青き春に少女は盾を広げる   作:狩村 花蓮

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またまた懲りずに別作品を書きます。お許しください。今回はブルアカです。こちらは長い目で執筆するので、更新はかなり遅くなるかもしれません。あとがきでは、オリジナル要素の用語解説を載せようと思います。よろしくお願います。


プロローグ
第一話 イージス


【???】

 

暗い部屋。その中央にはテーブルが置かれており、そこにはホログラムで地図や何かのグラフが映されている。そしてそのモニターを取り囲むように4人が座っている。その内、一番奥の席で腕を組みテーブルへと置いている人物に向かって、残りの人物が話を始める。

 

「環理総司令、準備が整いました。プロトコル:ガイウスも稼働率80%を維持しています」

 

「了解しました。ではキヴォトス緊急事態宣言による、広域治安維持活動並びに支援活動はどうなっていますか?」

 

「トリニティ、ゲヘナ、ミレニアム、アビドス、百鬼夜行、レッドウィンター、ブラックマーケットに対する食料、ライフラインの支援は既に完了しています。後1ヶ月は持つ計算です。広域テロに関しては、温泉開発部、美食研究会及び各ヘルメット団に関してはその8割を撃退、捕縛しており、温泉開発部に関しては1級テロリストとして、第三特殊監獄にて収容。部長の鬼怒川カスミ、下倉メグ以下構成員は新型ヘイロー効果減衰拘束具により拘束、一か月後にゲヘナ風紀委員の立会いの下、裁判課特別矯正エリアへの収容を行います」

 

「現在の連邦生徒会とのコンタクトの状況は?」

 

「既に連邦生徒会との連携の打診を受諾し、インフラ関係は全てこちらと学協連の合同で支援、生徒会に関しては麻痺した都市機能の非常用復旧措置を始めています。ただし、キヴォトス全土における大混乱によるものと予想される、矯正局より脱走者の報告が確認されています。現在、事態把握を行っております」

 

「治安維持活動で被ったこちらの被害は?」

 

「各種暴動の余波で活発化した温泉開発部による攻撃で、応急ライフラインの寸断が発生。これによりライフラインの支援が23%低下、復旧までには一週間を要します。物資輸送に関しては、本部、第二支部間での輸送システムが何者かに爆破されたため寸断。現在代替手段による輸送を開始、並びにシステムの応急処置中」

 

「情報課が注視している、要注意企業の様子は?」

 

「要注意企業であるカイザーグループ、ネフティスグループ共に動きはなし、しかし、巧妙に隠されていますが、カイザーPMCの方で動きが確認できます。現在調査中です」

 

「アビドスに誘致する予定の第5拠点はどうなっていますか?」

 

「既にアビドス対策委員会と協議が進んでおり、おおむね合意の方向へ向かっています。ただ、対策委員会も、この混乱に乗じてのヘルメット団による襲撃を受け、協議どころではなくなっているようです。早急な支援が必要かと」

 

「わかりました。支援の件はそちらの采配にお任せします。では整備課が行っているUタンク、並びにUキャリア―の進捗は?」

 

「Uキャリアーは現在、新型励起反応炉の開発が完了し、1号機から4号機まで製造が完了しています。現在はミレニアム、トリニティ、ゲヘナ、百鬼夜行の各支部に緊急時発進カタパルトシステムを建造中、本日中にはUキャリアーの緊急時発進システムが完成します。それに合わせてUタンクも、キャリアー搭載可能上限と予備機2機を含む32機がロールアウト、すぐにでも稼働可能です」

 

様々な部署の統括と思しき人物に話を聞いていた、環理と呼ばれた人物は組んでいた腕を離すと、その場にいたメンバー全員に話す。

 

「では、これより我々は”キヴォトス非常事態宣言”に則り、この混乱を解決するために動きます。先進技術開発課は各支部および整備課と連携、UキャリアーとUタンクの即時運用が可能なように待機、総務課はアビドスとの協議と支援、第5拠点の誘致の件の話を進めつつ、各学園との支援のすり合わせを。治安維持課は連邦生徒会防衛室並びにSRT特殊チーム、ヴァルキューレと連携、広域治安維持活動及び人道支援を行ってください。私はこれよりD.U.に向かい主席行政官と話を付けてきます。Uタンクを一台使用可能な状態にしておいてください。では、特務機関イージス各員、行動開始!」

