ショッカーライダーに転生して好き勝手に生きる(事など出来ない)お話 作:さざみー
太平洋上に浮かぶショッカー本部に飛び込んでくる報告は、どれも芳しくない物ばかりだ。
それも仕方がない。世界各地に点在するショッカーの前線基地。その重要拠点にライダーたちが攻め込んでいるのだ。
多くの幹部が対応に当たっているが、討ち死にの報告も少なくない。
「アインロールドの小僧はどこに行った!」
幹部の一人がヒステリックに叫ぶ。
ショッカー本部の中央会議室。そこに陣取る地獄大使はその幹部の叫びをにや付きながら聞いている。
当然、今話題に上がった部下が逃げたとは欠片も思っていない。だが、どうせ面倒に巻き込まれていると考えていた。
「アインロールド様は非戦闘員の退去の指揮に当たっておりましたが、そこで侵入してきたCODEとの遭遇、戦闘になった模様です!」
そして、地獄大使の予測は正解だった。そして、目にかけている幹部候補生の運の悪さに苦笑いする。
地獄大使は仕草だけで戦闘員に報告を続けるよう促す。
戦闘員は紙に出力された状況を、すぐさま報告した。
「複数の疑似ライダーが侵入を試みていた模様ですが、総て撃退、もしくは撤退させることに成功しました! 回復次第、こちらに向かうとの連絡が……」
「不要だ」
あれは聡明さゆえにショッカーを裏切らない。いや、裏切れない。
ショッカーの限界と、仮面ライダーの限界を把握し、次の選択肢を探し出そうと模索している。そういう男だ。
ゆえに手元に置き、育ててきたのだ。
ここで失うには惜しすぎる駒だ。それゆえに地獄大使は新たな命令を若き幹部候補生に告げる。
「そのまま非戦闘員退避の陣頭指揮をとらせよ。退避後はアインロールドが残党をまとめろ!」
「よ、よろしいので?」
戦闘能力と言う意味では、大幹部に匹敵する。訓練という形ではあったが、ヨロイ元帥の片腕をもぎ取ったのはショッカーで知らぬ者は無い。
また、ミラーワールド系のライダーを含め複数のライダーを単独で撃退している。ライダーたちが攻め込んでいる状況で、前線に出さない理由は無い。
「くどい。二言は無い」
だが、地獄大使は一言で切って捨てる。
まぁ、そのまま保護している子供や捕虜を逃がすだろうが、その程度はこれまでとこれからの働きを考えれば許容範囲だ。
むしろ、自分らが地獄から戻ってくるまでの間ショッカーを率いるだろう奴にとっての褒美の前渡しと言ってもいい。
「クモ男よ、貴様は残った兵隊をまとめ脱出しろ」
「なっ!? 戦うなと!?」
一般社会への浸透を目的に、企業勤めをやらせている部下に命令を下す。欺瞞のためとはいえ、女房と連れ子だが子供もいるのだ。ここで死なすには惜しい人材であった。
「ショッカーの灯を消すわけにはいくまい。我らが戻る日まで、今は耐えよ。まぁ、我らが勝てば関係の無い話ではあるがな」
「くっ……。ご武運を」
一人退出していくクモ男を見送りながら、部屋に残った幹部改造人間を見渡す。
どいつもこいつも、闘志を漲らせている。それはそうだろう、同僚なり自分なりがライダーとの戦いで死んでいる。ライダーを討てる機会を見逃すような弱兵は此処にはいない。
それでも指揮官の性だ。地獄大使はにやにやと笑いながら残った幹部にこう尋ねる。
「さて、この中で退避したいものがいれば退避していいぞ。俺はそれを責めたりはしない」
この言葉を受け、幹部の改造人間たちから洩れたのは苦笑いであった。
「何を言っておられるので?」
「むしろ、クモ男に同情しますな」
「本郷猛に対する積年の恨みを晴らすチャンス。逃げる気はありませんよ」
「アインロールドの小僧に、土産話が出来ますな」
