魔法使いの夜・再録   作:某喫茶店のアルバイト

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つまらないものですが

 長い廊下を進み、幾つか角を曲がった先の部屋へと通される。

 大きな座卓を挟んで、厚手の座布団に腰を下ろすこと約十分。開いている襖から見える枯山水を眺めながら、アレは誰が手入れをしているのだろうかと、益体のないことを考えている彼の前に湯飲みが差し出された。

 言葉も無く、淡々とした横顔が近くにある。妖夢と呼ばれた少女は着替えてきたのか、服も髪も綺麗に整えられていて、三人分の湯飲みを配り終えると彼女は二振りの刀を置いてソッと女性の背後で膝を折った。

 霊夢共々歓迎はされていないようだが、その程度の事は気にならない。というより気がつかない草十郎は、ふと何か思いついたように口を開こうとして、けれど先に女性が咳払いを挟んだ事によって喉まで出かかった言葉を引っ込める。

 

「コホン……この白玉楼の主、西行寺幽々子と申します。そして、こちらは庭師の魂魄妖夢です。以後、よしなに」

「えっと、静希草十郎といいます……」

 

 畏まった挨拶を受けて草十郎も何とか挨拶を返す。以前咲夜に教わったことを必死に思い出しながら、たどたどしくも『本日は……』と続けようとしたのだが、その前に幽々子が手で制した。

 

「堅苦しいのはここまで。うふふ……少し真面目にやってみたけど疲れちゃったわぁ」

 

 真面目な態度から一転。頬に手を当てて、マイペースにおっとりと笑っている。会話も独特のテンポで、良くも悪くも他の影響を受けないタイプなのだろう。そんな主を見た妖夢は呆れたようにため息を吐いていて、もしかしたら何時もこうやって気を揉んでいるのかもしれない。

 苦労人気質というか、真面目そうな分余計に振り回されていそうだと、そんな感想を草十郎が抱いていると、彼女と視線がパッタリと合う。

 背筋は正しく、重心は安定していて、何時でも切りかかれる距離なのだがそれよりも気になることが彼にはあるようで、一度は飲み込んだ疑問を吐き出すことにしたようだ。

 

「魂魄さん……だっけ。君はどうして離れたところに座ってるのかな? それに、君の分のお茶は無いみたいだし」

「……私は幽々子さまの従者です。来客のときはこうして控えているのが当然かと。それとも、この場に居られては困るのでしょうか?」

 

 少女は質問の意図が分かりかねるといった顔で、眉を顰めた。出会い頭と比べれば敵意も薄れ、口調も大分穏やかになってはいるものの、警戒は未だ解いてないのか、疑惑の目を向けている。

 彼女の顔に緊張が走り、一度は置いた愛刀に手を伸ばす。だが、彼はケロリとした顔で『いや……』と首を振って言葉を続けた。

 

「どうせなら皆でお茶にしよう。君だけ仲間外れなのは良くないし、何より見てるだけじゃ味気ない」

「言いましたよね、私は従者だと。幽々子さまの顔に泥を塗るわけにはいきませんのでどうぞお構いなく」

「え? いや、別に気にしないと思うけど……『来客のときは』ってことはそれ以外は一緒にお茶を飲んでるんだろう? それに、従者というよりはもっとこう……」

 

 親しげな関係だ、と草十郎が言おうとしたところで彼女は音も無く立ち上がり、座卓の前までくると、バンッと音が出るほど強く両手を叩きつける。幸い、三人共が咄嗟に自分の湯飲みを手に取ったのでお茶が零れることは無かったのだが、庭師の少女の怒りは噴火寸前だった。

 間が悪いというか、相手が悪いというか。生真面目な彼女と草十郎では余り相性が宜しくない上に、彼の言葉を早合点して悪いほうに、悪いほうに捕らえてしまっているのだ。誤解を招くような言い回しをしている彼にも責任はあるものの、草十郎にそういった機微を察しろ、というのも無理な注文だろう。

 

「貴方は気にしなくても私や幽々子さまが気にするんです!」

「私は気にしないわよー」

「幽々子さまは黙っていて下さい……。いきなりやってきたかと思えば人を未熟者扱いして……人を馬鹿にしてるんですか!」

「いや、一言もそんなこと言ってないぞ」

 

