俺は『ラキア・アマルガ』……シャーレの先生だ 作:カブライニキ
ゴリッ!ガリッ!
『ラキア先生』
ボリボリ!
『ラーキーアー先生!』
ガチッ!ガリゴリッ!
『先生!!』
「なんだうるせぇ」
『うるさいじゃないですよ!さっきから石ばっかり食べてお仕事してないじゃないですか!!リンさんからも再三忠告されてますよね!?』
ラキアが先生に就任してから一週間、大量の資料の山の中で石を食らっていた。
もちろん仕事を全く片付けていないわけではない。適度に仕事を片付けて給与をもらってはいる。
もちろんユウカの手伝いありきではあるが
『もーっ、いくら完璧で寛容で優しいアロナちゃんでも流石に怒りますよ!』
「......じゃあ仕事の一つでも持ってきてくれ、なるたけ楽なやつを」
石を口に咥え、ラキアは片手間にシッテムの箱を掴んだ。
するとアロナは途端に得意げな表情になり、シッテムの箱の中で様々なページを引っ張り出してきた
『待ってましたよ!先生におすすめなのはこれとこれとこれと________________』
アロナが様々な事件、問題を引っ張り出してくる中、ラキアの目に止まったのは一枚の手紙のデータだった。
「アロナ、そこで止めろ」
『へ?これですか?』
手書きの手紙をデータ化したもののようだ。
宛名は________________
『アビドス高等学校......アビドス自治区に唯一残っている学校ですね。ええっと......今表示しますね!』
ラキアはデータを手紙に解凍。中身の内容を読み取った
『アビドス高等学校:支援要請』
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「......おい、車やヘリはどうした」
『アビドス自治区は砂嵐の被害や、局所的ではありますが地雷などもあるので......すみません......でも、電車では移動できますよ!!』
「......だる」
ラキアは明らかに人間が持てる大きさの限界を超えたバックを背負って電車に乗り込んだ。
『ラキア先生、どうしてアビドス高校を選んだんですか?』
「どうしてってどういう意味だ」
『あ、いえ......ラキア先生は長距離移動や荷物運びとかの仕事はしてらっしゃらなかったので......』
確かにラキアはそんな仕事のことごとくを断ってきた。
『長距離移動に荷物運び、それに無期限の宿泊......ラキア先生の苦手のことごとくが詰まってたのにって』
アロナの言うことは的を得ていた。
ラキアは基本面倒くさがり屋であるし、なんならすぐ『疲れた』や『だるい』なんて言葉を使う
だからこそ不思議だったのだろう
「......別に、書類仕事から逃げられると思っただけだ」
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語り部:ラキア・アマルガ
この仕事を受けたのは、あの時手紙の文字を見たからだ
俺はグラニュートだ、言葉はミミックキーの力で話せても文字を読むことはできない
ひらがなカタカナですら読めない時だって今もある
だから別に言葉に胸を打たれたわけでも、状況に同情したわけでもない
ただ、文字の形に引かれた線があまりにも切羽詰まっていた
ヨレて、汚い文字。
「.........似ていた」
『えっ?』
「......なんでもない」
俺たち兄弟の状況に似ている気がした
毎日必死で働いて、家に帰って、2人で飯を食う
決して豊かな生活じゃなかった。それでも幸せだった
......だが
『次はー、アビドス自治区。アビドス自治区、お降りの方は右側の出口からお降りください』
闇菓子が、それを奪った
『こうでもしないと、もう闇菓子が買えないんだっ!!』
『コメル!!』
「......行くぞ」
俺の目的は最初から一つだけだ
それを果たす、その寄り道
それだけで良い
この日、全てが始まった
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「.........飽きた、だるい。寝る」
『道のど真ん中ですよ!?起きてくださいぃ!!』
「だる......」
アビドス方面を目指してはや三十分。ラキアは砂漠と道路の境界線が曖昧になってきたあたりで歩くのをやめた。
歩くのをやめた上で寝転がった
体力は全く消耗していないし、気力も消費していない。
ただただ、だるくなったのだ
「そもそもアビドスまであと何キロあるんだ、遠すぎる」
『......ここまで遠いのを想定していなかった私も悪いですが......でもここで寝ちゃダメですよ!!死んじゃいますよ!』
「だる、これぐらいで死ぬわけないだろ」
携帯用の石も全て底をつき、ラキアのお腹は音を鳴らしていた
「......だる、やっぱり来るんじゃなかったな」
ラキア、早くもアビドスに来たことを後悔する。
手で砂を掬って食べてみる。
「ぺっ......味しねぇ」
食べられないことはなかったが、ただの味のしない粉。
ラキアは失った口の中の水分を補おうとバッグから水の入ったペットボトルを傾けるが________________
「......だる」
傾けたペットボトルからは最後の水が一滴垂れて終わった。
グラニュートとて水を飲まずに生きられるわけじゃない。耐久力は確かに人間よりもあるかもしれないが、砂漠のような灼熱環境で水を飲まなければいずれは死ぬだろう
「......大丈夫?」
ふわりと、地面に寝転がっているラキアにどこか涼しげな風がそよいだ。
「......別に」
「飲み物ないの?」
「一日2日ない程度じゃ困らない」
「ん、アビドスを舐めてかかると酷い目に遭うよ。ここから一番近い建物でも十キロは離れてるから」
ラキアの目の前に現れたのは、この気温に見合わない青いマフラー、雲ひとつない空に反射する青い瞳
そして何よりも目を引くのはその頭でぴこぴこと動いている狼の耳を持った少女
「飲みかけだけど、エナジードリンクならあるよ?」
「......助かる」
ラキアは素直にその少女が口をつけたであろうボトルを受けとってそのまま口を付けて喉に流す。
「......あ、それ......」
「何か不味かったか?」
「ん......いや、別に......大丈夫」
見たところ年頃の少女だろう、大人びて見えようとも
「ところでお前、アビドスって名前の学校を知らないか?」
「あ、なるほど。じゃあお客さんだ」
妙に納得したような表情で少女は再び乗ってきたロードバイクに跨った。
「私はアビドス高校2年生、砂狼シロコ」
ラキアに向かって差し出された学生証には、ラキアが確認したものと同じアビドスの校章が刻まれていた
「俺はラキア・アマルガ......シャーレの先生だ」
ラキアも同じく胸元に垂れ下げられたシャーレの身分証明証を見せた。
シロコは『先生』の言葉を聞いた瞬間目を丸くした
「......シャーレの、先生......」
「......よろしく頼む」
「あ......うん、よろしくね。先生」
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語り部:ラキア・アマルガ
思えば、これが俺の『先生』としての最初の一歩だった
これからたくさんの生徒と触れ合って、俺はだんだんと先生になっていった
「......だる……」
こんな結末になるのなら
「......うん。ごめん」
『ヴラスタムギア』
『デザート』『オン』
『ディッシュアップ』
『コンプリート!!』
「全部、私が悪いから」
シロコと、出会わなければよかったのか
先生に、ならなければこんなことにはならなかったのか
俺が、この世界に来たこと自体が間違いだったのか
「......変身」
だが、ただ一つ言えることがある
シロコ
お前のせいじゃない
次回 仮面ライダーヴラム!
「うへぇ、おじさんは小鳥遊ホシノだよ〜。気軽におじさんって呼んでね〜」
ラキア、おじさんとの出会い
「今日こそ学校を手に入れてやるぜ〜〜!!」
「……だる」
ラキア、だんだんとアビドスに馴染んでゆこう
第四話 「砂地のカップ・レディ」