冷酷死霊術師とわがまま女神のリスタート 〜殺し合いの因縁を超えた先の、あまりにも短い幸福〜   作:えびふぉねら

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12話 最後の鍵

 セラの旅が始まってから、一年が経とうとしていた。

 

 ラナスの世界を巡り、父シードが遺した痕跡を追い続ける中で、彼の「銀灰の守護者」としての輝かしい伝説と、「死と恐怖の神」としての残酷な記憶、その両方を知ることとなった。

 

 しかし、巻物に記された謎は依然として解き明かされないままだった。最後の欠けた箇所を埋める手がかりが見つからず、セラの心には焦りと悲しみが入り混じっていた。

 

 料理店の一角で休息を取る四人。料理を待つ間、セラは巻物をじっと見つめていた。

 

「まだ、お父様について私の知らないことがあるというのかしら……」

 

 彼女の呟きに、アルズとナディアは心配そうな表情を浮かべ、クレアも視線を彼女に向ける。

 

 ふと、クレアが巻物を覗き込み、静かに口を開いた。

 

「そう言えば……シード様はなぜ亡くなったのですか?」

 

 その問いは、彼女らしい純粋さの中に、核心を突く鋭さを含んでいた。

 

「……え?」

 

 セラは目を見開く。

 

「不死の存在だったはずのあのお方が、どうして事故で命を落とすことになったのか。セラ様もご存じないのですか?」

 

 その問いに、セラはしばらく言葉を失った。

 確かに、不死であったはずの父が、アルズとナディアを事故から庇い命を落とした理由について、母ラナスオルからは詳しく聞かされていない。

 

「……」

 

 セラが返答に詰まっていると、アルズが重い口調で話し始めた。

 

「シード様は、オレたちの街を復興しようと全力で働いてくれました。でも……その時、一切神の力を使っていなかったんです」

 

 アルズの言葉に、セラは息を呑む。

 

「……どういうことでしょう?」

 

 ナディアが静かに言葉を重ねた。

 

「私たちが覚えているのは……あのお方がまるで人間のように汗を流し、手で瓦礫を片付け、街を立て直そうとしていた姿でした。もしかすると、その時点で神の魔力――不死の力を失っていたのかもしれません」

 

「神の魔力を……失っていた……?」

 

 セラは視線を落とし、手元の巻物を握りしめた。

 不死の神が、なぜその力を失ったのか。そこに父の死の真実が隠されているのではないか。

 

 セラはゆっくりと顔を上げ、巻物をじっと見つめた。

 

「お父様が神の魔力を失うきっかけとなった『何か』……これが、私たちが探している最後の鍵なのかもしれません」

 

 その声には、悲しみと共に、新たな決意の色が込められていた。

 

「その答えは……きっと、あの神話の書物の中……」

 

 セラの記憶に、かつて訪れたラナスの大国の図書館で目にした書物が蘇った。「死と恐怖の神」の真実――そこには、父が歩んだ苦悩の道が隠されているはずだ。

 

「もう一度、あの書を読み直す必要がありそうですね」

 

 セラはそう言うと、仲間たちに向き直り、意志の宿る銀色の瞳で微笑んだ。

 

「行きましょう。次の目的地は、あの大国の図書館です」

 

 巻物を手にしたセラたちは、再び旅路へと足を踏み出した。

 

 夜空の下、セラの心には希望が灯っていた。最後の鍵を見つけ、真実を掴む――その時こそ、彼女は父のすべてを理解できると信じて。

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