 何で君は怒っているんだと、心底不思議そうな草十郎を見て一層自分が侮られていると感じたのか、怒りで顔を赤らめる冥界の庭師。因みに、外野の両名共に助け舟を出すつもりは無いのか、霊夢は暢気に茶を啜り、幽々子に至っては何処か楽しそうに『あらあら』と笑っている。

 お怒りの妖夢に叱られながら本日二度目の正座をさせられる孤立無縁な草十郎。ひとしきり怒鳴った彼女だが未だ怒りは収まらないようで今度は主に向き直る。

 

「幽々子様、こんな無礼なやつら追い返しましょう。急にやってきて菓子折り一つ持参しないなんて常識が無いないにもほどがあります!」

「あっ……そうだった」

 

 弾幕ごっこやら何やらで色々と慌しかったせいかすっかりと忘れていたと、背負っていた風呂敷を下ろす。今まで興味の無さそうだった霊夢も、彼が何を持ってきたのか気になっていたらしく、横目でチラチラと見ていた。

 この場に居る全ての視線が彼の手元に集まる中、シュルリと解かれた風呂敷の中入っていたのは長方形の木箱。掛け軸でも入っていそうなソレを座卓の上に置いて差し出す。

 

「お土産の水羊羹です。つまらないものですが」

「あらあらー、気にしなくていいのにー」

 

 とは言いつつもちゃっかりと箱を受けとって抱えている。

 まるで主婦のご近所付き合いのようなやり取りをする二人を余所に、『水羊羹』という単語を聞いた霊夢の視線がきらりと光った。それも無理はない。この水羊羹こそ、予てから霊夢が食べたいと望んでいた高級水羊羹なのだから。

 贈答用だと箱に入っているのかと、新しい発見に心躍らせている博霊の巫女の視線はもう水羊羹以外を見ていない。というより、この白玉楼に何のために来たのかすら忘れていそうだ。

 

 一方、草十郎と幽々子のペースに何時の間にか乗せられていた妖夢はハッと我に返る。

 

「幽々子さま! 食べ物で釣られないで下さい!」

「まあまあ、落ち着いて。あんまり怒っていると疲れちゃうわよー? あ、この水羊羹せっかくだからお茶菓子に出しましょう。妖夢、切ってきてね」

 

 自分の主が完全に食べ物で釣られた事を悟った妖夢は、木箱を受け取るとがっくり肩を落とした。因みに、水羊羹が食べられると知った霊夢は小さくガッツポーズをしていたのだが、誰にも見られることは無かったようである。

 命令をこなすべくお勝手へと向かう妖夢。幽々子も楽しみだと笑っているが、何か思い出したのかその背中を呼び止めた。

 

「妖夢、今度は自分の湯飲みを忘れないでねー」

 

 そう手を振る主の姿を見て、もう色々と諦めがついた彼女は疲れたようにトボトボと歩いていくのだった。

 

 その後、自分の湯飲みと水羊羹を持って戻ってきた妖夢を加えた四人で改まって座卓を囲む。それまで同席を拒んでいた彼女も、幽々子の一言で折れたらしい。

 彼が持参した水羊羹は妖夢を除いた三人にきっちりと切り分けられている。均等で、一ミリの誤差も無い職人技は彼女の几帳面さを表しているようだ。

 各々がお茶を飲んだり水羊羹に舌鼓を打つ中、念願叶ったはずの霊夢は何故か不満げで、その理由は恐らく、幽々子のお皿にだけ一切れ余分に乗っているからだろう。この白玉楼の主なのだから当然といえば当然といえるが、納得しかねている様子。

 まあ仕方ないと渋々引き下がった彼女は、竹の串で刺して水羊羹を口に運ぶと、頬に手を充てて幸せそうにしている。しかめっ面から笑顔へ、まるで玩具の面子がくるんと裏返るかのように表情を変えた。

