なお実態はついうっかりどころではないと言えるかも。
親愛にして尊敬する我が師、サー・マーティン・ジョージ・アストンへ。
先生、まず最初にお詫びいたします。
手紙の冒頭で突然の謝罪とは先生は理解できないかもしれませんが、魔種族研究家であるサー・マーティン・ジョージ・アストンの弟子として心よりの謝罪を申し上げます。
そして何故私がこの様に手紙の冒頭で突如としてお詫びを申し上げたかの説明を、ランプを友としてこれより記させて頂きます。
我がキャメロットの、星欧における友好国であるオルクセン王国とエルフィンド王国。
この魔種族達によって成り立っている2つの国家が産する数々のものの1つに、私たち人間族から見ると奇跡の技としかみえない『刻印式魔術』を利用した数々の素晴らしい道具があります。
その中の1つに冷却に関する刻印式魔術もあり、植民地をはじめとする海外各国から多大なる量の食料を輸入している我が国がなんとしても、1つでも多く輸入したい物となっているのは先生もご存じの通りかと思います。
私もその恩恵に預かり、更に命を救われた者の1人でもあります。
その刻印式魔術ですが、なんとほぼ同等の物がこの秋津洲にも存在しておりました。
その秋津洲に存在する同等の物ですが、仮に『筆記式魔術』と呼ばせて頂きます。
そしてこの存在が私が先生へ謝罪しなければならない理由でもあります。
お優しい先生ならば、存在自体を知らなかったのであれば致し方ないと仰ってくださるかと思いますが、私はその存在に触れ、説明も受け、更に更に・・・それを先生へとそれを贈っているのです!!
愚かな私はそれを犬系コボルト族から受け取る際に秋津洲語とはいえ説明を受け、通訳氏がしっかりと齟齬なくキャメロット語に通訳してくれたにも関わらず、そもそも魔種族達が共存している国にかかわらず、受け取った物を『近代化が始まったばかりの後進国のまじないの1つなのだろう』という愚かな判断をして、『先生の研究の役にたつかもしれない魔種族が関わっている民俗上の道具』としか判断せずに、先生へと贈っていたのです!!
その先生へと贈った『筆記式魔術』を利用した品ですが、昨年の夏に訪れた山奥のジンジャにて頂いた護符です。
私はこれを『印刷された強盗避け、火災避けの効果があるとされている巨狼族とコボルト族が描かれている護符』と記して手紙と共にお贈りしたと思います。
この護符が実は『筆記式魔術』が施されている物でした。
この護符は実際に強盗避け、火災避けの効果があったのです!
そしてこれも謝罪しなければならないことなのですが、わたしはそのジンジャで2枚の護符を頂いたのですが、キャメロット人の私には記されている文様や秋津洲語が理解できず、『1種類の護符を2枚』頂いたと解釈していたのですが、実際には『2種類の護符を1枚ずつ』頂いていたようなのです。
そしてこの事実が判明した理由ですが、昨日またハナブサ氏とタシロ氏が公使館を訪れてくださり、魔種族魔獣談義に華を咲かせていたところ、私が手持ち資料の1つとしていた資料の山の中に入れていた護符がこぼれ落ちました。
それを見たハナブサ氏が『珍しい物をお持ちで。中々の効果でこの国でも手に入れられる者は少ない物です』と言ってくださり、私は『それはどういうことですか?』と尋ね返しますと、ハナブサ氏とタシロ氏は『ご存じではないか。これはご説明しないと』という顔をされたのですが、私たちの間に座っていた通訳氏は大変びっくりした顔をされ、『渡されるときに私が通訳を誤りましたかもしれません・・・』と気落ちしつつも責任を感じている声で言いました。
私はどういうことかと思いましたが、とりあえず4人で状況の整理をすることにしましたところ、全てが、何もかも、責任はこの私にあったのです!
先生お許しください!!
そして心労を掛けてしまった通訳氏にも大変申し訳なく思います!
まず通訳氏ははっきりと『この護符はそれぞれ強盗避け、火災避けに効果がある護符です』と通訳してくれていました。
この私がはっきりと覚えているから間違いありません。
通訳氏には何の非もありません。
しかし私は先ほど記しましたとおり、『近代化が始まったばかりの後進国のまじないの1つなのだろう』という愚かな判断をして、詳細を尋ねずにそのままバックへとしまったのです。
そのため通訳氏は、私がこれの存在を知っているものと受け取り、通訳が続いてこともあり、使い方の説明が渡してくれたコボルト氏からなかったこともあり、護符のことにはそれ以上ふれなかったのです。
しかしこれは魔種族が生み出した奇跡の技の品だったのです!
