秋津洲国における魔種族、魔獣報告   作:koe1

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-秋津洲国における魔種族、魔獣報告 二十二通目-

親愛にして尊敬する我が師、サー・マーティン・ジョージ・アストンへ。

 

 

先生、いよいよ秋津洲に地獄の暑さが訪れる夏となりました。

湿度は相変わらずですが、幸いなことに昨年よりは気温がずっと低く、さらにオルクセン公使館から頂いた『冷たい物』のおかげで、なんとか過ごせそうです。

そして秋津洲における魔種族魔獣研究についても、先日のウシオニ討伐以後、なぜか私が英雄とされてしまったことから、秋津洲に住まう人間族と魔種族達の尊敬を勝ち取ってしまい、各所で依頼が通りやすくなってしまい、研究が進みやすくなってしまいました。

愚かなキャメロット人が1人、拳銃を放ち、逃げ回り、騎兵突撃をしただけだというのになんたる喜劇でしょうか。

なお、直接魔種族と会うときは写真の効果もかなりのもののようで、こちらもすんなりと合うことが出来るようになりました。

私が魔獣退治の英雄であることと、既にこちらに来て4機目となった写真機の威力も大きいようです。

常に最新型の写真機を、徐々に小さくなっていく、持ち運びやすくなった写真機を父に黙って贈ってくれる兄には感謝以外のなにものもありません。

後は本も贈ってくれれば完璧なのですが・・・

 

話を元に戻しまして、魔種族達に対する写真の効果についてですが、どうも私が撮影し、贈った写真を受け取った魔種族達がそれを魔術力による意思伝達で他の魔種族達に伝え、かなりうらやましがられているようなのです。

もちろん、秋津洲のタテハマに代表される各貿易港やこの首都では秋津洲人や外国人による写真館は既に多数存在していますが、秋津洲という国家全体からしてみるとまだ珍しいもののようで、どうやら私のせいで写真に写るということが魔種族達の間での一種のステータスになっているようです。

それらのおかげで、ようやく未だに合うことが出来ていなかったタヌキという犬に似ている動物のコボルトと、猫系コボルトにあうことが出来ました!

 

まずタヌキ系コボルトですが、秋津洲を構成する4つの島の内の1つが本来の生息地だそうです。

ただその島以外のジンジャの神官として任じられることがあるそうなので、その島以外の秋津洲全土に数はかなり少ないながらも居住しているそうです。

元々その島ではタヌキ系コボルト族と狐系コボルト族との間で覇権争いがあったそうなのですが、人間族がそれに巻き込まれたそうです。

巻き込まれた人間族はどちらの味方になるというわけではなかったそうですが、結果的にタヌキ系コボルト族に利する行動をとってしまい、敗北した狐系コボルト族はその島から全面退去したそうです。

現在でもその島には狐系コボルト族は1頭も住んでいないそうです。

 

続いては星欧においては珍しい動物である猫のコボルト達ですが、こちらは特にこれといった居住地はなく、ジンジャの神官になることは少なく、人間達に紛れての市民生活をおくっているそうです。

そのため、人間族の間でも猫系コボルト族が存在することを知らない者もそれなりにいるそうです。

ただ時折、ランプの油を舐めてしまうという悪癖をおこなってしまい、猫系コボルト族の存在を知らない人間族を怯えさせたり、ランプに近づく行為が放火をしようとしていると勘違いされて、住んでいる町や村から追放されてしまうことが時々あるそうです。

なお彼らがランプの油を舐めるという、彼ら自身ですら『悪癖』と理解していることを何故おこなってしまうかですが、秋津洲でのランプの油は、星欧におけるロウソク原料やランプ油と同様に植物性と動物性の物があり、秋津洲においては動物性の物は主として鯨の脂を絞った物だそうです。

そして猫系コボルト族は海洋生物が大好物だそうで、ランプをつけた際の鯨獣脂の匂いに引かれ、してはいけない行為と理解しつつも、時折我慢できずに舐めてしまうそうなのです。

 

なお狐系、タヌキ系、猫系コボルト族に共通する魔術力が『相手に幻覚を見せる』という能力をもっているそうです。

ただその方向性がタヌキ系と狐系の2種族と、猫系ではそれぞれ違うそうです。

まずタヌキ系と狐系ですが、自身の姿を他のありとあらゆるものに見せかけたり、ありもしない幻覚をみせたりということが可能だそうです。

ただし彼ら種族も全体としても魔術力の低下が起きており、それらをおこなえる者は数少なくなっているそうです。

続いて猫系コボルト族ですが、彼らは自身の姿を人間族に見せかける事のみができるそうです。

そして彼ら猫系コボルト族はその能力に特化しているためか、今回の聞き取りでは種全体が未だにその能力を保持しているそうです。

なお先ほど『猫系コボルト族は人間達に紛れての市民生活をおくっている』と記しましたが、彼らは元々その能力をもって皇帝の命令で人間族として生活し、『皇帝の秘密警察』として活動していたようです。

ただその秘密警察の任務は皇帝に逆らう者を弾圧するという目的ではなく、市民生活全般の調査が主任務だったようです。

狐系コボルト族については魔術力による意思伝達能力があるということは既に過去の手紙でお伝えしていますが、タヌキ系、猫系のコボルト族もその能力を、犬系コボルト族と違い未だに全頭が有しているそうです。

