俺の青春が田舎へ流された。   作:龍造寺

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ハッテン、僕の町編9話です。


ハッテン、僕の町編ー60ー9話ー完二を救い出した後の日常。

 

2011・05・19・☀・17:30・稲羽市・吹寄家付近。

 

俺と制理は二人で自宅方面へ歩いていく。もうすぐ制理の家に着く頃だな。今日は一段と疲れたぜ。天城の時よりも確実にシャドウが強くなっているのは間違いない。俺たちは力をつけなければ、次に誰かが犯人にあの世界に落とされた時、助けに行ったところで確実にやられる可能性が高い。

 

なら俺たちも力をつけなければならない。でも今だけは、巽を助けられたことを素直に喜ぶのも悪くはない。隣を歩いていた制理が、俺が色々考えていたことに気づいたらしく言った。

 

「八幡、何か考え事をしてるでしょ? あなたってすぐに顔に出るからわかるのよ」

 

「まあな。今回巽を助け出せたのも、運を味方につけてるのが大きいような気がするんだ」

 

「運も実力のうちだと思うんだけど?」

 

「確かにそうなんだが、いつもいつも運任せに戦ってたら身が持たないだろ?」

 

いくら回復役の制理や天城、キツネがいるとはいえ、力をつけなければこれから先、戦っていけないのは目に見えてわかる。それは鳴上たちも分かっているはずだが。

 

まあ、俺はリーダーじゃないからそこまで言うつもりはないが、頭に入れておく必要はあるな。

 

「定期的にテレビの世界に入って、力をつけておく必要があるってわけね」

 

「まあな。今回は助けられたが、次も助けられるかどうかはわからないからな。そのために俺たちが力をつける必要があるってわけだ」

 

「そこはリーダーの鳴上君も分かってるでしょ」

 

「ああ、鳴上は切れ者だよ。たまに変なことは言うがな」

 

「確かに、真剣な顔で変なこと言う時あったね」

 

「とにかく今は、巽が元気になってくれることだけだな」

 

「そうね」

 

そんな会話をしながら吹寄家に到着した。俺は制理が家の中に入っていくのを確認してから、叔母さんのアパートへ歩き出す。巽も一応救えたし、あいつらに手紙を書くのも悪くはねえか。白鐘に❝手紙を書く❞と伝えてくれと頼んだからな。

 

手紙の返信は便箋で書いてもいいよな。向こうも便箋で書いて送ってきたんだから。

 

2011・05・19・☀・19:30・稲羽市・八十神アパート・2ー1・静江の部屋・リビング。

 

叔母さんは定時で仕事を終えたらしく、早めに帰ってきた。色々とジュネスで買い物をしたみたいで、買い物袋を持って帰ってきた。

 

俺も叔母さんが買ってきてくれた材料で晩飯を作って、今食べているところだ。ただ、叔母さんの様子がおかしい気がする。何かあったのか? そう思っていると、叔母さんが口を開いた。

 

「八幡、あなたに言っていなかったことがあったわ」

 

「は? 言ってなかったこと?」

 

「前に巽完二君の話をしたでしょ?」

 

「あ、ああ……確かに聞いたな」

 

本当は色々と知っているが、ここはあえて知らないふりをしておこう。

 

「……実は、完二君のお母さんが警察に捜索願いを出したみたいなの。でも無事に見つかったのよ」

 

「その話を何で俺に?」

 

「ほらっ、完二君も八幡と同じ八十神高校に通ってるからよ。だから一応教えることにしたのよ」

 

「へぇ~その巽完二って……いなくなってたのか?」

 

「まあね。あの子もあんな風だから、姿が見えないぐらいじゃ誰も心配しないのよ。本当は心優しい男の子なのに」

 

巽完二、見た目によらず裁縫が好きなヤツなんだよな。今頃あんなやつ滅多にいない。叔母さんが何か言うか言うまいかな表情をして、

 

