才能を捨てた天才と夢を追い続ける幼なじみ 作:RUKA1235
キャラの雰囲気ちょっと違うかも…
「ねぇ奏、今日放課後って暇?」
針生と買い物に行った翌朝。
平日は朝練のある千夏と、ギリギリまで寝ている奏は、朝に顔を合わせることはほとんどない。しかしこの日は朝練がなかったため、ゆっくり支度をしていた千夏と、姉・楓の寝相によってベッドから落とされた奏が、珍しく一緒に朝ごはんを食べていた。
「へー、人気芸人が事務所と契約解除かぁ」
「で、今日放課後は暇?」
「お、あの国民的グループが活動終了だって。一度ライブ行ってみたかったんだよね」
「奏、聞いてる?」
「ん? 聞いてるよ。有名俳優と女優の不倫の話でしょ?あの『運命って、そういうものだから』って名言出てたやつ」
「違う、全然違う。てか、やっぱり聞いてなかったでしょ」
「ごめんって。ほら、CM全部降板とか、気になるじゃん」
「歴史ドラマも降ろされるんでしょ?」
ちなみにこの会話、すべてフィクションである。
「で、本題。今日の放課後は?」
「放課後かぁ…えっと、今日は菜緒さんからの頼まれ事もないし……暇、じゃなかった。ちょっと予定が入ってて」
奏の脳内:
(やばい! 千夏が放課後の予定を聞いてくる時は、だいたい厄介なパターン! 花恋ちゃん関連? いや、それなら強制連行されるから違う。ってことは……体育館か来いってか!?)
最近の奏は、部活中の体育館に立ち入ることもある。それは、針生や勇人と放課後に約束があるため、待ち時間に観戦するという名目である。その時も基本的には嫌がりながらではある
(体育館で練習見ようってやつだ。絶対だ。千夏は限界まで練習してから帰る。そうなると今日公開の『ゾンビ・オブ・ザ・オブ・ザ・デッド』が……見れない!)
「へー、どこ行くの?」
「え、映画だよ。今日公開の超大作『ゾンビ・オブ・ザ・オブ・ザ・デッド』!」
「……奏以外誰も見ない気がするけど。じゃあ、明日でいいね?」
「いや今日しか……」
「明日でいいよね?」
「……はい」
「じゃ、体育館に来てね。上から見るだけでいいから」
「……やっぱりそうなるのね」
「帰りにスイーツ買ってあげる」
「よろこんでお供させていただきます」
──放課後、奏は迷っていた。
(行くべきか、逃げるべきか……でも映画……いやでもスイーツ……でもケン・マツザワ……!)
※ケン・マツザワ:『ゾンビ・オブ・ザ・オブ・ザ・デッド』主演の日系アメリカ人俳優
結局、決意した奏はホームルームが終わるなり教室を飛び出した。
──が、
「どこ行くのかな、奏くん?」
「ギクッ」
後ろから聞こえた声に恐る恐る振り返ると、笑ってはいるが目がまったく笑っていない千夏が立っていた。
「体育館行くなら、そんなに急がなくてもいいよね? まさか映画に行こうとしてた?」
奏は一歩ずつ後ずさりながら、必死に言い訳を探す。
「そ、そんなわけないよ……うん」
「なら一緒に行こっか」
「と、トイレ寄ってから行くから!先行ってて!」
「それなら待ってるよ」
千夏の一言で、奏の逃げ道は一瞬で塞がれた。
だが──
「じゃ、行ってくるから!!」
奏は突如ダッシュで逃走。もちろんトイレとは逆方向、階段の方へ。
(よし!成功だ!待ってろケン・マツザワ!)
笑顔で角を曲がろうとしたその瞬間──奏の足が止まる。
「は?」
制服の襟元をがっちり掴まれた奏。その視線の先には、男子バスケ部で一番の巨漢、2年の先輩。
「千夏さんとの約束、破る気か?」
「な、なんで……?」
見渡せば、そこには部活帰りと思われるバスケ部の2年生たちがずらり。
「え!?なにこれ!?どういうこと!?」
「ちーの予想通りだったな」
現れたのは針生だった。
「どーゆーことだよ!」
「お前が逃げると思った千夏がな、『捕まえよう』って提案したんだよ。みんな、お前のこと大好きな優しい先輩方だ」
「いや、全然そんな風に見えないんだけど!?」
すると千夏がやってきた。
「ち、千夏ごめんって!本当にごめんって!」
「はい、お願いしまーす」
「「「了解です!!」」」
千夏の合図で、先輩たちは奏をそのまま担ぎ上げ、体育館へと運んでいった。
「やめろー!くさいって!誰だよこの汗の匂いー!天井に頭ぶつけようとすんなー!!」
千夏と針生は、暴れる奏を運ぶ集団の後を追っていく。
──その一部始終を見ていた大喜と雛。
「奏と千夏先輩って、どういう関係なんだ……?」
「いや、普通の関係には見えないから……」
改めて見てもよく分からない