逃げる気など欠片も無い幹部たちに、地獄大使は口の中で『馬鹿どもめ』と言いながらも笑みを浮かべる。
そして、彼らは静かに時を待つ。その時はそこまで長くは時間がかからなかった。
部屋の入り口を乱暴に蹴り開け、彼らが待っていた男が飛び込んできたからだ。
「見つけたぞ! 地獄大使!」
やって来たのは、赤い複眼の双眸をもつ改造人間だった。
緑を主とした強化戦闘服を身に纏い、赤いマフラーを靡かせるその男の名は仮面ライダー1号、本郷猛。
彼らショッカーにとって世界征服を前にした最大の障害であり、長年の宿敵であった。
「くくくく、よく来たな、本郷猛! 仮面ライダー1号よ!」
長年の宿敵を前に、互いの視線が交差する。
憎しみや怒り、そんな単純な言葉では言い表せない感情が互いの間に流れる。
そして、先に口を開いたのは、仮面ライダー1号であった。
「降伏しろ、地獄大使!」
「何を馬鹿な事を! この美しき世界を手に入れ、人類に永遠の繁栄をもたらす為に貴様こそ我らが軍門に下れ! 本郷猛!」
「そのような事、許されはしない!」
無限に存在する多次元世界。ライダーとショッカー、その世界の数だけ存在する。
そんな世界において常に対立するライダーとショッカー。無論、この世界でもショッカーとライダーは不俱戴天の敵同士だ。
だが、この世界のライダーとショッカーの関係は少しだけ他の世界と違う。
人類の自由と平和の為に戦い続ける仮面ライダー。
人類の永遠の繁栄のために世界を手中に入れようとするショッカー。
ほんのわずかな違い。それゆえに決して相いれない。殺しあう関係だ。
だが同時に、かつてのように共闘する事もあり得る。
それは、21世紀も10年に到達しようとした時期の事であった。
東京を襲うのは、異世界から襲来したショッカーを名乗る集団であった。
爆薬を背負った戦闘員を弾頭にして、官庁を含む重要施設を狙う。人の命など物ともしないショッカーだからできる戦術だ。
「イッー!」
「イッー!」
「やらせんぞ! イッー!」
「イッー!?」
だが、そのような凶行を許す者ばかりではない。
まともな世界の住人ではどうする事も出来ぬ悪意に立ち向かう者たちがいた。
飛びかう黒装束の戦闘員たちを、何とか押さえようと飛び上がるのも、また黒装束の男たちだ。
髑髏のレリーフが刻まれた全身タイツを誇らしげに着込む男達の名も、またショッカー戦闘員。
異世界からやって来たショッカーを、この世界を狙うこの世界のショッカーが迎え撃っているのだ。
戦闘員たちがぶつかり合い火花を散らす中、新宿を舞台に二つの軍勢が相対する。
一つは異世界からこの世界を手中に収めようと進軍をしてきた大ショッカー。
一つはこの世界を手中に収めようと暗躍する悪の秘密結社、ショッカー。
許されざる悪と悪が、巨大都市を舞台に対峙する。
「ほう、貴様らがこの世界のショッカーか」
地獄大使。そう呼ばれる男が、興味深く目の前の軍勢を見つめる。
敵の軍勢は、ショッカーの改造人間や機械合成怪人、神話怪人など彼の目からしてみて旧式の改造人間ばかりだ。
この世界のショッカーの情けなさが否応にも分かる。あの自分と同じ姿の男を消し、自分たちが率いるべきだと嘲笑う。
「何の用だショッカーの恥晒しどもが」
そう返したのは、地獄大使と呼ばれる男だ。彼は嫌悪の目をもって、敵対する軍勢を見る。
グロンギやワーム、ゴルゴム怪人にクライシス帝国の先兵。他にも様々な勢力の怪物が混在しており節操がない。
ただ力を求めた末の害悪に、世界征服の野心と人類守護の使命を併せ持つ男は、自分の可能性の一つを唾棄せずにはいられない。
「恥さらし? それは貴様であろう。地獄大使の名をもっていながら、世界征服を成し遂げていないとは恥を知れ!」
