青き春に少女は盾を広げる   作:狩村 花蓮

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第二話です...キャラの口調が安定しない!解釈違いや本編とは違う展開が存在するため苦手な方にはお勧めできません。それでは第二話、どうぞ!


第二話 シャーレ奪還作戦

マドカがワカモと接敵する少し前、ユウカたちの方でも戦闘が始まっていた。

 

「数が多い…ハスミさん!そっちはどうですか?」

 

「こちらも数が多いです。さすがにこのままではっ!」

 

ユウカとハスミは防戦一方の状態になっていた。とにかく敵が多いのだ。先ほどマドカが減らしてくれたとはいえ、それでも膨大な数がユウカたちの元へ殺到していたのだ。

 

「痛っ…あいつら、違法JHP弾使ってるじゃない!もし先生に当たったり、傷跡が残ったらどうするのよ!」

 

「伏せてください、ユウカ。それに、ホローポイント弾はまだ違法指定はされていません」

 

「うちでは違法になる予定だったの!本当は今日にでも!っとにもう!タイミングが悪いったらありゃしない!」

 

ユウカは悪態をつきつつも、遮蔽物に身を隠しながら敵に向かって銃弾を放つ。ハスミも狙撃銃を巧みに扱い、向かってくる敵を迎撃している。

 

「とにかく先生を守ることが最優先、最悪あの建物の奪還はイージスに任せましょう」

 

「そうですね。先生はキヴォトスの外から来たようですから、我々と違い一発の銃弾が致命傷になりかねません。最大限の注意を払いましょう」

 

「勿論。というわけで先生、先生は戦場に出ないでくださいね。イージスの戦車は固いですから、私たちが戦っている間は、戦車の後ろとかの安全な場所に隠れていてください」

 

ユウカはそう言いながら、迎撃している。しかし、数が多いのか段々押され始めているように見える。

 

「くっ、このままじゃ…」

 

ユウカがそうつぶやく。その顔は苦虫をつぶしたような顔をしており余裕がなくなっていることをひしひしと感じさせる表情だ。

 

(このままだとまずいか…いや、あれを使えれば…)

 

先生はふと暴徒たちがいるほうへと目線を向ける。するとそこには、銃撃でだいぶダメージを負っているのか、倒壊しかかった看板が目に入る。それは後一発当てれば落ちそうな勢いだ。そしてそこの近くには、消火栓らしきものがある。それもすぐに壊れそうな勢いだ。

 

「ユウカ!左の建物近くの消火栓を狙って!ハスミ!ユウカが消火栓を撃って相手の視界を奪った瞬間に消火栓の上にあるあの看板の接合部を撃って!」

 

「先生?…わかりました。合わせてください!ハスミさん!」

 

「わかりました!いつでもどうぞ!」

 

先生の指揮に合わせて、ユウカとハスミがそれぞれ指示された対象へと狙いを定める。

 

「行きます。3…2…1…今!」

 

ユウカが消火栓へと弾丸を放つ。その弾丸は正確に消火栓を撃ち抜き、穴が開いた消火栓はその中に詰まっている消火剤を周囲にばらまき始めた。

 

「うわっ!なんだなんだ?」

 

「くっそ、前が見えねぇ!」

 

消火剤が散布されたことによって、あたり一帯に消火剤による煙のようなものが発生し、暴徒たちの視界を奪う。それに慌てふためいている暴徒たちをしり目に、ハスミはすでに壊れかけの看板の接合部を撃ち抜いた。

 

その看板は支えがなくなったことにより、重力に従って地面へ、そしてそこにいた暴徒たちの頭上に落下する。

 

「ぐぇ!?」

 

暴徒たちは押しつぶされたカエルのような悲鳴を上げて看板の下敷きになり動かなくなる。

 

「一気に数が減りましたね。よかった、これなら何とかなりそう」

 

「お見事です、先生。先生の指示のおかげで戦況がこちらに有利になりました」

 

ユウカとハスミがそれぞれ先生へと賛辞を贈る。チナツも言葉こそないが尊敬のまなざしを送っている。

 

「これなら何とかなりそうだね。じゃあ、今から私が指示を出すよ」

 

