尊敬する我が師、サー・マーティン・ジョージ・アストンへ。
いよいよ秋津洲も冬となりました。
先任の書記官が教えてくれたとおり、この少なくとも秋津洲の首都の冬は北からの冷たい風が吹く、乾燥しきった、夏とは真逆な過ごしにくい気候となっています。
流石にこの時期は長距離の調査は危険であると、半ば私専属となってしまった秋津洲政府より派遣してもらっている通訳氏に止められており、現在は秋津洲語を勉強しつつ、雇っている学生2人や通訳氏の協力を得て、秋津洲の魔獣や魔種族が記されている古典の内、歴史的事実が記されているものを中心に研究いたしております。
ちなみに、半ば同志となっているオルクセン公使館のコボルト書記官ですが、最大で半年程、最短でも4ヶ月ほどの長期休暇がおりたとのことで、この手紙を書いている前日に秋津洲を離れ、オルクセン本国に帰省をしており、正直寂しい限りです。
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オルクセン連邦国立公文書館館長決定
オルクセン連邦国防総省同意
オルクセン連邦女王陛下同意
この書類を星歴995年5月1日一部機密指定を解除し、一部分の一般閲覧これを可とする。
オルクセン王国陸軍製作書類
書類整理番号 875-03-AK001
書類政策時期 星歴875年3~4月
書類種類 陸軍各部署間往復書簡
書類題名 秋津洲国における魔種族に関する情報
書類通称 陸軍における『浸透戦術』に関する研究往復書簡
特記事項
当書類にある個人名は存命の多数のため、一部役職階級も含めて黒塗りとする。
黒塗り部分の機密解除時期は未定。
本文残余部分の機密解除時期も未定。
以下本文
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※注意 当書簡内容は機密扱いとする。
発 参謀本部兵要地誌局 ▉▉▉▉▉▉
宛 参謀本部通信局 ▉▉▉▉▉▉
宛 ▉▉▉警察▉▉▉ ▉▉▉▉▉▉
宛 外務省▉▉▉ ▉▉▉▉▉▉
宛 内務省▉▉▉ ▉▉▉▉▉▉
外務省へ出向し、秋津洲国へ派遣していた当局▉▉▉大尉、直接報告のために一時帰国。
本人より口頭並びに書面にて秋津洲国にて生息している魔種族、仮称『オニ族』、星欧諸国絶滅種族オーガ種もしくはその近縁種と推測、が有する魔術通信の能力についての報告あり。
以下にそれを記す。
・観測した最低通信距離 約32㎞
・観測した最大通信距離 不明
・魔術探知距離 不明
通信条件については晴天かつ平野部。
送信側と受信側に地形で遮るものはなし。
送信側が20メートルほど標高が高いと推定。
最大通信距離が不明なのは、▉▉▉大尉が公使館に到着し、秋津洲国側の監視がついていたためにそれ以上の遠距離への進出が不能なため。
『オニ族』の発言並びに調査した秋津洲国の古典の内容から、更にそれ以上の距離でも通信が可能でははないかと推測。