 

「「「了解!」」」

 

その部屋にいた全員が一斉に部屋から出ていく。彼女らの頭には天使の輪のようなもの《ヘイロー》が浮かんでおり、その全員が、ロゴの入った藍色に近い制服を着ていた。

 


 

【サンクトゥムタワー ロビー】

 

とあるひとりの女性がメガネをかけた女性とエレベーターから降りる。そこにはロビーと思しき空間が拡がっており、受付の近くには、学生服らしきものを着た女性が何かを言っている。するとその女性たちがこちらに気づいたのか近づいてくる。

 

「ちょっと待って!代行!見つけた、待ってたわよ!連邦生徒会長を呼んで来て!…うん?代行、隣の大人の方は?」

 

シンプルな黒い輪を頭上に浮かべ、サブマシンガンを携行している女性が言う。

 

「主席行政官、お待ちしておりました」

 

ボルトアクション式のスナイパーライフルを携えた、長い黒髪で黒い羽の生えた黒い制服の、色々と大きい生徒がそれに続く。

 

「連邦生徒会長に会いに来ました。風紀委員長が、今の状況について納得いく回答を要求されています」

 

眼鏡をかけ、とてつもなく重そうな医療バッグを携えた生徒もそれに続く。

 

「あぁ……面倒な人たちに捕まってしまいましたね」

 

その人物を見て、件の大人の脇に立っている白い制服に身を包んだ女性、七神リンは心底めんどくさそうな顔をしてそう言った。

 

「あら?そういう発言にはあまり感心しませんよ。リン行政官」

 

その後ろからまた声がする。全員がそちらに向くと一人の女性が立っていた。その身を藍色のスーツに見えるような制服に包み、太腿にはホルスターが取り付けられ、その片方にはリボルバー式拳銃が、もう片方には警棒のようなものが格納されている。見た目は、茶髪にレンズの色が濃い眼鏡をかけており、無口そうに見えてしかし貫録を感じる幼さの残る少女という感じの出で立ちをしている。

 

「環理総司令、お久し振りです」

 

「リン行政官も、お久し振りです。その口ぶりにその顔、そして隠しきれない隈。睡眠不足の症状ですね?ということは、やはり私の推測通りサンクトゥムタワーは行政機能の麻痺に陥っている。そしてその原因は、連邦生徒会長の失踪とそれによる行政権の移行不備によるもの、というところでしょうか?」

 

環理と呼ばれた女性の発言に、リン以外の生徒は目を丸くする。

 

「ちょっと待って!マドカ先輩、今の発言はどういうこと?」

 

「どういうことと言われても、言葉そのままの意味ですよ、ユウカさん。現在サンクトゥムタワーは、行政権を持つ連邦生徒会長が何の権限も移行せずに失踪したため、キヴォトス全体の行政権を喪失した。それに伴い行政権に紐づけられたインフララインやシステムがすべて停止、あるいは作動不能。アクセスする手段もないため復旧も困難、といったところでしょう。ですよね?リン行政官」

 

「……相変わらずのご慧眼ですね、その通りです。今の我々にはキヴォトスを運営できる能力がありません。このままではキヴォトスの管理運営に深刻な問題が発生することになります」

 

「しかし、この現状を打破するために用意されていた人物がいた。大方そこの大人の方がキーマン、と言ったところでしょうか?」

 

「えぇ、この方こそがこの状況を打開するためのフィクサーになって頂けるはずです」

 

マドカとリンがそう話していると、ユウカと呼ばれた女性が割って入ってくる。

 

「ちょっと!何二人でいい感じに話をしているんですか!我々にも説明を!イージスのおかげで最低限のインフラは動かせているけど、後一月も持ちそうにないんだから!」

 

「犯罪率はイージスの協力もあり、500%の上昇率で収まっています。戦闘も散発的なものですが、いつまで持つか分かりません。それに矯正局からの脱走も確認されているそうです。早急な対処を求めます」

