少しばかり話をしようか。
あれは今から15…いや、10年前の話だ。
だが君達にとっては、今からの話(物語)だろう。
2010年〇月✕日 大黒PA
「なぁ、その噂ってなんだよ」
白いボディを持つS14シルビアのオーナーの男が話しかける。
「知らないのかよ、お前」
赤いボディを持つS15シルビアのオーナーの男は呆れたように首を振る。
「今じゃ走ってる奴なら誰でも知ってるぞ。”走る棺桶”の事はよ」
「走る棺桶ぇ?」
「はぁ…お前も1回見た事あるだろ?あの馬鹿っ速いビートだよ」
「あぁ…あのビートか、でもなんで”走る棺桶”なんて…」
「なんでってお前、あの速度をビートで走るんだそ。死にに行くようなもんだ。だから走る棺桶なんだよ」
S15の男は溜め息を着き、口にくわえたタバコに火を付けた。
タバコを吸い、肺の中に少しばかり入り込んで来る煙を吐き出す。
男から吐き出された紫煙は、夜空に消えていった。
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2015年♪月$日 湾岸高校
「ふぁ…」
屋上で気だるそうに欠伸をする少女―――の様な青年が居た。
「よ、今日も相変わらず眠そうだな」
「…プロボックスニキ」
「おーヘッドロック掛けてやろうかこの野郎」
眠そうな青年の後ろから声を掛けてきた青年―――赤城(あかぎ)は青年の頭に拳をめり込ませていた。
「…痛い」
「そりゃ当然だろ?お前がいつまで寝ボケてるからよ」
「…だからってここまではやらなくてもいいでしょ?」
「じゃぁさっさと目を覚ませばいいだけだ」
「…」
青年は少し頬を膨らませ、そっぽを向いた。
赤城は仕方ないという素振りをし、持ってきていた和菓子屋の雑誌を開いた。
「あ〜、最近近場に美味しい和菓子屋が出来たんだよな〜、でも1人で行くのh「行く」お、おう」
青年は無表情ながらも目はキラキラと輝いていた。
コイツそこら辺の女子より可愛いのでは?
赤城は訝しんだ。
そんなこんなで昼休みも終わりが近ずいていた。
「…そろそろ時間だから戻ろう」
「そうだな」
2人は扉を開け、室内へと入っていった。
赤城は自分より遥かに小さい青年へと視線を向けた。
青年は表情こそ変わってはいないが、目の奥は未だに輝いていた。
「お前ほんと好きだよな、和菓子」
「…早く食べに行きたい、3倍の速度で時間進まないかな」
「お前それどっかの彗星だろ」
「…名前出してないからいいの」
そんなくだらない会話を続けているうちに、2人は教室へと着き、残りの授業をダルそうに過ごしていた。
(和菓子…どら焼き…まんじゅう…早く食べたいなぁ)
(とか思ってるんだろうな)
目の前にいる青年の思考を読みながら時計に目を向ける。
時計の針は今日の学校の終わりの時間を告ようとしていた。
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ーーー
ーー
「…ねぇ赤城」
「どうした?」
「…和菓子屋ってこの先にあるの?」
僕は胸の奥に一抹の不安を抱きながら紅きに聞く。
「雑誌にはこの先って書いてあるんだけどな」
「えぇ…」
不安でしかない。
最近出来たと言っていたが、どうにも不安が拭えない。
本当は間違っているのではないのだろうか。
赤城って方向音痴だし。
そうして僕らは進もうとした。
「あら、赤城達じゃない」
曲がり角から1人の少女が出てくる。
前髪に7の数字が付いた赤いヘアピンを付けた少女―――玲音(れいね)がそこにいた。
「最近出来た和菓子屋を探しててな」
「奇遇ね、私も探してた所なのよ」
「…玲音がいるなら和菓子屋に行けそう」
「おい俺が方向音痴だって言いたいのか」
「そうね、赤城って結構な方向音痴だから仕方ないわね」
「玲音?」
突然後ろから刺された赤城はとりあえず放置して。
玲音と合流したお陰で何とか無事に和菓子屋に辿り着く事が出来た。
きっと赤城に任せていたら永遠に辿り着く事は出来なかっただろう。
僕らは店内へと入り、商品物色していた。
「なぁ、香瑠(かおる)」
「…何?」
「お前ってまだ車は買わないのか?」
「…いい感じの車が見つからないからね」
「そうか、早くお前とも走りたいんだがな」
こんな会話をしていると少し前の事が嘘みたいに感じる。
5年ほど前に法律が改正され、自動車免許が16歳からに引き下げられた。
今じゃ高校生のほとんどは免許を持っている。
少し前は高校卒業間際にしか取れないなんて信じられないだろう。
2000年代のスポーツカーは今の時代かなり値段が下がっていて、高くても200万ちょっとで買えてしまう。
だから高校生達は必死にバイトをこなし、スポーツカーを買ったりする。
玲音もその1人だ。
だが赤城は…赤城は…
「…なんで赤城はプロボックスにしたの」
そう、プロボックスなのである。
その理由は…
「なんでって…プロボックスで速いヤツら抜き去っていったら浪漫(ロマン)あるだろ?」
浪漫(ロマン)
ただそれだけでプロボックスするという変態なのである。
旧式のスポーツカーではなくプロボックスする馬鹿 is 馬鹿。
なのに速いから首都高では”悪魔のプロボックス”とか言われている。
K24Aを自作のVTECヘッドに換装。
更にツインターボ化されおよそ520馬力のモンスターマシンに仕上がっている。
ちなみにこれは赤城が買った時点にはもう出来上がっていた。
…プロボックスこんなことする人がいるんだなぁ、と空を仰いだ。
玲音は紅いRX―7 FD3Sを乗りこなしている。
玲音のFDも買った時点でおよそ500馬力とモンスターマシンに仕上がっていた。
玲音は首都高内でサバンナRX―7に乗る”レトロチックロマン”の次に速いRE乗り”紅きアウトロー”として有名だ。
そんな中僕は、未だに車を持っていなかった。
いや、持っていないという訳では無いのだが。
そんなこんなで買い物を終わらせ、帰路に着いた。
ただ、玲音を待っていた時に少し気になる記事を見た。
〇日未明―――
首都高速湾岸線にて事故
青年K(23)死亡