冷酷死霊術師とわがまま女神のリスタート 〜殺し合いの因縁を超えた先の、あまりにも短い幸福〜   作:えびふぉねら

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5話 預言者

 セラ、アルズ、ナディアの三人は、ラナスの片隅に佇む古びた街を訪れていた。

 その街の外れにある、小さな家の前に立ち止まった。古びた扉は色あせ、周囲には長らく放置されていたかのような静けさが漂っていた。

 

 セラが扉を叩くと、ギィと錆びた音を立てて開き、白髪で背中の曲がった老人が顔を出した。

 

「お待ちしておりました、女神セラ様。そして、アルズ様、ナディア様」

 

 老人の声は低く穏やかで、その瞳にはすべてを見通しているかのような光が宿っていた。

 

「私たちが来ることがわかっていたのですか……?」

 

 セラが疑問を口にすると、老人――預言者ロヴェロは微笑みながら言った。

 

「この家にいる者には、訪れる運命の客が見えるものです。さあ、中へお入りなさい」

 

 三人は顔を見合わせ、少しだけ躊躇しながらもロヴェロに促されて家の中へ足を踏み入れた。

 

 ロヴェロの部屋は、壁から天井までびっしりと書物が並び、古い紙の香りが漂っていた。

 そこにある書物はラナスの歴史や神々の伝承、さらに隠された真実までも記していると言われている。

 

 セラは室内を見渡し、震える声で問いかけた。

 

「……あの書物に書かれていることは真実なのですか? お父様が……『死と恐怖の神』だなんて……」

 

 ロヴェロは彼女の言葉を聞いて少し目を伏せた後、ゆっくりと顔を上げた。

 

「……真実です。しかし、それは彼の全てではありません。君たちは、その話について何も聞かされていないのかね?」

 

 その言葉に、セラの隣に立つ双子――アルズとナディアが肩を震わせた。

 二人は目を合わせ、一瞬逡巡するような表情を見せた後、アルズが意を決したように口を開いた。

 

「セラ様……実はオレたちは、あなたのお父上が街を焼き払ったその日、そこで命を落とした両親の子供です」

 

 アルズの言葉に、セラは息を呑んだ。

 ナディアが続ける。

 

「あの日、私たちはまだ小さくて……炎と喧噪の中で、何が起きていたのかほとんど覚えていません。ただ、気づいた時には両親はいなくて……」

 

 ナディアの言葉は震えていたが、彼女は続けた。

 

「……焼け野原に取り残された私たちを拾い上げてくれたのが……ラナスオル様でした」

 

 セラは言葉を失ったまま、二人の顔を見つめていた。

 アルズが再び口を開く。

 

「その後、復興に尽力するシード様の姿を見て、オレたちは思ったんです。あの方がしたことには理由があると。それに、オレたちを助けてくださった女神様が信じた方を、オレたちが恨むことはできない……」

 

 セラの瞳が揺れる。

 

「二人とも……つらいことを思い出させてしまってごめんなさい」

 

 謝罪の言葉を口にしたセラに、アルズは首を振って答えた。

 

「オレたちの方こそ、黙っていてすみません」

 

 ナディアも涙を浮かべながら、「セラ様、ごめんなさい」と続ける。

 

 セラは二人に優しく微笑み、そっと彼らの手を握った。

 

「ありがとう……話してくれて」

 

 ロヴェロはそんな三人を見守りながら、静かに語り出した。

 

「セラ様。シード様が『死と恐怖の神』として語り継がれているのは事実です。しかし、彼がその道を選ばざるを得なかった理由もまた、真実なのです。神界がラナスに送り込んだ神と人の子たちを滅ぼさなければ、ラナスそのものが滅びていた。彼はその犠牲を背負ったのです」

 

 セラの銀色の瞳が深い悲しみを宿す。

 ロヴェロは書棚から古びた巻物を取り出し、セラに手渡した。

 

「これを持っていきなさい。あなたが真実を知りたいと思うなら、この巻物が役に立つでしょう」

 

 セラは震える手でそれを受け取り、小さくうなずいた。

 

「ありがとうございます……」

 

 預言者ロヴェロの家を後にする三人の姿は、どこか決意に満ちていた。

 夕暮れの空の下、巻物を抱えたセラは、アルズとナディアと共に歩を進めた。

 

「お父様……あなたはどんな思いで、その道を選んだのですか……?」

 

 彼女の胸には、父の真実を知るための新たな希望と、深まる疑問が混在していた。

 

「セラ様」

 

 アルズの声に振り向くと、彼は優しく微笑んでいた。

 

「どんな真実があっても、オレたちはセラ様と共にあります」

 

 ナディアもそっと続ける。

 

「私たちも、セラ様と一緒に答えを見つけたいんです」

 

 セラは二人の顔を見て、微笑み返した。

 

「ありがとう。きっと……一緒に見つけましょう」

 

 三人はまた新たな道を進んでいく。

 その先に待つ真実に向かって――。

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