冷酷死霊術師とわがまま女神のリスタート 〜殺し合いの因縁を超えた先の、あまりにも短い幸福〜 作:えびふぉねら
ナディアの聖なる魔法がアルズの剣に力を宿す。剣先が眩い光を放ち、アルズが勢いよく振り抜くと、その光の刃が戦場を駆け抜け、魔物の群れを一掃した。
「よし、今です、セラ様!」
アルズが叫ぶと、セラは静かに頷き、両手を広げた。
彼女の手から柔らかな光があふれ出し、それはまるで波のように広がり戦場全体を包み込んでいく。
その光が魔物たちを浄化し、花へと変えていった。
荒れ果てた地面には、純白が次々と咲き乱れた。
戦場だったはずの場所は、穏やかな花畑へと変わっていく。
「何度見ても圧巻だな……セラ様の創造の魔術は、本当にすごい……」
剣を鞘に収めたアルズは、目を丸くして辺りを見渡した。
「まるで、女神ラナスオル様の創造の左手フェルジアそのものですね」
ナディアも花畑を見て、柔らかい微笑みを浮かべる。
セラはふたりの顔を見ながら、優しい声で答えた。
「ふふ、二人ともお疲れ様でした。いつも私を守ってくれてありがとう」
アルズとナディアは少し照れくさそうにしながらも、笑顔を返す。
セラの戦い方は、かつての父シードのそれとは全く異なっていた。
神話や歴史に記されたシードの姿――それは「死と恐怖の神」として知られる異形の神。
彼は圧倒的な力を振るい、敵だけでなく、必要とあれば命あるものすべてを蹂躙することも辞さなかった。
だが、セラはその道を歩まないと心に決めていた。彼女の力は浄化と創造――命を生み出し、癒す力だ。
セラは足元に咲く花を見つめ、自分の胸にそっと手を当てた。
(もし……私にもお父様のような力があったとしても……私は……)
彼女はぎゅっと手を握りしめる。父の真実をまだ知らない彼女だったが、それでも、命を守り抜くという己の信念だけは揺るがなかった。
「セラ様、大丈夫ですか?」
ナディアが心配そうに声をかけると、セラは一瞬驚いたように振り返り、いつもの柔らかな笑みを浮かべた。
「ええ、大丈夫。さあ、次の街へ向かいましょう」
アルズとナディアもそれに続き、三人は次の目的地へ向けて歩き出した。
その様子を、遠く居城から精霊を通じて見守っていたラナスオル。
広間の一角、彼女は窓辺に立ち、精霊たちの映し出す光景を静かに見つめていた。
「セラ……しばらく見ないうちに、ずいぶん立派になったものだな」
ラナスオルの紫色の瞳が優しく揺れる。
彼女はゆっくりと椅子から立ち上がり、窓の外に広がる青空を見つめた。
「もう、私が見守る必要はないのかもしれないな」
その言葉には安堵とわずかな寂しさが滲んでいたが、彼女の唇には小さな微笑みが浮かんでいた。