子供たちに何をするかによって、その社会のモラルを計ることができる。
ディルドリヒ・ヌゥンヘッヘッファー(1906~1945)
「はは。凄いバズり方をしているね。」
「お兄ちゃん。目の前に可愛い妹が居るのにHDDで淫夢動画なんか観るのやめなよ。」
ヒューゴとレイヴンロック家との忌まわしき因縁に決着がつき、戦いにひと段落ついた面々はRandamPlayに集っていた。
「なに、リンは前回ケツピン語録を使ったせいでカルマ値が蓄積しているからね。
僕がこうすることでマイナスとマイナスが掛け合わさり、中和されるはずだ。」
「汚い反転術式? てかこれYoutube版じゃん。削除されたはずじゃあ…。」
『マスター。私にかかればサルベージは赤子の手をひねるより簡単です。』
「やめてちょうだいよ…(絶望)。そんなことで電気代払いたくないよ…。」
「それにしても、実際にはしていない発言をさせられ、実際にはしていない動きをさせられる。
考えてみると、なかなか罪深い話じゃないか。」
「それみてゲラゲラ笑ってる私たちも同罪だよね?」
『ま、多少はね?』
『「「HAHAHAHAHA(最低)」」』
何はともあれ、これで残るは讃頌会の問題のみとなった。
それは、ただ讃頌会が持つサクリファイスを生産する薬剤を潰すだけでは解決しない。
その背後にいる幹部をとらえないことには、新エリー都に平和は訪れない。
そのために必要なのは___
「んにゃぴ、やっぱりビビアンを連れていく、のほうが一番いいですよね。」
「そうだよ(便乗)。
ディナって娘がビビアンの友達なら、説得のためにもいたほうがいいゾ。」
さも当然のようにRandamPlayに上がり込んでいた迫真空手部の面々に、ビビアンが驚く。
「貴方達、もう役目は充分に果たしてくれましたのに、まだ着いてきてくれるんですの?」
ビビアンの言葉に、野獣先輩は海パン一丁のしたり顔で腰に手を当てる。
「何言ってんよ?友達が困ってんのにケツ捲って帰れるわけないじゃんアゼルバイジャン。」「当たり前だよなぁ?」「ナオキです。」
「あ、貴方達...」「ほんっっと下心の管理さえ出来てたらあとは言うことないのにね。」
なお、空手部があわよくば讃頌会がため込んでいた金目の物を掠め取ってやろうと画策していることなど、プロキシ兄妹とFairyはとうに見抜いている。
「まあ、レイヴンロック家が取り潰されて讃頌会もだいぶ首が回らなくなってるっぽいですし、僕らがいてもいなくても変わんないかもですけどね。乗り掛かった舟ですから。別にやましいことはないですよ、ナオキキキキ。」
「そうだよ(便乗)」「ま、多少はね?」
そんな様子をみて、苦笑交じりにアキラは励ましの言葉をかける。
「そんなことはないとも。君たちは異世界烈海王の仲村と同じくらい必要不可欠だよ。」
「必要だったか、あいつ?」
「しかし驚きました。まさか空手部の皆様がたが、雲嶽山の宗主たる方と知己であらせられたとは。」
ライカンにとって、彼ら迫真空手が自らの主の知る中で最も虚狩りに近い存在である彼女と以前から面識があることは予想外だった。
「僕らが…っていうか、正確には僕らんとこの師匠が、なんですけどね。
なんか昔っから喧嘩吹っ掛けたり吹っ掛けられたりしてるらしいですよ。」
木村の言葉に合点がいったのか、ライカンが顎を撫でて頷く。
「__お師匠というと、現在治安局において後進の育成に取り組んでおられる秋吉殿ですか。
虚狩りへの推挙の話すらある、あの儀玄殿と打ち合えるとは…!