「八幡、完二君のお母さんから聞いたけど、巽染物屋を訪れたって?」

 

巽のことで母親に尋ねた時か。あの時は白鐘が先に訪れていて、その後俺にあいつらのことを言って手紙を渡してくれたな。そのことで俺は返信しなきゃならないが。

 

「あ、天城の用事でみんなでついてったんだよ」

 

「天城さんの用事ねえ……まあそういうことにしとくわ」

 

「もっと聞いてきたりしないのか?」

 

「私は八幡を信じてるからね。それにね、あんたが社交的になるのは賛成だし嬉しいからね」

 

別に社交的になるためにやってるわけじゃないけどな。やらなければならなくなったからやってるだけだ。

 

「とにかく危ないことだけには首を突っ込まないこと、いいわね」

 

「ああ、分かってるよ」

 

「……天城さんといい、完二君だったり……一体何が起こっているの?」

 

叔母さんがそんなことを言ったら、俺は黙々と晩飯を食べることに専念したのだった。変に答えたら、『なぜそんなこと知っているのか』と聞かれることになるからな。ここは黙っていた方が正解だ。

 

ー綾奈Side

 

2011・05・19・☀・22:00・稲羽市・稲羽マンション5-8・綾奈の部屋・リビング。

 

私は明日の準備を終えた後、リビングのソファーに座って今日のことを考えていた。鳴上君たちとテレビの世界に入り、あのサウナのような施設でシャドウと戦い、巽完二君のシャドウともなんとか戦って勝てた。最終的には、巽完二君自身が自分のシャドウを倒したことになるのだけれど。

 

「吹寄さんが先ほどの電話で言ってたけど、運が味方した形で今回は勝利したって、比企谷君が言ってたらしいわね」

 

確かに、今回の戦いに限ってみれば、そういう要素が強かったかもしれない。私たちのペルソナはほとんど彼のシャドウに対して通用していなかった部分が大きい。比企谷君が身体を張ったことによって、巽完二君のシャドウに隙ができて、鳴上君の攻撃にもつながったわけだから。私たちは、これからも同じように陥れられた人たちを救っていかなければならない。犯人が捕まらない以上、私たちの役目は終わらない。二重の生活になるけれど、あの子たちだって二重生活をしているのだから、教師である私が『できない』なんて言っていられない。

 

私は、あの子たちの教師なんだから。

 

2011・05・20・☀・12:30・稲羽市・八十神高校・2ー2組。

 

今日は中間テストの結果発表が張り出される日だ。この高校に来て初めて知った時は驚いたな。まさか掲示板に順位が張り出されるなんて思いもしなかった。総武高校ではそんなことはなかったからな。ただ、学年1位は雪ノ下だったわけだけど。クラスの誰かが『結果発表が張り出された』と言ったから、みんながそっちの方に移動する。

 

俺も鳴上たちと中間テストの結果発表を見に行った。そして今、帰ってきたところだ。天城が1位だとばっかり思っていたが、なんと彼女は2位に落ちていた。それじゃあ制理が1位になったのかと見たのだが、鳴上が1位だった。あいつ見た目だけではなく頭もいいのかよ。あいつ最強じゃねえか。俺は4位か……まあ頑張った方だよな。1年の最後の時はベスト10には入っていたが、それ以上になるとは。やはりみんなと勉強したのが良かったということだ。

 

期末前には制理や天城の他に、鳴上からも教えてもらった方がいいかもしれん。今日はこんな感じで1日が過ぎたのだった。

 

2011・05・23・☂️・10:45・稲羽市・八十神高校・2ー2組。

 

倫理の授業なのに、何故か説教されている俺たち。

 

「貴様ら、眠そうだなぁ。……ダラけとる! 人としての尊厳を持て! 貴様らがそんなだから、規律がゆるんで1年がダラけるんだ! 巽完二のようにな! あんなサボってばかりの腐ったミカン、即刻退学にしてやりたいわ!! 他人事に思うなよ。貴様らも同じだからな! ハレンチな事件でも起こしたら、即刻! 退学にしてやるから肝に銘じとけ!」

