それはきっと、有り得たらいけない物語

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昨日ふと脳内に降りてきたネタを即興で書いただけの作品
アーモンドアイの容姿見せられてこれ思いつかない方が無理があるだろ


第1話

 ――何故僕はこの世界に生まれたのだろう。

 

 僕には前世の記憶がある、狂わされた人生、それも無念の内に死んだ前世の記憶がある。

 心のどこかではきっと思っていたのだろう、こんな僕の魂が生まれ変わることなんて到底出来る訳が無いのだと。

 この魂は死んだら消え去るのだと、消え去るべきなのだと。

 死ぬ瞬間にそれを自覚したとて、遅いはずだった。

 

「ではなんで僕は今『ここにいるのか』」

 

 だが今こうして自分は地に足を着けて生きている。

 前世生きていた地球と酷似した環境の地球、存在する音楽グループや名詞に若干の差異はあれどほぼ同じだった……とある大きな差異一つを除けば。

 

「ウマ娘、か」

 

 ウマ娘……馬の耳を持つ、競走馬の能力と酷似した人に酷似した生物。

 代わりにこの世界に馬という種族は存在していない。

 

 それと同時に、ああやはりここは前世とは違う世界なのだと確信した。

 だと言うなら僕は何故生まれ変わったのか、この世界に導かれたのか、今日まで生かされてきたのか。

 

 それを求める為に、敢えてその『差異』の世界へと飛び込んだ。

 

「では今日から君は中央所属のトレーナーだ!何か分からない事があればたづなに聞いてくれ!君の活躍、期待しているぞ!」

 

「ありがとうございます」

 

 競馬、単語は知っていた。だが詳しい事は何も知らなかった。

 この世界では0からウマ娘を調べ、それを一番間近で見られる職業――トレーナーというものになった。

 自分がこの世界に産み落とされた理由はここにあるのでは無いか、前世では終ぞ見つけられなかった『生きる理由』『愛』それを見つけられるのではないかと思って。

 

 もしも見つけられないのであれば、全て殺してしまえば良い。

 

 だが、それまでは。

 

 真っ当に生きてみるのも悪くない。

 

 

 

「トレーナーとして生きる以上、一応担当は付けておかないと面倒だよね」

 

 ウマ娘を観察するだけなら担当は持たなくても良い。

 とはいえ、それでは直接話す機会も少ない。更に言えば担当を持たないともなれば解雇されてしまう可能性だってある、詳しく知る為に折角なったのにクビになれば元も子も無い。

 

 適当なウマ娘で良い、それとなく選抜レースを見て適当な理由を付けて担当を見繕っておけば良い……そう考えて数いるトレーナーに紛れていた。

 

 どうせ『あの瞳以上に僕が惹かれるモノなんて無いのだから』。

 

 走る姿にも、容姿にも、成績にも、そんなものどうでも良かった。

 

「……?」

 

 そう、ゲート内にいる1人のウマ娘を見つけるまでは。

 

 

「すみません」

 

「ん?なんだ、新人か?どうした」

 

「いえ、あの9番のゼッケンのウマ娘についてご存知あるのかと思いまして」

 

「おいおい今日の目玉も知らずに観に来たのか?不勉強と言うべきか、ある意味大物新人と言うべきか……あのウマ娘はなぁ……」

 

 あのオーラは、いや違う、そんなハズは無い、いるハズが無い、この世界に存在している訳が無い。

 冷や汗が、動悸が、震えが、止まらない。

 僕を狂わせた張本人、彼女にあんまりにも重なって見えてしまっていたから。

 

 

 

アーモンドアイ、この世代でも前評判ナンバーワン、皇帝シンボリルドルフに比肩し得る可能性すらあるとの呼び声高いウマ娘だ。今日が選抜レース初出走だってのにもう何ヶ月も前から、GIウマ娘を多数輩出してる大御所チームトレーナー、それも大半からスカウトされてるって持ち切りさ。ま、走りを見てもらえてないって理由で色良い返事は無いみたいだがな」

 

「アーモンド……アイ……」

 

 息を飲んだ。

 興味なんてある訳が無かった、あの瞳より、あのオーラより優れたモノなど存在し得ない、間違いなくそれを確信していたからだ。

 だと言うのに、僕はその瞳に吸い込まれるように目が離せなくなっていた。

 

 それに。

 

「おーおーコイツは想像以上だな、ったく。シンボリルドルフに比肩しうるってのも強ち間違いじゃねえかもなあ」

 

 走りに、気迫に、『あの姿を重ねていた』。

 重なる人間なんていないはずなのに、ましてやウマ娘という人間ですら無い生物にそんなものを感じるとは。

 

「なんだ、お前もあの走りに魅了されたか。んじゃライバルだな……っておーい!……行動に移すまでが早すぎるだろ、やっぱり大物になるなあアイツ」

 

 僕の足は自然とアーモンドアイに向かっていた。

 

 既に何人ものトレーナーから勧誘を受けているだろうそのウマ娘は、見た感じどのトレーナーにするかまだ決めかねている……そんな感じがしていた。

 