武神の異名はかねがね伺っておりましたが、まさかそこまでとは。」
ライカンの言葉に、空手部の三馬鹿はバツが悪そうに顔を見合わせる。
「あー。それウチの師匠も一瞬だけ推薦に上がったんスけど、速攻で却下されたみたいッスね。」
「ポッチャマ…。素行不良が過ぎたから、らしいゾ。
自動車修理工やってた頃にホモの顧客から金を渡されて後輩を売ったのと、少年院の看守やってた頃に指導中にセクハラしたのがバレたのが原因らしいゾ。」
「ガチクズじゃん。」
「この弟子にしてあの師匠あり、なのです。」
「というかなんで捕まってないんだい?」
弟子たち曰く、檻にぶち込んでも自力で脱獄し夜になったらまた戻るという、牢屋を飯付き宿屋扱いする生活を続けた結果、治安局が根負けしたのだという。
「『治安局で面倒見るからこれ以上余計な面倒起こさない』ってコトで手打ちにしてやったと笑ってたゾ。」
「やっていることがほぼほぼスペックなのです…。」
「汚いMr.アンチェイン?」
「リン、オリバも別に清廉潔白な人間じゃないだろう。」
ああだこうだと駄弁りながらも、兄妹とモッキンバード・ライカン・迫真空手部は作戦を詰めていく。
目下の目的は、讃頌会が保有するサクリファイス化の薬剤の破壊及びそれを操る薬の製造法を握るディナの確保である。
「今回は世話になるね、店長くんたち。俺が手に入れた情報によると、薬の数が多かったものでね。
俺の推測では、ディナは全ての薬剤を一箇所に置くはずがない、
よって、ここでは手分けする必要があるだろう。
念のため、店長のお二人には一緒に行動してもらいたい。
お二人、準備ができ次第、ホロウに入るとしよう。」
「これで何もできなくなったディナが、自身の執着に見切りをつけてくれるとよいのですが。」
かつての友への思いを胸に、ビビアンがつぶやいた。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
ホロウに侵入する一行を讃頌会の残党が迎え撃つが、やはりレイヴンロック家からの支援が切れたことで物資の補給もままならないのか、6人もの戦闘員のまえに成すすべもなく蹂躙されていく。
あちこちに分散された薬を破壊しながら奥へ奥へと突き進むと、開けた広場にて出迎える者たちがいた。
「おやおや。皆さんお揃いで、どうなされましたか?」
素肌の上から直接羽織ったベストに蝶ネクタイ、そしてパンツ一丁という常軌を逸した格好のじゅんぺい、ディナ、カミエルが一行を迎える。
「なんだこのオッサン(驚愕)!?」
ディナとカミエルは兎も角、でかいガタイにタトゥーを刺した男がそんな恰好をしているのは視界に入れるのも憚られた。
「あれはたしか、じゅんぺいとかいう讃頌会の構成員だ。
ハルトマンの資料に名前があった。
讃頌会の中でもかなりの地位にいる、大幹部と言って差し支えないだろう。」
手にしたアタッシュケースを大鎌に変形させて讃頌会の構成員を薙ぎ払いながら、ヒューゴがじゅんぺいを睨む。
「ご紹介にあずかり光栄ですよ、ヒューゴ・ヴラド。
新エリー都を賑わす稀代の大怪盗にまで名を知られているとは、私も有名になったものだ。
せっかくお越しいただいたんだ。
おもてなしをしなければなりませんね。
お客様に
じゅんぺいが手に持った注射器を、実験のために集められたのであろう手足を縛られた労働者に注射する。
労働者は耳をふさぎたくなるような絶叫とともに、みるみる怪物__あの夜、ポートエルピスで見たサクリファイス__に変異していく。
「これこそ食通だな!」
「貴様っ!!」
眼前で繰り広げられる蛮行に、ライカンが牙をむく。
「駄目ですよこんなのじゃ(叱咤激励)」
それを意に介さず、じゅんぺいは次々に注射器を取り出す。
「そっか、じゃあまだ堪能してもらおっかな。
じゃあ・・・飲んでもらおっかね、ちゃんと食べてもらおうね!」
瞳と口角の吊り上がった狂った笑みを浮かべて、じゅんぺいは次々と労働者たちに注射を繰り返していく。
「この畜生めがァ!!」
じゅんぺいに拳を振り下ろさんとする三浦だが、それをサクリファイスが阻む。
襲い掛かるサクリファイスの大軍を相手取るなか、ビビアンの視線が幾度となく別の場所に注がれる。
その視線の先に赤毛の少女がいることに気づいた男たちは顔を見合わせ、頷く。
ここだ。ここが分水嶺だ、と。
ディナが再び陽の当たる道を歩めるのか、それとも闇に墜ちるのかの。
「ディナ!これが!こんなことがあなたのしたかったことですか!?
あなたは人々を騙していただけです…!
かつてランドンが、そして今もじゅんぺいがそうしたように!」
ビビアンの呼びかけに反論しようとしたディナだが、それを遮るようにじゅんぺいが前に立つ。
「全然ダメだな!(全否定)
騙す?ディナ様の御父上であるランドン様は、ホロウに大切なものを奪われた人々のために希望を示したのだ。
ビビアン。お前だって、ランドン様があなたへ示した希望に胸を躍らせたはずだ!
ランドン様の憐憫を受けるまで、お前はただ、みなに疎まれる不幸の前触れにすぎなかった…!
