秋津洲国における魔種族、魔獣報告   作:koe1

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新たなる魔種族が登場?


-秋津洲国における魔種族、魔獣報告 二十七通目-

親愛にして尊敬する我が師、サー・マーティン・ジョージ・アストンへ。

 

 

先生、秋津洲の冬は今年も大変辛いです。

春が一日でも早く来ることを祈る毎日です。

身の危険を感じるほどの秋津洲の寒い冬のため、魔種族魔獣の調査に関しては書籍や公文書の調査が中心となっており停滞しておりますが、先生に報告するべきことが2点ほどございます。

 

まず1点目ですが、先日秋津洲の歴史においてワイバーンの運用に関しての魔種族と人間族間での誤解が解けたことにより、春を目処にこの首都の皇帝居城においてワイバーンによる大パレードを実施することとなりました。

過日のウシオニ騒動により戦場となったため、ただでさえ少なかった建物がほぼ完全になくなった皇帝居城の東側に仮設の『クウバ』を設置するそうです。

皇帝陛下もご臨席しされるとのことで、私も何とか見学をしたいものです。

そのため皇帝居城東側では、人間族魔種族が共に『クウバ』建設の前段階である整地作業にあたっており、時折その様子を見学に行きましたが、人間と体格がほぼ変わらない犬系コボルト族ですら人間族より大きな力を持っているのがはっきりとわかり、オーク族、オニ族共に大変頼もしい限りでした。

なおその際、少数ですがドワーフ族がいるのも確認できました。

工事現場は荒っぽい作業がおこなわれているので近づくと危険とのことで、直接ドワーフ族から話を伺うことは出来ませんでしたが、ハナブサ氏やタシロ氏に確認を取ると、さほど多くない勢力ではあるがドワーフ族も秋津洲にも在住しており、主として建設、金属加工、鉱山開発、酒造業に従事しているそうです。

オニ族やコボルト族、オーク族と違い、軍事的義務は本人達が希望しない限りはないそうですが、彼らの居住地近くに魔獣が現れると真っ先に義勇兵として駆けつけるそうです。

なおその気性は気持ちが良いほどの豪放磊落だそうです。

 

そして2点目です。

こちらは秋津洲に於ける魔種族調査に関して1点目より重要である報告です。

ロヴァルナと秋津洲間の未確定地となっている秋津洲北方の島嶼群の1つに、星欧においてあまりの悪逆非道さと不潔さから、人間族や他の魔種族からの圧迫を受け続け、最盛期には当時の欧州の人間族より数が多かったという説もあるにも関わらず、早々に絶滅するに及んだゴブリン族らしき魔種族がその未確定地の北方諸島群の1つに未だ生息している可能性があるそうです。

ただはっきりとした情報ではなく、秋津洲政府ですらその生息が噂されている北方群島の1つが広大なため、状況を把握しきっていないそうです。

そのため、ロヴァルナとの未確定地係争を有利と運ぶために春にある程度の規模の軍をその北方諸島群の1つに送り込むそうです。

先生からすると、いきなり軍隊派遣とは荒っぽいと思われるかもしれませんが、秋津洲においても人間族と魔種族連合と、ゴブリン族と推測される魔種族との間で長年にわたり激しい戦いがあったそうです。

 

まず秋津洲に於けるゴブリン族と推測される魔種族との係争の歴史について私が理解できた範囲で記させて頂きます。

およそ1400年ほど前から皇帝陛下率いる人間族と魔種族の連合軍と、ゴブリン族と思われる魔種族との本格的武力衝突が起きたそうです。

もちろんそれ以前から散発的な衝突は多々あったそうですが、秋津洲側の記録にある限り、最初期においては魔種族ではなく人の形をしている魔獣と思われていたほど意思の疎通がとれず、さらに凶暴この上なかったそうです。

これらに関しては星欧の伝承に残るゴブリンの生態とほぼ同一であるといえます。

そのため数百年にわたり人間族や他の魔種族達が個別に討伐を繰り返していった結果、その生息範囲はこの秋津洲首都のある島の北側・・・ちょうどこの首都がある北側まで生息範囲が狭まっていったそうです。