「先生が戦術指揮を?…まぁ、先ほどの指示は的確でしたし、私は構いません」

 

「わかりました。これより、先生の指揮下に入ります。どうかご指示を」

 

「私も先生の指揮下に入ります。先生、ご指示をください」

 

三人が各々先生の指揮下に入ることを許諾する。先生はそれを確認すると、首を縦に振る。

 

「わかったよ。じゃあ、全員でこの場を突破しよう!」

 

「「「了解!!」」」

 

こうして少女たちは、一人の大人の力を借りて、戦場を進んでいく。彼女たちの心に、不安という文字はなかった。

 


 

しばらくして、少しずつ前進しながらもシャーレビルへ向かうため、敵対する生徒を制圧していたユウカたちは、先生の指揮もあり、順調に生徒の数を減らしていき、その場はひとまずひと段落という段階まで来ていた。

 

「何だか、いつもより戦闘がやりやすかった気がします」

 

「…やっぱり、そうよね?」

 

「先生の指揮のおかげで、普段よりずっと戦いやすかったです」

 

「なるほど…これが先生の力。まぁ、あの連邦生徒会長が選んだ人物だものね。当然か」

 

ユウカたちは、先生の指揮に対し様々な感想を述べている。襲撃はすでに散発化してきており、シャーレビルはもう目前まで来ていた。結果的に先生の護衛をしながらシャーレビルまでユウカたちはたどり着いていたのだ。(ちなみにUタンクは先生の後ろに陣取り、後方からの襲撃に備えている。)

 

しばらくすると、先生が先ほどリンから貸与された通信機に連絡が入る。ユウカたちの通信端末にも同様に通信が入った。

 

『たった今、この騒ぎを巻き起こした生徒の正体が判明しました』

 

『名前はワカモ。百鬼夜行連合学院で停学になった後、イージスの特別棟での収監の後、矯正局へ移り、その矯正局を脱獄しています』

 

『戦闘能力だけでなく、知略、人心掌握にも優れているとの報告もあります。快適する場合は十分お気をつけて。もう少しでイージスの特殊部隊、イージスフォワードも到着するそうですので、無理はなさらぬよう』

 

通信が切れる。先生がふとユウカたちのほうを向くと、やはりユウカたちは苦虫を噛み潰したような表情をしている。

 

「…予想はしていたけど、最悪の展開じゃない!」

 

「厄介な人物が相手ですね…」

 

先生はその顔を見て疑問を投げかける。

 

「その、ワカモって子は何かしたの?」

 

先生の疑問に対し、ユウカが答える。

 

「そりゃあもう、イージスの総力を持って対処し拘束するぐらいには、危険と判断されている人物です。とにかく爆発・破壊といった行為が多く、生徒を何人も病院送りにしているとか。先日ようやく捕まったと思いきや脱獄までしているとは…といった感じです」

 

ユウカはあきれたような態度でそう答える。そんな二人の前に、ハスミが立つ。その姿はまるで二人をかばうような立ち方だ。

 

「お二人とも、お話はその辺で。どうやら我々は、最悪の状況に追い込まれた…いえ、誘い込まれたようですので」

 

ハスミが見るその視線の先には白狐の面で顔を覆い、その手に和風の銃を持つ和装に似た制服の少女が、歩道橋の上に立ちながらこちらを見ていた。

 

「狐坂ワカモ…」

 

ユウカはその生徒を見て、嫌なものを見たような顔をし

 

「あの子が…」

 

ユウカとともにその生徒を見た先生はそうつぶやいた。

 

「騒動の中心人物を発見。直ちに対応します!」

 

ハスミが銃を構えると、その狐の面の生徒、“狐坂ワカモ”は何かをつぶやく。その声は離れているのにもかかわらず、よく聞こえた。

 

「フフ…連邦生徒会の子犬たちが現れましたか。お可愛いこと」

 

そういうとワカモは歩道橋の上から飛び降り、難なく地面へと着地し、再びこちらを向く。

 

「あの忌々しい女の前哨戦にはなってほしいものですが…」

 

そういうとワカモは手に持った銃をこちらに向けて発砲してくる。

 

「っ!」

 