讃頌会こそが、あなたが初めて希望を…自分の存在意義を感じられた瞬間だったはずだ!」
そして、狂った笑みを浮かべながらディナに向き直る。
「忘れないでください、ディナ様。
ビビアンが、貴方の御父上に何をしたのか!!
あなたのお父様の関心を、みんなの敬愛を独り占めにしていながら、最後にはすべてをめちゃくちゃにしてしまった!」
じゅんぺいの言葉にディナは息を詰まらせ、胸に手を当てて目を泳がせる。
「う…うう!お、お父様!わたし、わたしは…ァ!」
迷っている。揺れている。そう直観したビビアンは畳みかけた。
「ディナ!すべての人が見せかけの希望にすがっていたいわけではありません。
ランドンは希望を示したのではなく、彼らの希望を利用したにすぎません。
何度自分を欺いたら気が済むのです?
ランドンがしたことのむごさを、あなたはこの上なくわかっているはずなのに…!」
「違う…」
「ランドンがあなたに祝福を授けると言ったとき、あなたの顔には紛れもない恐怖が浮かんでいたではありませんか。
わたしにはハッキリと見えました。
本当にあなたの言う通り、すべてが正しい行いであったのなら…なぜあんな顔をしたのです、ディナ。」
「黙りなさい!その憐れむような目を今すぐやめて!
すべては、ホロウを災いではないものに変えるため。
お父様は何も間違っていない…それが、みんなの希望だから!」
「黙りません!
ディナ、今すぐ引き返しましょう。自分に嘘をつくのはやめてください。
制御できなくなったサクリファイスがホロウを離れてしまったら、どんなことが起きるか…あなたは知っているはずです。
ホロウが人々の命を奪わなくなったとして、あなたの言うその「希望」がさらに多くの命や思いを奪うことに!」
ビビアンの呼びかけを、じゅんぺいの振るう竹刀が遮る。
「ガキが、毛が生えてる奴ぁ大ッ嫌いなんだよ(自分語り)
その程度、偉大なことを成し遂げるためなら払わなければならない代償だ!」
ビビアンの槍を仕込んだ傘とじゅんぺいの竹刀が激しく打ち合い火花を散らす。
ヒューゴたちも加勢に入ろうとするが、サクリファイスの大軍を前に手が回らない。
「カミエル!ぼさっとしてないで加勢しろ!
私がこいつを抑える。その間に撃ち殺せ!
裏切り者を処分する栄誉をくれてやる!」
じゅんぺいが鍔迫り合いながらカミエルに命令する。
かつて妹のように可愛がっていた少女を殺めろ、という残酷な命令を。
カミエルはびくりと肩を震わせ、ディナを、ビビアンを、じゅんぺいを見る。
懐から取り出した拳銃を構え、撃鉄を起こす。
照準をビビアンの眉間に合わせ、構えた。
至近距離。カミエルの腕前ならば、当てることは容易い。
「…」
しかし、撃てない。
カミエルの動悸とともに、銃口が震える。
背後でガチャガチャと鳴る金属音に、じゅんぺいが舌打ちした。
「同志、どうされましたか?カミエル。また繰り返すつもりですか?
始まりの主に付き従うというあなたの言葉、反故にするつもりか?」
その催促に、ディナも便乗する。
「カ、カミエル!何をしているの!早く!早く撃ちなさいよ!!」
カミエルは憔悴したディナをちらりと見つめ、大きく息を吐いた。
そして、再び銃を構える。今度はしっかりと。
確実に当てるべく、銃口は揺るがない。
「ディナ様。私はあなたに謝らなくてはならないことがあります。
あの日、___あなたのお父様を私が殺めた時。
私は、…私は、弾みで殺めてしまったと、過失だったと、そう言いましたよね。」
「カミエル、こんなときになによ!!今更、言い訳なんて!」
「あれは嘘です。」
「え…。」
「あなたのお父様を、ランドンを。
自分の娘を贄とすることを決めたあの男を。
私は___。
私は、殺すつもりで撃ちました。
明確な、殺意を以て。」
カミエルの言葉に、表情に、ディナは言葉が出なくなる。
静かに笑みを浮かべたその顔はひどく疲れていて、それなのに、後悔は微塵も感じられない。
そこに、愛する父を奪った人殺しはいなかった。
そこに、数多の命を食い物にしたカルト信者はいなかった。
そこいたのはまるで___
「その美しく赤い髪を見ると、ホロウで死んだ妹を思い出します。
始まりの主が希望をくださる…そうランドンが私を諭したとき、その後ろにあなたがいました。
その瞬間、私は確信したのです。
これこそが、この子を守ることが始まりの主が私に与えた希望なのだと。」
まるでどこにでもいる、ただの妹思いの姉の顔だった。
「やり直しましょう、ディナ…あなたの人生はまだ長い。
たくさん友達を作り、たくさんの人に愛され、たくさんの素晴らしい思い出を作れるはずです。
___そのためなら私は、何度だって間違えて見せます。」
ぱん。という乾いた音が鳴る。
あの日のように、父の命を奪った武器を、父を奪った女が鳴らす。
ふっ、と優しい風が頬を撫で、赤い花が咲いた。
「カミエル…ねえさま?」
大きく目を見開くビビアン。
「は……?」
その視線の先に、背後から心臓を貫かれ、驚愕の表情を浮かべるじゅんぺいがいた。
「ディナ様。ホロウは、私の最も大切な家族を奪いました。
ディナ…これ以上誰かが傷つくことを、何よりあなたが自分自身を傷つけることを黙って見ていることもできないのです。
ですから…もうやめましょう、ね?
