「悪趣味でごめんね、お姉ちゃん」
リオが指差した私……その背後から聞き慣れた声が耳に入った。振り返るとそこには、私によく似た美少女が、
「ヤヨイ……?」
────私の自慢の妹が立っていた。
だけどその顔は私が知っているものとは違っていた。目の下にある大きな隈、少しだけやつれた頬、手入れの行き届いていない荒れた髪。違和感が私の頭を埋め尽くす。致命的な何かを見落としている気がしてならない。
「どうして……貴方がここに……」
渇いた口から疑問がこぼれ落ちる。
ここにはリオと私しかいないはずだ。いや、リオの配下であるC&Cはいるかもしれないが、それこそヤヨイはいるはずがない。だってヤヨイはアリスの件とは無関係で、今も自分の研究を完成させるために家で────
そこまで考えて、一つの可能性が私の頭に浮かんだ。そして、それが正解だと告げるように、ヤヨイが私の目を見つめる。
「賢いお姉ちゃんならわかるでしょ?」
緊張と焦りによって思考が、加速する。"全知"と謳われる頭脳が、与えられた情報を迅速に処理し、ただ一つの答えを得る。自分の出した結論が間違っていてほしいと思ったのは、これが初めてだ。
「ヤヨイ……貴方はリオについたのですか……?」
私の言葉にヤヨイは少しだけ微笑んだ。
「半分正解。確かに私はリオ先輩の味方。だけどね、私がここにいるのは、リオ先輩の目的のためじゃない」
もう堪えられない。ヤヨイは、そんな嬉々とした表情を浮かべて────、
「お姉ちゃんの敵になりたかった。それだけだよ」
言った。
困惑。驚愕。絶望。その次に湧き上がってきたのは、怒りだった。
「どうして……どうしてですか!」
今日ほど自身の足の不自由さに苛立った日はない。この足が動くのならば、今すぐヤヨイに駆け寄れるのだから。
「ヤヨイ、貴方の選択はアリスを見捨てるということなんですよ!それを理解しているんですか!ちゃんと理由を説明してください!」
「どうして…………ね」
そう呟いてヤヨイは下を向いた。思い返してみれば、今までヤヨイに対してこんな風に声を荒げたことはなかったなと、ふとそんなことを思った。
やってしまった、という気持ちが私の心を蝕む。
「……怒鳴ってごめんなさい。ですがヤヨイ、貴方の選択は間違っています。何故その選択をしたのか、どうかお姉ちゃんに話してくれませんか?」
いつものように、優しく語りかける。
「ヤヨイ。貴方を、わかってあげたい」
手を、差し伸べる。他の何者でもなく、この子のただ一人の姉として。たとえヤヨイが間違った道へ行ったとしても、私だけはずっとヤヨイの味方であるために。
この行動は、姉としてきっと間違っていなかったはずだ。ただ一つ誤算があるとすれば、私がヤヨイの気持ちを何一つ理解できていなかったことだろう。
「わかってあげたいなんて、軽々しく言わないで」
姉としての、初めての拒絶だった。くらり、と視界が揺れる。
「お姉ちゃんに私の気持ちなんてわかるはずがない。絶対に、わかるなんて言わせない」
今まで向けられたことのない敵意、私を射抜かんとする鋭い視線。そして、私を突き放す声。心の痛みが、それらは夢ではないことを突きつけてくる。
「でも、これだけは教えてあげる」
もう、やめて。これ以上聞いてしまったら、私は……
「お姉ちゃんなんか、だいっっきらいだよ!!!!」
世界が音を立てて崩れた。視界がぼやけ、意識が失われていく。最後に見たのは、満面の笑みを浮かべるヤヨイだった。
*
「はは、言っちゃった……」
紅茶に入っていた睡眠薬で眠ったヒマリの前で、ヤヨイは恍惚とした表情で呟いた。部屋に漂う気まずい雰囲気が、私の口を開かせる。
「……ヤヨイ」
私が名前を呼ぶと、ヤヨイはゆっくりとこちらに振り向き、その後顔を赤らめて俯いた。
「すみません……つい興奮してしまって……」