 草十郎としては霊夢がああまで喜んでくれるのはそれはそれで嬉しいけれど、妖夢が自分の分を切り分けていないのが気になる。もしかしたら彼女は甘いものが嫌いなのかもしれないと考え、申し訳ないことをしたと密かに反省していた。

 

 お茶も飲んで落ち着いたところを見計らって、幻想郷に来るまでの経緯をざっくり説明する。八雲紫と出会い、気がついたら幻想郷に来ていて、今は失くしてしまった首輪を探すべくここにやってきたことを話すと、なるほどと言って幽々子は納得してくれた。

 

「それで、この白玉楼にやってきたのね」

「何か知りませんか?」

「そうねー、今回に関しては何も知らないわー。冥界に何かを隠すとするなら私のところに顔を出すだろうし」

「むう……そうですか」

 

 レミリアの助言もあって白玉楼まで足を運んだものの、残念ながら進展は無さそうだ。まあ、あくまでも『行ってみるといい』と言われただけであって、手掛かりがあると保証されていたわけではない。

 そういうことなら仕方ないと、膝をついて立ち上がろうとしていた草十郎の肩を霊夢が掴んで待ったをかけた。

 彼女はそれまで顔を綻ばせていた表情を引き締めて幽々子をまるで敵だと言わんばかりに睨む。けれど草十郎からしてみれば、ついさっきまで蕩けるような笑顔を浮かべていたせいでまるで迫力がない。

 

「どうしたんだ?」

「ほいほい信じるんじゃないの。コイツと紫は顔見知りよ。裏で繋がってることも十分あり得るわ」

「幽々子様が嘘をついているとでも?」

「下っ端には聞いてないわよ」

 

 バチィッと火花を散らす巫女と庭師。このままでは再び段幕ごっこを始めかねない勢いだ。

 妙に好戦的な二人を草十郎と幽々子がそれぞれ宥める。妖夢は直ぐ引き下がったのだが、未だに霊夢は敵対心を抱いていて、中々引いてくれそうになかった。

 一度敵と認識すると白黒つくまでは徹底的にやりあうのが彼女だ。白黒ついてしまえばあとを引かないサッパリとした性格なのだがそれはそれとして、ついさっき危ない目にあったばかりの草十郎としては出来るだけ友好的にいきたい。

 ならば仕方ないと、お皿ごと自分の残っていた水羊羹を差し出して彼女の怒りを反らす作戦に出る。魂胆が見え見え、というかそもそも隠すつもりがないようだ。

 

「霊夢、これでも食べて落ち着いてくれ」

「何でも食べ物で解決すると思ったら大間違いよ…………」

「いらないなら自分で食べるけど」

「…………もらうけど」

 

 お菓子では釣られないとジト目を向けているくせに皿はしっかりと受け取っている霊夢。草十郎に良いように扱われているような気がしないでもない。

 彼の中で霊夢の食に対する優先度が一つ繰り上げになる。ともあれ一先ず危機は去ったと、胸を撫で下ろした草十郎は、水羊羹を口にしている彼女に話しかけた。

 

「多分だけど、この二人は無関係だと思うよ」

「もぐもぐ……ふう。何でそう思うのよ」

「だって言ってたじゃないか『暇だったしお客さまは大歓迎』だって。何か手伝ってるならそうは言わないんじゃないかな」

「そうかもしれないけど、普通それだけで信用する?」

 

 確かに草十郎が言わんとしていることは分る。けれど幾ら理屈や理由があろうとも、そうすんなり他人を信じられるかといえばまた別の話。笑顔で殆ど初対面の相手を信じると口にした草十郎を見つめながら、霊夢は僅かに顔をしかめた。

 

 アリスやパチュリーも感じていた違和感。

 彼は余りにも簡単に人を信じ過ぎてしまう。誰かを信じるというのは言葉にすれば簡単だが、実際にはとても難しいことだ。

 嘘をついているかもしれない、騙されているかもしれない、利用しようとしているかもしれない。相手を知らなければどうしたって猜疑心が生まれてしまう。けれど、彼にはそれがない。人間の悪意に対して無防備というか、もしかしたら疑うということを知らないのではないかとすら思えてしまう。