 

3人がそれぞれの学区の状況を説明する。するとマドカは途端に顔を青ざめさせる。

 

「一応の報告は受けていましたが、ここまで進行度が早いとは。これは一刻の猶予もありませんね。リン行政官、その方をどうすればよいのですか?」

 

「...今からこちらのお方、"先生”を連邦捜査部シャーレまでお送りします」

 

そう言ってリンは隣にいる女性を指す。

 

「こんにちは、私は”落羽天月”。アマツと呼んで欲しいな、これからよろしくね」

 

「あっ、えっと…ミレニアムサイエンススクールでセミナー所属の早瀬ユウカです。よろしくお願いします、アマツ先生」

 

「羽川ハスミです。トリニティ総合学園、正義実現委員会に所属しています。よろしくお願いします」

 

「守月ススミです。トリニティ総合学園でトリニティ自警団をしています。よろしくお願いします」

 

「火宮チナツです、ゲヘナ学園風紀委員会に所属しています」

 

「皆、よろしくね」

 

各々の生徒が先生に自己紹介をしている。その後ろでは、マドカがどこかと連絡を取っていた。その電話が終わり、マドカが皆の方を向くと、全員がマドカの方を向いていた。

 

「ん?あぁ、私はまだでしたね。初めまして、アマツ先生。私はミレニアムサイエンススクール所属、ならびに学園協同連合、通称『学協連』直下組織特務機関『イージス』総司令の環理マドカと申します。以後お見知りおきを」

 

「うん、マドカもよろしくね」

 

「では話を続けます。先生は元々、連邦生徒会長が立ち上げた、ある部活の担当顧問として此方に来ることになりました。それこそ先ほど述べた連邦捜査部『シャーレ』。単なる部活ではなく、一種の超法規的機関。連邦組織のため、キヴォトスに存在するすべての学園の生徒たちを、制限なく加入させることすらも可能で、各学園の自治区で、制約無しに戦闘行為を行うことも可能です」

 

「随分大盤振る舞い。これもあの連邦生徒会長が決めたのでしょうか?」

 

「そうですね…。なぜこれだけの権限を持つ機関を、連邦生徒会長が作ったのかはわかりませんが…。今は、先生をシャーレへ送り届けるという仕事を最優先事項としています」

 

「ということは、件の『シャーレ』という建物に起死回生の一手が用意されているということですね?」

 

「はい、連邦生徒会長の指示でシャーレの地下に『とあるモノ』を持ち込んでいます。その機能があれば、現在の混乱をひとまず抑えられる。最優先事項としているのはそのためです。しかし、シャーレの部室はここから約30kmは離れた外郭地区にあります。時間も惜しいですしそろそろ向かわねばなりません。そのために足が必要なのですが…繋がった。モモカ。シャーレの部室まで直行するヘリが欲しいのだけれど」

 

リンが通信をつなげる。通信がつながると一人の生徒が写った。

 

『シャーレの部室ー?…あぁ外郭地区の?そこ今大騒ぎだけど?』

 

「…大騒ぎ?」

 

オウム返しだった。だいぶ呆けた声だった

 

『矯正局を脱走した生徒が騒ぎを起こしたの。そこは今戦場になってるよ』

 

「……うん?」

 

理解したくない事を聞いた。という声だった

 

『連邦生徒会に恨みを抱いて、地域の不良たちを先頭に周りを焼け野原にしてるみたいなの。巡航戦車までどっかから手に入れてきたみたいだよ?それでー、どうやら連邦生徒会所有のシャーレの部室を占拠しようとしてるらしいの。まるでそこに何か大事なものでもあるみたいな動きだけど?』

 

「……」

 

もう絶句だった。目が据わりだしている

 

『まぁでも、もうとっくにめちゃくちゃな場所なんだから、別に大したことな……あ、リンせんぱーい。お昼ごはんのデリバリー来たからまた後で連絡するねー』

 

通信が切れた

 

「……」

 

リンはぷるぷると震えている

 

