テクノブレイクして、目が覚めたらキヴォトスだった。
やはりイブシコ*1は赦されなかったらしい。
「──先生!」
「ここ、は…………」
目が覚めてだるさを感じる上半身を起こすと、広いガラス張りの部屋にいた。
高層階からの眺望はあまりにも馴染みの薄い景色だったが、前方に見える光の柱と青空に広がる白い光輪は、画面越しに何度も見た
「先生!」
「うぅ……」
深夜の三連戦*2によりIQはおーばーふろぉを起こしていたが、それでも賢者すらも通り越した
「先生!」
夢なのだろうかと考えながら自分の頬をつねるが、とても痛い。
それに、最後の発射をしたときに感じた胸の苦しさは間違いなく冗談にならないタイプのそれであったし、一人暮らしの今の自分を助けてくれる人はいない以上、どうしようもないのは事実だろう。
「──先生!」
「はいっ!?」
大きな声で呼びかけられ、思わず体が跳ねる。
慌てて声の方を振り向けば、そこには一人の女の子が────うわ、
「でっか」
「…………先生?」
訝し気な視線を前に、慌てて咳払いをして立ち上がる。
服についた埃を軽く払って居住まいを正し、正面にいるリンちゃん──連邦生徒会主席行政官である七神リン*4──と向き合う。
自分と彼女以外に人の姿はなかった。ここ数年に限っては親の顔より見た光景。
そう、ブルーアーカイブのプロローグだ。
「少々待っていてくださいと言いましたのに、お疲れだったみたいですね。声をかけても聞こえないくらい、ぼんやりされるとは」
「いや、申し訳ない」
「寝ぼけていないで、ちゃんと集中してください」
細部は違えど、彼女の発言はゲームの中で見たものと同一だった*5。
小さくかぶりを振ってから「ごめん、改めて説明してもらってもいいかな、七神さん*6」と声をかけると、仕方ないといった様子のため息が返ってきた。
「……分かりました。改めて、今の状況をお伝えします」
「頼むよ」
「どうやら自己紹介は不要のようですので省略しますが、貴方は私達が呼び出した先生……で間違いないでしょうか」
「俺…………ああ、いや。私も自信はないけど、恐らくそうだと思う」
プロローグの場面で、他に大人の姿はない。どうやら私が先生となっているらしい。
これがリアルすぎる夢にしろ現実味のない転生にしろ、その事実だけは間違いない。つまり、純愛らぶらぶえっちの最低要件を満たすことに成功した、という訳である*7。
「リンちゃんの方も事情は知らないの?」
「ええ。このような状況は遺憾に思いますが、とりあえず今は着いてきてください」
「早速、仕事?」
「そうです。先生でなくてはならない、学園都市の命運をかけた大事なこと……ということにしておきましょう」
おおむねシナリオ通りに話が進んでいく。
話の概要は把握しているため、思考のリソースはリンちゃんの万乳引力に逆らうことだけに費やしていく。二人っきりのエレベーターで鼻腔をくすぐる甘い香りに正気を削られるし、狭い空間に二人というシチュエーションはあまりにも体に悪い。
五感へと襲い掛かる刺激にもう限界だったが、命を落としそうなほどにシコっていたおかげで、下半身が動かないことだけが救いだった。
リンちゃんの話に相槌を打っていると、ようやくレセプションルームのある階までたどり着いた。チン*8、とベルの音が鳴ってドアが開くと、室内の光景に思わず顔をしかめた。これはまずい。
「ちょっと待って! 代行! 見つけた、待ってたわよ! 連邦生徒会長を呼んできて!」*9
「主席行政官、お待ちしておりました」*10
「連邦生徒会長に会いに来ました。風紀委員長、今の状況について納得のいく回答を要求されています」*11
「あぁ……面倒な人達に捕まってしまいましたね」
リンちゃんがため息をつく。
無理もない話だった。本来ならさっさとサンクトゥムタワーの認証をどうにかして、行政制御権を取り戻したいところなのに、こうして学園の生徒達に絡まれているのだから。
とはいえ、目の前にいる見覚えしかない少女達*12の言葉ももっともだった。今のキヴォトスは、ただでさえ最悪なブルアカ世界の治安の中でも、更に悪化している状態なのだ。各学園だけで対応するのも難しい。