ユウカはそれを見ると、服の袖から電卓のようなものを取り出し、計算する。すると彼女の周りにシールドのようなものが形成され、その凶弾を弾く。しかしそのシールドは、その一撃を防いだことで限界だったのだろう。割れるように消失していった。

 

「うそでしょ!?」

 

ユウカはその光景に思わずそう言葉を漏らす。そしてそれはワカモも同様だった。

 

「私の弾を一発耐えるとは、子犬にしては少しはやるようですわね」

 

銃弾を防がれたことにワカモは驚きを隠せなかったようだ。そして、そのタイミングで動く人物がいた。

 

「今ですっ!」

 

そう、その一瞬の空白をハスミが逃すはずがなかった。彼女は手に持つ銃を素早く構え、照準を合わせると引金を引いた。その弾をワカモはたやすく避けるが、ハスミも当たるとは思っていなかったようで、ワカモが弾丸を避けた時には次弾を装填していた。

 

「外しません!」

 

その弾丸は、回避直後のワカモを捉える。一発目はわざと外す、相手を動かすために放ったのだ。そしてそれを回避した直後に本命の二発目を撃つ。そうしてハスミはワカモに一撃入れることがかなった。そこに別方向から弾丸が数発飛んでくる。そう、別方面を制圧していたスズミである。そうして連続で被弾したワカモは、その被弾した状態で後方へと一回転しながら下がる。そうして先生たちの方を見て、顔を少し動かす。表情は仮面に隠れていてわからないが、先生だけは、そのしぐさを見て彼女が笑ったのではないかという予想を立てる。

 

「フフフ…存外やりますね。本当はもっと遊んでいたいのですが、そろそろあの女が来るでしょうし、私はここまで。あとは任せます」

 

ワカモはそういうと、すさまじい身体能力で歩道橋へと再度上り、そこから低いビルの屋上へと看板などを飛び移り移動していった。

 

その光景を見たユウカは、一瞬呆けたような顔を見せるが、すぐに切り替え、ワカモが逃げたほうを見る。

 

「逃げられたっ!早く追わないと!」

 

ユウカはワカモを追おうとする。それをハスミが腕で制した。

 

「ユウカ。最初に言いましたが、我々の最優先目標は先生の護衛とシャーレの奪還です。ワカモはイージスに任せて我々はシャーレビルへ急ぎましょう」

 

「ここで追うべきではない…ってことね」

 

ハスミはそれを肯定し、シャーレビルの方へと向く。

 

「罠の可能性も捨てきれませんし…」

 

チナツもそれに同意する。スズミも言葉にはしないがうなずいている。

 

「ここまで来たのであれば、建物の奪還を最優先で、このまま引き続き進みましょう」

 

「えぇ、分かったわ」

 

ユウカたちはそのまま進軍を開始する。それと同時に激しい戦闘音と、何かが爆発する音が聞こえる。どうやら先ほど別方向の敵を対処しているマドカが厄介な敵に遭遇したのだろうとユウカたちは考えつつ、先へと向かった。

 


 

しばらくして、間もなく入り口が見えてくるといったところまでユウカたちは進軍した。

 

「よし!入り口前に到着!」

 

ユウカがそう言って進もうとすると、前方からキャタピラのような音が聞こえ始めた。

 

「っ!?この音ってまさか!」

 

ユウカが音のする方向へ視線を向けると、そこには円柱の巨大な砲身を持つ乗り物、クルセイダー型巡行戦車が現れた。

 

「気を付けてください。巡行戦車です…!」

 

チナツはそれを見て、心底驚いたような声を出す。ここまでのものが出てくるとは予想外だったようだ。

 

そしてそれは、音と共にやってきた。

 

「っ!?ただの暴徒の集団が二台目ですって!?」

 

「いいえ、ユウカ。三台目も来ました。さすがにこの数では…」

 

ハスミも自身の銃を見る。一台ならばどうにかなったのかもしれないが、三台はさすがに難しい、というよりも不可能に近い。

 

「後ろからも暴徒たちが近づいてきてます!このままじゃ挟み撃ちにされますよ!」

 

後ろを警戒していたスズミも焦りを伴った声でそう伝える。

 

「どうやら、時間があまり残されていないようだね」

 