「彼女は相変わらずですね。とりあえずリン行政官、深呼吸です。落ち着いて」

 

マドカがリンを落ち着かせる。

 

「…すいません、取り乱しました」

 

「じゃあ、落ち着いたところで状況整理をしましょう。まずこの混乱を収めるには先生の力が必要で、そのために、連邦生徒会長がとあるものを持ち込んだシャーレに向かう必要がある。そのシャーレは外郭地区にあって、ここからでは距離があるため、ヘリを出そうとしたが、暴動のためヘリで向かうのはかなり危ない状態、という認識でよろしいでしょうか?」

 

「えぇ、その通りです」

 

「…了解しました。ではこれより、イージス特別権限による、先生の輸送護衛任務を私が引き受けましょう。勿論、そこの方々も臨時招集でついてきていただきます」

 

「ちょっと!何で私たちが!」

 

「これはキヴォトスの平和と安全を守るために必要なことなのです。それに先生への護衛には人数がかなり必要なようです。先生はどうやらヘイローを持っていないようですから」

 

そう、マドカの言う通り先生は生徒と違い、ヘイローを持っていない。キヴォトスの生徒はヘイローのおかげで銃弾に対し高い防御力を持つが、逆に言えばヘイローがなければ一発でも致命傷になりかねないのだ

 

「シャーレまでは私が、用意してある車両で防衛します。戦闘状態に突入した場合に関しても私が矢面に立ちますが、100%防衛できるとは限りません。その場合は、皆さんに先生の護衛をお願いします。よろしいですね?」

 

「・・・分かりました」

 

「了解です」

 

「任せてください」

 

「これでも多少の荒事の経験はあります。問題ありません」

 

と、ユウカ、ハスミ、ススミ、チナツが答える。

 

「先生のこと、頼みます。私も安全が確保でき次第すぐ向かいますので」

 

リンが、マドカにそう告げる。

 

「任せてください。私の全てに変えても、先生を送り届けて見せます」

 

マドカが、リンにそう告げた。

 


 

「Uタンク始動準備、一番から四番までのエネルギーラインを接続、励起反応炉始動、動力伝達を確認。パーキングブレーキ解除、メインフレームコンタクト。主砲レールキャノン問題なし、全システムオールグリーン」

 

マドカを含むメンバー全員がUタンクと呼ばれる車両に乗り込む。それは大型の戦車という見た目であり、戦車特有の無限軌道の部分にはキャタピラではなく8輪の特殊駆動輪が搭載されている。車内は完全密室であり、外の様子は運転席に搭載されたホログラフィックモニターに表示されている。

 

「皆、シートベルトはしていてくださいね」

 

マドカがそう言うと、他のメンバーは各々の席に設けられたシートベルトを確認する

 

「準備は良いですか?」

 

「「「「いつでも!」」」」

 

「では行きましょうか。サイドブレーキ解除、Uタンク、発進!」

 

Uタンクに搭載された駆動輪が始動し、およそ巨体が出せる速度ではない加速で、発進する。しかし、それに反して車内は快適そのものである。

 

『目標地点までおよそ27㎞、到着まであと15分を予定。安定速度に到達、切り替え可能です』

 

「ん!?なんの声?」

 

アマツがそう言うと、マドカが笑う。

 

「安心してください。今のはUタンクに搭載された補助AI、アテナです。主に照準システムや、車体状況の管理を担当しています。」

 

そう言いながら、マドカはハンドル上部のホロモニターを見て状況を確認している

 

「確認。ドライブモード、ホバーにシフト」

 

『ラジャ、ホバーユニットを展開。ホバーモードに移行開始』

 

そうアテナが告げると同時に、アマツ達は車体から浮遊感を感じる。どうやらホバーモードに移行できたようだ。

 

『移行完了。浮遊高度、速度、出力に問題なし。システムオールグリーン』

 

「チェック...クリア。操縦系統を切り替え、自動操縦開始。優先度はニュートラル、異常時にはマニュアルに切り替えるように」

 

『ラジャ』

 

マドカがハンドルを離すと同時に、自動で操作され始める。どうやら自動操縦がしっかりと機能しているようだ。

 