クオリティを上げるために原作の内容もそれなりに把握しているつもりだけど、元来難しいことを考えるのは得意ではない。もっと海綿体で思考する環境に置かせてほしい。
小さくため息をこぼすと、リンちゃんがこちらを指していた。
「この先生こそが、フィクサーになってくれるはずです」
「──えっ、私?」
いつの間にか話が進んでいたらしく、全員の視線がこちらに向く。
年若い美少女達がこちらを見るという状況になれず、捕まらないか不安になる。少なくともこちらがみんなを見たら捕まるんだぞ? どこに視線向けたらいいんだろう……。
「ちょっと待って。そういえばこの先生はいったいどなたなの? どうしてここにいるの?」
「キヴォトスではないところから来た方のようですが……先生だったのですね」
「はい。こちらの先生は、これからキヴォトスの先生として働く方であり、連邦生徒会長が特別に指名した人物です」
こう聞くと、連邦生徒会長の人選は正しかったのか不安になってくる。本当に大丈夫なんだろうか。目の前の子達で成人向け同人誌*13描いてた奴だぞ。
「行方不明になった連邦生徒会長が指名……? ますますこんがらがってきたじゃないの……」
「状況が込み入ってて申し訳ない、早瀬さん。みんなも申し訳ない」
「い、いえ! っていうか、私の名前……」
「え? あー……」
何も考えずに名前を呼んでいたことに、ここでようやく気付いた。
「……実は、できるだけ生徒達の名前を覚えようと頑張ってる途中なんだ。一応、この場にいるみんなの名前は把握しているつもりだよ。よろしくね」
なんとかまともな言い訳を口にしながら内心冷や汗を流す。思いつかなかったら大変なことになるところだった。
「……先生は元々、連邦生徒会長が立ち上げた、ある部活の担当顧問としてこちらに来ることになりました」
連邦捜査部「シャーレ」
超法規的な機関であらゆる学園の生徒を所属させることができる、とんでもない組織だ。様々な場所で起きる事件を調べ、時に武力介入も含めて解決することができる。
そして、所属生徒と絆を深めると、先生と生徒の関係を超えた存在になれるという、あの連邦捜査部「シャーレ」である。再三確認するけど、本当にこんなのでよかったんだろうか。
「モモカ、シャーレの部室に直行するヘリが必要なんだけど」
「シャーレの部室? ……ああ、外郭地区の?」
リンちゃんが、リモートでモモカ*14を呼び出してヘリの用意を指示しているが、それができないことを知っていた。
「そこ、今大騒ぎだけど?」
「大騒ぎ?」
シャーレの建物付近は、現在ワカモ*15をはじめとした生徒達によって戦場と化している。つまりチュートリアルの舞台という訳だ。
……あれ? そういえば、指揮って誰がするの? 私?
「まあでも、もうとっくにめちゃくちゃな場所なんだから、別に大したことな……あっ、先輩、お昼ごはんのデリバリーが来たから、また連絡するね!」
「…………!」
「……大丈夫?」
「だ、大丈夫です。……少々問題が発生しましたが、大したことではありません」
大したことはあると思うのだけど、指摘するのは野暮なんだろう。
「……そういえば、ちょうどここに各学園を代表する、立派で暇そうな方々がいるので、私は心強いです」
「えっ?」
「キヴォトスの正常化のために、暇を持て余した皆さんの力が今、切実に必要です。行きましょう」
「ちょ、ちょっと待って!? ど、どこに行くのよ!?」
リンちゃんに連れられて、私達は外へと出ることになった。
…………これ、やっぱり私が指揮するの? 無理だけど?
【類語】果穂シコ(アイドルマスターシャイニーカラーズ)
二回戦:モミジと漫画のシチュ再現えっち
三回戦:イブキとアダルトグッズで初体験えっち
つんけんしてるタイプに見せかけて、話す場面では意外と好意的な反応が返ってくる。七神ってみんなとっつきにくいって思ってるみたいだけど、俺だけは知ってるんだよな、あいつの本当の顔──。
思い至ってからずっと
なお、本作先生は、ゆりかごから墓場まで派です。
P.S.
「お仕置きとして『悪いことをした生徒は、先生がその生徒とのエロ漫画を描く』という罰を始める」というネタを思いついたのですが、キヴォトスの治安を悪化させる結果にしかならなそうだなと思って止めました。