ただしその魔術力による意思伝達の到達可能距離は1と1/2マイル程度だそうで、探知能力に関してもその倍ほどの3マイル程度と犬系コボルト族と変わらないそうです。

 

なお狐系、タヌキ系、猫系の幻覚能力をそれぞれ体験させて頂きましたが、一種の恐怖といえるものでした。

まずタヌキ系コボルト族でも副族長の方がみせてくださった幻覚は、秋津洲陸軍歩兵1個中隊を出現させるものでした。

私と通訳氏と護衛の警官3人、そして同席していたツノダ女史の6人は存在していなかった陸軍兵士が皇帝居城の庭に突如として現れ、彼らが行進する姿をまざまざと見せつけられました。

なおこの行進は私達6人以外にも、付近にいた皇帝陛下の召使い等も目撃しており、特定の者を選んで見せるというものではなく、ある一定の範囲内に入り込んだ者全てに見せるという能力である可能性が高いと思われます。

ただこの能力にも弱点があり、その幻覚に地面や弱い雨以外の何かが触れると消えてしまうそうで、実際に私が恐る恐る触れた兵士は消えてしまいましたし、ツノダ女史が軽く投げた石に当たった兵士も消えてしまいました。

 

続いて狐系コボルト族が得意とするのが、存在しない建物をみせる幻覚だそうです。

これは先ほど説明したタヌキ系コボルト族の幻覚とは違い、特定の者を選択しての幻覚だそうです。

ただそのためかその効果が凄まじく、こちらも狐系コボルト族の副族長の方が私にかけてくれた幻覚は触っても消えるどころか、触れたような感覚がはっきりとあり、実際に幻覚であるはずの突如として出現した秋津洲の伝統的邸宅の中に入っていくことも可能なほどでした。

しかしその幻覚にかかっていない通訳氏や護衛の警官達、ツノダ女史からしてみると何もない広い庭で私が扉を開けるような動作をしたり、廊下を歩いているような直線的な動きを繰り返しているようにしか見えなかったそうです。

この狐系コボルト族の魔術効果は1昼夜程あるそうですが、幻覚にかかっている者に強い衝撃を与えても解けるそうです。

 

そして彼らが共通して持っている他の物に見せかけるという能力は凄まじく、人間族や机やテーブル、木や他の動物にも見せかけることが可能でしたが、見せかけている物のサイズはその見せかけている物のサイズに準拠していますが、実際に彼らがそのサイズまで大きくなっていたり小さくなっているというわけではないので、触れてしまうとすぐわかってしまうそうで、実際に私も人間の頭程度のサイズの岩に姿を変えたタヌキ系コボルト氏に触れようとすると、何もない場所で手に何かがぶつかってしまいました。

そのため、彼らとしては何かに見せかける際は、可能な限り自身のサイズに似たようなサイズの物を選ぶそうです。

なおこの他の何かに見せかけるという能力はタヌキ系、狐系共にある一定の範囲内に入り込んだ者全てに見せるというものである可能性が高いと思われます。

 

つづいて猫系コボルトの人間の姿に見せかけるという能力ですが、こちらも大変凄まじく、完全に人間の姿でした。

もちろんこれはタヌキ系、狐系でも出来ることですが、彼らが凄いのは、少なくとも手を握ったり、身体に触れたりする程度ではわからないということです。

タヌキ系、狐系コボルトの人間族の姿にみせる幻覚ですが、握手をすると人間の手ではありえない違和感があり、すぐにわかってしまいます。

他にも身体に触れると毛に触れたように感覚があり、人間族ではないことがわかってしまいます。

しかし猫系コボルトの人間族の姿にみせるという幻覚は握手をしても、身体に触れても違和感や毛に触れたような感覚が全くなく、人間族と握手し、触れているような感覚なのです!

おそらくですが、狐系コボルトの建物の幻覚同様に、触れたことすらも誤魔化してしまう幻覚も同時にかけていると思われます。

大変驚くべき能力かと思われます。

ただそんな彼らの正体が露見してしまう弱点の1つが、先ほど紹介しました『鯨油のランプの油を我慢できずに舐めてしまう』ことだそうです。

逆をいえば、鯨油等の獣脂系油を使っていない場所ならばまず正体は露見しないともいえます。

 

なおこれらコボルト系3種族は、他の魔種族同様に人間族よりも体力等に優れています。

特に猫系コボルト族の身体能力は恐ろしく、軽いジャンプでも建物2階程の高さまで届く程でした。

彼らが本気を出したとき、もしくは何かの足場を利用したときはどれほどの高さまで届くジャンプが出来るのか全くわかりません。

もちろんというべきでしょうが、彼らの写真も撮影しましたのでこの手紙に同封させて頂きます。

なお星欧の・・・オルクセン在住のコボルト族と違い、秋津洲在住の犬系、猫系、狐系、タヌキ系の各コボルト族の各種族内での体格差は殆どなく、私たち星欧人よりは低いものの、秋津洲人の成人男子とほぼ同様の身長をもっており、その身長は約5フィート前後となっています。

 

 

それでは先生、湿気と暑さが支配する秋津洲より失礼させて頂きます。

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