「……構わないわ。それで、この後はヒマリを連れてエリドゥで待機するのよね」
「はい。お姉ちゃんのことは、私に任せてください」
エリドゥに建設された中央タワー。その何部屋かはヤヨイの要望で少し特殊に設計してある。そのうちの一つが、ヒマリを一時的に閉じ込めるための部屋だ。その部屋は、最上階にあるヤヨイの部屋にしか繋がっていない。
「私達もアリスを確保したらそちらに向かうわ」
「わかりました。…………あまり変なことは言わないようにしてくださいね」
「……?えぇ、わかったわ」
ヤヨイは、持参した車椅子にヒマリを乗せながら、私を薄目で見つめた。
「それと、トキがいるので心配無いとは思いますが……」
「呼びましたね」
「……っ……驚かさないでよ」
ヤヨイの言葉に反応して、トキがヤヨイの背後から現れた。万が一のために外で待機させていたが、それも杞憂に終わったようだ。
「えっと……私はエリドゥに全て持って行きますが、念のために"一人"残しておきます。雑用でも何でも好きなように使ってください」
「それは助かるわ」
「リオ会長。壊れなかったら私にください」
「……考えておくわ」
トキの勢いに押されて承諾してしまったが、惜しいことをしたかもしれない。今後ヤヨイが私に"それ"を提供してくれる機会はほとんどないだろうし……いや、後でもう一人もらおう。
「では、また後で」
「ヤヨイ」
部屋を立ち去ろうとするヤヨイを引き止める。
「向こうでしっかり寝ておきなさい。その状態でヒマリに挑むのは合理的ではないわ」
「……はい。ありがとうございます」
「ヤヨイ、私も応援してます。頑張ってください」
「トキもね。それ使って負けたらただじゃおかないから」
こうして、私達の準備は整った。
*
全ての事象には、その始まりとなるきっかけがある。
アビドスの悲劇にも。ゲヘナの混沌にも。トリニティの陰謀にも。連邦生徒会長の失踪と、先生の到来にも。
妹が姉を嫌いだと、そう思うようになったことにも。
きっかけの数だけ、様々な結末が生み出される。きっかけが良いものでも、悲劇になることもあるし、逆もまた同じである。
そして、小さなきっかけから大きな事態に発展することも、ある。
誰もが何かのきっかけを抱え、また、ある日突然与えられる。それがどのような結末をもたらすかは、誰にもわからないけれど。
ミレニアム校内。とある部屋で行われた、アリスと未知との接触。それがアリスに与えられたたった一瞬のきっかけであり、キヴォトスを終焉に導くための引き金であった。
「……コードネーム"AL-1S"起動完了」
彼女の下へ帰還した"鍵"が、"王女"に代わってその使命を遂行する。
「プロトコルATRAHASISを実行します」
彼女に内包されていたのは、キヴォトスの終焉のきっかけ。だが、この出来事も誰かのきっかけと成り得る。
「トキ、今すぐに準備しなさい」
「イエス、マム」
モニター越しに"鍵"を見つめるのは、セミナーを率い、キヴォトスの未来を憂う天才である。彼女にとっては、"鍵"の暴走こそが計画開始のきっかけなのだ。
そして、"鍵"から遠く離れた要塞都市にも、彼女を"きっかけ"として待つ少女がいる。
数多のきっかけが連なり、物語が形成される。
────少女は全てを見ている。
*
「アリスが、モモイを……!」
「アリス、落ち着いて」
「先生、アリスは……アリスは一体どうすれば……!」
いつもは賑やかなゲーム開発部の部室。だが、今日だけはアリスの静かな声が響いていた。
「そう、貴方が怪我をさせた。……それは逃れられない真実」
「リオ先輩……余計なことは言わない、と約束しましたよね」
「余計なことではないわ。これからする話のためにも、伝えておかなければならないことよ」
その部屋に新たに加わったのは、残酷な真実を告げる声と、それを宥める声だった。
「ヤヨイと……君は……?」
