冷酷死霊術師とわがまま女神のリスタート 〜殺し合いの因縁を超えた先の、あまりにも短い幸福〜 作:えびふぉねら
「溶けた魂が余の中に入り込んだ時、彼の思念の断片が伝わってきたわ。このまま自分が存在しては、ラナスの世界、女神ラナスオル、そして生まれてくる子供――あなたにとって『害』になるのではないか、とね。当然よね。罪のない人間を虐殺した神を父に持つ子供なんて、不幸になるに決まってるわ」
グレナシアは歪んだ笑みを浮かべ、ゆっくりとセラに歩み寄る。彼女の真紅の瞳がセラをねじ伏せるように見据えていた。
「お父様は……ラナスを守るために戦った……銀灰の守護者です!」
セラは震える声でグレナシアの言葉を否定し、懸命に心を奮い立たせようとした。
「そう。では、あなたは何なのかしら?」
グレナシアは冷たく問いかける。
「死と恐怖の神の娘さん? 父親の痕跡を辿って、真実と向き合って、今ここにいるあなたは何をなそうとしているの?」
グレナシアの指がセラの顎に触れ、顔を強引に引き寄せる。そして、冷たい舌がセラの頬を舐めた。
「ううっ……!」
ざらりとした感触に震え上がり、恐怖に縛られたセラの身体は動けなかった。
だが、次の瞬間、白き剣の一閃が走りグレナシアを襲った。
「セラ様!!」
叫ぶ声とともに現れたのはアルズとナディアだった。剣を振るったアルズが鋭い目つきでグレナシアを睨みつける。
「チッ……もう来たか」
グレナシアは一歩後ろに跳び、剣を軽くかわした。
「あなたたちは後よ。人間なんておいしくないし、腹の足しにもならないわ」
低く残忍な声音で告げるその言葉に、アルズの怒りが爆発する。
「クレア……? 何言ってんだお前……セラ様に何をしたんだ!」
ナディアも震える手で聖槌を握り締め、冷えた声で問いかける。
「クレア……あなたは一体……」
「あっははは……」
グレナシアは肩を揺らして笑い、漆黒の炎を手に宿した。その瞳には、狂気に彩られた光が宿っている。
「それにしても、まさか、この双子を救うためにあの男が命を捨てるなんて思わなかったわ! 魔力が回復するまでおとなしくしていれば、死なずに済んだものを! あっはは!」
彼女の嘲笑が荒野に響く。
「死と恐怖の神が、『愛』なんてくだらない感情に縋るだなんて……おかしくて、たまらなかった!」
グレナシアはさらに声を高め、笑い続ける。
「あっははは! 自分が信じた愛とやらが身を滅ぼす……ほんっとうに滑稽! 最高の娯楽だったわ!」
「……それ以上、お父様を侮辱することは許しません……!」
セラは震える声を絞り出した。
しかし、その佇まいは凛とした威厳を湛え、見据えるような銀色の瞳には静かなる怒りが込められていた。
肌を焼く痛みさえ、今や父の受けた苦しみそのもののようで、握りしめた彼女の拳に闘志を宿らせる。