ただ、あなたがこれ以上破滅の道を進むのは見るに堪えないのです!
私が、あなたの引き返す術となります。」
カミエルは銃口を降ろすと、サクリファイスを掃討し終えた一行のなかの大怪盗を見る。
「私はヒューゴを介して、市長の合意を取り付けました。
いずれ説明を必要とすべきときが来たら、すべては私がやったということになります。
私は長期間にわたってランドンの一人娘、ディナを脅迫し、サクリファイスの研究と製造を手伝わせていた。
そして、サクリファイスを利用して自らの利益のため、レイヴンロック家と密かに結託していた…。
つまりディナがしたことはすべて、彼女自身の意思によるものではない。
また、彼女は長期間にわたって私に監禁され、社会で自立して生きる能力がない。よって、彼女の世話をする後見人の手配を求め…」
「何言ってるの、カミエル!絶対に、あなたの思う通りになんてなるもんですか!」
理解できない、とばかりにディナは叫ぶ。しかし、彼女自身わかっていた。
カミエルがなにをしようとしているのか、その結果カミエルがどうなるのか。
そして、なぜカミエルがそこまでするのかも。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「っああああああああアアアあああああァああああ!
カミエルゥゥゥゥ!!裏切るのか!裏切るのか!!!
許さねえ!!許さねえぞオイ!!
俺に言うことあるんじゃねぇのかお前はなぁ?」
戦いが終わり、訪れかけた静寂が、再度破られる。
心臓を貫かれ、ただ死を待つだけのじゅんぺいが、怒りと憎悪、そして狂気的なまでの信仰心で立ち上がる
それを、カミエルが苦悶に満ちた顔で凝視する。
「…しつこいっ!!まだ生きていたか!!?
あんな!あんなおぞましい所業!!
私だけなら兎も角、ディナにまでっ!!
よくも!よくもっ!!
何が食通!何が早稲田卒よっ!!
地獄に落ちろ!この変態!!!」
怒り狂いながら残りの銃弾をじゅんぺいに叩き込む。
鉛玉が撃ち込まれるたび、じゅんぺいの身体が跳ねる。
弾丸を打ち尽くし、硝煙が晴れると、そこに血塗れのじゅんぺいが立っていた。
狂ったような笑みを浮かべながら。
そしてその手に、何かが握られていた。
「これで〆ではございませんので(無慈悲)」
サクリファイスを促す薬剤、その最後の一本を。
「こいつ!まだ持っていたのか!!」
一足先に気づいたヒューゴが、それを阻止せんと駆ける。
しかし、じゅんぺいのほうが僅かに早かった。
じゅんぺいが、己の首筋に注射器を打ち込む。
爆音のような脈動と共に、地面が揺れて周囲にエーテル結晶が結露していく。
サクリファイス化したじゅんぺいは、背中に薄い羽根を生やし、眼球に複眼を持つ、人間サイズの蠅__まるで現代のベルゼバブとでも言うべきな__おぞましい異形に変異していく。
「竹刀とさぁ、一体になってみろよ(魂の共鳴)」
高純度のエーテル結晶が付着して無骨な大鉈と化した竹刀を、じゅんぺいがカミエルに振り下ろす。
「ほらぁ!お前をなぁ、滅茶苦茶になぁ、しないとなぁ、俺の気が済まねぇんだよ」
しかし、それに野獣先輩とライカンが割って入り、連撃をさばいていく。
「ばらもん(五島)!まだまだ修行が足りぬぞ!馬鹿者!もう一度一から叩き直してう、くれるわ!」
じゅんぺいは羽根をはためかせながら回転するタックルで野獣先輩とライカンを突き飛ばすと、今度はへたり込んでいたディナを掴んで飛び上がる。
「い、いやぁ!!!」
「これでは食通の名が泣くな。な、お前もそう思うよな?」
「デ、ディナ!!」「ディナを離すのです!この化け物!!」
カミエルとビビアンを嘲笑うかのように下品な笑い声をあげながら、じゅんぺいは近くの裂け目に飛び込んでしまった。
「ディナ!!!追いかけなくては!!」
友を救わんと飛び出すディナ。
しかしそこに、三度邪魔が入る。
