高校二年の夏休みの祭りにて。
なろうにも投稿してます。

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第1話

 高校二年の夏休み、ボクと彼は夏祭りに来ていた。

 

「浴衣なんて、ちょっとはしゃぎ過ぎたかな」

 

 まわりの人達はみんな私服で、浴衣を着ている自分が少し恥ずかしい。

 

「祭りなんだ、はしゃいでなんぼだろ」

 

 フッと笑う彼も浴衣を着ていた。

 

「でも元男のボクがこんな綺麗な浴衣着て変じゃない?」

「今のお前は女なんだから大丈夫だって」

 

 女の子になって三年。私服や制服は慣れたが、初めての浴衣にドキドキしてしまう。

 

「ほら早く行こうぜ」

 

 そう言って彼はボクの手をそっと引いてくれる。

 彼の優しさに胸がキュッってなる。

 ああ、やっぱり彼が好きだ。

 ボクは彼に恋してる。

 でもだめだ。

 この恋は隠さなきゃ。

 

 

「あ、花火」

 

 大きい音が響き、鮮やかな光が夜空を照らす。

 出店を回っているうちに時間が結構経っていたみたいだ。

 周りの人と同じように夜空の花に見惚れる。

 

「場所を移さないか? 良いところがあるんだ」

「良いところ?」

 

 彼につれられて少し歩く。すると人気がないところにやってきた。

 

「わぁ……」

「いいところだろ?」

「うん」

 

 花火がまるで目の前にあるかのような感覚。

 花火の音とボクたちの声だけが聞こえる。

 まるで世界はここだけしか存在しないかのよう。そんな錯覚。

 

「キレイだね」

「ああ」

 

 視界を埋めるのは花火。だけど隣に彼を感じる。

 ああ、幸せってこういうことを言うんだろう。

 このままずっと――。

 

「ずっとこうしていたいな」

 

 彼の言葉に思わず彼を見る。彼もこちらを見ていた。

 彼も僕と同じ気持ちだった。

 それがたまらなく嬉しい。

 心臓の音がうるさい。

 あたまがフワフワする。

 好きと言う気持ちが溢れ出す。

 

「好き」

 

 彼はひどく驚いた顔をしていた。

 言ってしまった。隠し続けるつもりだったのに。でもどうしようもなかった。言わずにはいられなかった。

 

「ごめんね。親友失格だね、ボク。

 気持ち悪いよね。元男だもんね。困るよね。

 ずっと言わないつもりだったんだ。

 隠し通すつもりだったんだ。

 でも我慢できなかったんだ。

 どうしても好きなんだ。

 ごめんね」

 

 頬が濡れる。

 ボクは笑えているだろうか。

 

 花火は終わり、無音だけがボクたちを包む。

 彼からの返事はない。

 耐えきれなくなったボクは彼の横を抜け去ろうとした。

 けど急に手を引かれ、気づいたらボクは彼に抱きしめられていた。

 

「泣かないでくれ。お前に泣かれるとどうしていいかわからなくなる。

 ごめんな。俺から言うべきだったのに」

「え……」

「俺もお前が好きだ」

 

 それは彼の口からずっと聞きたかった言葉。

 

「うそ……」

「嘘じゃない。俺も言わないつもりだった。お前を傷つけるかもって。

 でも違ったんだ。俺たち同じ気持ちだったんだ」

 

 心が現実に追いついてくる。

 

「ボクなんかでいいの……?」

「お前じゃなきゃだめだ」

「元男なのにいいの……?」

「構わない」

「君を好きでいていいの……?」

「いいんだ」

 

 涙が溢れてくる。縋るように彼にしがみつく。

 

「好きなの。諦めようとしたけど無理だった。君と一緒になりたかった。

 でも怖かった。気持ち悪いって言われるんじゃないかって。嫌われるんじゃないかって」

 

「ごめんな、気づけなくて」

「ボクを捨てないで……」

「捨てるなんてしない。ずっと一緒だ」

 

 ボクはしばらく赤子のように泣きじゃくった。彼の胸の中で。


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