私の手元に残った1枚の護符の使い方はハナブサ氏とタシロ氏が詳しく教えてくださいました。
効果の持続期間は数年ほどだそうですが、この護符を壁に貼り、夜暗くなってから灯りもなくこの前を通り過ぎるとなんと大きな犬の鳴き声が護符からするのです!!
その効果は間違いありません。
なぜならば1時間ほど前に公使館一同が揃い、実験をして確認したからです!
日が暮れ、わざと明かりを落とした公使館の暗い廊下にこの護符を張りました。
最初はランプをもって護符の前を通過しましたが、何も起きませんでした。
しかしランプを持たずにその前を通過すると、激しい犬の鳴き声がその護符からしたのです!
これには立ち会った公使館一同、公使閣下や公使夫人からたまたま非番だったので興味本位で見に来ていた海兵隊員まで全てが驚きました!
その後何度も実験を繰り返しましたが、その効果は変わりませんでした。
この様な物が屋内各所にあれば確かに強盗避けになることは間違いありません。
なにせ侵入した時点で気がつかれるのですから、これを購入できる程の財産を持っている家なら、当然の如く警備担当もいることは間違いないでしょうし。
そして警報を避けてランプをもって侵入すればその灯りで侵入が気がつかれるのでしょうから。
弱点と言えば、紙にインクで記されているので屋外での使用が困難という一点でしょうが、それでも大変効果があるものであるといわざるを得ません。
屋内に侵入されてから察知するという弱点はありますが、強盗に対して対処する時間が発生してしまうわけですから。
そして先生にお贈りしたものが『火災検知の筆記式魔術』の護符だそうで、一定以上の熱さになると、やはり激しい犬の鳴き声がするそうです。
大変高価な物であり、ハナブサ氏もタシロ氏も現物を持っていないそうなそうで、実際に効果を目にすることは出来ませんでしたが、先生ご自身の手で是非ともご確認ください。
燃やす必要はないそうです。
ある程度火に近づけるだけで動作するそうです。
そしてこの『筆記式魔術』といえるものですが、私はそれをもう1種類目撃していました。
その目撃していたもう1種類の筆記式魔術の品ですが、冬に見学した
ヒドラ死体の行進時にヒドラの死体に貼られていた紙がそれだそうです。
手紙にて『あちこちに何かが書かれた紙が何枚も貼られている』と記した物が筆記式魔術の品だそうで、その効果は『冷却』だそうです。
腐敗防止のために貼られていたそうです。
その護符を実際に入手したわけではないので、その冷却の効果がどの程度のものであるかはわかりません。
ただ秋津洲においてそれを利用した室内や衣服の冷却装置は存在していないという証言が通訳氏、ハナブサ氏、タシロ氏の口からされているので、夏期には効果が殆どない、冬季にのみ効果がある程度の冷却能力である可能性が高いと思われます。
他にも筆記式魔術はあるとされているそうですが、ハナブサ氏、タシロ氏も実物は見たことがなく、彼らが聞き取りをした魔種族ですら見たことがないものがあるそうです。
さらには筆記式魔術自体が魔種族の秘匿技術でもあるそうで、人間族もその存在を知らない物や、逆に人間族が作った創作作品によって登場した物がいつの間にか実在するとされてしまった物もあるそうです。
なのでこれから記す筆記式魔術の品は存在しないものもあることをご了承ください
・姿隠しの筆記式魔術
それを身につけた者の姿が回りから見えなくなるという魔術。現品確認を人間族、魔種族共にできず。
・姿変えの筆記式魔術
それをつけた者の姿を他の物の姿に変えることが出来る魔術。現品確認、人間族のみ出来ず。魔種族からは過去には存在していたという証言。
・遠見の筆記式魔術
それをつけた者が相互、もしくは片方のみが相手の視界を得られるという魔術。現品確認を人間族、魔種族共にできず。
・荷見えの筆記式魔術
荷物内や外箱に記した魔術によって大量の荷物の中から、もしくは隠した荷物を発見しやすくなるという魔術。数はかなり少ないものの現存している模様。ただし現在も生産できるかどうかは不明とのこと。
以上となります。
先生、愚かなこの弟子を何卒お許しください。
それではいよいよ暑くなってきた秋津洲より失礼させて頂きます。