ホロウにおいて最もありふれた、そして最も危険な者たちが。
「ファッ!?」
「チィっ!サクリファイスの次はエーテリアスか!」
「数が多いゾ!」
「先程までの戦いを聞きつけて、群がってきたようです。」
「ひぎぃ~~」
パエトーンたちと讃頌会の戦いが、大量のエーテリアスを引き寄せていた。
彼らを取り囲むエーテリアス。逃げたじゅんぺいと囚われのディナ。
アキラは仲間たちとエーテリアス、それにじゅんぺいが逃げ込んだ裂け目を見つめ、意を決してリンに告げた。
「リン。二手に分かれよう。
リンはビビアンと一緒に入って、裂け目の向こうでディナを連れ戻すんだ。
僕はここで、ここからホロウの外までの道を確保する。
君の帰り道は、僕が必ず導く。
だから君も、あの子たちを導いてくれ。」
「お兄ちゃん!」
「僕らはプロキシだ。
依頼人を導き、連れて帰るまでが仕事だ。
そうだろう?」
まるでいつもの仕事と同じだ、とでもいいたげにアキラは微笑んだ。
「…わかった。ビビアン、行くよ!」
そこ言葉にリンは頷き、ビビアンの手を取る。
「パエトーン様、駄目です!危険すぎるのです!」
「ビビアン。あんた、今行かなかったら一生後悔するよ。」
「ッ!」
躊躇するビビアンの手を、リンが両の手で包む。
「大事な人を自分が至らなかったせいで救えなかったとき、どれだけ苦しいか、どれだけ悲しいか。
何度も何度も後悔して、夢に見るの。
私はそれを痛いほど知ってる。だからあんたには、そんな思いさせたくないの。」
「パエトーン…さま。」
兄妹の覚悟を前に、男たちは頷く。
「では、俺とライカンが退路を死守しよう。異論はないな?」
「無論。空手部の皆様、あちら側はお願いできますでしょうか。」
「ん、おかのした。」
襲い来るエーテリアスを睨み、ライカンとヒューゴはアキラとカミエルを守るように背にして立ちはだかる。
目指すは、その奥の裂け目。
「空手部の皆様。道は我らが開きます。合図をしたら走ってくださいませ。
決して振り返らず、我らを信じてただ前に。
…おい。」
ライカンはそう告げ、背後のかつての相棒に声をかける。
「ふん。まったく人遣いの荒い…。へし折れても知らんぞ?」
「問題ない。そっちこそ、余波で転ぶなよ。」
「ハッ、誰が!!」
そう言い終わるや否や、ヒューゴがライカンに向かって大鎌を振りかぶる。
肉厚な刃がライカンの首を刈り取らんとした瞬間、ライカンは膝を持ち上げて義足にニーガードのように取り付けられた超金属・ヤメチクリウムに刃を合わせる。
ヤメチクリウムの驚異的な硬度と衝撃吸収性能は、先ほどまでの戦いの衝撃を余すことなくその内部に宿し、綱引きの縄のように拮抗した状態で保持していた。
それがいま、ヒューゴの一撃で均衡を崩され、解放された。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛も゛う゛や゛だ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!」
小学生(大嘘)が蝋燭を肛門に垂らされたときの絶叫のような悲鳴の如き金属音が、拡散した衝撃波と共にエーテリアスに襲い掛かった。
群がるエーテリアスの大軍が吹き飛ばされ、裂け目への道が切り開かれる。
「今です!走って!!」
「ビ、ビビアン…!」
悲痛な声で己の名を呼ぶカミエルに、ビビアンは振り返らず告げる。
「カミエル姉さま。必ず、必ずディナは連れて帰るのです!」
【Tips】
最後のシーンはエイジオブウルトロンでソーがムジョルニアでキャップの盾を打ち付けるシーンのオマージュです。
キャップの吹き替えの人はイキ杉田と絡むと偶にホモガキ化するから、多少はね?
中国のホモガキにⅩで「なんで中国人はそんなに糞喰漢が好きなの?」って聞いたら
「
って答えてくれました。
ええ・・・(ドン引き)