冷酷死霊術師とわがまま女神のリスタート 〜殺し合いの因縁を超えた先の、あまりにも短い幸福〜   作:えびふぉねら

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20話 決断の時

「信じられぬ、と言った様子だな。巻物を広げてみるがいい」

 

 グレナシアの声が冷たく響き渡る。

 その言葉に、セラの指先が僅かに震えた。

 

 懐から取り出した巻物――その最後の欠けていた部分に、複雑な紋様と呪文が浮かび上がる。

 金色の光が走り、セラは視界が一瞬焼き尽くされるような感覚に覆われた。

 

「『奇跡』は完成した。余の中にあるシードの魂の断片が、術式に必要な痕跡として記録されたのだ」

 

 グレナシアは嘲笑を浮かべながら続ける。

 

 巻物から溢れる創造の力は凄まじく、魂を揺さぶるような鼓動をセラは確かに感じた。彼女は悟った――グレナシアの言葉が真実であることを。

 セラの喉が強張った。

 

「さあ、巻物の力を解き放ち、父の魂を呼び戻してみるがいい」

 

 悪意に満ちた声が、まるで毒のようにセラの心を蝕んでいく。 

 

「貴様らでは余は倒せん。異形の神の力を借りれば、ひょっとしたら余を倒せるかもしれんぞ?」

 

 グレナシアの挑発的な言葉が、セラの心を揺さぶる。

 

「セラ様……」

 

 隣に立つアルズが、心配そうに彼女を見つめる。

 

 セラは葛藤していた。この旅の目的は、父シードを追い、その真実を知ることだった。

 しかし、もし目の前にある巻物が父を復活させる手段だとしたら――それは旅の終着点であると同時に、彼女にとって最大の試練となるだろう。

 

「お父様……」

 

 セラの銀色の瞳が揺れる。父に会いたい。話をしたい。抱きしめられ、励まされたい――その願いが、心の中で渦巻いていた。

 

 だが……父はそれを本当に望むだろうか?

 彼が守ろうとした世界。

 彼が命を賭して築いた平和。

 それを、自分の欲望のために壊すことになるのではないか。

 

「できぬか。ならば、余の糧となって朽ち果てるがいい!」

 

 グレナシアが顎を大きく開き、地獄の炎を纏った鋭い牙を輝かせながら襲いかかった。

 空気が張り裂け、殺意が滾る。

 

「セラ様!」

 

 アルズが飛び込み、間一髪、剣を握りしめてグレナシアの牙を押さえ込んだ。

 

「ぐっ……この野郎……!!」

 

 押されている。

 アルズの剣がきしむ音が響く。その刃は今にも砕け散りそうだった。

 

「アルズ!」

 

 セラが叫ぶ。

 

「セラ様! 巻物を……! オレが……押さえているうちに……早く……っ!」

 

 アルズの額には汗が滲み、瞳には強い決意が宿る。

 

 セラは迷った。巻物を使えば父を蘇らせられるかもしれない。しかし、それはグレナシアの計画通りに動くことでもある。

 

(お父様……私は……)

 

 使うべきか。

 使わざるべきか。

 セラは必死に思考を巡らせた。決断の時が来ていた。

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