 それは人として尊いものなのかもしれない。けれど何故かそんな彼に苛立ちを覚えている事に気がついた。理由も無く不機嫌になった霊夢は、奥歯を噛み締めてだんまりを決め込む。口を開けば八つ当たりをしてしまう気がしたのだ。

 どうかしたのかと心配する草十郎から顔を反らし、明後日の方を向く。妙な沈黙が流れる中、空気を変えたのは何かを思案しているようだった幽々子だった。

 

「ねえ、貴方たち暫くウチに泊らない?」

「ゲホッ!? ゲホゲホ!」

 

 全く予期していなかった言葉に、彼女の隣でお茶を口にしていた妖夢が盛大に咽ている。

 当前だが彼女は強引に白玉楼に押しかけてきた二人に良い感情を抱いていない。草十郎に関して言えば割ととばっちりなのだが、お茶を飲みながらさっさと帰ってくれないかなと考えていた矢先に主から爆弾が落とされたのだから無理もない。

 さっさと帰るどころか、あまつさえ泊っていけと幽々子は言う。広域的に見ればだが、一つ屋根の下で生活を共にするなどとんでもないと、慌てて隣にいる主の腕にしがみつく。

 

「幽々子さま、ど、どういうつもりですか!? この非常識な巫女と何処の馬の骨とも分らない外来人を泊めるなんて」

「だってなんだか楽しそうじゃない?」

 

 あまりにもあんまりな言葉に思わず軽い眩暈を覚えながら、ここで挫けてはお終いだと、健気にも妖夢は自分を奮い立たせて考え直すように説得を続けた。

 

「大体男を泊めるなんて非常識です」

「あらあらー、妖夢も男の子を気にするお年頃なのねえ……。うふふ」

「違います。もし油断しているところを襲ってきたらどうするんですか?」

「あら? 妖夢でも彼には勝てなさそう?」

「フッ、ご冗談を。襲い掛かってきたら三枚におろします」

「じゃあ問題は無いわね」

 

 扱い方を心得ているといえばいいのか。まるで詰め将棋を見ているかのような鮮やかな手並みである。

 何となくだが二人の関係性が分り、なるほどこういうことかと草十郎が顔を綻ばせると、それを目敏く見つけた妖夢がキッと睨み付けた。

 

「またそうやって人を馬鹿にして……。私、貴方みたいな人は嫌いです。へらへらしているだけならまだしも、戦いの最中彼女の後ろに隠れ、あまつさえ逃げ出すとは何事ですか。男なら盾になる、くらいの気概を見せろというものです」

「あら、妖夢は強い男性が好みなの?」

「そうですね。少なくとも、そこの意気地なしよりは」

 

 視線を招かれざる客に固定しながら、妖夢はそう言った。淡々した口調には軽蔑すら篭っていて、流石の草十郎といえども、自分が彼女を怒らせてしまった、ということくらいは分っているようだ。申し訳無さそうに眉尻を下げている。

 彼の殊勝な顔を見て、幾らか溜飲を下げた妖夢は、フンと鼻を鳴らして空になった自分と主の湯飲みを持って退出していく。

 

「幽々子様がそう決めたのなら従います。お部屋の準備が出来ましたらご案内いたしますのでお待ちを」

 

 部屋を出たところで振り返った彼女は、そう冷たく言い放ってからピシャリと襖を閉めた。言葉の上では認めていても、内心では納得していないのは明らかだ。

 

「妖夢もまだまだ修行が足りないわねぇ」

「ごめんなさい、彼女を怒らせてしまったみたいです」

「気にしないで。貴方、鏡のような人でしょう? 自分の未熟さが見えて苛立ってるだけだから」

 

 幽々子の言っていることが分らず、草十郎は首を傾げる。そういえば自分を幻想郷へと連れてきた八雲紫も似ていて、分りにくい物の言い方をするのでそういう意味では友人というのも頷けた。

 それは兎も角、何故自分たちを滞在させようとしたのかが気になった。幽々子の同居人でもある妖夢がああまで嫌がっているのに、強行する意味はあるのかと問うてみる。

 