地獄大使の罵倒を、地獄大使は鼻で笑う。
「恥を知るのは貴様だ。ライダーから逃げ出し、人類守護の役目を忘れ、弱き世界を攻め続ける腰抜けどもが!」
「人類守護! 何を抜かしている!」
ライダー以上に決して相容れぬ存在同士だ。
舌戦など無意味、互いに相容れぬことを確認する儀式に過ぎない。
別に合図をしたわけでは無い。それでも、示し合わせたかのように互いに同じ意味の号令を配下に下す。
「やれ! 弱兵ばかりのこの世界を蹂躙し我らの物とせよ!」
「やれ! 我らが世界に踏み入った愚かどもを抹殺せよ!」
勝鬨の声をと共に、互いの兵士たちが動き出す。
その直前の瞬間であった。
軍勢の喧騒を物ともしない、通る声が新宿の街に響き渡る。
「待てぃ!」
その男は、マシンの爆音とともに現れる。
その男は、風の如く現れる。
その男は、赤い双眸を持っている。
その男は跳躍し、地獄大使の隣に降り立つ。
「大ショッカー! 貴様らの好きにはさせん!」
その男の名は仮面ライダー1号、本郷猛。
人類の自由と平和を守るため戦いつ続ける鋼の男!
「何をしに来た! 本郷猛! 仮面ライダー1号!」
積年の宿敵の登場に、この世界の地獄大使は驚きと歓喜が混じり合った表情を浮かべ叫ぶ。
この事態に来ない男ではない。だが、それでもこの男の出現に喜ばずにはいられない。
そして、宿敵の問いかけに、仮面ライダー1号もまた言葉を返す。
「決まっている。世界を守りに来た!」
そして、これと同じ光景は世界中の各所で起こっていた。
それは、ニューヨークの一角での出来事だ。
「ライダー卍キック!」
死神博士を討とうとしていたイカデビルを、仮面ライダー2号の必殺キックが討っていた。
中国北京での出来事だ。
「まったく。俺がデストロンを助ける事になるとはな……」
北京の住民を逃がすため殿を買い、そして全滅寸前まで追い込まれた機械複合怪人たちの前に立ったのは、仮面ライダーV3であった。
あるいはニューデリーでの話だ。
「ライドルスティック!」
アポロガイストを討たんとパーフェクターを装着した異世界のアポロガイストの剣を受け止めたのは、Xライダーであった。
「Xライダー!? 何故貴様が!?」
片膝を突くこの世界のアポロガイストが、驚きの声を上げる。
背中に宿敵の声を受けながら、銀の仮面の戦士は軽い調子でこう答えた。
「お前には言いたい事はいくらでもあるけどな。でも、今は世界を守るためにここに来たんだ!」
怒りより憎しみより、世界を異世界からの侵略より守る事。
それこそが今必要な事だとXライダーは語る。
「ぬかせ! ならば、今は利用させてもらおう!」
「お前こそ、こいつらの次はお前だ!」
互いに背を預け、異世界からの侵略者を迎え撃つXライダーとアポロガイストに、異世界からやって来たアポロガイストが怒りの声を上げる。
「ライダーと協力するとは、全次元のアポロガイストの恥晒しめ!」
そんな怒声耳に、Xライダーとアポロガイストの仮面の下の口がニヤリと上がる。
怪人を斬り倒しながら、二人の戦士は侵略者に言葉を返す。
「大首領から命じられた人類守護と繁栄の任。それを果たせぬことこそ恥よ!」
「別世界の俺から逃げてきたんだろう。お前ら侵略者にとやかく言われる筋合いはない!」
ライドルスティックとアポロマグナム。
二つの力を秘めた刃が異世界から侵略してきたもう一人のアポロガイストに向かう。
異世界からの侵略を前に、正義と悪が手を組む。
目的はただ一つ、この世界を守る為であった。
感想を読んでいたら、思いついちまったんだ!
俺は悪くねぇ!
あ、ディケイド出ていないや!(マテ