冷酷死霊術師とわがまま女神のリスタート 〜殺し合いの因縁を超えた先の、あまりにも短い幸福〜   作:えびふぉねら

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最終話 魂の記憶

 ……あれは、ただの事故でした。

 

 

 かつて幾度となく戦場を駆け抜け、無数の散りゆく命を見届け、僕自身も死の淵を何度も彷徨いました。

 戦場でもなく、何者の手によるものでもなく……ただの瓦礫の崩落。それが僕を殺した。

 

 神の魔力も不死性も失った僕は、普通の人間同然でした。

 足場が崩れ、双子の頭上に向かって落下した……気づいた時にはもう考える暇などなく……ただ、身体が動いていたのです。

 

 

 守ることは当然でした。あの子たちは、まだ生きるべき命でしたから。

 ですが、それと引き換えに自分がどうなるかなど……その瞬間には考えもしませんでした。

 

 

 僕はずっと死を望んでいたはずでした。しかし、あの時……死が目前に迫った時、僕は初めて『まだ生きたい』と願いました。

 僕の帰りを待ち続ける彼女がいたから。

 それに……もうすぐ生まれるはずだったあの子が。

 その誕生を見届けずに終わることが、恐ろしかったのかもしれません。

 

 それなのに……身体は動かなかった。

 掠れる視界には、双子の泣き顔と、駆け寄ってくる人々の姿……彼らの声も次第に遠くなっていき……僕は最期に彼女の名を呼びました。

 

 彼女も、僕を抱きしめながら何度も名前を呼んでいたそうですね。

 その腕の中で、僕はもう何も応えることができなかった……。

 

 彼女は悔いていました。もし、彼女があの場にいたなら、僕を救うことができただろう、と。

 彼女は僕にとってたったひとりの伴侶であり、お腹の中の子は僕たちの希望でした。だからこそ、彼女を休ませたかった、無理をさせたくなかったのです。

 

 ……僕の優しさのせいで救えなかった? それは違います。

 僕は、自分で選んだのです。あの場にいた子供たちを守ることを。それは……後悔するようなことではありません……。

 ただ……僕が死んだことで、彼女をひとりにしてしまった……それだけが、痛みとして胸に残っています。

 

 

 僕は、もう戻ることは叶わない……それはわかっています。

 だが、彼女たちは強い。

 僕がいなくとも、彼女たちは前へ進む。

 この想いを受け継ぎ、きっとラナスに光を灯していくでしょう。

 

 

   * * *

 

 

 

 

 

 

 

※完結です。

 

長い話をここまでお読みいただき、本当にありがとうございました。

文字数が足りないのであとがきを本文に書いています。

鬱展開ばかりで、誰も救われず、読んでて気持ちのいいものではないのにこの作品を選んで頂き感謝しております。

もし、気に入らない! と少しでも感じたら感想を頂けると、黄泉への手向けとして作者が喜びます。

 

主人公シードの過去のお話である「教国の剣」も宜しければご覧ください。

それでは……また、どこかで。

 

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