先生も周囲を観察しながら、そうつぶやく。そんな中でも3台の戦車は刻一刻と近づいてくる。そして、戦車の奥に隠れていたのだろう暴徒たちも近づいてくる。ユウカたちは絶体絶命のピンチに追い込まれていた。

 

その時だった。先生の後ろから轟音が響き渡るとともに、戦車のうちの一両が炎を上げて沈黙する。先生が後ろを振り向くと、先生の背後にいたUタンクが、砲塔を戦車へと向けた状態で待機していた。レールガンである砲身には、放電現象が起こっていることから、砲撃したのがUタンクであることがわかる。するとUタンクの方から電子音声が響く。

 

『脅威度レベルが上昇したため、砲撃支援を行いました。間もなく、対象:環理マドカが到着します』

 

Uタンクに搭載されたAI:アテナである。そしてその音声が終了したと同時に、何かの飛翔音と共に何かが先生たちの目の前を横切ったかと思うと、二台目の戦車の砲塔が吹き飛び、車内が見えるレベルで破損した。先生がその方向を向くと、ロケットランチャーを二本上下につなげた状態で戦車の方へと構えていた人物、環理マドカがそこにいた。

 

「何とか間に合いましたね。さて、最後の一両はお任せします」

 

そのセリフに合わせるかの如く、ハスミは色が違う銃弾を装填するところだった。

 

「ハスミ、いける?」

 

「えぇ、この弾ならいけます!」

 

ハスミは照準を合わせ、その引金を引いた。それは戦車の装甲に接触すると、耳障りな音と共に装甲を貫通し、車内へと向かう。それは車内に置かれていた砲弾用の弾薬庫に被弾し、その砲弾を爆発させる。そしてその爆発はほかの砲弾へと誘爆し、最終的に車体は轟音と共に爆発する。その中からは気絶した生徒たちが出てくる。すでに破壊されているほかの二台の戦車の残骸の中からも気絶した生徒が出てくる。

 

「さて、まだやりますか?」

 

マドカがそう言うと、その場にいた暴徒たちは蜘蛛の子を散らすようにその場から去った。そしてその場にいた暴徒たちは、すでにシャーレビルの周りから消えていた。

 

「制圧完了、ですね」

 

マドカがそう言う。すでにシャーレの入り口は目の前であり、シャーレビルの奪還は完了し他も同然であった。

 

「ようやくつきましたね」

 

「戦車が三台出たときはひやひやしたわよ…」

 

ハスミとユウカは、戦闘で追ったダメージをかばいつつも、安どの声を上げる。そこに後方の暴徒の対応をしていたスズミも合流する。

 

「こちらも制圧が終了しました。これで後方は安全ですよ」

 

その声に一同はほっと溜息をつく。そしてマドカは通信端末を操作し、どこからかへ通話をかける。通信がつながり、ホログラフィック画面が表示されると、そこに映っていたのは、リンだった。

 

『シャーレの奪還、確認しました。大変お疲れ様です。私もすぐそちらに向かいますので、シャーレの中にて待機していてほしいと先生にお伝えください』

 

「了解しました。シャーレビル周辺は制圧していますが、そのほかの地区ではまだ暴動が続いている可能性がありますので、どうかお気を付けて」

 

そういってマドカは通信を切る。通信端末を懐へしまうと、マドカは先ほどフォーミュラスーツの着用に使った腕時計型端末に触れる。

 

『生体認証確認。着甲解除』

 

すると、今まで来ていたフォーミュラスーツ全体に黒い罅のような模様が入ったかと思うとバラバラになりながら腕時計型の端末に収納されていく。物の数秒でマドカは元の制服姿へと戻った。マドカは手首を回したり肩を軽く揉んだり、首を回したりしたのちに、先生の方へと再び向き直る。

 

「先生ももしかしたら通信を聞いていたかもしれませんが、一応お伝えしておきます。間もなく連邦生徒会の七神リンが到着します。先生はシャーレビルの中で待機しておいてほしいとのことです。どうぞ、お早く」

 

「わかったよ。ここまでありがとう、マドカ。ユウカ、ハスミ、チナツ、スズミもありがとう。私はもう行くね」

 

