冷酷死霊術師とわがまま女神のリスタート 〜殺し合いの因縁を超えた先の、あまりにも短い幸福〜 作:えびふぉねら
「信じられぬ、と言った様子だな。巻物を広げてみるがいい」
グレナシアの声が冷たく響き渡る。
その言葉に、セラの指先が僅かに震えた。
懐から取り出した巻物――その最後の欠けていた部分に、複雑な紋様と呪文が浮かび上がる。
金色の光が走り、セラは視界が一瞬焼き尽くされるような感覚に覆われた。
「『奇跡』は完成した。余の中にあるシードの魂の断片が、術式に必要な痕跡として記録されたのだ」
グレナシアは嘲笑を浮かべながら続ける。
巻物から溢れる創造の力は凄まじく、魂を揺さぶるような鼓動をセラは確かに感じた。彼女は悟った――グレナシアの言葉が真実であることを。
セラの喉が強張った。
「さあ、巻物の力を解き放ち、父の魂を呼び戻してみるがいい」
悪意に満ちた声が、まるで毒のようにセラの心を蝕んでいく。
「貴様らでは余は倒せん。異形の神の力を借りれば、ひょっとしたら余を倒せるかもしれんぞ?」
グレナシアの挑発的な言葉が、セラの心を揺さぶる。
「セラ様……」
隣に立つアルズが、心配そうに彼女を見つめる。
セラは葛藤していた。この旅の目的は、父シードを追い、その真実を知ることだった。
しかし、もし目の前にある巻物が父を復活させる手段だとしたら――それは旅の終着点であると同時に、彼女にとって最大の試練となるだろう。
「お父様……」
セラの銀色の瞳が揺れる。父に会いたい。話をしたい。抱きしめられ、励まされたい――その願いが、心の中で渦巻いていた。
だが……父はそれを本当に望むだろうか?
彼が守ろうとした世界。
彼が命を賭して築いた平和。
それを、自分の欲望のために壊すことになるのではないか。
「できぬか。ならば、余の糧となって朽ち果てるがいい!」
グレナシアが顎を大きく開き、地獄の炎を纏った鋭い牙を輝かせながら襲いかかった。
空気が張り裂け、殺意が滾る。
「セラ様!」
アルズが飛び込み、間一髪、剣を握りしめてグレナシアの牙を押さえ込んだ。
「ぐっ……この野郎……!!」
押されている。
アルズの剣がきしむ音が響く。その刃は今にも砕け散りそうだった。
「アルズ!」
セラが叫ぶ。
「セラ様! 巻物を……! オレが……押さえているうちに……早く……っ!」
アルズの額には汗が滲み、瞳には強い決意が宿る。
セラは迷った。巻物を使えば父を蘇らせられるかもしれない。しかし、それはグレナシアの計画通りに動くことでもある。
(お父様……私は……)
使うべきか。
使わざるべきか。
セラは必死に思考を巡らせた。決断の時が来ていた。