「さて、皆さんこちらをご覧ください」

 

マドカはそう言うと後部に座っている生徒全員に見えるようにホログラフィックモニターを展開する。そこにはD.Uの地図と、走行予定ルートと思われる色付きの線が表示されていた。

 

「今のうちに今後の我々の動きをおさらいしましょう。まず我々は、暴動が起きているシャーレ近郊を強行突破、その後先生の護衛をしつつシャーレビルの奪還。場合によっては防衛、サンクトゥムタワーの行政権回復までシャーレビルならびに先生の防衛。サンクトゥムタワーの行政権復旧が完了するまで、シャーレビルを現戦力でもって、防衛する。ここまでは大丈夫ですか?」

 

そうマドカが聞くと、全員が頷く。マドカはそれを確認すると、モニターの表示を変更する。そこに書かれていたのは車両のスペック表のようなものだった。

 

「目的地周辺まではこの、Uタンクで向かいます。この車両は我々イージスが誇る次世代型戦車であり、暴徒鎮圧並びに拠点への強襲を目的に製造されました。車体装甲材には新開発の次世代型積層構造式複合電磁装甲を採用。この装甲は、要約すると車体装甲に電磁バリアを展開し、着弾時の衝撃や熱を電磁バリアで受け止めることで、ダメージを抑えることが可能な装甲です。これによりRPG-7などの従来の対戦車砲による攻撃を、理論上は1万発は耐えることができます。主砲は120mmレールキャノン。砲弾は専用榴弾。その他に車体下部に搭載された暴徒鎮圧用ショックマイン。車体中央部に搭載されている遠隔操作式30mmガトリングキャノン、車体後部六連装グレネードランチャーを搭載し、複数の目標を鎮圧可能です。まぁ、ここまで固い説明をしましたけれど、要するにものすごく硬くて強くて速い戦車で一気に駆け抜けてしまおうと、そういう訳です。…って、あら?皆さんどうしました?目を丸くして」

 

マドカが他のメンバーの方に向くと先生を含む全員が目を点にしていた。

 

「エンジニア部の子達を持って、マドカ先輩にはかなわないと言わしめただけあるわ…」

 

「さすがはイージスですね。ここまでの最新鋭装備を開発・製造しているとは」

 

「ゲヘナ支部の方にもこれが配備されているのでしょうか・・・?」

 

「どうやらみんなも驚きを隠せないみたいだね。かくいう私も驚いているんだけど」

 

全員がこの車両の兵装に驚いている。

 

「そうですね。ミレニアムをはじめとして、ゲヘナ、トリニティ、百鬼夜行、そして現在調整を進めているアビドスに配備する予定です。」

 

「すごいね。そう言えばマドカ、学協連とかイージスって何?」

 

「そう言えば、まだ先生には説明しておりませんでしたね。学協連とは『学園協同連合』の略で、キヴォトスの各校同士で結ばれている学校間同盟の元組織された、連邦生徒会とは別系統で作られた独立組織です。ミレニアム、トリニティ、ゲヘナ、アビドス、百鬼夜行、山海経、ハイランダー、レットウィンター、ヴァルキューレ、SRTのキヴォトス主要校の他、中規模学校など、キヴォトス中の学校が署名しています。そして、イージスとはこの学協連直轄の特務組織であり、ヴァルキューレ、SRTなどと同様、キヴォトス広域を対象として治安維持及び災害救助、人道支援を行う。それが我々イージスの主な活動です」

 

「凄い組織なんだね、イージスは」

 

先生がそう言うと、マドカは顔を俯ける。

 

「ご大層な名前を背負ってはいますが...それでも、やはり助けられない面もあります。キヴォトスにはヘルメット団のように学園を追い出された生徒たちによるアングラネットワークがありますし、ゲヘナ学園要注意テロリスト「美食研究会」「温泉開発部」などによる、救援の妨害行為やテロが確認されています。その場合ゲヘナ学園内であれば、ゲヘナの風紀委員会とイージスゲヘナ支部の合同で対応するのですが、別学区でとなると、対応が遅れて後手に回ることがほとんどであり…どうしても二次災害などが発生してしまいます」