「初めましてになるわね、先生。……私の名前は調月リオよ」
「突然すみません、先生。すぐに終わらせますから」
リオと名乗った少女は自己紹介もほどほどに、すぐにその興味をアリスへと戻した。
「どうして君たちがここに……?」
「それは、貴方達がよくわかっているのではなくて?」
「先日のアリスが起こした事件についてですよ」
「事件だなんて言わないでください!あれはアリスが起こしたものじゃないし、ただの事故です!」
まるでアリスが悪者みたいな物言いに、ミドリが二人に向かって声を荒げる。
「ごめんね、ミドリ。でもね、私達にもやらなくちゃいけないことがあるの」
「そうよ。今日は貴方達に"真実"を伝えに来たの」
「"真実"……?」
そうして、彼女達の口から告げられる残酷な事実は、勇者の心を折るには十分だった。
「貴方達がアリスと名付けたソレは……」
「リオ先輩」
「……アリス、貴方の正体は……名もなき神を信仰する無名の司祭が崇拝するオーパーツであり、古の民が残した遺産────その名も……"名もなき神々の王女AL-1S"」
聞き馴染みのない単語の羅列。それは私だけではなくアリスにとっても同じようで、理解できない、と一言呟いていた。混乱する私達に、リオに代わってヤヨイが口を開いた。
「先生。アリスが危険なのは先日の……事故でわかりましたよね」
「それは……」
「ネル先輩のおかげで途中で防ぐことができましたが、あれはキヴォトスを滅ぼすものです。このまま放置するわけにはいきません」
淡々と告げるヤヨイの声に、言葉が詰まる。彼女達がここに来てから話したことは、全て事実であり、正論だ。それがさらに私達の心に重くのしかかる。
「……アリスを、どうするの」
「この脅威を解決する方法は一つだけよ。…………アリス、貴方が消えること」
残酷で、無機質で、どこまでも冷たいその言葉が、アリスの瞳から光を奪い去る。その光景に耐えられず、私は目を閉じてしまった。
*
───同刻、要塞都市エリドゥにて
「やっぱりリオ先輩に付いて行くべきだったかな……」
意識を共有していた"私"との接続を切る。リオ先輩はやはり人の感情に疎い……というか合理以外を軽視しすぎている気がする。
「アリスのメンタルが心配だね」
「…………ヤヨイ」
「あれ……起きてたんだ、お姉ちゃん」
私は今、車椅子に乗ったお姉ちゃんを押してエリドゥの最上階へと向かっている。ついさっきまでは寝ていたはずだが、どうやら私があちらを見ている間に目が覚めたみたいだ。
「……貴方が、どうしてアリスの心配を?」
「それはもちろん、大切な後輩だからだよ」
「…………貴方がそれを言うのですか」
「……言葉が刺々しくなったね。お姉ちゃんも私を嫌いになったの?」
「それはあり得ません。ただ、少しお説教が必要だとは思っています」
「うーん……ありがたいお説教はもういらないかな。"準備"は全部整ったから」
「っ……まさか……!」
最上階の扉を開ける。まず目に入るのは、部屋の中央にある巨大なポッドと、その奥にある無数のモニター。
そして、部屋の端に並んでいる十数の"私"。
「貴方の"クローン"……既に完成していたのですね……」
「正確には私の記憶と思考パターンをプログラムしたAI搭載のアンドロイド。ベースは全部機械だよ」
目を見開いて私達を見るお姉ちゃんから離れ、私はそれらの横に並んだ。
「でもほら見て、すごいそっくり。みんなが気づけないだけはあるでしょ?」
「…………そうですね」
足りないものは、全て補う。情報処理が遅いのならば、一度に処理する数を増やせばいい。ハッキングのスピードが遅いのなら、手の数を増やせばいい。一度に認識できる量が少ないのなら、視野を増やせばいい。
一人の凡人では天才に勝てない。ならば、その圧倒的な才能の差を、足りない頭で、外付けの知能で、凡人なりの準備で、埋めたらいい。
