メカゴジラ×ガイガン フールマン・インスペース   作:アイアイホイホイおさるさん

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Q.おもっくそ濡れ場あるけど大丈夫か?
A.巨神〜の108と108もタケシが部下ガン掘りするシーンあったろ、リスペクトだよリスペクト


#5

「これに関してお題は必要ない。これはワタシの自己満足による献身だからだ」

 

 ザラブ星人という種族が、そのはぐれ者であったとしてもそんな発言をするとはガリアから見ても驚きである。

 が、目の前の彼の人となりや過去を知っている身からすれば、当然とも言えた。

 

 まずザラブが機龍に対して行ったのは、破壊された部分の改修と武装の強化。そして作業用とする為にデチューンされた性能を本来の物へと戻す事。

 バイラスは確かに厄介な怪獣ではあるが、宇宙に生息する怪獣の基準で言えばそこまででもない。それに苦戦するようではこの先生き残れないとザラブは考えたのだ。

 

「右腕はスパイラルクロウに変更した。これは怪獣の表裏を容易く砕く」

「つまりドリルアームねぇ?」

「胸は戦闘継続時間を考慮して三連メーサー砲に変更させてもらった」

「背中のアレはなぁに?バックパック?」

「多目的戦闘ユニット。各種弾頭に加え、空間戦闘の為の大型スラスターが内蔵してある。腕はメーサーソードを兼ねたレールガンだ。地球で入手した物から組み上げさせてもらったよ」

「なんだか色が暗くなっているようだけどぉ」

「表面をスペースチタニウムコンポジットでコーティングしたからだ。新造部分もスペースチタニウムで仕上げた。これならそこらの宇宙怪獣相手でも引けは取らんだろう」

 

 外見上は我々の知る所の「3式機龍<改>重装型」のそれであるが、宇宙戦闘に特化させた事や装甲にスペースチタニウムを採用する等、性能的にもまったく別の機体として機龍は生まれ変わった。

 本機に「リック・メカゴジラ」という渾名をつけたイツムの同僚的に例えるなら「メカゴジラ・フルバーニアン」とでも言うべきか。

 地球の技術で作られた機龍を、改修後も問題なく起動できるように直すのは大変の一文字であったが、ザラブはそれをやり遂げた。

 

「でも本当にお代はいらないのぉ?」

「さっきも言っただろう。これはワタシの自己満足による献身だ。見返りはいらない」

 

 別の宇宙では"凶悪宇宙人"の異名がつく程には悪の限りを尽くしているザラブがそんな事を言い、ましてや善意で行動する。

 もしこの場に本来の彼等のいる宇宙の民、特に光の巨人が居たなら困惑しただろう

 

「………みつ子もそうしてくれたからな」

 

 最後にそう言い残し、ザラブは自身の船へと戻ってゆく。

 ザラブの胸には、既に遠い過去になってしまった地球での思い出が、今も宝石のように輝いていた。

 

「そんなに地球人が好きになったのか、ザラブ………なんちゃって」

 

 そんなザラブに対する茶化しとも尊敬とも言える一言を残したガリアであったが、これで終わりではない。

 彼女も彼女でやらなければならぬ事があった。

 

 

 ***

 

 

 壊された扉は相変わらずそのままだったが、あれからもイツムは無重力ブロックを寝室にし続けていた。

 ガリアには適当な別の部屋を使ってもらい、互いに許可がない限りは互いのプライベートに踏み込まないという了解を立てた。

 だが、今日は何時もと違った。いやある意味いつも通りではあったか。

 

「………かはっ!はあ、はあっ………!」

 

 ガリアと過ごすようになってから見なくなっていたが、イツムは久々に悪夢に叩き起こされる事になった。

 脳の冷静な部分はこれがバイラスによる精神攻撃の後遺症であると答えを出したが、それはイツムにとって解決案にも慰めにもならなかった。

 

「なん………だ、これ………?!」

 

 気分の悪さも、単なる目覚めの悪さとは違った。

 強烈な自己否定の念が心を押しつぶし、それは暴力欲求を自身に向け、自身に死を迫る。

 お前みたいなクズは死ね、死んでしまえ、と深層意識に潜む何かがイツムに向かって自死願望の圧(デストルドー)をかけていたのだ。

 

「あ………薬………!」

 

 今すぐ厨房に走り包丁で自分の首をかっ切ろうとした。

 だがイツムの頭の冷静な部分は寸是で引き留め、こういう時に使う物があるだろうと語りかける。

 ………精神安定剤。そうだ、あれがあった。と。

 オーバードーズを起こしてから触って無かったが、こういう時こそあれの出番ではないかと、いつも入れている寝袋のポケットの中に手を伸ばした。だが。

 

「………無い?」

 

 いつも入れている場所に、精神安定剤は無かった。

 落としたかと思い寝袋の中をまさぐるが、そこにも無い。

 

「そんな、そんな………あ、あれが無いと………!」

 