 

そういうマドカの手は、固く握りこまれている。

 

「そのような行為で生み出されてしまう不幸や涙を減らすため、我々イージスは存在しています。キヴォトスを守る盾とならなくては....っ!?」

 

「うわっ!?」

 

突然車体に衝撃が走る。アラートが鳴り響き、運転席にあるホログラフィックモニターに警告が表示される。

 

「異常事態発生!I have control!状況は?」

 

『You have control 装甲許容値40%を喪失、第2層までを貫徹』

 

「たった一撃で第二装甲まで貫徹された!?」

 

「どういうこと?」

 

先生がマドカに質問する。

 

「この戦車の装甲が一撃で半分近く破壊されたということです。通常兵器ではまずありえない...考えられるとしたらエンジニア部が開発している大型レールガン...いやあり得ない。あれはまだ試作中で持ち運べる代物じゃない...またあなたですか、ワカモ!」

 

マドカは車両を停車させる。そして後部ハッチを開放すると、銃を取り出し外へ向かう。

 

マドカが外に出ると、車体右側面の装甲が赤熱化しており、そこには砲弾が直撃したのかというほどのへこみができていた。

 

そして、暴動を起こしている生徒が次々とマドカたちの方に向かって銃撃している。しかし、車両の装甲はしっかりと機能しているのか、その銃弾のほとんどは戦車の装甲によって弾かれている。

 

(戦車の装甲は健在。しかし、またあの攻撃を受けたらおそらくUタンクといえど大破は免れない。やはり打って出るしかない!)

 

「アテナ、コンバットモード!優先項目は先生の安全の確保。オールウェポンフリー、何としても守り抜いて。万が一私以外からの命令があった場合はそちらに従うこと」

 

『ラジャ。コンバットモード、移行します』

 

「皆さんは先生の護衛をお願いします!私はこの騒ぎの主犯と思しき生徒を鎮圧してきます。この場をなるべく離れないでください!」

 

マドカは地上に降り、腕時計型のデバイスに触れる。すると、合成音声が鳴り響く。

 

『生体認証:環理マドカ。正常に認証されました。機能を開放します』

 

「着甲!」

 

マドカが腕時計の画面に当たる部分をタップする。するとマドカの服の袖から見えていた肌の上に灰色の何かがまとわりついていく。それは、首元までを覆う。そして今までまとっていた灰色の何かが変化し、装甲へと変わっていく。

それは両手足を完全に装甲で覆い、頭部にバイザー型の装甲を装着し、腰部に大型のスラスターを装着した姿になった。

 

「励起反応炉出力問題なし。システムオールグリーン、粒子式重力制御デバイス起動」

 

マドカがそう言うと、腰部の大型スラスターが展開し、白い粒子が放出され、それと同時にマドカが地面から少し浮き始める。

 

「ARP規定に基づく、口述作戦ログ111。イージス総司令、環理マドカ。緊急事態につき、これより交戦を開始します」

 

そういうと、腰部のスラスターから発生している粒子の勢いが増し、マドカの体は宙に浮く。マドカはその場からどんどん離れていく。

 

先生はその姿をただ見つめる。すると、その横にいたユウカが口を開く。

 

「あれは、フォーミュラスーツ?装着後の姿は何度も見ているけど、あんな風に展開されていたのね」

 

「フォーミュラスーツ?」

 

「先生は初めてご覧になりますよね。マドカ先輩が展開していた装甲服のことですよ。あれはイージスが開発したナノマシンパワードスーツシステム、その名もフォーミュラスーツ。着用することで陸海空の全領域に対応できる戦闘用スーツです。イージスの全職員はあのスーツを所持する義務があるのだとか。基本的なスーツのカラーはイージスのモチーフカラーの青色ですが、一部の生徒のスーツのカラーは変えられて、総司令であるマドカ先輩は白色というオンリーワンなカラーをされているんです。つまり白色のスーツは先輩の象徴でもあり畏怖の対象でもあるということです。戦う姿はもうかっこよくて!」

 

