メカゴジラ×ガイガン フールマン・インスペース   作:アイアイホイホイおさるさん

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#10(終)

 突然だが、M宇宙ハンター星雲人は実は二種類いる。

 

 ガリアを筆頭にしたゴキブリのような虫から進化したエイリアン種族と、彼女達が現れる前にM宇宙を支配したヒューマノイド種族の古代人だ。

 

 古代人達は現在の地球と比べてもかなり進んだ文明を持っていた。

 原生する金属生命体を改造してサイボーグ怪獣兵器・ガイガンにしようと考えたのも彼等だった。

 そんな中、彼女達はそのガイガンの制御ユニット、つまる所の生体ユニットとして生まれた。ゴキブリを素体としていたのは、かの星におけるゴキブリが地球でのマウスの役割をしていたから。

 

 この品種改良されたゴキブリ達は、古代人の文明が栄華を極める中でさらなる品種改良が進み、地球の家畜やペットのように様々な場所へと入り込んだ。

 食肉、愛玩、労働力。

 

 そしてこの時ガリアの直系の先祖となる"人種"も産まれた。

 正式名称「家政婦型ガイガノイド型・第2004型」。

 仕事で忙しい古代人に代わり子供の世話や家事を行う、言ってみれば家政婦やメイドのような存在であった。

 ………もっとも、純粋な家事育児用と呼ぶにはやけに扇情的な体型と人格を見るに、どういう用途でどういう客層に使われたかは押して測るべしではあるが。

 

 やがて乱開発と環境汚染のためか、それとも種として行き詰まったためか、古代人は繁殖能力を失い自滅していった。

 その後も残された培養施設からゴキブリ達は産まれ続け、そのまま古代人の文明を引き継いだ。

 それが、今我々がM宇宙ハンター星雲人と呼んでいる、ゴキブリのミュータント達の始まりである。

 

 ………もっともその天下は、キングギドラに目をつけられた事で終わってしまったのだが。

 

 

 ***

 

 

 ………イツムと自分を乗せたハヌーシュ号が小惑星帯に入り、地球との通信が遮断されてから、入れ替わるようにとある宇宙人が地球にやってきた。

 彼らは自らを「金星人」と名乗った。超科学を持つ彼等は地球の、それも日本に言葉巧みに取り入り、自らの持つ技術と超兵器を貸し出した。

 

 そこから日本は、まるで人が変わったかのように覇道を突き進み、アメリカを筆頭に様々な国を侵略した。

 そして世界経済が崩壊し、日本は地球の支配者となった。

 ………あの時ハヌーシュ号の通信に返答が無かったのは、NASA諸共アメリカが崩壊したからだった。

 

 もっとも金星人としては、これは自らの帝国を復活させるために日本という国を利用しただったのだが………

 

 だが、そんな日本と金星の暴虐を許さない者達がいた。

 正義のヒーロー?いや違う。

 ゴジラ、モスラ、ラドン。

 イツムを始めとする多くの人々の大切なものを奪っていった古代の破壊神・巨神(taitan)達だ。

 

 ………なら過去に、アメリカや中国やイギリスのような世界支配を目論んだ国に反応しなかったのは何故だろう?という疑問は浮かんだが、ガリアには答えは出なかった。

 

 ともかく、ゴジラ達は日本に対して攻撃を開始した。

 それまで無敵を誇っていた日本も、何故かゴジラ達を前にすると弱体化(デバフ)がかかったかのように何も出来なくなり、的当てゲームのように次々と殺されていった。

 そして、ゴジラがついに日本本土に上陸し、罪もない銃後の市民を皆殺しにしながら東京を破壊する中、ついにあの存在が現れた。

 

 キングギドラ。

 文明種の天敵たる、黄金の竜神が。

 

 ゴジラとキングギドラは一騎打ちでぶつかり合い、共倒れを願った日本の戦力を何故か意識しているかのように撃滅。

 勝敗はゴジラの敗北………一時的にノックアウトで終わった。

 

 しかし、キングギドラの目的はもう一つあった。

 金星人。かつて自身が滅ぼした文明の残党狩りである。

 

 キングギドラは金星人の海底基地に到達し、彼等の最終兵器と対面した。

 それが、機龍とは全く関係ない陣営が作ったにも関わらず何故か機龍に酷似した外見をしたロボット怪獣「メカゴジラ」である。

 メカゴジラとキングギドラの戦いは、一度はキングギドラを爆発に飲み込んで終わるも、何故か再び現れたキングギドラにより形勢は逆転。

 何故か加勢に現れたモスラとラドンの協力もあり、メカゴジラは撃破され、金星人の基地も壊滅した。

 こうして、邪念に満ちた悪の日本国や欲にまみれた科学文明は、正義の怪獣の手により天誅を下された。

 

 ゴジラやキングギドラは、再び人類が邪念に満ちた邪悪な文明を築いた時に裁きを下すべく、長い眠りについた。

 そして生き残った善良で正しい人々は、モスラの加護の元でゼロから再スタートをする事になったのでした。

 

