冷酷死霊術師とわがまま女神のリスタート 〜殺し合いの因縁を超えた先の、あまりにも短い幸福〜   作:えびふぉねら

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10話 神々の墓場

 クレアを加えた四人の旅は、次第にラナスの深部へと進んでいた。美しい自然と平和な街並みが広がる一方で、「銀灰の守護者」の戦いの痕跡が色濃く残る場所も少なくなかった。

 

 そしてその一つ、ラナスでも「禁足地」と呼ばれ、人々が近寄ることを忌避する場所へ、セラたちは足を踏み入れていた。

 

 目の前に広がるのは、時間が止まったかのような異様な光景だった。

 

「……何、これ……」

 

 セラは足を止め、目を見開いた。

 

 そこには、無数の神々の骸が山のように積み上げられていた。

 銀色に輝く巨大な翼、異形の鎧、そして人間には理解できないような歪な形をした腕や頭部――それらは全て、命を失い朽ち果てていた。

 

 その場には、まるで怨嗟の声が渦巻いているかのような、重苦しい空気が漂っていた。

 

「ここが……お父様が戦い続けた場所……」

 

 セラの声が震える。

 

 この場所は、かつて父シードが神界からの死客たちと戦った地だった。

 女神ラナスオルが滅びた後、彼女の再誕までの約一万年間、シードがひとりでラナスを守るために戦い続け、そして殺し続けた場所だったのだ。

 

「セラ様……」

 

 アルズとナディアが恐る恐る彼女の側に寄り添い、その手を握った。彼らの表情もまた青ざめ、恐怖と驚愕に覆われていた。

 

「だい……じょうぶ……です。ありがとう……」

 

 セラは震える声でそう言いながら二人の手を握り返したが、その銀色の瞳は骸の山から目を逸らすことができなかった。

 

 一方、クレアは他の三人とは異なる様子で、静かにその山を真紅の瞳で見上げていた。表情からは感情を読み取ることができず、その瞳はどこか冷静で、そして鋭い輝きを放っている。

 

 その時、セラの持つ巻物が、柔らかな光を放ち始めた。

 

「巻物が……反応している……?」

 

 セラは驚きながらも、手にした巻物をじっと見つめた。光は増していくが、巻物の文字は何も変わらず、その意味を読み取ることはできなかった。

 

「もう、行きましょうセラ様」

 

 巻物の光に気づいたアルズが、セラの肩に手を置き、声を掛ける。

 

「ここは長居するような場所じゃない。どんな理由があろうと、ここにいるだけで……嫌な気配が体に染み付く気がします」

 

 ナディアも骸の山に向かって静かに祈りを捧げた後、セラの手を握り、柔らかい声で続けた。

 

「セラ様……私たちがついています。行きましょう」

 

 セラは頷き、二人の言葉に応えるように歩き出した。

 だが、その時だった。

 

「先に行ってて」

 

 背後からクレアの声が聞こえ、セラが振り返ると、クレアはその場から動こうとはしていなかった。

 

「クレア?」

 

 セラが不思議そうに尋ねると、クレアは真紅の瞳を輝かせながら、骸の山をじっと見上げたまま答える。

 

「私は……少しだけやることがあるの」

 

 その言葉には、どこか硬い決意が込められていた。

 

「やることって……何をするつもりだ?」

 

 アルズが眉をひそめて尋ねるが、クレアは答えなかった。

 

 代わりに彼女の漆黒の炎が手のひらに渦を巻き、かすかな魔力の波動が周囲へと広がる。

 

「心配しないで、すぐ追いつくから」

 

 クレアはそう言い、静かに微笑んだ。しかし、その微笑みにはいつもの無邪気さはなく、何か隠された意図が感じられる。

 

 セラは迷った末、静かに頷いた。

 

「……わかりました。でも、すぐ戻ってきてくださいね」

 

 クレアは黙って頷き、再び骸の山を見上げた。

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