と、ユウカが解説をしてくれる。

 

「…なんだか、すごいね」

 

「マドカ先輩は、ミレニアムの中でも1、2を争うほどに戦術、戦闘などに優れています。それは、うちのエージェント最強をして、本気でやらないと勝てないと言わせるほどでした。本来であればミレニアムで授与される称号のほとんどを先輩が授与されるはずでしたが、本人が辞退したので別の方に。…とにかく、マドカ先輩はすごいんです!」

 

ユウカはそう自慢げに話す。その姿を見て先生は、マドカのことを尊敬してるんだなと感じる。そんなことを話していると、前方から銃声が鳴り響く。どうやら戦闘が始まったようだ。

 

「やはりこちらにも生徒が来ましたね。えっと、チナツさんにハスミさん、援護をお願いできますか?」

 

「わかりました。ならば右側の敵は私が引き受けます」

 

「ではユウカさんは左側を。私は先生の周りの護衛と治療に専念します」

 

「わかりました。チナツさん、先生をお願いします。ハスミさんは右側の敵、よろしくお願いしますね」

 

「任されました」

 

こうして先生たちの方も戦闘へと突入した。

 


 

後ろでは、応援に来たと思われる傭兵生徒とユウカたちが戦っている。マドカは数舜そちらのほうへ視線を向けるが、ユウカたちが戦っているのを見て意識をこちらへと戻す。マドカが飛んでいるその真下には生徒の姿がちらほらと見えてくる。

 

「あれは・・・イージスのマドカ!お前ら!あいつをやれば流れは一気にこっちに来るぞ!かかれかかれ!」

 

傭兵と思われる生徒がマドカに向けて銃を撃つ。その弾幕の密度は、並の生徒なら問答無用で気絶する程のものであった。

 

「邪魔です!」

 

しかし、マドカにとってみれば、ただの有象無象だった。マドカは腰部スラスターによる三次元的且つ圧倒的な機動力で近づき、フォーミュラスーツの装甲で受けられる銃弾は受け、顔などのやむなく露出している部分への銃弾のみ、回避したり特殊警棒で叩き落とすといった最小限の動きで、マドカは弾幕を搔い潜っていく。

 

「なんだあの動き!あれが人間業かよ!」

 

「当たらねぇ!全くこっちの弾が当たんねぇぞ!」

 

弾幕の層がどんどん分厚くなっていく。しかしその中をマドカは突っ切っていく。

 

「バカがっ!そんな至近距離で私たちが外すわけねぇだろうが!」

 

マドカは生徒のほぼ近距離にやってきた。当然目の前まで迫ってきたマドカに対し生徒が発砲しないわけがない。その手に持つマシンガンで斉射による気絶を狙い生徒は引き金を引こうとする。

 

その時だった。マドカは警棒ではなく太もものホルスターに格納されたリボルバーを引き抜いて発砲する。すると撃たれた生徒は、体を激しく痙攣させその場に倒れこむ。

 

「何だとっ!?...ぎゃっ!」

 

「一体何が起こって...ぐぇっ!」

 

その弾をマドカは次々と暴徒へと撃っていく。撃たれた生徒は体を痙攣させ、その場に次々と倒れていく。

 

マドカはそんな生徒たちには見向きもせず、どんどん先へと進んでいく。すると、橋の上あたりでこちらに狙いを定めている狐の面をした少女をとらえた。

 

「っ!?」

 

そう判断したと同時にマドカは身をよじる。するとそのすぐ横を赤色の閃光が横切り、地面に着弾して大爆発を引き起こした。

 

「あら?外れてしまいました。相も変わらず、すばしっこいですねぇ?あなたは」

 

「狐坂ワカモ...あなたも相変わらず破壊がお好きなよう...でっ!」

 

そういうとマドカは警棒を構え、ワカモの元へ肉薄する。

暴徒とかした生徒では捉えることすら叶わないその振りをワカモは冷静に銃身に取り付けられた銃剣で受け止める。

 

「あなたはあの子犬たちと違って戦いがいがありますね!」

 

「もう先生とやりあってきたんですか?全く手が早いです...ね!」

 