 自死感情に加えて焦燥がイツムに襲いかかった。例えるなら、真っ暗な海の上で灯台の光を見失ったような、もう帰れないのではないかというような感覚。

 記憶を探り、イツムは薬をどこにやったかを思い出そうとする。あの日、ガリアの姿を見て錯乱してオーバードーズを起こしてから、それから………。

 

「………ガリア?」

「探し物はこれかしらぁ?」

「あっ!!」

 

 寝袋の外から声が聞こえた。イツムが寝袋の外に飛び出すと、壊れた扉の向こうにガリアがいた。

 相変わらずの裸エプロンスタイルだったが、イツムはツッコむ気にはなれなかった。その虫の足のような節のついた指の中に精神安定剤の容器を見つけたからだ。

 

「何故ガリアがそれを持っている!?」

「あなたを助けた時に見つけたのよぉ、返すタイミングを逃して今まで黙ってたけど、ごめんなさいね?」

「泥棒じゃないか!!ふざけるな!!」

 

 珍しく声を荒げるイツムだが、それはガリアの窃盗行為を糾弾するというよりも自分本位な感情が乗った「八つ当たり」に近かった。

 

「それにぃ………あなた、私の目の前でこれで何をしていたか覚えてるかしら?」

「それは………!」

「ああいう事をされた以上は、私もこの薬をおいそれと渡すわけにはいかないわぁ」

 

 ガリアの言い分も正しかった。理由はどうあれイツムはこの薬を使ってオーバードーズを起こした。

 初対面でそんな事をされたガリアが薬の管理をイツムに任せ続けるか?それが分からないほどイツムは馬鹿ではない。

 

「………これはおばさんが預かっておくわ。必要になったらその都度声をかけて頂戴」

「じゃあ今すぐ寄越せ、悪夢でうなされて必要なんだ」

「渡せない。今のイツムちゅわんには特に」

 

 そう言ってガリアはエプロンのポケットに精神安定剤を仕舞う。もう自分の意思では使わせないという意思表示。

 こんな時までおちょくるな!と飛びかかってやりたくなったが、いざ対峙するガリアの体格差がイツムにブレーキをかける。余計に、自分が情けなくなった。

 

「………返してください」

「駄目よ」

「………お願いです、返してください」

 

 なけなしのプライドを投げ捨て、イツムが取った行動。

 それは頭を下げて頼み込むという、男の意地も尊厳もかなぐり捨てた、弱者のやり方だった。

 

「それが無いと………僕は大人をやれないんです。頭の中に、怖いものが次々と出てきて、立ってられない程に暴れまわるんです。そうなれば、僕は僕でいられないんです」

 

 自分でも何を言っているのか分からなかったが、イツムは精一杯自身を蝕む病について話をした。

 結論から言うと、イツムは精神を病んでいる。そりゃそうだ、母親を知らず、学校でいじめられ、仕事が忙しい父親には頼れず、その父親も眼前で死んだ。これでまともな大人に育つワケがない。

 

「立派な大人として頑張るにはそれが必要なんです。だから返してください。お願いします」

 

 にも関わらずイツムが25歳まで社会のレールから外れず社会生活を送り、宇宙飛行士という上澄み中の上澄みにまで上り詰めたのは結論から言うと薬のお陰。

 稀に襲ってくる、過去のトラウマを由来とする強いマイナスの感情や子供のままの自分にを薬で蓋をし、周囲の人間を真似る事で世間的に立派な人間という評価を得られ続けた。

 

「お願いします、それを返してください。私は大人にならなきゃだめなんです、それが無いとできません。返してください」

 

 そんなイツムからすれば、薬を取り上げられるという事は模範的社会人としての仮面を剥がされるという事。

 精神(しょうね)の歪んだ幼稚で無価値な自分を晒される事であり、社会的な死も同義であった。

 

「………大人になるというのは、そんなに大切な事なのかしら?」

「えっ………」

「それは、あなたの心を傷つけてでもやるべき事なのかしら?あなたはそれでいいの?イツムちゅわん」

 

 しかしガリアが返したのは、前提をひっくり返す疑問。

 いや、イツムですら見ないフリ所か、そもそも存在している事に気付かなかった問題。

 

「………僕は社会で生きていかなくちゃいけなくて、ちゃんとした大人にならなくちゃいけないんです」

「それは誰が決めたの?誰かがあなたにそう言ったの?」

「それは………」

 

 改めて見つめ直した時、イツムは自身が無我夢中になってしがみついていた物が、まるでがらんどうのハリボテに思えた。

 それは強度はあるので社会という戦場で生きるイツムを守る盾にはなるが、同時にイツムの体力(メンタル)を削り、元々負っていた負傷(トラウマ)の回復を遅らせ、悪化させていた。

 

「別にお薬に頼るなとは言わないわ。ただ、お薬を飲んでまでやる事が、自分が壊れそうになるまで頑張るって言うのは違うんじゃないかしら?」

「でも、社会じゃ………」

「ここは宇宙よ、地球(しゃかい)じゃない」

 