そして先ほど記しましたとおり、約1400年前から当時の皇帝の命令により秋津洲の国家方針としての本格的な討伐に移行していったそうです。

なおその際の最高司令官が大将軍職だそうで、それが転じて騎士達の長たる役職になったそうです。

 

そのゴブリンと思われる魔種族の国家をあげての本格的討伐に入ってから、未だ皇帝陛下に従っていなかったゴブリン族の生息域と重なっていた地域に居住していた人間族や他の魔種族が続々と皇帝に従っていったそうです。

そして約1000年ほど前にゴブリン族と思われる魔種族を秋津洲首都のある島から絶滅させたそうです。

そしてその戦いの最中に、彼らが魔獣ではなく魔種族であることが判明したそうです。

そのきっかけはゴブリン族と思われる魔種族の一部が降伏すると申し出たことだそうです。

ただ言語の相違以前のレベルで意思の疎通は難しかったそうで、居住域が重なっていた人間族や他の魔種族ですらその言語を全く理解することが出来なかったと記録にはあるそうです。

正直これは歴史からみてもあり得ないことだと私個人としては思っております。

居住域が重なっていればある程度の接触が発生するため、双方で最低限度の意思の疎通が出来るようになるはずですが、皇帝陛下に従うようになった人間族、魔種族共にゴブリン族と思われる魔種族との言語による意思疎通は誰ひとりとして全く出来なかったと記録にはあるそうです。

ただ身振り手振りで最低限度ギリギリの意思疎通がとれたこと、武器を使う、粗末であるか衣服を纏い、道具や住居を作る等から魔獣ではなく魔種族であるとされたそうです。

しかしその性質は悪逆非道で、降伏したにも関わらず全く従わない、それどころかすぐに反乱を起こしたりしたそうです。

ただこれには『反乱』に関しては異説があり、そもそも降伏ということを理解していなかったのでは?と当時の軍人からの報告書に記されているそうです。

そのため当時の皇帝や軍の方針としては、従わせることは困難であり絶滅以外あり得ないということになり、魔種族側からも反対の声が一切上がらなかった程だそうです。

そして先ほど記しましたとおり、約1000年ほど前にゴブリン族と思われる魔種族を秋津洲首都のある島から絶滅させたそうです。

 

なお秋津洲首都のある島の北側にも巨大な島があるのですが、この島は約200年ほど前まで秋津洲領でなかったため、詳細は不明だそうですが、ここにもゴブリン族が居住していた痕跡や伝承はあるそうなのです。

ただその島に住んでいた人間族や他の魔種族によって約600年ほど前にはやはり絶滅に追い込まれたらしいというのが、秋津洲の魔種族研究家の間での定説となっているそうです。

 

ちなみに私がその絶滅に追い込まれた魔種族を『ゴブリン族と思われる』としているのは伝承等に遺るその性質だけではなく、複数枚のイラストやその外見に関する記録も残されており、それらが星欧のゴブリン族とほぼ一致するためです。

そのイラストや外観に関する事も下に記させて頂きます。

 

・身長は3~4フィート前後で子供のような低身長。

・時折、5~6フィートの族長と思われる者もいる。

・皮膚の色は緑。

・いくら身体を清めてもとれない悪臭。

 

イラストに関しましては、私が模写した物と、写真機で接写に成功した物両方を手紙に同封させて頂きます。

そしてこれら外観は星欧に遺るゴブリン族の特徴とほぼ一致しており、その性質に関しては既に述べたとおり、こちらもほぼ一致しております。

ただ研究家として現任出来ていないので断定はせず、『ゴブリン族と思われる魔種族』という表現にさせて頂いております。

 

話を戻します。

前政権の中期以降、ロヴァルナの道洋進出が始まったため、秋津洲でも北方領域の調査が盛んにおこなわれたそうなのですが、その際秋津洲首都のある島の北の巨島にすむ人間族や魔種族の極一部より、北の巨島の北東にある大きな島の1つに小人が住んでいる。

