは限りませんが、周りに沢山の銃を持った兵士がいて、小振りながらも大砲があるこの関門は、目の前にウシオニがいるような環境に比べればよほど安全な場所といえます。
その後、私達は兵士に案内されて1マイルあるかないかほどの距離にある、大変急な高い階段を登った、丘の上にあるジンジャに案内されました。
そのジンジャは避難所になっていたようでした。
逃げ遅れたであろう市民が沢山いました。
警官やジンジャの神官とおぼしき数頭だけいたコボルト族や人間族が対応に当たっていました。
私達はそこで警官から水と暖かいスープをもらい、それらを口にしてからようやく落ち着くことが出来ました。
ここで私は通訳氏を介して御婦人に改めて話しかけました。
まず最初に大変失礼な姿で御婦人を運んだことを謝罪しました。
続いて何故あの場に幼い子供達と一緒にいたのか、何をずっと口にしていたのかを尋ねました。
御婦人はずっと下を向いたままでしたが、少しするとゆっくりと喋り始めてくれました。
御婦人の夫君は警官であったこと、昨日のウシオニとの戦闘で命を落としたこと、子供達にたとえ元とはいえ下級騎士であった夫君が、警官として騎士として勇敢に立派に任務を果たした最後の場所をみせたかったこと、そしてウシオニが現れたとき、夫の元にいける機会がやってきたと思ってしまったことを。
そして私達が御婦人達をみつけたときに繰り返し口にしていたのは『もうすぐ勇敢な父の元にいけます』だということを。
通訳氏からそれを告げられた私は何も言えませんでした。
その幼い子供達は、他の避難していた子供達と一緒に、私に付き添ってくれていた巨狼族に楽しそうにじゃれついていました。
少しするとこのジンジャのコボルト族・・・犬系コボルト族が近づいてきて何事かを話しかけてきました。
通訳氏が答えると、その犬系コボルト氏は右手をこめかみに添えました。
それは先生もご存じの通り、コボルト族が魔術を使うときの姿勢でした。
10分ほどすると、私達が登ってきた急な階段の方から歓声のようなものが聞こえてきました。
私がそこに近づいていくと、半ばほどで折れてしまっているカナボウを片手に階段をゆっくりと登ってくる、狐系コボルト族と巨狼族を引き連れた、別れたときより更に傷つき、パーツがあちこち失われているぼろぼろの鎧を着たツノダ女史がいました。
おそらく狐系コボルト氏とこのジンジャのコボルト氏が魔術による意思疎通をおこない、私達がここにいるとわかったからなのでしょう。
避難していた市民達の歓声に出迎えられて階段を登り切った女史に私は『ご無事で何よりでした』と話しかけると、ツノダ女史も『あなたこそご無事で何よりでした。そして市民を助けてくださりありがとうございました』と返してくれました。
そして私は首から吊していたのにも関わらず奇跡的にも無事だった最新型の小型写真機で彼女たちを撮影しました。
するとツノダ女史から『化粧をしていない女性を撮影するとは、なんという非紳士的行為でしょうか。断固としてキャメロット王国に抗議します』と冗談のような口調で言われたので、私は『騎士たるものの勇姿を取るのは写真技師の勤めですので』と返しました。
ツノダ女史は階段に腰をかけ、海の方を見ました。
私はその隣に立ち、同じように海の方を見ました。
おおよそ1/2マイルほど離れた街道を、ゆっくりと、時折建物を破壊しつつ北上していくウシオニの姿が見えました。
彼女はぽつりと何かを秋津洲語で呟きました。
私は『何を仰ったのですか?』と尋ねると彼女はこう言いました。
『私の・・・私達の武器じゃあいつに勝てない』。
私は何も返事が出来ませんでした。
私達がその後は無言でウシオニが進んでいくのを見ていると、小さい川にさしかかりました。
その川に架かる橋を防衛線としていたらしく、橋の北側に配置されていた前装式の小さい大砲や兵士達のライフルが繰り返し激しく発砲していましたがウシオニに効いている様子はなく、口からまたあの青白い何を吐き出すと兵士達は倒れ、逃げ惑い、悠然とウシオニは橋を渡り、急造の防壁を破壊し、更に北上していきました。
私から少し離れたところでは若い秋津洲人が何事かを叫びながら、届くことがないと理解しながらもウシオニのいる方角へ向かって石を何度も投げていました。
ただ通訳をされなくとも彼が何を言っているのが理解できた気がしました。
そしてあちこちから聞こえるあの緊急事態を伝える鐘の音は、時折その数は減らしたものの止むことはありませんでした。
その後私達は、ツノダ女史達の護衛の元でキャメロット公使館に帰り着くことが出来ました。
狐系コボルト氏がその魔術による意思伝達でもって公使館に帰り着くまでの間ずっと情報を収集してくれましたが、ウシオニは散発的な軍や警察の抵抗を無視して更に北上し、この首都で一番の、私も何度かガラス乾板を買いに行った高級小売店街や、私は一度も行ったことがないこの国でも最大級の歓楽街を破壊してから南下し、海に戻っていったとのことでした。
私は公使閣下とオルクセン公使閣下のお2人に今日の出来事を報告すると、お2人から『無事で何よりだった』と慰労の言葉を頂きました。
そして写真室で今日撮影した乾板を現像し、武器庫にむかい、武器管理の任についている海兵の下士官に発砲した弾数を申告し、続いて拳銃を点検してもらい、異常がないと判断された拳銃と発砲した分の弾丸を受け取ってから宿舎に戻り、着替えもせずにこの手紙を書き始めました。
先生、私は生きて帰ってこれました。
そして同時に私は、過去の星欧にいた魔獣達を、人間族や魔種族達がどうやってあんなに強力で恐ろしい魔獣達を駆逐し、絶滅まで追いやれたのが不思議でなりせん。
私は星欧に、本国に戻れたのならば、その辺を中心に再研究したいと思います。
その際は先生のご指導ご鞭撻を何卒お願いいたします。
それでは先生、失礼いたします。
追伸
一昨日と今日の写真はまだプリントできていませんので今回の手紙に同封が出来ません。
申し訳ございません。
最悪、私の身に何かがあっても誰かの手で先生の元へ届くように手配しておきます。
気づいている方が多数かと思いますが、初代ゴジラとマイナスワンのオマージュです。