そういってマドカは警棒を振りぬき、リボルバーを撃つ。それをワカモは体を様々な方向に向けて回避する。マドカがリボルバーの全弾を撃ち切った瞬間、ワカモはマドカのほぼ0距離まで肉薄し、下腹部付近に蹴りを入れる。その衝撃は重く、重力制御をしているフォーミュラスーツでさえ、ノックバックは免れない。マドカは蹴りの衝撃で後方まで押されてしまった。しかしマドカもただでは終わらない。腰に隠していたホルスターから一発の拳銃を引き抜き、蹴りの体制で残心しているワカモの胸部に向けて一発放つ。その銃弾はワカモの胸部に着弾すると小規模な爆発を引き起こした。たまらずワカモは後方へと吹き飛んでいく。

 

「炸裂弾とは..小賢しい手を!」

 

ワカモは胸を片手で抑えつつ、マドカの方へと向く。マドカもまた片手で下腹部あたりを抑えながらワカモを見る。

 

「あなたならば、私の腹部に蹴りを入れてくるのも今までの戦いから予想できます。しかし私の反応速度ではあなたの蹴りをとらえることはできても、体を動かすまでは間に合わない。ならば人体が最も油断する瞬間、つまり攻撃を終えた直後のわずかな残心、そのタイミングで衝撃を与えやすい小型の炸裂弾を撃てば、あなたはたまらず仰け反る。そう、考えただけです」

 

マドカの手に握られていた一丁の拳銃、それは一発しか装填できない代わりにライフル弾まで装填が可能なものだった。マドカはその銃の持ち手のあたりから銃身を折る。すると中から使用済みの薬莢が排出された。マドカは懐から新しい銃弾を取り出し、それを込めなおした。そしてその銃をまた腰のホルスターに仕舞った。

 

「あらあら、それはもう使わないのですか?」

 

「これは形見です。いたずらに消耗させるのは私としても不本意ですので。それに、あなたも本気で戦っているわけではないのでしょう?」

 

その問いかけにワカモは驚いたような表情を浮かべる。

 

「気づいてらっしゃったんですねぇ」

 

「...今のあなたならば私が放つ銃弾程度避けられたはず。そして、その避けた体勢のまま私に追撃を行うこともできたはずです。つまりあなたは本気も全力も出してはいない、そう考えるのが自然でしょう」

 

「...えぇ、全くその通りですわ。忌々しいくらいに頭が回りますわね、どこぞの狐を名乗る不届き者たちよりもよほど優秀です」

 

そういいながら、ワカモはその手に小さい筒のようなものを持つ。

 

「ですので、この場はいったん引きます。あぁ、もちろんお土産は用意しておきましたので存分に楽しんでくださいね!」

 

「っ!?待ちなさい!」

 

マドカが一歩踏み出すのと、ワカモがそれを地面に叩きつけるのはほぼ同時だった。 地面に衝突した瞬間、筒の中から大量の煙が周囲一帯を包む。マドカは一時的とはいえ、司会を完全に奪われてしまったのだ。

 

その煙が晴れ、周囲を見渡してもすでにワカモの姿はなかった。

 

「違法改造のスモークグレネード...どこまで用意周到なのですか、全く」

 

マドカは周囲を警戒しつつ、ワカモがいた橋の上から地上へと降りる。地面はすでにボロボロであり、激しい戦闘があったことを物語っている。

 

「さて、先生の方は...ん?何の音...まずいっ!」

 

マドカは急いで、先生たちのいるほうへと向かっていった。

 




Tips<学協連>

学校間協同連合の略。キヴォトスの各校同士で結ばれている学校間同盟の元組織された、連邦生徒会とは別系統で作られた独立組織である。数年前にキヴォトスで発生したとある事件をきっかけに、とある人物が発案者となり発足した。キヴォトスの存亡にかかわる事態が発生した場合に学校間の垣根を越えて事態に当たることを目的としている。現在、キヴォトスに存在するほぼすべての学校が連合に加盟しており、その加盟学校すべてに直轄組織である特務機関の支部が設置されている。
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