その小人は緑色の肌をしていてとても凶暴で、すぐに襲いかかり、奪いつくし、殺しつくすのでその島には誰も近づかないとの情報が得られたそうです。

当時の前政権は魔種族の可能性があると判断し、すぐに皇帝に問合せをすると、外見通りなら既に秋津洲本国では絶滅したゴブリン族と思われる魔種族で大変凶暴で危険であるとの警告を発したそうです。

これは実際に前政権に返答書を記したツノダ女史の証言となっております。

しかし前政権はロヴァルナの脅威の方が上であるとして、その島に小規模な要塞を築いたそうですが、当初は『緑色の肌をした小人』との接触はなかったそうです。

その『緑色の肌をした小人』と最初に接触したのは、秋津洲と係争していたロヴァルナだったそうです。

彼らは秋津洲との交渉のためにその要塞に近づこうとしたそうですが荒天のために失敗、その島の別な湾で天候回復を待ったそうなのですが、水や食料の補給のために上陸した艦長や副長も含まれていた一行をこの小人達が襲撃したそうです。

秋津洲側の記録によると、軍人である彼らも激しい抵抗をしたそうですが、最終的には敗走した上に、停泊中の艦との連絡も絶たれ、島の奥地へ逃げ惑うこととなったそうです。

ただ神の恩寵でしょうか、早期に秋津洲側の警戒部隊に発見され、彼らによって救助されたそうです。

ところが残されたロヴァルナ艦では経験豊富な上級士官を欠いたためと襲撃を秋津洲によるものと誤判断した結果、味方が救助されている秋津洲側の要塞をたった1隻の軍艦で攻撃。

当然のことながら秋津洲側も猛反撃をおこなったため、ようやく軍艦1隻では戦力不足と理解し、ロヴァルナ艦は行方不明になっている一行が秋津洲側の捕虜となっている可能性があると判断し、彼らの私物を少し離れた海岸に置いたのち撤退。

救助したはずのロヴァルナ側から無警告での攻撃を受けた秋津洲側は救助したロヴァルナ人一行をスパイと判断し、結果として両国間での深刻な政治問題化したそうです。

そしてその事件以来本格化したロヴァルナとの係争のために、拠点を設け維持するのはともかく、島の奥地の探検をする余裕はなく、今日に至っているそうです。

しかし昨今、一時棚上げなっていたロヴァルナとの未確定領域の係争が再度勃発しているため、領土確認という観点からその島の測量をおこなうこととなったそうですが、ロヴァルナの一件や、ツノダ女史が強い警告を発しているため、数隻の軍艦と大隊規模の陸軍部隊の派遣が決定しているそうで、それにタシロ氏も魔種族研究家として参加することとなっているそうです。

そこで先生にお願いがあります。

先生のお手持ちの資料でゴブリン族に関するものがありましたら、送って頂けないでしょうか?

意外なことですが、星欧と比べれば比較的近年までゴブリン族と思われる種族と係争していた秋津洲には、そのゴブリン族と思われる魔種族の資料が大変少ない状況です。

時間的にタシロ氏の出発には間に合わないのは明白ですが、後に役に立つ可能性があると、この不肖の弟子は考えております。

何卒ご検討の程をお願い致します。

 

それでは冬が厳しい秋津洲より失礼させて頂きます。

先生も体調には何卒ご留意の程をお願い致します。

 

 

 

追伸

公使閣下より詳細は一切不明との前置きですが、エルフィンドとオルクセン間において何かしらの事件が発生しているらしいと聞き及びました。

本国外務省指示によりオルクセン公使館側に接触して情報を得ようとしているそうですが、芳しくないそうです。

グスタフ王と個人的親交があります我が師サー・マーティン・ジョージ・アストンが何かご存じであれば、王との友誼に反しない範囲でかまわないので外務省に伝達して頂きたいとのことです。

この不肖の弟子も、キャメロット国の安寧のために努力する1人の外交官として我が師サー・マーティン・ジョージ・アストンに願うものであります。

 

 




闇エルフさん達が・・・
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