「つまり、快楽のための非生産的生産行為を僕としたいと、そう言うんだね?」 作:ほわぁ
「においフェチってどこまでが好きでここからは無理とかじゃなくて単に好みのにおいだったらなんでもいいんだよね」
「そうなのか?」
「わたしは知らなーい」
洗濯物を畳んでいてふと思ったことである。洗濯物って言っても昨日のね? 洗濯カゴの中に入っている見覚えのあるベッドのシーツに気づいたのか、弥生ちゃんは洗濯カゴから顔を逸らした。
「いや少なくとも私はそうだよ。弥生ちゃんとか五十嵐ちゃんのにおいだったらいつまででも嗅げるよ」
「平然ととんでもないこと言うねー。そんなにわたしのにおいが好きなの? なら嗅がせてあげようか?」
「ん、是非」
洗濯物をほっぽり出して五十嵐ちゃんのもとに行った。誘われたら行かないわけにもいかない(意図せぬダジャレ)。五十嵐ちゃんは既に準備万端で寝ていた身体を少し起こした体勢で、着ている服の襟を少し引っ張って中のにおいが嗅げるようにしてくれている。……けど、お胸が大きいんだよね五十嵐ちゃん……あっ、襟は無理だとわかってくれたのか服の下の方を引っ張ってくれた、これで勝つる!
五十嵐ちゃんのところに到着。そして、五十嵐ちゃんの服に顔を突っ込む前に肺の中の酸素をしっかり出しておく。
ふぅーーー……よし。
すぅ〜。すぅ〜。すぅ〜。
ちなみにこの私が五十嵐ちゃんの服に顔を突っ込んでにおいを嗅いでいる様子を弥生ちゃんは今まで見たことがないくらいすごい表情で見ていたらしい。(五十嵐ちゃん情報)
「んっ……今までこんなことしたことないから変な感じだね、でも悪くないかも、変な気が起きてきちゃう」
五十嵐ちゃんのにおいは、今日はまだ外に出てないからもちろん汗なんてかいてないので柔軟剤の匂いがメインなんだけど、そこに若干五十嵐ちゃんの太陽みたいなにおいが混ざってまるで南の島でバカンスをしてるみたい。包容力がすごいんですわぁ……
「あはは、抱きついてきてコアラみたいで可愛い! わたしも抱きついちゃお〜」
「おいそいつ有言実行しようとしているのかは知らんが、吸ってしかないぞ、吸った息は吐かせないと死ぬぞ」
やだ〜小生この芳醇なかほりを肺から逃したくないでござる〜!
しかし駄々をこねても人間の身体の仕様上その空気は身体から排出された。くそっ、人間の身体が恨めしいっ。いや、でも人間の体じゃないとこんなにおいは味わえないから恨めしくないっ。
「うひゃあ! は、吐いた息の方がくすぐったいね……」
「あ、ごめん。でもすっごく好みのにおいだった! 最高!」
「そりゃさっき自分で好みって言ってたから当然じゃないか?」
ふぅ〜。満足。さて洗濯物を畳みに戻ろう……
「五十嵐ちゃん? もう離していいよ?」
「……ん? 今のうちにいっぱい抱きついておこうと思って」
「かわっ、かわいっ!」
「……アホくさ」
うわぁ〜。やばい、私浄化されちゃうかも。やっぱり人の温もりって心地いいんだね、それに五十嵐ちゃんのにおいに包まれて……なんだこれ幸せすぎる。本当にこれは現実? 夢じゃない?
「五十嵐ちゃん、これは現実? それとも夢? 幸せすぎて私どっちかわかんなくなってきちゃった」
「どっちでもいいでしょ? 幸せならどっちでも。ほら、ぎゅ〜」
「うひゃあ〜」
またそうやって、さっきよりも抱きしめ合っていると、ピピピッ、と音が五十嵐ちゃんのスマホから鳴った。
「あっ、コーヒーがそろそろできるみたい、ごめんねー、ちょっとだけバイバイ」
そう言うと五十嵐ちゃんは立ってしまった。寝そべっていた私はもちろん地面に抱きつくことになった。冷たい。カーペットなのに冷たく感じるよぉ〜。
「うわぁあああー、あんまりだぁ〜」
「そんな手を伸ばして縋らなくても……」
五十嵐ちゃんレスが寂しくて地面でジタバタと転げ回る。
うん。痛いし冷たい。やめよ、区切りがついたし、洗濯物を畳みに戻ろう………あぁもう神はどうしてこんなにも"神"なんだ!