「君ならクラシックで三冠取れるよ!」

 

「天皇賞だって取れるぞ!」

 

「いやいや海外GIも夢じゃない!」

 

 だから僕は一言だけ、彼女が欲してるであろう言葉を紡ぐ。

 それは他人からしたらあまりにも無謀だと思うような発言にも取れる――

 

「アイ。……シンボリルドルフを超える『完璧で究極』を目指さないかい?」

 

 ザワりと周りが息を飲むのが分かる。

 それがどういう意味なのか、この学園にいるのであればトレーナーウマ娘問わずに分かるはずだ。

 ただ僕には周りなんて何一つ関係無い、アーモンドアイ……アイだけが見えている、他の全ては必要無い。

 

「『完璧で究極』……何だか私の為にある言葉みたいですね」

 

「僕が、アイの為に言った言葉だからね」

 

「うーん……よし、決めました!まずは1ヶ月貴方のウマ娘になってみようと思います!そこでピンと来たら本契約って事でどうでしょうか?」

 

「良いよ、運命の出会いだったと証明するには充分過ぎるくらいさ。……今度こそ、もう二度と離さないよ、アイ

 

「?何か言いましたか?」

 

「なんでもないよ。これからよろしくね、アイ」

 

「こちらこそよろしくお願いします、トレーナー」

 

 今はまだ、同じ過ちは繰り返さない。

 

 僕に知れという、チャンスかも知れないから。

 

 

 

 (アイ)を――

 

 

 

 

 

 

 

 

「トレーナー?とーれーなー?寝てるのー?」

 

 少しずつ意識が覚醒する、昼の心地良い陽の光を眩しく思いながら目を開けるとそこには僕の愛バが顔をいつものように覗き込んでニッコリと笑っていた。

 

「……ん、アイか。おはよう、ここは気持ちが良いからね」

 

「えートレーナーばっかりずるいー!私も休んじゃお」

 

「ふふ」

 

「どうしたんですか?」

 

「いや、丁度アイをスカウトした日の夢を見ていてね。……キミもかなり砕けたよねと思い返していたんだよ」

 

「んー、なんというかトレーナーの前だと敬語が抜けがちになっちゃうんですよね。なんでか分からないんですけど、そっちの方がなんかしっくり来るというか、心地良いというか」

 

「そう?……おいで」

 

 もう4年も前の話だ。

 彼女をスカウトしたあの日から、4年。

 結論から言えば1ヶ月どころか3日後には意気投合し正式契約、それからというもののクラシックのティアラ路線で三冠、天皇賞秋、海外GI戴冠とスカウトの時に周りのトレーナーが言っていた事は軽々と全て達成してみせた。

 

 ……何よりも。

 

「本当にシンボリルドルフを超えられた。トレーナーのお陰だよ、ありがとう」

 

「『キミは完璧で究極』なんだ、僕はそこまでの道を示したに過ぎない」

 

「でも、他のトレーナーじゃ示せなかった。貴方だったから、示せた」

 

「そう言ってくれるなら、そういう事にしておくよ。……今日もこの後」

 

「うん……」

 

 僕は、(アイ)をようやく知れた。

 前世、そこで僕は誰かに愛された事が無かった、そして誰かを愛する事も無かった、価値ある命を奪う事でしか自分の命を尊ぶ事が出来なかった。

 この世界でも親という生物はロクでもなく、顔すら知らないまま僕は捨てられ孤児として生きてきた。

 

 そんな世界だった。

 

 それをようやく、彼女は溶かしてくれた。

 

「僕はキミ以外担当しない。アイがいればそれで良い」

 

「ほんと、勿体ないよね。でも……私だけの貴方でいてくれるって言うのは……好きかな」

 

「どういたしまして」

 

 僕はもう、誰かを殺さずとも生きていって良いんだ。

 自分の命の価値は、彼女が教えてくれたから。

 僕がアイしか見ないように、アイも僕しか見ずにいてくれるから。

 あの世界では手に入れられなかったものを、全てくれたから。

 

 

 

「ねえ、アイ」

 

 

 

 ああ、やっと言えた。これは絶対嘘じゃない

 

 

 

「愛してる」

 

「私も愛してます、トレーナー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやーしっかしあのピカピカの新人が九冠ウマ娘爆誕させてシンボリルドルフ超えを有言実行するとはなあ」

 

「先輩、確かあの人と面識あるんですよね」

 

「ああ、アーモンドアイの選抜レースの日にな。アーモンドアイを知らずに観に来たってんだから驚いたったりゃありゃしねえ、大物になると予感したね。実際、今やウマ娘レース界隈の人間であの名前を知らない奴はいねえさ。ま、あの日以降殆ど話した覚えは無いがな」

 

「凄いっすね先輩、予言的中じゃないですか」

 

「予想したところで意味ねえよ、俺だってアーモンドアイ狙ってたんだぞ?ったく……ほんと、憎たらしいくらいの天才だよ」

 

 

 

 

 

「神木輝……」


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