そしてオニ族は人間族とほぼ同じ体型であるものの、成人男性の体高は約3m、成人女性は2.2m程。
頭部に1本もしくは2本の角が生えており、皮膚色は赤銅色、もしくはキャメロット人やグロワール人のような白色。
人間族の間に交じっていても判別はつきやすいとのこと。
なお同国生息のコボルト族については、接触できた範囲では我が国とほぼ同等の能力並びに魔術の行使可能割合と推測。
以上、専門家である通信局▉▉▉▉▉▉並びに防諜関係者各員の意見を求む。
発 参謀本部通信局 ▉▉▉▉▉▉
宛 参謀本部兵要地誌局 ▉▉▉▉▉▉
附 ▉▉▉警察▉▉▉ ▉▉▉▉▉▉
附 外務省▉▉▉ ▉▉▉▉▉▉
附 内務省▉▉▉ ▉▉▉▉▉▉
『オニ族』なる、星欧未確認魔種族の魔術通信の最低観測距離が約32㎞という件に関しては、観測した▉▉▉大尉が何らかの欺瞞手段によって誤認させられている可能が大。
当局としてはあり得ない事例であると断言する。
よって通信距離については追調査の必要はなし。
発 外務省▉▉▉ ▉▉▉▉▉▉
宛 参謀本部通信局 ▉▉▉▉▉▉
宛 参謀本部兵要地誌局 ▉▉▉▉▉▉
宛 ▉▉▉警察▉▉▉ ▉▉▉▉▉▉
宛 内務省▉▉▉ ▉▉▉▉▉▉
仮称『オニ族』なる魔種族の魔術通信距離が最低でも32㎞ある場合、探知能力はそれ以上と推測できるので、秋津洲国駐箚公使館の防諜体制は強化すべきであると判断。
発 ▉▉▉警察▉▉▉ ▉▉▉▉▉▉
宛 参謀本部兵要地誌局 ▉▉▉▉▉▉
宛 参謀本部通信局 ▉▉▉▉▉▉
宛 外務省▉▉▉ ▉▉▉▉▉▉
宛 内務省▉▉▉ ▉▉▉▉▉▉
仮称『オニ族』なる魔種族の魔術通信距離が最低でも32㎞ある場合、外務省▉▉▉と同様に探知能力はそれ以上と推測。
よって我が国駐箚秋津洲公使館による諜報活動は脅威と判断。
我が国における防諜体制は強化すべきであると判断。
発 内務省▉▉▉ ▉▉▉▉▉▉
宛 参謀本部通信局 ▉▉▉▉▉▉
宛 参謀本部兵要地誌局 ▉▉▉▉▉▉
宛 ▉▉▉警察▉▉▉ ▉▉▉▉▉▉
宛 外務省▉▉▉ ▉▉▉▉▉▉
参謀本部通信局よりの情報が真実であった場合、我が国駐箚秋津洲公使館の諜報能力は脅威であると判断。
内務省▉▉▉としては防諜に関して重大な懸念あり。
発 参謀本部兵要地誌局 ▉▉▉▉▉▉
宛 参謀本部通信局 ▉▉▉▉▉▉
附 ▉▉▉警察▉▉▉ ▉▉▉▉▉▉
附 外務省▉▉▉ ▉▉▉▉▉▉
附 内務省▉▉▉ ▉▉▉▉▉▉
▉▉▉大尉より、魔術通信受信時に繰り返し魔術探知を実施するも探知可能範囲に発信者を探知できず。
さらに魔術通信の発信方向も、何度観測するもその『オニ族』が居住している『ジンジャ』という神殿の方向で固定されていたとのこと。
参謀本部兵要地誌局全体の意見としてはこの通信距離については信憑性は高いと判断。
繰り返しであるが、追調査の必要はないでよろしいか?
