人生満喫上位者in鬼門方面キヴォトスK-3   作:バージ

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本番はまだですが、一応前日譚的なアレのリンク張っておきます。ここのホシノはメンタルケアの甲斐あってかなり良くなってますからね!
お前のことだよ、相棒(空崎ヒナ)!! 18話



2-B5-先輩レスという名の病

 

 アビドス高等学校。かつてはキヴォトス最大の学園として名を馳せ、しかし現在は廃校の瀬戸際まで追い詰められている学校。自ら口にすることは無いものの、そんな学校の最後の生徒会員でもある小鳥遊ホシノは、一人おぼつかない足取りでゲヘナ学園の校区を歩いていた。

 学生が他の学校の校区に入るということは、普通であれば珍しい。ホシノがそんなことをしているのは、とある場所を訪れるためだ。ホシノが特に行く理由がある場所など、アビドスの外にはたった一つだけしかない。

 

 小鳥遊ホシノはとある…いうなれば先輩レス、とでもいうべき病を患っていた。それは人によって様々な症状を引き起こす病であり、症状の深刻さも人によって異なる。

 

 例えば。大切なものをなくしたのは自分のせいだと思い込み、自分のことが何よりも嫌いになって自分自身を傷つけ、周りで起こる様々なことが自分のせいであるように感じられ、勝手な思い込みで暴走し、挙句自分が犠牲になればいいと思い込むようになる。

 具体的に誰とは言わないが、そういった症状が併発することもある恐ろしい病である*1。一説によると現ゲヘナ学園風紀委員長をはじめとして、ゲヘナ風紀委員にはいくらかの罹患者が存在しているのだとか。

 

 この病の罹患者の中でも、特に小鳥遊ホシノについての問題は人より込み入っている。かつて先輩*2を失ってファースト先輩レスを罹患するものの、セカンド先輩*3によって発症を最低限に抑えられるという過去があった。その上で二人目の先輩もが失踪し、セカンド先輩レスが突き刺さったのである。

 以来今までに何度か、心が耐えきれなくなるたびに、ゲヘナ学園のとある家を訪れている。

 

 実のところホシノがその先輩の失踪に気付いたのはそう前のことではなかった。他所の学校への興味もなければ交流もないアビドスでは、そのことを知るまでに時間がかかったのである。

 ホシノも何とか隠してはいるものの、察している一部の後輩には心配されており、気晴らしもかねてイレギュラー対策競技大会に参加することを決定している。

 

 いまいちおぼつかない足取りでたどり着いた目的地。それは昨年のゲヘナ学園風紀委員長の家。ゲヘナにおいて住んでいる者のいない立派な家でありながら、誰に荒らされるでも奪われるでもなく、綺麗にその場に残りつづけている。

 それは今のキヴォトスでも極めて有名であり、数々の功績を残した人物。ゲヘナの星、遠星操夜の自宅であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ゲヘナ学園の廊下を話しながら歩く三人の人影があった。いずれもゲヘナ学園風紀委員会における今のトップたちだ。彼女たちの話題は近く開催されるイレギュラー対策競技大会についてであった。

 

「チーム戦部門にメンバーはどうされますか?ステージ4を見据えるなら最精鋭部隊から…」

「一人で出るわ。集団戦部門はスミカに任せる」

 

 筆頭行政官である天雨アコの言葉を退けたのは、風紀委員長にしてキヴォトス最強ともいわれる空崎ヒナ。

 今回のイレギュラー対策競技大会では大人数で挑む集団戦と、少人数チーム戦の二つの部門が開催される。そのうちのチーム戦において、ヒナは一人で参加することを決めていた。

 

「し、しかし、せめてバックアップを」

「アコ。私は一人で出ると言った」

 

 ヒナはにべもなくそういうが、特に機嫌が悪いという訳ではなく、これが普通の状態だ。責めているわけでもない、いつも通りの無表情、そして無感情がそこにある。

 

「それに集団戦部門は人数が多いからといって簡単にはならない。むしろチーム戦部門よりも数倍、数十倍の戦力を出してくる」

 

 ヒナは必要なことは口に出している。精強で知られるゲヘナ学園風紀委員会であっても、イレギュラー対策競技大会において後半のステージを突破することは難しい。

 相手によっては"星の銃"とも呼ばれ、単独で異常な戦闘力を誇るヒナが参加するのであればまた話は別だろう。しかしヒナは複数の理由から、集団戦に参加したり最強メンバーだけを固めてチーム戦に参加するようなことはしない。

 これは三大校と呼ばれるうちのゲヘナ以外の残り二つ、トリニティとミレニアムにおいてもある程度共通していることだ。すなわち、最大戦力を一か所にまとめてステージを突破するという行為を避けているのだ。

 

 成績にばかり目を向けて、大会の本分であるイレギュラー対策を疎かにしないための処置である。 

 そんなヒナの言葉を肯定するのは、"星の翼"と呼ばれる風紀委員会のトップの一人。"ゲヘナの星"体制のころからの幹部である図杖(ずじょう)リン。

 

「その通りだな。元三年生が卒業し、新メンバーになったばかりの陣営だ。"星の旗"たるスミカがいるとはいえ、ステージ3の突破率は五分五分だろう。それに1,2年生を中心に数部隊出す予定だ。そちらの引率ができる人員も必要になる」

 

 リンはヒナが一人で参加することを心配してもいなければ、邪魔すべきでないとも考えている。それは仰ぎ見る星の見えなくなった者同士、少しはお互いを理解しているところもあるが故。

 違いがあるとすれば、リンはゲヘナの星の失踪について、あまり深刻に捉えてもいなければ、深く考えてもいないというところか。

 

「元々競技大会は訓練を目的とする場だ、勝利ばかりを目指していては理念にもとる。そういう意味では、ヒナが一人で出るのは理があるだろう」

 

 そういいながらリンは、論点がずれていることを自覚していた。アコは戦力配分や大会の意義を気にして言っているのではなく、単にヒナを心配しているだけだ。だからアコに対する回答としては、ヒナとリンの言うことは正確ではなかった。

 しかしアコ以外の幹部格がヒナの単独出場を否定していない上に、ヒナ自身が望んでいるとなれば、アコもこれ以上は言いすがることができない。

 

 そもまま彼女たちは目的地である演習場まで来ると、アコを一人残して、そこで待っていた二十人ほどの風紀委員と合流する。そして今まで何度も行っている演習を、今日もまた開始した。

 行われるのは非常に激しい闘争。リン、スミカ、イオリを中心とした風紀委員会にける最精鋭部隊。二十人程いる部隊の一人一人が死力を尽くし、ヒナと戦う。

 

 戦いの状況は驚くべきことに互角である。少なくとも真っ当な生徒のなかで、まぎれもなく最強の存在であるヒナと、たった二十人程度で拮抗する。これが如何に異常なことであるか、この事実を知る数少ない者たちにも測り切れてはいなかった。

 最も大事なのは、ヒナが全力で戦えるような相手が身近にいて、いつでも戦えるということ。

 これがどんな影響を与えるのか、理解しているものは少ない。

 

*1
一体誰のことなんだ…!

*2
コードネームはアズリエル

*3
誘拐ですよ、操夜先輩





先週はちょっと用事があって投稿できませんでした。
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