メカゴジラ×ガイガン フールマン・インスペース   作:アイアイホイホイおさるさん

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#9

 ガリアは、イツムが出ていってから直ぐに、自らも行動を開始していた。

 かつて故郷がキングギドラにより滅ぼされていた彼女は、機龍一体でその眷属に立ち向かえるか心配だった事。

 何より、あの知的生命体に対しては性悪の極みのような狡猾さを発揮するキングギドラの遺伝子が、ドラット以外に何か仕掛けてないハズがないと考えていたからだ。

 

「イツムちゅわん………無事でいて………!」

 

 地下施設を進む自身の頭上で鳴る地響きが、その嫌な予感が的中してしまった事をガリアに勘付かせる。

 残された時間は少ないと、ガリアは地下通路を急ぐ。ゴキブリに近い生態構造を持つ彼女達M宇宙ハンター星雲人にとって、道が封鎖されていようと関係ない。

 通気孔や僅かな隙間を忍者のように通り抜け、ついに隠された地下格納庫へとたどり着く。

 

「あった………!」

 

 するり、すとんと通気口から降り立ったガリアは、とっくに整備の完了していた「相棒」を見つける。

 

 ………本来それは彼女達M宇宙ハンター星雲人の主戦力だったサイボーグ怪獣、ある金属生命体をベースに機械を埋め込み、操れるようにしたいわば「怪獣兵器」とでも言うべき存在である。

 ただ、この姿に改修するにはX星で採掘される特殊な金属が必要不可欠であり、ガリアはその為にX星にこれを預けていた。

 

「よかった、機体は無事だわ………!」

 

 なんの因果か機龍と同じくうなじにあるハッチから、ガリアはそれに乗り込んでいく。

 しかしその先にあったコックピットは、いかにも「ロボットの操縦席です!」なデザイン・機能の機龍のそれとは大きく異なっていた。

 それが元は金属生命体という事もあってかロボットのコックピットと言うのはひどく有機的であり、かのHRギーガーや雨宮慶太が書くような、血管のような配線と臓器のような壁で構成されていた。

 

「ニューロン接続システム起動確認、各部組織解凍開始………いける」

 

 操縦システムも大きく違う。

 まずはガリアの両手足を食虫植物を思わせるユニットに格納し、翅を天井から伸びてきた同型のユニットに収納する。

 

 まるで拘束台に貼り付けにされたような格好であるが、それがこの怪獣の操縦方法。

 わかりやすくロボットアニメに例えると、機龍がガンダム等のモビルスーツなら、この怪獣はエヴァンゲリオン。神経接続によってパイロットと人機一体となり、考えるだけで自分の身体のように操る事ができるのだ。

 ………その操縦法については少々暗い話があるのだが、今は伏せておく。

 

「………さて、コホン」

 

 そして、その怪獣を目覚めさせるには起動コードがいる。

 ガリアは神経を集中し、モーニングコールを大声で叫んだ!

 

"ガイガン"起動ぉぉーーーっ!!

 

 ゴーグルの赤い目が輝き、死神の鎌(グリムリーパー)は深き眠りより目を覚ました。

 破壊ではなく、愛する我が子(こいびと)を守るため。

 

 

 ***

 

 

 キングギドラの知的生命体に対する攻撃性は、あくまで邪念に満ちた知的生命体や、宇宙の調和を乱す文明に対して向けられているだけだという。

 しかしドラット、ひいてはこのアレルギドラにはそこまでの正義の心のようなものはない。そもそも知性も哲学もない。分裂元(おや)の持つ文明に対する攻撃性「のみ」が本能に焼け付き、それに従っているだけだ。

 

 ………例えば、16歳の女子高生とアラフォー以降の男性が結婚したとしよう。

 法的に何も問題が無くとも、いい歳こいた大人が下手をすれば娘ほどの年齢の相手を異性として見ている事に対して、嫌悪感を感じる事があるかも知れないが、主観的な感覚としてはアレに近い。

 因果や精神性に関係なく、彼等にとっては科学文明とそれに頼る知的生命体は………少々俗な言い方になるが「生理的に無理」なのだ。

 

 ゲッゲッゲッゲ!

 

 そしてそんな生理的に無理な存在(メカゴジラ)に対して、アレルギドラは一切の容赦がない。

 本来の能力を使えば機龍を押しつぶしてスクラップにするなど造作もないのだが、あえてジワジワと少しずつ押しつぶし、相手に恐怖と絶望と惨めさを感じさせようと考えていた。

 

「く、そぉ………!」

 

 ミシミシを通り越してバキバキと音を立てる機龍のコックピット内で、イツムはアレルギドラの思惑通りに悔しさに満ちた表情を浮かべていた。

 このまま、自分は死ぬのだろうと。地球と交信もできないままここで死に、ファクトリーシティの人工の大地では土にも還れず朽ちていくのだろうと。

 

 ゲーッゲッゲッゲ!

 

 そんなイツムの悔しさを感じ取ってか、アレルギドラは勝ち誇ったように嗤う。ざまあみろ、じわじわとなぶり殺しにしてやると。

 ………所で、アレルギドラは宇宙の怪獣である。

 だから知らなかったのだ、地球には「相手が勝ち誇った時、すでにそいつは敗北している」という格言がある事を。

 

 ゲッゲッ………ギュガ?

