冷酷死霊術師とわがまま女神のリスタート 〜殺し合いの因縁を超えた先の、あまりにも短い幸福〜 作:えびふぉねら
花の鎖で動きを封じられたグレナシアの身体。そのひび割れた表面から浄化の光が流れ込むたび、彼女は激しく身をよじらせ、苦しげなうめき声を上げていた。
しかし、彼女の異様な動きにセラは一抹の不安を覚えた。
脳裏に蘇るのは、あの神話の書物に描かれていた「大いなる災厄」の姿――少女ではなく、獣のような巨大な存在だった。
「この姿は仮のもの……本当の姿は……!」
セラの胸に危機感が駆け巡る。彼女は咄嗟に花の鎖をアルズの方へと伸ばし、その身体を守るように取り囲んだ。
そして次の瞬間――。
グレナシアのひび割れた身体が激しく崩れ、その中から脱皮するように姿を現したのは、巨大な鰐のような頭部を持つ獣の化け物だった。鋭い牙が光り、巨体が空間を震わせる。
「うわぁっ!?」
アルズが叫ぶ間もなく、巨大な口が彼を捕らえようと迫った。しかし、花の鎖が防壁となり、間一髪その餌食になるのを免れた。
彼が地面に転がるのを見て、セラは急いで駆け寄った。
「アルズ、無事ですか!」
セラが心配そうに問いかけると、アルズは荒い息を整えながら「セラ様のおかげです、感謝します!」と答えた。
「ほう……さすがだな。神話の書物の内容を思い出したか」
獣の口から響いた低く歪んだ声は、冷酷な男の声のようだった。
「余は神喰らいの神グレナシア。神界を喰い荒らし、禁足地に眠る神々の骸を喰らった。そして今、余が求めるのは……」
獣の巨躯が揺れ、花の鎖を引きちぎりながら、グレナシアは不気味な笑みを浮かべた。
「セラ……貴様と、異形の神シードの魂を喰らい、そして最後に……家族を失い絶望に堕ちた女神ラナスオルを喰らってやる! あっはははは!」
巨獣が狂ったように笑い声を響かせる中、セラはその言葉に衝撃を受け、体が震えた。
「お父様の魂を……?」
セラの銀色の瞳が驚愕に見開かれる。
「そうか、貴様はその巻物について何も知らんのだったな」
グレナシアの赤黒い瞳が、セラの懐で微かに輝きを放つ巻物を見据えた。
「冥土の土産に教えてやろう。その巻物に封じられた魔法は、神界の至宝『奇跡』だ。滅びた魂を甦らせる呪文が込められている。神界の門外不出の宝がなぜラナスにあったのかは知らんが、それを使えば、あの異形の神の魂を蘇らせ、喰らうことができる……そして余は不死の力を手にすることができるのだ!」
グレナシアの言葉に、セラとアルズは息を飲む。
「……巻物が……お父様を甦らせる……?」
セラはその事実に驚愕しながらも、同時に巻物を持つ手に迷いが生まれた。