そうして私は、天才に勝つ。
お姉ちゃんは下にある部屋に閉じ込めさせてもらった。
あの部屋は複数の鍵付き南京錠によって閉ざされているから、お姉ちゃんの"全知"もそこでは無意味だ。それに、お姉ちゃんの多機能車椅子も没収してある。もしもが起こる万が一の可能性すらも無い。
お姉ちゃんと別れ、私がアンドロイドの最終点検をしていた時、リオ先輩から電話がかかってきた。
「もしもし」
『アリスを確保した……のだけれど、貴方に借りたアンドロイドがネルに破壊されたわ』
「問題ありません。機体が破壊されたら中のデータを消去する仕組みになってるので。アリスは、最上階の私のところまで連れて来てください」
『わかったわ』
電話が切られる。アンドロイドの敗北によって、ネル先輩には勝てないことが間接的に証明されてしまったが、まぁいい。それでもリオ先輩を逃がせているだけ及第点だろう。……というかトキは?何してるんだあの子。
とりあえず、部屋に散らかっている資料や整備品、注射器などを片付ける。そして、無機質な部屋に装飾を施す。
イメージはもちろん、魔王城。
暗く、それでいて仄かに光が差している。中央の巨大な球形の装置が照らされ、いかにもな雰囲気が放たれている。
私とお姉ちゃん、そして勇者と魔王の決戦に相応しい舞台が整えられた。
勇者の復活まで、残り数時間。
「戻ったわ」
「おかえりです。それと……初めましてだね、アリス」
「…………?」
虚ろな表情をしているアリスに2度目の自己紹介を済ませる。アリスにとっては何のことだかわからないだろうが、私なりのこだわりなのだ。
「先生達が直に来るわ」
「トキ」
「ぶい。問題ありません」
「だそうです。それと、数体ですが私のアンドロイドをエリドゥに配置してますので、好きなように使ってください」
自爆でも何でも。そう付け足して、私はアリスを連れて装置へと向かう。あと少しで……あと少しで、やっと私の願いが叶うのだ。興奮する気持ちからアリスの腕を握る手に力が籠もる。アリスの顔色は変わらない。
「貴方の邪魔はさせないと誓うわ」
「……ありがとうございます」
リオ先輩の言葉で、興奮が少しだけ冷める。後ろめたさと申し訳なさが、心を締め付ける。
だって、私がこれからすることは、リオ先輩に対する裏切りとなんら変わりないのだから。
リオ先輩とトキが部屋を去ったのを確認して、アリスをポッドの前に連れていく。
「それじゃあ、アリス。今から君を破壊する」
全ての準備が整った。最後のピースは、目の前の勇者だけだ。
「だけど、その前に私と少しお話しよっか」
しゃがんでアリスと目線を合わせる。その瞳は、未だ光を宿さない。
「私はね、アリスが世界を滅ぼそうがどうでもいいの」
「…………え……?」
「私の全ては、今日のためにあった。そう思えるくらいに私は全力を尽くした。だから、この後世界がどうなろうと知ったこっちゃない」
世界が滅ぶ。アリスが魔王になる。私が、消える。今日、私の願いが叶うのならば、そんなことは、心底どうでもいい。
「私は、私のやりたいようにする」
私は、私の願いを叶えるために、お姉ちゃんを巻き込み、リオ先輩を裏切り、アリスを危険に晒す。少しの罪悪感はあれど、その選択に後悔は無い。
「アリスはどうしたい?」
だから、私は誰の選択も否定しない。
「アリスは………アリスは……………」
魔王の役職を与えられたアリスは、本当は何になりたいのか。きっと、それは彼女と関わった者なら誰でもわかる。
「アリスは……勇者になりたい、です」
「──―」
「…………でも、アリスにはその資格がありません……」
「それはどうして?」
「モモイを……仲間を傷付けてしまったから、です」
確かにアリスはモモイを傷付けた。それは覆しようのない事実ではある。だけど、それは決して許されない罪ではない。