 

 そこでアレルギドラは自身の真下から何かが迫っている事に気付いたが、遅かった。

 地底の格納庫から掘り進み、土煙を撒き散らしながら地表をぶち破って勢いよくその姿を現したサイボーグ怪獣は、アレルギドラをそのまま吹っ飛ばしてしまったからだ。

 

 ギュアゲゲェ?!

「うおっ!?」

 

 アレルギドラの拘束引力光線も本体が倒れた事により解除され、解放された機龍はズシィン!!と轟音を立てて着地する。

 内臓機能はなんとか生きており、身体を起こす機龍。その眼前には新しく現れたサイボーグ怪獣が、まるで機龍を守るかのように立っていた。

 

 キィアッ!!ギィィーーガァッ!!

 

 真っ赤なサングラスのような目、額の赤いランプ、牙の並んだ嘴の口からは金属音とエレキギターの旋律を組み合わせたような咆哮を響かせる。

 両腕には大鎌「ブラッディトリガー」、腹には回転刃「ブラデッドカッター」、その他にも様々な武装をその身に忍ばせる。

 メタリックブルーのレザーで覆われたようなボディに血のように赤い翼、各部から生えたトゲ等、一目で善と程遠い存在である事がわかる。

 例えるなら全身をライダース、ジーンズ、ニーハイブーツで固めた女マフィアを身長65mの怪獣にしたような、そんな感じだ。

 

「………ガリア?」

 

 しかしイツムは直感で気付いた。この怪獣は味方だと。

 何度も身体を重ね、一つに溶け合うように愛し合ったからわかるのだ。そこにいるのは大好きなママ(ガリア)だと。

 

『言ったでしょう?イツムちゅわん。側に居てあげるって』

 

 人機一体となったガリアが、そのサイボーグ怪獣を仲介した電子エフェクトのかかった声で答えた。

 

 ………その怪獣の名前は「ガイガン」と言う。

 M宇宙ハンター星雲人の操るサイボーグ怪獣であり、ガリアが乗っているのはX星の技術による改修を受けた通常「ガイガンtype-F」と呼ばれる機種だ。

 

 ギュアゴオォォオオオン!!

 

 イチャついてんじゃねえぞ!!と叫ぶかのように、再起したアレルギドラが地団駄を踏むがごとく、尻尾や腕で周囲のものを破壊しながら咆哮する。

 戦いはまだ終わっていない。

 

『行くわよイツムちゅわん、二人であのデカブツをやっつけるの』

「うん………二人であのデカブツをやっつけよう!」

 

 対する機龍とガイガンは、互いのスパイラルクローとブラッディトリガーをバシィン!と叩き合わせる。両者なりの握手の形だ。

 

 ギィィーーガァッ!!

 ピシャアアーーッ!!

 

 そしてアレルギドラに対して攻勢をかけようと、二体の機械怪獣は走り出す。

 助けに来る方は逆になってしまったが、とある世界の子供達が夢見た「メカゴジラとガイガンが肩を並べて巨悪に立ち向かう」光景が現実になった瞬間だった。

 

 ギュアゴオオッ!!

 

 方やサイボーグ怪獣、此方ロボット怪獣の二体の「文明の化身」が向かってくる様を前に怒りが頂点に達したアレルギドラは、背中の結晶体から引力光線を放つ。

 

『甘い!』

 

 ガイガンが機龍の前に立ち、ブラッディトリガーを構えて引力光線を受け止める。

 

「そこっ!」

 

 そして機龍が背後から誘導弾を撃つ。元々ビルの影から相手の死角に撃ち込む為の武装だった為に、それはアレルギドラに向かい正確に飛び、着弾。

 

 ギュアゴオオッ!!

 

 無論倒すには至らなかったが、必要なのは隙。

 アレルギドラの顔面に誘導弾が炸裂し、引力光線の放射が少しの間ストップする。この隙が必要だった。

 

「ガリア!!」

『オッケィ!!』

 

 そこにブラッディトリガーを構え突撃するガイガン。

 機龍は、そんなガイガンのブラッディトリガー向けて、口からツインメーサーを放つ。勿論だが、同士討ちではない。

 メーサーのエネルギーを吸収したブラッディトリガーは山吹色の光を放ち、アレルギドラの右腕の付け根を狙い、一撃。

 

 ず ば し ゃ あ !

 

 火花を散らし切断されたアレルギドラの右腕が、ガランと音を立てて地面に落ちる。

 ガイガンはその勢いのまま、地面をスライディングしてアレルギドラの背後に回った。

 

 キィアァッ!!

 ギュアゴオオッ!!

 

 右腕を失ったアレルギドラは、背後でわざとらしくポーズをキメるガイガンに対し、やりやがったなテメエ!!とでも言うかのように敵意と咆哮を向ける。

 ………アレルギドラが後ろを向いた。これが狙いだった。

 

「僕に背中を見せたなァ!?」

 ピシャアアーーッ!!