先生はこの場にいる生徒全員に対し感謝の言葉をかけると、シャーレビルへと入っていく。 その後姿を見てマドカは一息ついた。ユウカたち他のメンバーも同様で、シャーレ入り口付近で警戒こそしているが、半分休憩しているような気楽な雰囲気で過ごしていた。

 

やがて先生の姿が完全に見えなくなったのを確認したマドカは再び懐に手を入れる。取り出したのは先ほどまで使っていた通信端末ではなく、スマートフォンだった。マドカは画面を手早く操作すると、スマホを耳に当てる。どうやらどこかへ電話をかけているようだ。

 

「もしもし、マドカです。こちらの仕事はひとまず無事に終了しました。このまま状況を見つつ、状況を事後処理へと…はい、なので処理班をこちらへお願いします。あぁ、それと今回の暴動で使われている物資などの出どころも並行して調査をお願いします。…了解、復旧を確認し次第そちらに戻ります。今回の特別任務の手当てはいつも通りに…えぇ、一般生徒からも協力を受けたのでその分も一緒に。…ひとまずここを片付けてから、改めて。アビドスの一件の方は後程…では、よろしくお願いします」

 

マドカはそう言って通話を切る。そしてマドカは近くの自販機にスマホをかざし、ペットボトル飲料を数本購入し、ユウカたちの方へと向かった。

 

「今回の特別任務、お疲れ様でした。ユウカさんに、ハスミさん、チナツさん、スズミさん、本当に感謝します」

 

飲料を手渡しながらマドカは声をかけていく。それぞれ飲料を手渡されたユウカたちは軽く会釈をして、その飲料を受け取る。全員に配り終わると、マドカは再度口を開いた。

 

「今回の先生の護衛の特別任務にて使用された各種弾薬、消耗品の請求に関しては、各イージス支部の総務課に請求いただければ対応します。私の方で話は通しておいたので。今回は助かりました、私一人では先生を安全にここまでお連れすることはできなかったでしょうから。これもひとえにあなた方の協力あってのものです。繰り返し深く御礼申し上げます」

 

そういってマドカはユウカたちに頭を下げる。それを見たユウカたちは慌てたように口を開く。

 

「いえ、そんな。私はただ、先輩が困っていそうだったので協力しただけで…」

 

「治安維持につながると思って協力しただけですので…お礼を言われるほどでは…」

 

「私も、こちらのほうが、事態の収拾が早くなりそうだったので協力させていただいただけですから…」

 

「これも自警団活動の一環ですから」

 

と、それぞれの生徒がそう言った。そして、その時上空からヘリのローター音が聞こえてきた。機体側面に書かれているエンブレムは連邦生徒会のものだった。

 

連邦生徒会のエンブレムが入ったヘリが着陸する。後部扉が開くとそこから出てきたのは、七神リンその人だった。

 

「リン行政官、お疲れ様です」

 

マドカが敬礼をしながらそう挨拶する。その光景に当てられたのか、ユウカたちも慌てて頭を下げる。

 

「そのようにかしこまらないで下さい。今回もイージスに支援を頼んでしまう形になってしまった上に、疲労とはいえそこの方々にも失礼の物言いをしてしまったのですから」

 

と、リンは自虐めいた言い方でそう返す。その顔は引きつっており、佇まいからは後悔の念がにじみ出ている。

 

「それを気にするということは、しっかりあなたが反省できているということです。あとは当人たちに謝って、次からは気を付けましょう」

 

マドカはその自虐に対し、諭すようそう返す。それを聞いてリンは、はっとした表情を浮かべると、ユウカたちの方へと向き直り、頭を下げた。

 

「この度は、私の失礼な物言いで皆様に不快な思いをさせましたこと、深くお詫び申し上げます。本当に申し訳ございませんでした」

 

リンが頭を下げ謝罪をする姿に、最初こそユウカたちは呆気に取られていたが、すぐに持ち直し、ばつが悪そうな表情でリンを見る。

 

「頭を上げてください、代行。私の方こそ、いくら何でもあそこまでまくしたてることなかったかなって思います。ごめんなさい」

 

「私からも、謝罪を。正義を志すものとしてあの振る舞いは、よいものではありませんでした」

 

