レグルスさんのヒーローアカデミア   作:いる科

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ヒロアカRTA、はーじまーるよー。
本編とは一切関係のない外伝です。


ヒロアカ×リゼロEX.『ケンセイノヒーローアカデミア』

 ──雄英高校に推薦一位で受かることは、剣王子 遥人(けんのうじ はると)にとってはとっくの昔から決定事項だった。

 ヒーロー名も三歳の頃に、『剣聖ヒーロー ラインハルト』にすると決めている。

 他の手段を用いて、素早くヒーローになることも出来たが、遥人は雄英での高校生活に強く惹かれていた。

 

 幼き日より、遥人に対等な友人は一人として居なかった。

 理由はただ一つ。遥人は、誰よりも強く、誰よりも賢く、誰よりも誠実だったからだ。

 遥人を知る者は、彼を『英雄になるために生まれた子』と称する。

 持って生まれたカリスマから、誰も遥人を遠巻きにすることはなかったが、それとは別に何か決定的な隔たりがあった。

 

 遥人にとってそれは、酷く寂しいことだった。

 だが、もしかしたら──ここでなら。

 ここでなら、遥人にも対等な友人が出来るのかもしれない。

 

「──行こう」

 

 そう口にする彼の美しく端整なかんばせには、未来に対する確かな期待が浮かんでいる。

 希望を胸に抱きながら、遥人はこの栄えある雄英高校の校門を潜った。

 

 

 

 ■ ■ ■

 

 1-A組の面々は、担任である相澤 消太の命令により、入学式に出席することなく、個性把握テストを受けさせられる事になった。

 内容は単純。

 個性を全力で使用し、体力テストを行うだけだ。

 

 問題があるとすれば──。

 

「──最下位は、除籍処分としよう」

 

 相澤から放たれた、冷酷なその一言だ。

 個性に難を抱える緑谷は酷く狼狽したが、一方で遥人は何処吹く風。

 涼しい顔で第一種目、50m走に臨む。

 

 遥人はスタート地点に立つと、瞑目した。

 緩やかな春の風に吹かれて、燃えるような赤い髪が揺れる。

 堂々としたその立ち振る舞いは、まるでそこだけ時が、赤き美丈夫に見蕩れて止まっているかのようで。

 

「……どうした、走らないのか?」

 

 相澤から催促が入る間もなく、遥人は目を開き、呟く。

 

「──授かった」

 

 ──ビュン。

 遥人は、風になった。

 その遥人の挙動を、目で追えた者は誰一人としていない。

 記録──0秒01。

 

「はぁあああああああ!!?!?」

 

「何今の!?」

 

 実質的にカンストしている異常な記録に、他の生徒たちがざわめく。

 

「『疾風』の個性だよ」

 

「にしても速すぎだろ……」

 

 個性がたまたま、種目にハマっただけ。

 ただの水を得た魚──ではないことを、相澤だけは知っていた。

 

 遥人には、持って生まれた個性とは別に、他者とは異なる才能のようなものがあった。

 それは、自らの望んだ個性を授かる力。

 個性ではなくただの体質として、遥人はその超人的な能力を備えているのだ。

 

 第二種目、握力。

 

「──授かった」

 

 遥人は握力計を破壊して、またしてもカンストの記録を出した。

 その衝撃的な光景に、他の生徒たちが、黙っていられるはずもなく。

 

「は!? 『疾風』つってたじゃんか!?」

 

「うん、今授かったのは『万力』だね」

 

「今授かったって言った!? 怖ェよお前!!!!」

 

 驚き身震いする瀬呂と峰田に、遥人は爽やかに笑いかけた。

 

「僕はただ、微力を尽くしているだけだよ。退学になってしまうのはちょっと困るからね」

 

「性格までイケメンかよ」

 

「完璧超人来たなー、流石名門……」

 

 謙遜も過ぎれば嫌味である。

 遥人にもその自覚はあるが、とはいえ、それ以上に言える手札を遥人は持ち合わせていない。

 ──遥人が、遥人自身に満足したことなど、ただの一回もないのだから。

 

「──っ゛!!」

 

 此方を強く睨んでくる爆豪の姿をみとめると、遥人は困ったように笑顔を返す。

 これは無論、火に油を注ぐ結果となった。

 

「敵じゃありません、ってか? オイ」

 