 

 直後、機龍のバックパックが分離。それ自体がまるでミサイルのように、無防備なアレルギドラの背中に向けて飛翔した。

 ………これは別の世界の機龍も使った戦術であり、メーサーのような光線では引力光線によりかき消されると考えたイツムの戦略的判断。

 それと同時に、これは機龍の使える実弾装備の中では最強の威力を持つ武器であった。

 

 ど が し ゃ あ !

 ギュアゴオオ!?ギュガアアア!!

 

 まるで花火を爆発させたかのような派手な火花を散らしながら、アレルギドラの結晶が砕け散った。

 ガラガラと音を立て、破壊された結晶体がアレルギドラの周囲に散らばる。

 かなりの激痛が走ったらしく、アレルギドラは半狂乱になって叫び散らしている。

 

「これでもう引力光線(あのビリビリ)は撃てないな!?」

 ピシャアアーーッ!!

 

 攻撃手段を失ったアレルギドラに対し、それまでのお返しと言わんばかりに機龍は、そしてイツムは一気に畳み掛ける。

 狼狽えるアレルギドラの尻尾に掴みかかり、残った背中のバーニア噴射の勢いを使って、なんとそのまま空中に持ち上げる。

 

 ピシャアアーーッ!!

 ギュアゴオオ!?

 

 一回、二回、三回転で勢いをつけ、まるでハンマー投げのようにアレルギドラを投げ飛ばす。

 いわゆるジャイアントスイング。何の因果か、別の世界の機龍も使った技である。

 

 ばぎゃっ!ぎゃぎゃぎゃ!

 

 街と地面で身体を削られながら、投げ飛ばされたアレルギドラは地面を転がり、やがて制止する。

 武器を壊され、連続攻撃を食らい、完全にグロッキー状態のアレルギドラ。

 

「ガリア!」

『イツムちゅわん!』

 

 トドメを刺すなら今だと、機龍とガイガン………ガリアとイツムは己の乗機の持つ持つ「必殺技」とも言うべき武器の使用に踏み切った。

 

 キィィイ…………!!

 

 ガイガンの額のランプ、血のように赤い第三の目に血のように赤いエネルギーが収縮されてゆく。

 

 ピシャアア…………!!

 

 機龍の胸のハッチな展開。アブソリュートゼロに代わり取り付けられた三門のメーサー・パラボラにエネルギーが充填され、共振によりどんどん威力が高まってゆく。

 

 ギュアゴ………ゴ…………?!

 

 ようやくアレルギドラが立ち上がった時には、既に二大怪獣は処刑の準備を終えていた。

 イツムが危惧した通り引力光線を応用すればビームは弾けただろうし、鈍重な身体を動かして回避もできた。しかし、それを放射する結晶体を破壊されてしまえば意味はない。

 

収縮光線ッ!ギガリュームブレイザーーッ!!

 

 ガイガンの額から、殺意の具現化のように放たれる深紅の破壊光線。

 

トライメーサーバーストォォ!!

 

 機龍の胸から、知的生命体の怒りを代弁するように放たれる山吹色の光の渦。

 

 放たれた光、文明の生み出した力の象徴はこれまでキングギドラに踏みにじられた同胞達の敵討ちだと言わんばかりに、アレルギドラの体組織を破壊し、焼き尽くす。

 その内に眠る、黄金の遺伝子ごと。

 

 ギュアゴオォォオオオン!!

 

 断末魔の叫びと共に体内で行き場を失ったエネルギーは、やがて大爆発となり、アレルギドラの身体を粉々に吹き飛ばす。

 カイザーギドラを捕食した事で得たエネルギーもあったのだろう、まるで化学薬品に引火したかのような派手な爆発がファクトリーシティを彩った。

 

『やったわね、イツムちゅわん』

「うん、でも街がボロボロだ………」

 

 アレルギドラを撃滅した二人であるが、戦いの余波でファクトリーシティはその大部分が破壊されてしまった。

 目に見える限りは多くの建物が破壊されている。ここから地球に通信を送るのも、少々難しくなったと思える程に。

 

『仕方ないわぁ、シティのメインコンピューターに向かいましょう。そこは奥にあるし、無事なハズよぉ』

「そっか、その手があったね」

 

 しかし解決案はあると知り、イツムは安心する。

 そしてガイガンの後についていく形でシティの奥を目指そうとしたその時………ピクリ、と、アレルギドラの片腕だった肉片が動いた。

 

 そもキングギドラは、細胞一つでも成立する大怪獣。

 劣化コピーでしかないアレルギドラは流石にこの状態から復活はしないだろう。

 が、死にかかった細胞が叫ぶのだ。

 

 文明を、潰せ、壊せ、破壊せよ、と。

 

 ど ぐ ち ゅ あ

「え?」

 

 突如背後から強い衝撃が加わり、自身の腹の下から金色のトゲが突き破って現れた姿を、イツムは見た。

 そして意識が途切れる僅か一瞬、彼の目に見えたのは、ガイガンのバイザーに反射して見えた、アレルギドラの剣のような腕に胸を貫かれた機龍の姿だった。

 

 そして。

 

 そして………。




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