発 参謀本部通信局 ▉▉▉▉▉▉
宛 参謀本部兵要地誌局 ▉▉▉▉▉▉
附 ▉▉▉警察▉▉▉ ▉▉▉▉▉▉
附 外務省▉▉▉ ▉▉▉▉▉▉
附 内務省▉▉▉ ▉▉▉▉▉▉
必要なし。
当局としては欺瞞であると断定。
ただし▉▉▉大尉へはその欺瞞方法については調査されるよう願いたし。
発 参謀本部兵要地誌局 ▉▉▉▉▉▉
宛 参謀本部作戦局 ▉▉▉▉▉▉
宛 陸軍省▉▉▉ ▉▉▉▉▉▉
宛 内務省▉▉▉ ▉▉▉▉▉▉
外務省へ出向し、秋津洲国へ派遣していた当局▉▉▉大尉、直接報告のために一時帰国。
本人より口頭並びに書面にて秋津洲国にて生息している、秋津洲在来種と推定の巨狼族(我が国の巨狼種より体高が30センチほど低く、全長で50センチほど小さい)並びにコボルト族(我が国に見られる大型種並びに小型種は現時点では確認できず。やや小型の中型種のみを確認)、人間族が共同でおこなった『オクリオオカミ』なる行軍隊列が由来と推定される移動時の隊列について報告あり。
隊列に自体については別紙参照。
『オクリオオカミ』なる行軍隊列は▉▉▉大尉が中心とした私的な研究会による、当局が支援した『私的かつ小規模な図上演習』等にて、小規模偵察以上威力偵察以下の状況かつ夜間もしくは森林地帯、気象条件が劣悪時の行軍並びに襲撃時に非常に有効ではないかとの結果あり。
部隊規模は全体で増強中隊程度とし、巨狼族並びに魔術通信並びに探知能力を有するコボルト族のみによって編成。
基本的には地形並びに敵情把握を任務とする『捜索』任務に当たるものとし、敵部隊を発見時には報告にとどめこれを迂回し、必要によっては敵本部並びに司令部のみを標的として攻撃殲滅できる戦力を有するものとする。
主戦力は巨狼族とし、コボルト族はその支援戦闘並びに探知、通信に従事するものと想定。
なお一部コボルト族は、秋津洲国での過去事例に鑑み、巨狼族に騎乗するのが効果的であると判断。
研究結果については別紙参照。
意見を求む。
発 陸軍省▉▉▉ ▉▉▉▉▉▉
宛 参謀本部兵要地誌局 ▉▉▉▉▉▉
宛 参謀本部作戦局 ▉▉▉▉▉▉
宛 内務省▉▉▉ ▉▉▉▉▉▉
興味深い意見である事を認める。
研究の余地はありと判断。
発 内務省▉▉▉ ▉▉▉▉▉▉
宛 参謀本部兵要地誌局 ▉▉▉▉▉▉
宛 陸軍省▉▉▉ ▉▉▉▉▉▉
附 参謀本部作戦局 ▉▉▉▉▉▉
内務省▉▉▉としては反対である。
研究内容を見る限り有効であることは認めるものの、巨狼族は憲兵任務があり、現在の巨狼族の数では憲兵を維持しつつそのような新規部隊を編制する余裕は無し。
憲兵任務に当たる巨狼族をもって編制するのは憲兵任務に多大なる支障が発生するのは明白であり、将来的に巨狼族の頭数が大幅に増えない限りは反対である。
発 参謀本部作戦局 ▉▉▉▉▉▉
宛 参謀本部兵要地誌局 ▉▉▉▉▉▉
宛 陸軍省▉▉▉ ▉▉▉▉▉▉
宛 内務省▉▉▉ ▉▉▉▉▉▉
作戦局としては実際に部隊が編制されない限りはこれといった意見は無し。
発 ▉▉▉▉▉▉ ▉▉▉▉▉▉
宛 参謀本部作戦局 ▉▉▉▉▉▉
宛 陸軍省▉▉▉ ▉▉▉▉▉▉
宛 参謀本部兵要地誌局 ▉▉▉▉▉▉
宛 内務省▉▉▉ ▉▉▉▉▉▉
宛 参謀本部通信局 ▉▉▉▉▉▉
宛 外務省▉▉▉ ▉▉▉▉▉▉
兵要地誌局▉▉▉大尉発案の捜索並びに『浸透戦術』に特化した、巨狼族とコボルト族のみで構成される新規編制部隊案に関して大変興味深いものを▉▉▉▉▉▉として感じる。
『偵察』については、現在大鷲軍団において『航空偵察』を研究中ではあるが、▉▉▉▉▉▉として可能な範囲で▉▉▉大尉発案に関して予備的な研究することを望む。
予算措置については、必要な場合は▉▉▉▉▉▉費より手当てすることも検討する。
参謀本部通信局においては秋津洲生息、仮称『オニ族』の魔術通信到達距離に関して予断を持たずに兵要地誌局、外務省と共に調査されることを強く望む。
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以下は機密指定のまま。
閲覧は不可とする。
コボルト書記官が重大情報であると判断し、直接報告のために帰国した際の各官庁でのやりとりです。