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はあ、疲れたな…
幾度目かの繰り返し。とりあえず、禁忌の缶詰知識を使用したところ。心の中で一人ぼやく。
『少し休んだ方が良いんじゃないかしら?』
いや、とりあえず聞き込みだけするよ。
一人ではなかったようだ。
全員に聞き込みをしようとするば、それぞれの動きの把握が非常に面倒だ。だから、動きが変化したりする前に早朝に聞き込みをするのが今までの周回で編み出したテンプレだ。
逆に君は疲れないのか?
『そうね、私はあなたみたいに記憶を引き継いでいるわけじゃないもの』
…?
『私はあくまであなたを通して知識を得ているだけなの。だからこの週以外はあくまで記録として知っているだけ…といったところかしら』
まあ大体同じか…それで細かいところまでちゃんとわかるんだ?
『ええ、例えば貴方が"黒幕はわかっているのに"と言ったのは12回ほどね。』
黒幕はアザールなんだけどな…
『けど、それはこの夢境の"鍵"にはなり得ない。これでこの言葉も13回目ね』
一番怪しそうな教令院から調べていったところ、割と早期にアザールの心が読めない…夢の中の虚像のような存在には気づいていた。
周回の中でここが誰かを起点とした夢境であることもわかったので、おそらく自分はその影響を受けないようにしているのだろう。
まあ結局のところ、その"誰か"にこの夢なら覚めてもらわないといけないのだが。
はあ…早く行かないとな
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"誰か"が夢であることを自覚すれば良いなら大音量で貴方は夢を見ています!って放送すれば良いんじゃないか?
『そう言ったアイデアを考えることは大事だけれど、それで夢を自覚できるかしら』
実際に想像してみる。突然に流れてきた音声に今は現実ではない、夢から醒めろと言われる。
…無理だな
『今の方法が回りくどいのは事実だけれど、確実な方法ではあるわ』
まあ、そうだけどさ…
夢の主の判別は難しい。特徴は好きなように夢を改変できることくらいだけど、現実だと思っているんだから好き勝手することはない…少なくとも今はそういう痕跡は見つかってない。
そのため、無意識の欲望とかそう言ったものによる改変を探さなければいけないのだが…それは運頼りすぎるので確実な方法を使っている。
適当にインタビューしつつ、しれっと権能を用いて暗示を行うのだ。それで現実が改変されるかどうかで判断する。
次の暗示は…まあ一緒でいいか
『遊び心は大事よ、アルド? こんな時だからこそ、貴方が元気でいないといけないんだから』
はいはい…じゃあ任せるよ。
『そうね…』
草神の権能はやろうと思えば相手の意識を乗っ取れるくらい強力なので暗示自体は割と簡単だ。
だけどその内容は毎回変えている。教令院では"後ろで大賢者が睨んでいる"とかにしていた。学者が露骨に振り向くのがちょっと面白かったが…そろそろ面倒だ。反応が見れるタイプのネタは切れて来てるし…
『"赤いパティサラが足元に咲いている"何てどうかしら。これは花神誕祭の由来にちなんでいて…』
じゃあそれで…
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「旅人」
花神誕祭が始まってすぐ、グランドバザールの入り口で声をかけられた。
「クラクサナリデビ…じゃないね。クラクサナリデビはどうしたの?」
声をかけてきたのは頭の花飾りを除けば草神とそっくりな少女…眷属のアルドだ。
彼女が花神誕祭の準備をする姿は印象に残っている。
だけども、草神のために一生懸命だったその姿と今の彼女、何かズレを感じる。
「少し用事でね。聞きたいことがあるんだけれど良いかな?」
「まあ良いけど…」
こちらの疑問は予想していたのか、澱みない口調で眷属の彼女は言葉を続ける。
「現在起きている現象について心当たりはある?」
何の話を…いや、言われてみれば何か違和感が…?
「!何故…いや、旅人は草元素力が使えるんだったか?」
「使えるけど?」
彼女は急に目を大きく見開きこちらに詰め寄ってくる。
「アルド?どうしたんだ?」
「実は……ッ!いや、なんでもない。役に立ったよ」
彼女は無愛想に言い捨ててその場を立ち去っていった。
「な、なんだったんだ?」
質問をしておいてほとんどこちらの話も聞かずに帰る。
不信を抱かざるを得ない対応ではあるが、疑わしいとか、傲慢とかそう言うものではなく…
「焦ってた?」
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「旅人にループのことを話してはいけない!?」
人のいないと知っている小道へと入り込んで声を上げる。
『ええ、この情報を外部から伝えては、精神に大きなショックを与えるかもしれない。彼女自身が気づかないと…』
「こんだけやって!ようやっと見つけたんだ!」
感情が抑えられない。今までの変化のないループで削れていたものが言葉として吹き出る。
『しばらくなかった手がかりだから、あなたの気持ちもわかるけれど…結局彼女は"鍵"には繋がらないでしょう?』
あなたの気持ちもわかる…?
「わかるわけないだろ!しばらくなかった手がかり?アザールが怪しいのがわかったのはもう100回以上は前だぞ?君はいいよな、その回数も君にとってはただの記録にすぎないんだろ!?」
『ごめんなさい…あなたの気持ちをわかってあげられてなかったわ』
その言葉を聞いてふといつかのナヒーダのことが脳裏に浮かぶ。
もう長い間会っていない、気づいたらいなくなってしまっていて、それに気づくことさえできなかった彼女。
「…悪かった。頭を冷やさせてもらうよ」
これ以上見られていたくない。そんな気持ちで権能を利用する。
どうせ一日が終わればまた始まる。一度眠るだけだ─
『待って、アルド!』
─最後に届いた声は、やけに頭に響いた気がした。
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