冷酷死霊術師とわがまま女神のリスタート 〜殺し合いの因縁を超えた先の、あまりにも短い幸福〜   作:えびふぉねら

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6話 罪

 夜の静寂が宿を包む中、セラはランプのかすかな光を頼りに、預言者ロヴェロから受け取った巻物を広げていた。

 古びた紙には複雑な文様と断片的な文字が描かれていた。それらはまるで呪文のようにも見えたが、セラにはその意味がわからなかった。

 

 セラは静かに呟きながら、指先で巻物の縁をなぞった。

 自分の父、シードが背負った罪。その真実に迫るため、この巻物が鍵になることは間違いないと感じていた。

 

 その時ふと、ベッドから小さな声が聞こえた。

 

「セラ様……?」

 

 振り返ると、ナディアが目をこすりながら起き上がっていた。

 眠そうな顔をしているものの、その表情には不安の色が滲んでいる。

 

「ナディア。眠れないのですか?」

 

 セラは優しい声で問いかけ、椅子から立ち上がった。

 ナディアは少し間を置いてから、弱々しく答える。

 

「はい……あの時の夢を見てしまって……」

 

 セラはナディアの横に腰掛け、そっと肩を抱き寄せた。

 

「大丈夫、私はここにいます。怖い夢なんて、きっと追い払います」

 

 しかし、ナディアの声は震えていた。

 

「……私たちがもっと気をつけていれば……シード様は……」

 

 その言葉に、セラの胸が痛んだ。

 ナディアのエメラルドグリーンの瞳から大粒の涙がこぼれ、頬を伝っていく。

 

「……あのお方は……私たちを庇うために命を……」

 

 ナディアの震える肩をセラは抱きしめ、彼女の背中を優しく撫でた。

 

「ナディア……」

 

 セラは目を閉じ、彼女の痛みを深く受け止める。

 ナディアの言葉に、セラの心にも複雑な思いが広がった。

 

 シードが命を落としたのは、アルズとナディアという無垢な存在を守るためだった。しかし、かつて彼らの両親を奪ったという事実が、セラの心に「罪」という重い言葉を刻んでいた。

 

「セラ様……私は……」

 

 ナディアは涙を流しながら言葉を続けた。

 

「私……何度もシード様を責めるような夢を見てしまうんです……あのお方が私たちを守ってくれたのに……私なんて……庇ってもらう価値なんてないのに……」

 

 その言葉に、セラはきっぱりと答えた。

 

「そんなことはありません」

 

 ナディアの顔を正面から見つめ、強い声で続ける。

 

「ナディア。私の父……シードは、あなたを守りたかったのです。あなたを守ったのは、それだけの価値があなたにあったからです。父はそれを疑ったことなんて一度もないでしょう」

 

 ナディアは目を大きく見開き、セラを見つめた。

 セラの言葉には、父を想う強い信念が宿っていた。

 

「私の父は確かに多くの命を奪いました。それがどれほど重い罪であったとしても……父の心の中には、いつも守るべきものへの愛がありました。私はそれを信じています。ナディア、あなたも信じてください」

 

 ナディアの涙が再び流れたものの、その瞳には確かな光が宿り始めていた。

 

「……ありがとうございます……セラ様……」

 

 ナディアはセラの腕の中で小さく頷き、ついにはそのまま眠りに落ちた。

 

 セラはそっと彼女を寝かせると、再びテーブルに戻り、巻物を手に取った。

 ランプの灯りが照らす文字を見つめながら、彼女は心の中で誓う。

 

「お父様……私は必ず、あなたの真実を見つけ出してみせます。そして、この世界に……あなたが守ろうとした全てに、光を灯してみせます」

 

 その瞬間、巻物の文字がほのかに光を帯びたように見えた。

 

 夜は更けていく。

 しかし、セラの銀色の瞳には、揺るぎない意志が宿っていた。

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