「子供たちがボール遊びをしている」
「僕らは、それを眺めている」
土曜日の朝、僕と友人で公園に来ていた。
何をするわけでもなく、ただ景色を眺めていたいから。
友人とはいつも約束をしてこの公園に来るのではなく。
たまたま出会うことが多いだけだ。
「お前、いつまで公園にいるんだ?」 僕が聞く。
「さぁ?あきるまで?」 友人がそういう。
この場合、僕が帰るといえば彼もかえるのだろう。
もしくは、彼に何か予定ができるかだけど...
燦燦と照り付ける太陽は、肌寒い今の終わりを告げるかのようで、
なんとも安心のするものだった。
子供たちの中にはこの季節の中で、半そで半ズボン、いわば夏服のような
恰好をしている子もいる。
「小学校のころはそんな奴もいたな..」ふと、呟いてみる
すると友人が、
「俺、ガキの頃あんなんだったぜ」 という。
「寒くなかったの?」興味本位で聞いてみる。
なんだかんだで気になっていたものだから。
「いや、くそ寒いぜ。ホント、凍死しちまうくらい。」
「なのにあの格好で過ごしてたの?」僕が夏服の子供を見ながら言う。
「あぁ、そうだよ。」
「...クソアホじゃん」
「おぉい!クソはいらんだろクソは」
僕らは軽くはにかむ。
よくある会話だ、誰にだってできる下らない小話だ。
...でもその時間がすごく楽しい
「ぽピン...」 友人から音がした
「どうしたの?」と聞く
「スマホからだ、あ、」
「ん?」
「今日塾あんの忘れてたわ」友人が冷静な口ぶりで言う
「やべぇ行かねえと。」急いで友人が帰る支度をする。
「やっぱお前くそアホだよな?」
「うるせぇよ」
「んじゃー帰るわ。」
「んーまたねー」
お互いに手を振る。
明日は日曜日だし、その日に来るだろう。
来なくても、また会えるだろう。
友人が行ってから数十分後、僕もまだ学校の課題が終わっていないとに気づき、
家に帰る。
...
夜、多くの人が眠る時間になった。
結局課題は4ページぐらいしか進んでいない。
ほとんどはスマホゲームに時間を使ってしまった。
おかげでスマホの充電だけが無くなった。
充電のように、課題もすぐ終わればいいのにと祈るが、
そうそう終わりはしない。
そういえば、知り合いは1時間で10ページぐらいやってたな。
周りの人の頭がいいと、つい周りと比較してしまって
知らないうちに自信を無くす。
「友人はどうなんだろう。」とふと思う。
はしたないかもしれないけれど、友人も僕と同じぐらいだったらいいなと思う。
「あした、聞いてみるか...」
「プルルルル...」
電話が鳴いている
「なんだよ、勉強してるのに...」
勉強してるといえるほど勉強していないが、
そっちの方が自分の心の都合がいいのだ。
「ガチャン...」
「もしもしー?」
「はい、僕であってますよ」
「病院の方ですか? はい。」
「えぇ知ってますよ、僕の友人です。 彼がどうしたんですか?」
「事故!? 彼がですか!?」
「はい! はい!」
「わかりました! すぐ行きます!」
友人が事故にあったと、病院の人から言われた。
何一つ着替えず、半そで半ズボンで家を出て走り出した。
僕は焦っていた。
彼が事故にあうなど思いもしなかった。
靴ひもの結び目はほどけて、
寒い風は足っているおかげで自然に涼しい風になる。
喉の奥が熱くなる。
顔が赤くなっているのがわかる。
点滅している信号を走り抜ける。
気づけば病院が目の前にあった。
空の黒色は先ほどよりも濃くなっており、
それに対抗するように病院の明かりが僕を照り付ける。
「まぶしい...」
そうぼやきながら、そそくさと病院に入る。
職員の人に案内されて、僕は友人のいるであろう部屋の前に立つ。
彼は今どんな状態にあるのだろう、と考えてみる。
息はしている? 顔は? 手足は? また助かる見込みはあるのか?
もしも死んでいたら?
