TSエルフのやりすぎ物作りダンジョン配信~家と動物とご飯と時々拠点に襲撃~   作:芦屋貴緒

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17 まひろ流酒税法違反

「ユグドラシルの果実、〈ヴィヴィアンの祈り〉の水、メープルシロップの糖分。これで原理上は酒造りができる……はず」

 

「地上でやったら酒税法違反ですねえ」

 

「ダンジョンに法律はないから大丈夫」

 

「ダンジョンでお酒を作って持ち帰った際は協会の検査を受けることになりますので、まひろさんは注意してくださいね」

 

「……前例があるんだ」

 

「人はどんなことも試してみたがるものなのですよ」

 

 世界樹の上層、客間の中。

 腕に抱いて余るくらいの大きな瓶をいくつも床に置いておく。

 

 シロガネとラエティは少し離れた位置に居る。

 ラエティがシロガネの身体に昇っては振り落とされというのを繰り返して暇を潰しているようだ。

 

「選別した果実を瓶に入れて、そこに〈ヴィヴィアンの祈り〉で採れた水を注いでいく」

 

「そーれ、メープルシロップもたっぷり入れてしまいましょうねー」

 

「あとは〈ストレージ〉の中に入れて……時間を加速!」

 

「魔力欠乏には気をつけてくださいね。ここら辺は安全ですが、そもそも魔力欠乏自体が危険なので」

 

「大丈夫大丈夫。こう見えても身体の丈夫さにだけは自信がある……」

 

「第一層で家を作ろうとして気絶した人は従ってくださいね?」

 

 メリイさんはひたすらに満面の笑みであった。

 しかしその笑顔がどれほどの圧力を生み出しているかは……リスナーも分かってくれるだろ!

 

『まひろちゃん言うこと聞いておいた方がいいよ』

 

『そもそもダンジョンで魔力欠乏を起こすなんて探索者ビギナーなんだよな』

 

『ソロ充(仮)』

 

「いやこれはスキルが〈レガリア〉に進化したことで燃費の計算が狂っちゃってさ……」

 

『言い訳しない』

 

「はい……」

 

 なんでか知らないがリスナーにまで説得されてしまった……。

 魔力欠乏に関してはもっとシビアに計算しておいた方がいいのはそうなんだけど……。

 

 今まではオートマで運転できていたのがマニュアルオンリーに切り替わったような難しさだから、燃料配分もまた難しいんだよね。

 こちらがしょげているとシロガネがこちらの話を聞いていたのか遠くから話に加わってくる。

 

「バウバウ!」

 

「はい……ごめんなさい……」

 

「なんて言ったんです?」

 

「『ご主人は合わせてくれるのは嬉しいけどそれで危ない目に遭うのは悲しいぞ』って」

 

「シロガネ君を泣かせちゃダメですよ?」

 

「俺は泣かせてもいいわけ!?」

 

「探索者の教育もギルド員の仕事ですので」

 

 ふふ、と両手を合わせて笑顔を浮かべるメリイさん。

 最近は俺が下手なことをすると圧力を感じる笑みを浮かべるようになった。

 これって仲良くなってきたってことでいいのかな。……いいのかな?

 

「マスターは凄い人ですよ! 最近は高いところも大丈夫になって果実もたくさん取ってますし!」

 

「ラエティだけが味方だぁー」

 

「やったぁ!」

 

『木登りが出来るようになって褒められる二十歳以上』

 

『いやでもあの高さだと誰でも身が竦むでしょ……』

 

『第二層に来たばかりの時、腰を抜かしていたのを思い出す』

 

 

 やめろやめろ! 思い出すなそんなもの!

 この高さだとそれこそ高所が好きじゃないとビビるだろ!

 

 ラエティを指で撫でているとシロガネも撫でろと言わんばかりに腹を見せる。

 よーしゃよしゃしょしゃ! 可愛いなあふたりとも!

 

 俺がふたりを愛でていると、それを満面の笑みで見つめていたメリイさんがハッとした顔で我に返る。

 

「まひろちゃん、作業がどのくらい進んだか確認しないと」

 

「おっと、そうだね。じゃあこいつらを〈ストレージ〉から出して……と」

 

 大瓶をゆっくりと丁寧に〈ストレージ〉から出していき、瓶についている蛇口をひねってコップに注ぐ。

 澄んだ琥珀色をしたそれは、香ってくるだけで相当な酒精があるらしい。

 

 コップの匂いを嗅いだメリイさんは真顔になって、「これ、今までで呑んだ中で一番かも……」と喉を鳴らした。

 

 まだお酒の香りを嗅いだだけですよ、メリイさん。なに言ってるんですか。

 メリイさんは自分の分のコップをテーブルに置く。

 

「両方酔っ払ったら大変ですからね、私はしばらく遠慮しておきます」

 

「じゃあ、久しぶりのお酒いっただきますー! んー、おいしー!」

 

 一口飲んだだけで分かる芳醇さ。

 鼻を突き抜ける香りの良さは呼吸とともに全身に染み渡っていく。

 もう一口、口をつけると身体が芯から温まっていく!

 

「あっつい……。あれ、なんでおれこんな服着てるんだっけ……?」

 

『おいおいおいおいおいおい』

 

『まひろちゃんを守護らねばならぬ!』

 

 胸元もきついし、暑い。

 どうやら冷房もないみたいだから少し脱いで体温調節をしないとな。

 

「――〈配信緊急停止〉!」

 

 慌てた声でメリイさんがなにかを叫ぶ。

 あー、このお酒おいしー。

 良い気分。

 つまみがなくてもグイグイ行けるなー。

 

 

DIY系配信者まひろスレ

 

504名無しの探索者

くそっ、あと少しのところだった!

 

 

505名無しの探索者

でもよお、まひろちゃんの下着姿を見る代わりに他のやつらに見られるんだぜ?

 

 

506名無しの探索者

私にだけください

 

 

507名無しの探索者

おは女神

 

 

508名無しの探索者

女神様はさあ……

 

 

509名無しの探索者

柊メリイの咄嗟の判断がなければ……映ってた!

 

 

510名無しの探索者

そして録画されてた!

 

 

511名無しの探索者

よくやったと言うべきかよくもやってくれたなと言うべきか

 

 

512名無しの探索者

でもさ、この状況でひとりだけ美味しいやつがいるんだよ

 

 

513名無しの探索者

柊メリイか!

 

 

514名無しの探索者

きっと今はぐでぐでに酔ったまひろちゃんに抱きつかれて……!

 

 

515名無しの探索者

うらやまけしからん

 

 

516名無しの探索者

ところであの酒って魔法的ななにかがあるんじゃない?

そうじゃないとあの速さで酔っ払うのはおかしいよ

 

 

517名無しの探索者

それもそうだね

バッカスの火酒のレプリカみたいだね

 

 

518名無しの探索者

アルコールが回っているから酔っているんじゃなく、

火酒を呑んだから酔いが付与されるってのがバッカスの火酒だっけ

 

 

519名無しの探索者

少しその話を掘ってみるか

 

 

520名無しの探索者

柊メリイ……よく我が妻を助けました……。

褒めてつかわします。

 

 

521名無しの探索者

女神さま賢者モードに入ったな

 

 

522名無しの探索者

なんて自分勝手な女神なんだ

 

 

523名無しの探索者

人間よ、その言葉はそっくりそのまま返しますよ。

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