「一つは紫へのあてつけかしら。私を除け者にしたから貴方たちの手助けをしようと思ったの。もう一つは妖夢の成長のため。あの子はそろそろ自分を見つめな直さないといけない。見ての通り、余裕がないというか、少し急いているのよねぇ。貴方はそんな妖夢にはうってつけの薬になると思うの」

「はあ……」

 

 気の無い返事を返す草十郎。薬になるとか、役に立つと言われても余りピンと来ない。出来ることなど限られているし、自分があの少女に何かしてあげられることなんてあるのかと首を捻る。

 けれど幽々子はそんな草十郎に大丈夫だと太鼓判を押す。

 

「特別なことをする必要はないわ。ただ一緒に生活して、普通に話してくれればいいの。で、貴方たちはこの白玉楼を拠点にしながら冥界を探せばいい。もしかしたら私に内緒でこの冥界の何処かに隠している可能性も無いわけじゃないし。それでどうかしら、博霊の巫女さん?」

「ま、草十郎の好きにすればいいんじゃない?」

 

 あくまでも選択するのは草十郎で、自分は手伝うだけだというスタンスの霊夢。

 彼は少し悩んだ後、どうせ次の行く当てがあるわけでもないので幽々子の提案を承諾した。ただ一つだけ条件つける。

 

「ただお世話になるのは申し訳ないので、何か手伝いをさせてください」

「はあ……」

 

 彼らしいといえば彼らしい申し出に、隣の霊夢が心底面倒臭いヤツだなと言いたげな顔をしている。草十郎もこうと決めたら中々意見を変えないので、好きにすればいいと諦めた。

 ちょっとした商談も纏まり、では宜しくお願いしますと互いに挨拶をしたところで、彼はお盆に残ったお皿と湯飲みを持って立ち上がる。

 

「ちょっと、何処に行く気?」

「ああ、魂魄さんはきっとお勝手にいるだろうから少し話してみる。彼女を怒らせたことを謝らないといけないし、手伝いの事もあるからね」

 

 今回ばかりは霊夢も本当に絶句した。舌の根も乾かないうちにこれである。

 馬鹿なのか、それとも肝が据わっているのか。あれだけの言葉を浴びせられても会話を試みようとする精神力は驚嘆に値する。

 まあこの程度でへこたれるような柔な精神では、そもそも久遠寺邸や博霊神社で暮らすことなど不可能なのだが。

 

「正気? 今会っても余計に怒らせるだけでしょうに」

「そうかもしれないけど、ここで勝手に雑用するほうがもっと彼女は怒ると思うんだ。だからちゃんとあの子にも許可を貰わないと。それに怒らせてるなら尚のこと話さないといけない。誤解なら話せば分ってくれるだろうし、気に障ることを言ったならそれが分からないと謝りようがない」

 

 とても自分には真似できないと霊夢は思う。

 彼女は良く言えばサッパリとした、悪く言えばドライな性格をしている。基本他人には無関心で、来るものは拒まず去るものは追わない。合わないと思う相手とはそもそも話そうとも思わないし、自分のことを嫌いだ言われても『ハイそうですか』と気にならない性質をしている。

 

 そんな彼女とはある意味間逆。

 人間、妖怪関係なく、相手を知りたいから話すという純粋な欲求。

 自分に向けられる好意や悪意、賞賛も軽蔑も全てを受け入れようとする在りかた。

 その生き方が必ずしも幸福ではない事を彼女は知っている。

 

 じゃあ行ってくると、草十郎はささやかな笑顔を浮かべて部屋を出て行った。

 

「……本当に、紫は来てないの?」

「ええ、ここ最近顔を見ていないわ」

 

 彼の足音が聞こえなくなったのを見計らって、霊夢は幽々子に話しかけた。

 何時に無く真剣な顔で相手の事を見定める。直感に優れる彼女に嘘は通じない。吟味するように様子を伺っていた霊夢だが、本当のことを言っていると分かると、視線を外に向けた。

 すると不意に、何かを思い出したように幽々子が『……あ』と声を漏らす。もしや何か重要な事でも思い出したのかと再び視線を彼女に向けると彼女は

 

「彼……お勝手の場所知っているのかしら」

 

そんなことを呟いた。

 

 

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