「……おい、来ないのか。せっかく待ってあげてるんだからさっさと来い。地面で暴れるな、身体を痛めるから」
私が見た先には手を広げて待ってくれている弥生ちゃんがいた。多分様子が変な私のことを心配しているのだろう。優しいし可愛い! こういうことされると惚れちゃうんだぜ?
起き上がってノロノロと弥生ちゃんの方に向かう。彼女までの距離はたったの数メートルくらいしかないのに、そこに辿り着くのがやけに長く感じる。辺りには五十嵐ちゃんが作っていたコーヒーの匂いが漂っている。
「うわっ、倒れ込むな僕よりも身長の高いお前が」
「でも支えてくれたじゃん」
「普通支えるだろう」
うわぁ〜。うわぁ〜。うわぁ〜。(語彙力の喪失)すごくすごい。すごくすごいよ。あっ、あー、高まってきた。何かたまかってきた。言葉がうまく出てこなかった。高まってきた。なんかこう、すごいもちもち。可愛い。嬉しい。
「……おい、僕の匂いは嗅がなくていいのか?」
「………えっ、いいの?!」
「そういうつもりだったんだが……」
それなら遠慮なく。
すぅーー。
「………これは、確かに母性というかなんというか、変な気持ちになるな」
すごい。弥生ちゃん、甘い匂いがする。なんで? なんでかわかんないけど心地いい。落ち着くにおい。五十嵐ちゃんが太陽なら弥生ちゃんは優しくてほんの少し冷たい月の光。あっ、私ここでならいつでも寝られる。ちょっと抱き寄せてくれてるからか、弥生ちゃんのにおいも相まってすっごい落ち着く。
「あれーーっ? 詩歌ちゃん浮気じゃん! くっ、わたしがコーヒーを用意している間に一体何が……! コーヒーは机の上に置いとくね」
「ん、さんきゅ。地面でジタバタと暴れていたからな。放置してたら身体を痛めるだろう?」
「でも今は詩歌ちゃんはわたしの物だよ?」
「所有権はお前にはない」
弥生ちゃんのにおいを嗅ぐだけで簡単に笑顔になれる。幸せホルモンみたいなのがいっぱい出てるのがわかる。こんな言い方したら弥生ちゃんは口を窄めて注意してくるだろうね。あったかいのも合わさって本当に寝れる。小さい子の方が体温が高いって本当なんですね。
……というか、なんかにおい嗅いでただけなのに口論起きてる? 様子を見てみたいんだけど、弥生ちゃんが私のことをしっかり抱きしめてて離れらんないや。相思相愛? 愛されるってのも困り物だね。
「一回詩歌ちゃん離そう? どっちの方がいいかハッキリ決めよ」
「ふん、そんなことしなくても僕の方に来るに決まってるぞ」
うっ、腰を持たれて弥生ちゃんの服から出されました。私の前には二人が座っています。真剣な表情ですなぁ、なんでやろ。なんでとか言って本当はわかってるんだけどもね。
「じゃあこうしよう、もう一回わたしが詩歌ちゃんに抱きつくから、その後にやよいちゃんもう一回抱きついて。どっちがいいか詩歌ちゃんに評価してもらうの!」
「あぁ、それならいいな。上等だ、僕の方がいいってことを実際に知らしめてやろう」
「私の意見は?」
私の意見はないらしいです。五十嵐ちゃんが抱きついてきた。やっぱり気持ちいい太陽の香りがほんのりする。あれなんかやばい気がする。過剰摂取? 友人の過剰摂取による脳のオーバーヒートが起こりそう。好きすぎる。友人の仲なのにこんなに好きでたまらない。包まれている感じがすごい、大好き。
このままずっと離れないくらいの勢いで抱き合っていたけれど、そんかことはまあ無いわけで、「ごめんね〜、そろそろ変わるから〜」と言いながら五十嵐ちゃんは私から離れた。
「……あっ、うわ、あぁ」
「次は僕だ。そんなにあいつに執着するな」
矢継ぎ早に弥生ちゃんが今度は抱きついてきた。弥生ちゃんは私よりも小さいから五十嵐ちゃんみたいに包み込まれるというよりかはぬいぐるみを抱いている感覚になる。すごい柔らかい。そしてやっぱり落ち着くにおい。………あっちょっと待って急に何か来たあっこれ私もう意識が持たない。
