ヒーローとヴィランが馴れ合うタイプの世界で、やさぐれ合法ロリTS魔法少女 作:ゴーローR
マスコットのコット、私の相棒マスコットだ。
あまりにも安易というか、お前その名前を付けられたからには優秀なんだろうな、みたいな名前をしている。
が、残念ながらコットは落ちこぼれだった。
魔法少女のマスコットとして生まれてから、私と契約するまで一度として魔法少女と契約したことがなかったくらいだ。
それで無理やり才能のある男を女にして契約する辺り、本当に切羽詰まってたんだなぁ。
いや、無理やりってほど無理やりじゃなかったけども、実際は。
「ヒカル、連絡に来たよ……ってまた競馬やってるのかい?」
「ん? おお、コットちょうどいいところに来た」
普段、私とコットは一緒に暮らしていない。
コットはマスコットたちの世界で生活していて、その世界のコットの部屋から私の部屋まで一瞬で転移ができるからだ。
んで、どうやらコットは何やら私に伝えたいことがあるようなのだけど。
マジで急ぎの連絡なら、まずコットから連絡が来る前にスタアが連絡をよこすので、コットの連絡を聞く必要はない。
なので私は、コットに無駄話をすることにした。
「いいかいコット。競馬ってのはね、軸を一つに絞るのが大事なんだよ」
「まずボクが競馬素人だってことを念頭に、話をしてほしいんだけど」
「要するに、ヒーローと違って競馬は勝者が一人しかいないんだ。皆で手を繋いで仲良くゴールなんてことはできないわけ」
ヒーローはそもそも競うものでもないからな。
トップヒーローなんて肩書は存在するけど、そのトップヒーロー内での序列は存在しないのだ。
いや、一番上を私ってことにしておけば丸く収まるから、私が一番上って空気は世間からもヒーローからもひしひしと感じるけどさ。
「だからコットに予想してもらったことにして、軸を増やす言い訳がほしいんだよぉ、力を貸してよコットぉ」
「ダメに決まってるだろ。っていうかボクを出汁にしてるだけじゃないか!」
「いいじゃん、やろうよコットぉ。お金は私が払うからさぁ」
「それで前回大負けしたのを忘れたのかい!? やらないったらやらないよ!」
ぐぐぐ、前回はこれで丸め込めたのに。
というか、元々言い訳が欲しかっただけで軸は増やすつもりだったから、使う金は変わらないんだしいいじゃん。
っていうとまたコットが怒りそうなので、ここは言い方を変える。
「ふぅん、コットは負けるのが怖いんだね」
「――は?」
コットは落ちこぼれ故に、周囲からバカにされた結果大変な負けず嫌いになったのだ。
なのでそこを突くと、簡単に乗ってくれる。
「別にやらなくてもいいんだよ、私が好きでやってるだけなんだから。コットが負けるのが怖くて逃げたって思いながら賭けるだけさ」
「や……やってやろうじゃないか!」
まぁ、前回もコットは呆れながら私に付き合っていた。
別に私みたいなギャン中じゃないわけだし、そうそうおかしなことにはならないだろうな。
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なお、
「そのまま! そのままー!」
「差せ! 差せーっ!」
数時間後、コットは立派なギャン中になっていた。
いやぁ、負けず嫌いを煽ったのがよくなかったらしい。
私のお金で賭けているのをいいことに、あれよあれよとギャン中の階段を駆け上がっていった。
それを見ているのが楽しくて、湯水のごとく金を注ぎ込んだ私が悪いんだけどさ。
それはそれとして、だ。
白熱する私とコットに、実況がレースの勝者を告げた。
『勝ったのは
「っしゃあ!」
「あああああああああああっ!」
普通に賭けるの上手いんだけどこのマスコット!?