 めでたしめでたし。

 

 

 ***

 

 

 ファクトリーシティのメインコンピューター。

 電子機器の進化の果てにたどり着いた形であろう巨大な結晶体の前にガリアはいた。

 おそらく、X星は将来的な地球侵略を見越して動いていたのだろう。誰も知らない、認知できない技術で飛ばされた探査衛星(スカウター)とそれが送り続けた記録の数々から、ガリアは地球文明の巻末を知る事ができた。

 

「なんて酷いストーリーなのかしらぁ」

 

 ガリアには、人類の辿った自滅という言葉すら生易しい程の文明の終焉も、知的生命体に対する許容の心があまりにもない怪獣達も、ありとあらゆる要素が人類にとってマイナスに働くようにできたかのように思えてならなかった。

 まるで何者かが人為的にそうなるように因果律を操作したのでは?とさえ思えるような。

 

「まあ、地球には二度と文明が芽吹く事はないでしょうねえ………」

 

 哀れみとも嘲笑とも言えるため息を漏らしながら、ガリアは肥大化した自らの「腹部」を撫でる。

 

 それまで尻尾のように伸びていただけの産卵管と子宮が一体化したその部位は、それまで通りの自立が困難になるほど大きくなっていた。

 それに合わせてガリアは自らの周囲にまるで蜘蛛の巣かカイコの繭を思わせる「糸のゆりかご」とも言える部屋を作った。メインコンピューターの周りは、さながら女王エイリアンの王室のよう。

 

「ねえ?イツムちゅわん?」

 

 これだけの大掛かり「巣作り」をしたのも、これから「生まれ直す」我が子のため。

 成人男性一人を取り込んだ子宮を優しく撫でるガリアの姿は、まるで聖母のようにも見えた。

 

 

 ………子孫を残せなくなったM宇宙ハンター星雲の古代人達は、どうにか種として返り咲く為にあらゆる手段を講じた。

 そんな中で、ガリア達2004型ガイガノイドに備え付けられた性行為機能に目をつけた。ようは彼女達に自分の子供を産んでもらおうと考えた。

 

 しかし、この計画は結論から言うと失敗した。

 

 確かに彼女達は妊娠はできたものの、古代人との生殖を行う為には、遺伝子的に彼女達に近づく必要があった。

 そも、ヒューマノイド種族と昆虫ミュータントの交配を可能とするには、それぐらいしなければならない。

 

 ならばとガリア達の子宮に一度胎内回帰し、身体を作り直す事でガリア達と交配ができるよう「転生」するシステムを開発した。

 が、その時になると「そこまでして種を存続する必要はない」「無様に足掻くぐらいなら美しく滅ぼう」という一種の悟りを開いたような思想が多数派になっていた。

 

 

 結局、僅かなハーフを残して古代人は滅びてしまったわけだが、その胎内回帰と転生のシステムはまだガリアの中に残っていた。

 そして今、それを使う時が来た。

 

 僅かな隙を突かれ、アレルギドラの最後の抵抗を受けてイツムは重傷を負った。

 命の火が失われていく中、ガリアは最後の望みをかけて死にゆくイツムを自らの子宮の中に飲み込んだ。

 そして………望みは叶った。

 イツムは唯一無事だった脳を中心に、ヒューマノイドと昆虫ミュータントのハーフとして肉体を再構成され、ガリアの子宮に受胎したのだ。

 

「ごめんなさいね、イツムちゅわん………」

 

 しかし、それはイツムの意向を無視したやり方である事もまた事実。

 イツムが前述の古代人のように「人間じゃなくなってまで生きたくない」と思っているかも知れない。

 この行動だって、彼女のエゴイズムによるものであり、生命倫理的にも正しいとは言えない。

 

「ママね、どうしてもイツムちゅわんを失いたくなかったの………もう一度、あなたと会いたかったの。もっと一緒に居たかった」

 

 そんな事はガリアにだって解っていた。しかし止められなかった。

 倫理や道徳よりも先に、大好きで大好きでたまらないイツムを喪う事に対する強烈な「否」の感情が、ガリアにそんな「邪念(あい)に満ちた」行動を取らせた。

 

 ………もぞりと動くお腹を撫でて、ガリアはなんとなく考えた。

 正義や秩序、調和と言った善悪では説明を超越した、たとえ欲望に満ちた愚行だとしても、その選択肢を取らせるこの感情こそが「愛」なのだろうと。

 

「………そろそろねぇ」

 

 腹部が、まるで生きているかのようにグニャグニャと動く。

 自らの胎内で動き回る生命の胎動を感じたガリアは、自身の周りに張った糸の王座を力強くつかむ。

 ついにその時が来た、と。

 

「くう、うっ………あっ、ああっ!あああっ!!」

 

 自分の体内を食い破られるような痛みが、ガリアを襲う。

 腹部がより一層激しく波打ち、ガリアは体勢を崩さないように四肢で力強く糸の柱を掴み、自らを襲う痛みに立ち向かう。

 

「ああっ、あっ、うぐっ、ぐ、あ………ああっ、ああああっ!!はあっ!あっ!ああぁんっ!!」

 

 腹部の中で、巨大な塊がどんどん下に下がっている事がわかる。

 もう少し、もう少しだ、もうすぐ「会える」。

 それだけを希望に、ガリアは糸の柱を握り、力を込め、歯を食いしばり、全身全霊の力を込める。

 そして。

 

「あっ、ああっ!!あああんっ!!」

 

 ぬるぅ、どぢゅう、じゅぽんっ!!