「アリスはモモイに謝ったの?」
「…………謝って、ないです」
「なら、ちゃんと"ごめんなさい"しなきゃいけないね」
アリスの目が大きく開かれる。だけど、単純なことだ。傷付けたのなら、謝ればいい。アリスは故意にそんなことをする子ではないし、相手がモモイならば尚更だ。きっと許してくれる。
「私はね、色んな人のおかげで今ここにいるの。私だけじゃ絶対にここまで来れなかった。たくさん失敗したし、挫けそうにもなった。その度に、たくさん助けられた。私に、チャンスを与えてくれた」
勉強に行き詰まった時、お姉ちゃんとの才能の差に絶望した時、武装の開発がうまくいかなかった時、アンドロイドの製作に心が折れそうになった時。
チヒロ先輩が、リオ先輩が、トキが、黒い大人が、私を助けてくれた。成功のためのきっかけを、チャンスをくれた。
「だからね、アリス。貴方にもチャンスが与えられるべきだと思うの」
手を差し伸べる。アリスが、アリスであるために。
「アリスは……許されるのでしょうか……?」
「許されるかどうかはアリス次第。だけど、このまま謝れないままで終わるのは、私が認めない」
「アリスは、魔王なのに……」
「もう一回くらい、ジョブチェンジの機会があってもいいんじゃない?」
アリスが、顔を上げた。その瞳から大粒の涙を流しながら。
「アリスは……アリスは…………!」
アリスが、私の手を取った。
「アリスは、勇者になりたいです!!!」
勇者の復活に、私はニヤリと微笑んで、ただの村人らしく台詞を綴った。
「では、勇者よ。哀れな私を助けてくれませんか?」
膝をつき、踊りに誘うように、私はアリスに助けを求めた。
*
「聞こえていますか!?ヒマリ先輩!」
無機質な部屋に突如として現れたホログラム。そこに映し出されたのは、先程まで私とヤヨイがいた部屋。そして、焦った表情でこちらを見つめるアリスだった。
「アリス……!?どうしたのですか!」
「アリスは"悪い魔法使い"に捕まってしまいました!あと1時間後に内部データを破壊されてしまいます…………どうか助けに来てください!」
「助け、といっても……」
この部屋の出口は物理的に閉じられている。非力な私ではとても自力で脱出することは不可能だろう。
「あ……えっと、安心してください!その……部屋の鍵はアリスがトイレに行くついでに破壊しておきました!」
「…………なら大丈夫ですね」
なんとなく、読めてきた。ヤヨイ……貴方は────
「何してるのかな、アリス」
「う、うわーーん!悪い魔法使いに見つかってしまいました!アリスはもうおしまいです!」
不意に後ろから現れたヤヨイが、アリスの首根っこを掴む。
「わかりました、ヤヨイ。そちらに行けばいいのでしょう?」
あのヤヨイがそう安々とアリスから目を離すわけがない。それに、鍵だけ破壊したというのもおかしな話だ。
アリスを使い、ヤヨイは私を呼んでいる。誘われている。来い、とそう言われている。
「話が速くて助かるよ」
「アリスはここで退場ですか?」
「そうそう。この中で待っててね」
ヤヨイはアリスの背を押して、部屋の中央の装置に入らせた。そしてヤヨイは振り返って、目一杯に息を吸って、ニヤリと笑みを浮かべた。
「さぁ!お姉ちゃんの大切な後輩は預かった!返してほしくば、力尽くで奪ってみせろ!」
力尽くで……か。ヤヨイもわかっているが、それは些か私には難しい話だ。だけど────
「もちろん銃なんて陳腐な物で、じゃない。フェアじゃないしね」
やっぱり、ヤヨイは私の妹だ。
「電脳戦で、真っ向勝負といこう!」
いいでしょう。お説教も合わせて、お姉ちゃんが貴方の珍しい我儘に付き合ってあげます。
私達の初めての姉妹喧嘩は、世界を賭け金にした傍迷惑なものになった。
胸の高鳴りは、止まる気配がない。
次回──第5話:姉妹喧嘩と、厄介な友人