冷酷死霊術師とわがまま女神のリスタート 〜殺し合いの因縁を超えた先の、あまりにも短い幸福〜   作:えびふぉねら

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16話 静かな怒り

「溶けた魂が余の中に入り込んだ時、彼の思念の断片が伝わってきたわ。このまま自分が存在しては、ラナスの世界、女神ラナスオル、そして生まれてくる子供――あなたにとって『害』になるのではないか、とね。当然よね。罪のない人間を虐殺した神を父に持つ子供なんて、不幸になるに決まってるわ」

 

 グレナシアは歪んだ笑みを浮かべ、ゆっくりとセラに歩み寄る。彼女の真紅の瞳がセラをねじ伏せるように見据えていた。

 

「お父様は……ラナスを守るために戦った……銀灰の守護者です!」

 

 セラは震える声でグレナシアの言葉を否定し、懸命に心を奮い立たせようとした。

 

「そう。では、あなたは何なのかしら?」

 

 グレナシアは冷たく問いかける。

 

「死と恐怖の神の娘さん? 父親の痕跡を辿って、真実と向き合って、今ここにいるあなたは何をなそうとしているの?」

 

 グレナシアの指がセラの顎に触れ、顔を強引に引き寄せる。そして、冷たい舌がセラの頬を舐めた。

 

「ううっ……!」

 

 ざらりとした感触に震え上がり、恐怖に縛られたセラの身体は動けなかった。

 だが、次の瞬間、白き剣の一閃が走りグレナシアを襲った。

 

「セラ様!!」

 

 叫ぶ声とともに現れたのはアルズとナディアだった。剣を振るったアルズが鋭い目つきでグレナシアを睨みつける。

 

「チッ……もう来たか」

 

 グレナシアは一歩後ろに跳び、剣を軽くかわした。

 

「あなたたちは後よ。人間なんておいしくないし、腹の足しにもならないわ」

 

 低く残忍な声音で告げるその言葉に、アルズの怒りが爆発する。

 

「クレア……? 何言ってんだお前……セラ様に何をしたんだ!」

 

 ナディアも震える手で聖槌を握り締め、冷えた声で問いかける。

 

「クレア……あなたは一体……」

 

「あっははは……」

 

 グレナシアは肩を揺らして笑い、漆黒の炎を手に宿した。その瞳には、狂気に彩られた光が宿っている。

 

「それにしても、まさか、この双子を救うためにあの男が命を捨てるなんて思わなかったわ! 魔力が回復するまでおとなしくしていれば、死なずに済んだものを! あっはは!」

 

 彼女の嘲笑が荒野に響く。

 

「死と恐怖の神が、『愛』なんてくだらない感情に縋るだなんて……おかしくて、たまらなかった!」

 

 グレナシアはさらに声を高め、笑い続ける。

 

「あっははは! 自分が信じた愛とやらが身を滅ぼす……ほんっとうに滑稽! 最高の娯楽だったわ!」

 

「……それ以上、お父様を侮辱することは許しません……!」

 

 セラは震える声を絞り出した。

 しかし、その佇まいは凛とした威厳を湛え、見据えるような銀色の瞳には静かなる怒りが込められていた。

 肌を焼く痛みさえ、今や父の受けた苦しみそのもののようで、握りしめた彼女の拳に闘志を宿らせる。

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