 

 ずるり、とガリアの胎内から巨大な肉塊がひり出された。

 いや、肉塊ではなく「肉袋」と言った方が正確か。

 それはよく見れば薄い膜であり、やがてぶちぶちとそれを破って、人間(ヒューマノイド)の腕が、足が飛び出す。

 ………生まれた直後の犬や猫は膜に包まれているが、丁度ああいう感じである。

 問題は、そこから生まれるのが犬猫のような畜生ではないという事。

 

「………かはっ!けほっ!けほっ!」

 

 膜を破り現れたのは、全裸の地球人の子供だった。

 いや、ただの地球人ではない。それは何度も彼自身が夢の中で見ていた幼き日の、10歳になったばかりの彼自身。

 ただ違うのが、異様に白い肌と、ガリアと同じ額から伸びた日本の触手と、背中に刻まれたカイコの幼虫のような模様………人間でなくなった証。

 こうして、ニノミヤ・イツムは"転生"を果たした。人間である事を剥奪され、異星人(むし)の胎内から産み落とされるという、世にもおぞましい手段で。

 

「あ、あ、あああ………!」

 

 無事、外界の空気を吸って産まれる事ができたイツムを前に、ガリアは胸の奥から込み上げる、情熱的な歪んだ愛の炎に突き動かされるまま、長い腕を伸ばしてイツムを胸の中に抱き寄せた。

 

「………ガリア?」

「そうよイツムちゅわん………私がママよ………!」

「ガリア………あ、ああ………!」

 

 呆けていたイツムも、ガリアの体温と甘い蜜の香りを感じた途端、まるでダイジェスト映像か走馬灯のように記憶が蘇っていった。

 そして。

 

「ママァああ!!」

「イツムちゅわん………!」

 

 イツムもまた、自らの中からこみ上げてきた歓喜に突き動かされ、小さな身体で必死にガリアを抱き返した。

 

 

 ………情欲、異常性癖、母子相姦。

 二人の間に正しい愛の形など一欠片もなかった。

 しかし、ここは宇宙。世間ではない。

 地球の文明が滅び、邪念を狩るキングギドラも深い眠りについた今、二人を咎める者など誰もいない。

 

「…………おかえりなさい、イツムちゅわん……………」

 

 宇宙では、二人に正論(こえ)は届かない。

 歪んだ純愛で結ばれた母息子(つがい)を、滅びた文明の機械と温かな闇が、静かに祝福していた。

 

 

 

 ………

 

 

 

 ………

 

 

 

 ………

 

 

 

 太陽系で消息を絶ったキングギドラの調査を命じられた時、私はさっさと記録を取って帰ろうと考えていた。

 相手は無数の文明を滅ぼした挙句天体制圧用最終兵器(ゼットン)三機の喪失という大損害を、光の星に与えたという規格外の存在だからだ。

 そして、奴が地球という惑星で深い眠りについた事と、地球人の文明が復活する事は二度とないという報告を本部に送り、さっさとこの太陽系から立ち去ろうとしていた時だ。

 

 私は、死の星であるハズのX星であるものを見つけた。

 キングギドラによって滅ぼされたその星には、驚くべきことに新しい知的生命体が生まれていた。

 

 彼らは自らを「フツア」と名乗った。

 彼らは原始的な文明を持ち、地球の日本という国で使われていた言語と文字を使っていた。

 生態系のスパンを考えるとありえない話であるが、何より驚くべきは彼らがヒューマノイド種族と昆虫型エイリアン種族の両方の特徴を持っていた事だ。

 これを読んでいる皆様も知ってのとおり、普通ヒューマノイド種族とエイリアン種族の間に子供は産まれず、ハーフなどできるハズもないのにだ。

 

 彼らは、私に彼らのルーツを教えてくれた。

 彼らの間で神話として伝わっている話によると、地上を支配していた邪悪な龍を、鋼鉄の獣を操って倒し、世界に調和を齎したという「空から来た二人」がルーツだという。

 彼らの見せてくれた壁画には、その二人が描かれていた。

 

 ヒューマノイド種族の男の名を、イツムと言う。

 昆虫型エイリアン種族の女の名を、ガリアと言う。

 

 

 

 著・光の星宇宙警備隊員ゾーフィ

「X星のアダムとイヴ」より抜粋。

 

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