「私からも、です。あなた方も混乱しているのに、一方的にまくし立ててしまい、本当にすみませんでした」

 

先の連邦生徒会の一件で、リンに対し食って掛かったユウカたちも、そのことを反省し、リンに頭を下げる。そこの右傾を見たリンは、目じりに薄っすらと涙を作りながら、口を開く。

 

「皆さん、本当にありがとうございます。今回のお礼はまた後日に。私は先生に用事がありますので、この辺で。うまくいけばもうすぐこの混乱は収束できるかと思います。それでは」

 

リンはシャーレビルの中へと入っていった。そして、それと同時にシャーレの中心部の方面から、何か音が聞こえる。それは無数のホバー音だった。

 

「どうやら、処理班が来てくれたようですね」

 

向こうからやってきたのは、数台のUタンクのようなものだった。しかし、その車体は黄色と黒のストライプでペイントされており、砲身の部分には可動式のクレーンが装着されていた。

 

その車両は数台で来ており、そのうちの一台がマドカの前で停車した。戦車でいうキューポラに当たる部分が開くと、そこから出てきたのは、黄色い安全帽をかぶった一人の生徒だった。

 

「よぉ大将!こりゃまた派手にやったなぁ!」

 

安全帽をつけて、口に鉄釘を咥えた赤い髪の少女が、そう叫ぶ

 

「ナオ!早かったですね」

 

「おおよ!こっちはちょうど、あんの馬鹿どもにやられたインフラの応急修理が終わったところだったんでぃ!そんでもって帰ろうとしてたところに大将からのお呼びがかかったんてんで、そりゃもう急いできたんだ!そんで大将、ここも直しておけばいいんだな?」

 

「えぇ、早急にお願いします」

 

「分かったぜ大将!おらぁお前ら!とっととここも片付けんぞ!」

 

「応!!」

 

マドカの要望にナオは答え、ほかの車両の方にそう叫ぶ。するとほかの車両の窓や扉が開き、中からナオと同じような格好をした生徒が下りてくる。その生徒はスコップや様々な機械で修理を開始する。

 

それと同時にマドカたちに通信が入る。

 

「こちらマドカ…了解です。では支援活動はそのままに、今回の暴動を起こした生徒たちの一斉制圧、並びに矯正局への収容を開始してください。私もすぐにそちらに戻ります。では」

 

マドカは通信を切る。先ほどの通信は、サンクトゥムタワーの機能が復旧したという報告だった。そしてそれはユウカたちも同じだったようで、ガッツポーズや安堵している様子が伺える。それを確認したマドカはUタンクの方へと向かう。

 

「アテナ、通常走行モード。このまま近くのメンテナンスベースへ自動運転で向かい、修理を受けてください。お疲れ様でした」

 

『ラジャ、システムノーマル。近くの対象施設を検索、自動走行開始します。お疲れ様でした』

 

Uタンクはマドカからのコマンドを受諾し、自動走行でその場を離れる。それを見たマドカは、スマホの画面を操作する。

 

「では、私はこれで。皆さん本日は本当にお疲れ様でした。ナオ!後は頼みますね!」

 

「あいよぉ!こっちは任せとけ!きっちり直しておいてやる!」

 

ナオはそう言って左の腕を右手でたたく。マドカがそれにうなずく、それとほぼ同時に二輪特有のエキゾーストが聞こえてくる。マドカがそちらを向くと、遠くから流線形のデザインをした大型バイクがやってきた。どうやら自動運転が組み込まれているらしく、そのバイクには誰も乗っていない。マドカはそれに跨ると、そのままバイクを発進させる。マドカはシャーレビルを後にした。

 




tips:イージス①

学協連の直下に設立された特務機関。各学園に一つイージスの施設が設けられており、各支部を統括しているのは、ミレニアムに存在するイージス本部である。総司令はミレニアム所属の環理マドカであり、学協連の指示または各支部との協議による決定などで、必要な対処を行う。各学校の生徒にそれぞれ適性試験を受けさせ、その中で適性があるものが所属している。ただし、何の役職にもついていない一般生徒の中から選出されており、適性試験に合格した者は、さらなる適性検査により装備と戦術訓練所への割り振りが決まる。                                                                                                                                                                                                                                            
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