「高め合うライバルと、そう認識しているよ。その歳でそこまで個性を使いこなしているのは凄いと思う」

 

「同い年だろォが……!! 無自覚マウント野郎かよ! 腹立つなァ……!!」

 

「──気に障ったなら、ごめんよ。勝己」

 

「馴れ馴れしいンだよ、クソが」

 

 事実、爆豪のつっけんどんな態度には困り果てたが、遥人はそれが嬉しくもあった。

 友人として仲良くは到底なれそうもないが──。

 遥人に面と向かって立ち向かってきてくれたのは、彼が初だった。

 機嫌を良くした遥人は全ての種目においてカンスト級の記録を出し、個性把握テストをぶっちぎりの一位で終えた。

 

 全員がテストを終え、記録が発表された後、遥人は一目散に緑谷 出久の元へと向かう。

 除籍がウソと知って驚愕したまま動かない緑谷を労わるようにして、遥人は声をかけた。

 

「出久。お疲れ様。いきなり悪いんだけど、怪我を見せてくれないかな」

 

「え? う、うん……」

 

「ありがとう。それじゃあ──治すね」

 

「ええ!!?」

 

 授かった個性は『修復』。

 リカバリーガールのように当人の疲労を伴うことすらなく、緑谷の指の怪我はあっという間に治療された。

 

「す、すご……あ、ありがとう!! 剣王子くん!!」

 

「本当なら、ボール投げのすぐ後に治してあげたかったんだけどね。相澤先生に、公平を期すために止められてしまったんだ。すまなかった」

 

「謝ることなんて……!! 本当にありがとう!!」

 

「どういたしまして。また怪我とかしたら頼ってくれていいからね」

 

「……気持ちはすごく嬉しい、けど。頼ってばかりじゃダメだから、そうならないように頑張るよ……!!」

 

「──そうだね。お互い、頑張ろう」

 

「うん!!」

 

 何気ないやり取りの中で遥人は、緑谷に不思議なものを感じずにはいられなかった。

 誰しもが、遥人の圧倒的な強さに対して、敬意と恐怖を抱く。

 爆豪のような敵意でさえ心地の良いものに感じられた遥人にとって──。

 たとえそれが本人にとって当然の事だったとしても。

 

 緑谷の、一切の警戒心のない真っ直ぐな感謝は。

 畏怖や神格化の色が一切ない、対等で温かな言葉は。

 孤独に沈んでいた遥人の心を、容易く溶かした。

 

「ねえ、出久。僕で良かったら、友達になってくれないかな」

 

「ええ!? も、勿論だよ!!」

 

 こうして緑谷と遥人は、友達になった。

 これまで遥人が望み、渇望してきたものが──あまりにも、呆気なく手に入ってしまった。

 楽しく希望に満ちた高校生活は、まだまだ始まったばかりだ。

 

「ところで、剣王子くんって、個性沢山持ってるの?」

 

「遥人でいいよ、出久。沢山持ってるわけじゃなくて、そのときそのときに授かっているんだ。生まれ持った個性は一つだけ──『剣聖』だけだよ」

 

「授かるって……すごいね……。『剣聖』って響きも凄そうだし!! どんな個性なの?」

 

 ノートに凄まじい勢いで書きとめながら、緑谷は遥人に詳細を求める。

 隠すような話でもなかった。友達がそれで喜ぶなら、と、遥人は個性の説明をはじめる。

 

「そんな面白いものでもないけど……この聖剣を出し入れするだけの個性だよ。斬れないものはないし、絶対に壊れない代物なんだけど、厄介なのは、この聖剣自身が難敵と認めた場合にしか鞘から抜けない所かな」

 

「へぇ……!! 凄くかっこいいし、なんだか、勇者みたいだね」

 

「勇者か……うん。そう在れるよう努力していかなくちゃね」

 

 ──今のままで充分じゃないか、という疑問を、緑谷は抱かざるをえなかった。

 

 

 

 ■ ■ ■

 

 翌日の屋内対人訓練も、遥人は言うまでもなく勝利した。

 『サーチ』と『ワープ』の個性を授かった遥人は、訓練開始後僅か三秒で、核をヴィランチームから奪ってみせたのだ。

 

『ヒーローチーム、WIN〜ッ!!!』

 

「チートだ、反則だぁあ!!!? 勝てるかよそんなん!! 無理じゃん!!?」

 