 

俺はこんな話でも聞いてなくてはならない。前に色々言われたからな。やる気のない顔をしているとか何とかで。はぁ〜同じ怒られるにしても、平塚先生の方が断然良かったと今なら思えてしまうくらい、昔の感覚を思い出すようになってしまったが。

 

そうだ、今日の放課後、あいつらへの手紙も書いたし、ポストに入れないとな。

 

そんな感じで今日の授業も過ぎていく。

 

 

ー綾奈Side

 

2011・05・23・☂️・12:45・稲羽市・八十神高校・職員室。

 

今日は雨だけど、ずっと降り続く雨ではないみたいね。完二君を救い出したとはいえ、彼が学校に来て元気な姿を見せているわけではないから、まだ安心はできないわ。犯人によって、再び向こうの世界に連れて行かれるということはないでしょうけど……。私はお昼ご飯のお弁当を食べながら、そんなことを考えていた。

 

職員室の端の方で、諸岡先生が校則違反をした男子生徒を厳しく叱っているみたい。それに対して生活指導の先生も『それはあまりにも言い過ぎでは』と止めに入るぐらいに。

 

彼は❝厳しく怒るのも教育のため❞と言っているんだけど、周りの先生から見ればやりすぎにも思えてくる。男子生徒も反省して謝罪しているのに、それを受けようとしていないのよね。ただ、何か言えばこちらにも火が飛んでくるので、誰も口を出さないようにしているわけだけど。

 

私はその男子生徒を助けるつもりで、お弁当を食べるのを中断して彼の元へ向かった。

 

「諸岡先生、本人も反省しているようですし、そこまでにしませんか?」

 

「雪柳先生、何を言っているんですか。こういう輩には厳しくしなければ分からないのですよ。あなたのように優しく諭したところでわかるはずがない」

 

「当事者が悪いと反省していなければ、ある程度厳しく指導するのもわかります。ですが、彼はもう反省して次からはやらないと言っているんですよ。だったらそれを信じるのも教師の務めだと思いますが、違いますか?」

 

「雪柳先生……」

 

「ぐぬぬ……フン、今回は雪柳先生に免じて許してやろう。だが次に同じことをしたら、今度こそ許さんからな」

 

そう言って、諸岡先生は職員室から出て行った。怒られ続けていた男子生徒は私の方を見て、深々と頭を下げた。

 

「雪柳先生、助けてくださってありがとうございます」

 

「私も単に助けたわけじゃないわ。あなたが反省したと言ったから、それを信じただけ。だから2度と悪いことはしないでね」

 

「はい、もう2度としません」

 

「うん、よろしい。自分の教室に戻りなさい」

 

「はい」

 

あの男子生徒、見た目はチャラチャラしていそうだけど、中身は真面目で優しい子だと、彼のクラスを受け持つ他の先生から聞いている。

 

諸岡先生はあのチャラチャラした性格や髪形などが許せないのでしょうけど、それで校則違反とか全てを決めつけるのは、ひどいことだと思う。生活指導の先生からもお礼を言われた。

 

諸岡先生、行き過ぎた指導が後で最悪な形で戻ってこなければいいのだけど。それがわかってくれるかどうかはわからないわね。心の中でため息を吐いてしまった。

 

さてと、自分の席に戻り仕切り直して、お弁当を食べることにした。

 

もう一度、アンケートを取ります。鳴上悠のヒロインは誰がよろしいですか?

  • 1ー里中千枝
  • 2ー天城雪子
  • 3ー久慈川りせ
  • 4ー白鐘直斗
  • 5ー小沢結実
  • 6ー松永綾音
  • 7ー海老原あい
  • 8ー雪柳綾奈
  • 9ー麦野静江
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