私が散々負けを積み重ねる横で、概ね若干マイナス程度で推移している。
そして今の勝利で、ギリギリ微プラス程度にまで持っていった。
コットにこんな才能があったなんて……
「なぜだぁ……なぜコットが勝ってるのに私は勝てない……」
「同じ馬を本命にすると意味がないからって、別の馬を本命にするからだと思うけど……」
「……っ!!」
コットから火の玉ストレートみたいな正論が飛んできた。
「というか、そもそもヒカルは
「部屋が汚いのは余計だろ!? それに、ゴミとかはちゃんと片付けてるから! 積んでる漫画とかを整理してないだけだから!」
と言うか、世の中には言っていいことと悪いことってものがあるんだぞ。
え? 部屋が汚いのは言っていいこと? まぁはい。
これでも、昔よりはずっとズボラじゃなくなったんだ。
女になって、そこら辺言われることが多くなったおかげである。
「というか、部屋の汚さならコットだって人のこと言えないじゃん。こないだだって部屋にぬいぐるみが増えたって話してたけど、足の踏み場がもう無いんじゃない?」
「うぐぐ……いいんだよボクは、愛を注ぐためにぬいを買っているんだから……ただ散らかしてるだけのヒカルとは違うんだから」
コットはマスコットなのに、ぬいぐるみを集めるのが趣味だ。
それでいいのか、と思うかも知れないが。
マスコット的には、美少女フィギュアを集めるような感覚らしい。
ちなみに、コットいわく先日のくまぬいヴィランは、無差別に人をマスコットにするのが解釈違いらしい。
ぬいは愛でるためにあるのだから、ただぬいにするだけなのは言語道断だとか、なんとか。
面倒なオタク!
と、そんな時である。
私のスマホに、スタアからメッセージが飛んできた。
『やっほーお姉様。コットと仲睦まじいのはいいんだけど、どうせコットから連絡聞いてないよね?』
――見透かされている。
コットの連絡を無視して、コットを馬券沼に引きずり込み、数時間経過していることがバレている!
どうでもいいけど、スタアとコットは思いの外仲が良い。
なんか、よく二人で私のことを遠い目をしながら話し合っている。
まぁ、私は不真面目だから、そういうところを愚痴り合っているのだろう。
こればっかりはしょうが無い。
って、そんな事考えている場合じゃなかった。
『お姉様の当番が、熱で出れなくなっちゃったシアちゃんから変更になったのは聞いてると思うんだけど』
続いて飛んで来たメッセージを見て、視線をコットに向ける。
「……聞いてないんだけど?」
「あっ」
「あっ、じゃないんだけど?」
「……今日一緒に伝えるつもりだったんだよ」
おいこらマスコット、スケジュール管理は概ね君の仕事だろ!
『なんでも、最近この街で異世界人が目撃されてるんだって。以前、お姉様がシアちゃんの暴走を止めた時に聞いた、ダストってのも関係してるとか』
更に飛んで来たメッセージを見て、視線をコットから逸らす。
「……ダストって何かな?」
「あっ」
「あっ、じゃないんだけど?」
「……報告したと思ってたんだよ」
おいこら私、ほうれん草はヒーローの義務だろ!
お互いのミスを認識しあい、私達は互いに視線を逸らす。
『もう、二人が似たもの同士なのは解ってるけど、ちゃんと仲良くしなきゃダメだよ。当番は夜からだから、忘れないようにね』
そしてスタアは、そんな私達の様子を見透かしたかのようにメッセージを飛ばして来た。
「こわっ」
「……あの子、部屋に監視カメラとか仕込んでないだろうね」
言いながら、コットは私の部屋を見渡す。
『監視カメラは仕掛けてないよ☆』
ひいっ!
私とコットは、思わず抱き合ってスタアに恐怖した。
と、とりあえず。
当番の時間まではまだ余裕がある。
「……もう少し、ゆっくりしてから行こうか」
「そうだね……」
スタアが怖すぎて、心を一つにした私達は和解。
夜に備えて、一旦休むことにするのだった。