嫌な唾を飲み込んで、ドアを開ける。
友人の父親と見受けられる人が立っていた。
その前には、目を閉じで、呼吸器につながれた彼の姿があった。
「あぁ...こんにちは。」と男性が、
「えぇ..こんにちは..」と僕が、
「あなたは、 えーと お父さんで会っていますか?」
「はい。そうです。」
僕はこの人と面識が一切なかった。
友人とは学校で時折、公園で良く出会うぐらいの仲であり、
親友よ呼べるほど仲が良かったのに、どういうわけか、
お互いの家も両親も何も知らなかったのだ。
もっとも、親友と思っているのは僕からの一方的な願いかもしれないが、
「すみません、こんな時間に。」
「いえ、いいんです。それより、なぜ僕を呼べたんですか?」
「面識、ないはずですよね?」
「それは、息子が事故にあった直後、すぐに私と君に電話をしたからです。」
おどろいた。いや、うれしかった。
彼が僕を友人と思っていることが。
でも、ぼくはそれよりも気にするべきことがあった。
「電話?」
「えぇ、スマホで電話したんです。」
納得がいった。だからこの人は僕の事を知っていたんだろう。
スマホの着信履歴でも見たに違いない。
しかし、その電話は僕には届かなかった。
充電が切れていたから。
そう思うと自分が実に馬鹿なことをしたと思えてくる。
あのとき、課題に集中して、スマホを使っていなければ、
助けられなくても、きっと友人のSOSが僕に届いたことだろう。
「電話だったら、僕にじゃなくて救急車にかければよかったのに。」僕はつぶやく。
「きっと、あなたの事をよく信頼していたからだと思います。」友人のお父さんがいう。
余計に、悲しくなる。僕を信頼してくれる人が、こんな状態になってしまったことを。
状態?そうだよ、状態だ!
「いま、どんな状態なんですか?」
目に見えて大丈夫でないとわかるが、僕は聞かずにはいられなかった。
「事故にあったときは意識があったんだが、病院に着いた後、すぐに意識を
失い、呼吸困難になり、植物状態になってしまったんです。」
弱く震えた声でそう話す。
意識は...と言いかけたところで言葉を飲み込む。
これ以上は、この人の精神を傷つけるだけだと思ったから。
「...すみません」
申し訳ないと思って僕は言う。
「それはこちらもです。」
男性が続ける。
「それにしても良かったです。息子が最期に話したのが
あなたのような誠実な人で。」
誠実な人..ね..
「それが知りたかっただけです。夜遅くに来ていただいて、
今一度お礼を申し上げます。」
そう話すと男性は僕に向かって一瞥し、
「もう、おかえりいただいて結構ですよ。」
優しい声で言う。
「ありがとうございました。」
僕もそう言って、家に向かう。
きっと、家に向かっている間の僕の背中は、
なんとも情けないものだっただろう。
「まぶしぃ...」
カーテンの隙間から光が漏れだす。
結局、あの夜家に帰ってからはよく覚えていない。
多分、そのまま布団にもぐりこんだのだろう。
「さみぃな」
これから暖かくなるとは言え、まだ朝は起きるのが億劫に感じられる季節だ。
洗面所に行き、歯を磨き、顔を洗い、服を洗濯機の中に投げ入れる。
「今日、何しよう。」
そう言っているときにはすでに、外出用の服に着替えていた。
体が、いつものようにあの公園に行こうとしているのだろう。
昨日の事で疲れた僕は、体に従い、公園へ出かけて行った。
そよ風が心地よく吹いていた。
風が肌に触れるたび、体が落ち着くような感覚を覚える。
信号のない横断歩道を渡り、舗装タイルの上を歩く。
そうしている内に、公園へ着き、ベンチに腰を掛ける。
「...」
すこし俯いてみる。
もしかしたら、彼が、友人が話しかけてくれるかもしれないから。
そんなはずもないだろうに。
ただ祈るように。
待っている。
待つ。
ふと、ボール遊びを音が聞こえて、顔を上げると...
「子供たちがボール遊びをしている」
「僕は、それを眺めている」
短編です。
初めて書きかました。
文章が稚拙だけど許してne★
楽しんでくれたら幸いです。