「チート、か。耳が痛いね。君たちへの敬意も含めて、全力で事に当たらせてもらったけれど、癪に障ったならごめんよ」

 

「いや、いいよ……。お前ほんとに良い奴なのな。そっちの方が反応に困るわ……なんかこっちこそごめん」

 

 遥人の対戦相手だった上鳴は、チートだ、と喰ってかかった己を恥じた。

 遥人の眉尻はそれほどに分かりやすく下がっており、有り体に言えば凹んでいた。

 

「勝った方がそんな顔すんなよなー……」

 

 ごもっともであった。

 

 

 

 ■ ■ ■

 

 ──そして来たるは、USJ。

 13号の挨拶も終えて、いざ訓練というそのとき、ヴィランは現れた。

 

「オールマイト……平和の象徴。いないなんて……子供を殺せば、来るのかな?」

 

 ──遥人が動いたのは、相澤が「ひとかたまりになって動くな!」と生徒たちに警鐘を鳴らした、その刹那だった。

 

「──そこまでだ」

 

「……は? な──がっ……!?」

 

 授かった『ワープ』で即座に死柄木の元に移動すると、蹴りを叩き込んで即座に意識を奪う。

 真っ先に彼を狙った理由は、勘だ。

 

「死柄木 弔!? 一体、何が──お、こ」

 

「話も聞いてあげられず、すまないね。ただ、ここは雄英の敷地内だ。不法侵入は、一切許容できない。──しばらく、眠っていてもらうよ」

 

 次いで、遥人は混乱する黒霧の弱点を『サーチ』によって瞬時に暴く。

 首元に限りなく力を抜いた手刀を浴びせると、黒霧は抵抗することさえ出来ずに昏倒した。

 

 他の多くのヴィランに対しては、個性『威圧』を授かることで対処。

 実力の伴わない彼らは、『威圧』によるプレッシャーで、その全員が泡を吹いて気絶した。

 遅れてやってきた相澤が、遥人に声をかける。

 

「剣王子、よくやった……が、お前自身も守られるべき生徒ってことは忘れるな。結果オーライだが、あそこは俺に任せるべき場面だ」

 

「──数とリーダー格の強さから、畏れ多くも、僕が動くのが最善と判断いたしました。指示に従えず申し訳ありません、先生」

 

 そして遥人は、そのまま死柄木たちを──引き渡さなかった。

 

「もう少しお待ちください、先生。確認しなくてはならないことがあります」

 

「何をする気だ?」

 

「見ていてください。──授かった」

 

遥人は 『ファイバーマスター』を授かると、黒霧と死柄木を拘束。

 『抹消』によって二人の力を奪った状態で、『気つけ』によって、意識を取り戻させた。

 

「ぁ……? ん、だよ、これ」

 

「死柄木 弔……! ぐっ……う、動けない……!?」

 

「君たちに聞きたいことがあるんだ。出来れば強引なことはしたくない。なるべく、素直に答えてくれると助かる」

 

「ハッ!! クソチートが……!! やなこった……!!」

 

 遥人はそのまま、『真実吐き』によって情報を得ると──。

 浮かび上がってきた人物『センセイ』の人物像と居所を、授かった様々な個性の複数使用で特定する。

 

「……そこか」

 

 ──この日に起きたことは、歴史を変えた。

 まず、小さなことから言えば、情報をヴィランに流していると発覚した青山優雅が除籍処分となった。

 そして。──そして。

 

「なんという規格外。憎き仇敵、オールマイトよりも、そしてこの僕よりも……!! 遥かに優れた……個性……!! 欲しい。君の力を必ず、奪ってみせる。僕は──魔王だ」

 

「であれば、僕は『勇者』になろう。……初めての友人がそう言ってくれたからね。にしても……残念でならない。貴方のような力があれば、多くを救えるだろうに」

 

 ──『聖剣』が、抜かれる。

 その日AFOは、ひっそりと。

 ──誰にも知られることなく、遥人に敗れ、その命を落とした。

 

 緑谷 出久も、八木 俊典も──。

 爆豪 勝己も、轟 焦凍も。

 誰も、辛く厳しい真実を知ることなく。

 立ち向かう必要性すらなく。

 悪の脅威は、ここに絶たれた。

 

 十数年後、明らかにされるこの真実に、後の歴史家はこう語った。

 ──「もう全部あいつだけでいいじゃん」と。

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