「……さて、ジャッジの時間だな」
「詩歌ちゃーん? やっぱりわたしが一番いいよね? 初めてはわたしだったもんね?」
「詩歌? 僕の方がいいだろ? 抱き合うにはちょうどいい大きさだし、それに僕の方があいつよりいいにおいだっただろ?」
弥生と五十嵐の二人は詩歌に顔を近づけそう聞く。しかし詩歌は反応を何も見せない。その様子に二人は少し疑問に思った。
「あれ、詩歌ちゃん? 随分と幸せそうに顔を歪ましているけど……回答は?」
「詩歌? 詩歌? ふーむ、完全に反応なしだ、なんかあったかな? ……連続してハグしたからかな? 焦点があってない」
「昇天しちゃったってことだね!」
「そうですか」
「反応冷たい〜泣いちゃうよわたし? いいの? 構ってもらえなかった悲しみで詩歌ちゃんを独り占めしちゃうよ?」
「それはダメだな。独占はよろしくない。詩歌は僕"たち"のものだからな」
「そうだよね〜、あれ? そういえばわたしたちはなんで詩歌ちゃんをどっちが取るかって争ってたんだろ? いつも通りみんなでやればよかったよね」
「お前がなんかしたんじゃないか?」
「うーん……あっ、やよいちゃんが所有権とか言い始めたからじゃない? この競争が始まったのは」
「……でもこれ思わせぶりな態度してた方が悪くないか?」
「それもそっか!」
「においフェチでもメスフェロモンのにおいをこぞって嗅いでいる人ってなかなか見ないんだけどどうしてだろう?」
「においよりも先に手を出したくなるからじゃないか?」
「………ん」
……何これ? 手が動かない。結ばれてる? 記憶があいまいみーまい。何があったんだっけ?
「ふふふ、詩歌ちゃん。おはよう。何があったんだって顔をしてるね?」
「まあ起きたら後ろ手に縄が結ばれていて身動きが取れなくなっているからね」
「……あっそうだ。アレを持ってこよう」
弥生ちゃんは何かを持ってくるためにこの場を離れていった。今から一体何が起こるんです? いやまあ流石に次に何が起こるのかはもうわかってるんだけど、状況を理解したい。
今は私の目の前に五十嵐ちゃんが座っている状況で、私はなんか椅子の背に手を回して縄で縛られてて動けない。ちなみにまだ裸じゃない。
「脱がさない良さもあるよね」
「なるほど?」
………あっ、私がにおいフェチだと言う話から私の独占の話になって、審査のために抱きつかれすぎて私の脳がオーバーヒートして気絶したのか。どういうことなんだ? まあいいやあの争う二人は可愛かったし、それより身動きがとれないこの状況……こういう時に言えるセリフがあるんだよね。
「じゃあ私はこういう状況の時に言っておくべきセリフでも言っておくことにしよう。"くっ、手が縄で縛られてて身動きが取れない、殺すなら殺せ!"」
「それじゃあわたしたちが人外の化け物みたいになっちゃわない? まあーいいけど」
「こんな僕みたいな可愛い人外の化け物はいないだろ? ほら、持ってきたぞ」
弥生ちゃん持ってくるの早いね。何を持ってきたんだろ。
「うわぁーー……」
「いや別に、使いっぱなしじゃあないからな? 気分的に嫌だったら盛り下がるからな。まあそれはそれとして僕は昨日のことを忘れていないぞ」
「それを使おうって言い出したのは五十嵐ちゃんだよね」
「今は詩歌ちゃんを独占する時間だからね〜」
弥生ちゃんが止まってくれないか賭けてその目を見る。がしかし、弥生ちゃんの目は目の前の無防備なメスに向けられているだけで色欲に染まった目は止まることがなかった。
五十嵐ちゃんは言うまでもなし。
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