 その言葉は温かかったが、同時に立場も知らないくせに言ってくれると、イツム思った。

 総括するとガリアは「無理をするな」と言っているのだが、無理をやめたら自立できない事はイツム自身がよく知っている。

 誰かに頼れば出来ない事はないが、同時に世間ではそれが暴力になってしまう事も。

 

「じゃあ………じゃあ、どうしろってのさ!?あなたが僕のお母さんにでもなってくれるって言うの!?情けない僕を受け入れて、許してくれるとでも言いたいの!?」

 

 だからイツムは最後の力を振り絞って突きつけた。

 お前が言っているのはこういう事なんだぞ、と。無責任な事を言うな、と。

 

「いいわよ」

「………は?」

 

 だがガリアはそれに即答した。

 自分でも本心を吐き出すに至って相当気持ち悪い言葉を使ったつもりだったが、それすらガリアの意見を変えるに至らなかった。

 それ所かガリアはそれを受け入れると言う。

 

「言ったでしょう?おばさんが側に居てあげる、って………」

 

 しゅる、しゅる、しゅる。

 エプロンの紐がほどかれる音が聞こえた。

 久方ぶりに解放されたガリアの裸体は、相変わらずヒトガタにしたゴキブリの身体に、ミツツボアリの腹を乳房としてくっつけたような、正常な価値観からすればグロテスクな姿形をしていた。

 

「あ………ああ………っ」

 

 しかしイツムには、その蜜を溜め込んでずっしりと垂れた乳房も、人間にはない柔らかさとさを持った外骨格の身体も、今まで見てきたどんな女性よりも魅力的に見えた。

 無重力を舞うエプロン、そこから精神安定剤を取り戻せるチャンスだという事すら気づかぬ程に。

 

 

「おいで」

 

 

 手を広げ、ほほ笑み、ガリアが呼びかける。

 私がママになってあげる、と。

 

 気がつけば、イツムは泣いていた。知らぬ間に流していた涙は彼の社会性のダムを倒壊させ、見栄もプライドも理性も飲み込み、その湖底に隠れていた自分を。

 父を失ったあの日からずっと居た、幼子の自分をようやく直視した。

 

「あ、あ、あ、あ…………あああぁあ〜〜〜っ!!」

 

 理性も、社会も、アニメを通して得た教えも最早意味を成さなかった。もうイツムを止めるものは何もなかった。

 ようやく現れた"救い"を前に、何もかもを忘れて飛びついた。甘い蜜の香りと、温水のウォーターベットに包まれているような温かさと柔らかさに包まれながら、イツムは人生で最も安心した瞬間を迎えた。

 

「うう、ああ、う、う………ぐすっ、ひぐっ………」

「よしよぉし、ママですよぉ」

「ママあ………ひぐっ………こわかったよお、つらかったよお………」

「もう大丈夫よぉ、ここにはあなたをいじめる物は何もないわぁ」

 

 イツムは泣いた、幼子のように。

 ガリアは抱きしめた、母親のように。

 

「ぐす、ぐす………」

「ふふ、いっぱい泣いたらお腹すいちゃったわよねぇ?」

 

 その時、イツムは何かべとべとした物が頬にまとわりついている事に気づいた。

 当初は己の涙か唾液だと思ったが、口に含んでみればやけに甘く、そしていい香りがする。

 

「どーぉ?甘いでしょお?ママのおっぱいミルク♡」

 

 それがガリアの乳房から分泌されていると気づいたイツムは、無我夢中でそれを舐め取る。

 蜂蜜よりも甘く、ホットミルクのように優しい味が口いっぱいに広がり、心にじんわりと温もりが広がっていくのを感じる。

 やがてイツムはガリアの乳房の先端に、まるで哺乳瓶を吸う赤子のようにしゃぶりついた。ここから分泌液が出ていると気づいたのだ。

 

「ママ………あまくて………おいしいよお………んぐっ、んぐっ」

 

 甘味が口いっぱいに広がる度に、イツムの心は春の日差しのような幸福感と羽毛布団に包まれたような安心感に満たされる。

 もうここに、ゴキブリの胸なんか吸えるか!と常識人ぶっていたイツムの姿はない。

 

「ふふふ………よしよぉし、いい子、いい子………」

 

 まるで赤子のように甘えるイツム。

 しかしやがて、股の棒はガリアに向かい怒張する。

 まるで母親のように甘やかすガリア。

 しかしズボンの膨らみを見て、複眼を瞼で細める。

 

「あらぁ………♡ママでおっきくしちゃったのぉ?」

「あうう………ご、ごめんなさい」

「安心してねぇ、ママが気持ちよくして………あ、げ、る♡」

 

 母子と呼ぶには淫らで、男女と呼ぶには純粋すぎる。

 血は繋がらず、種族も違う。

 そんな歪んだ愛の姿に異議を唱えるものは、この二人きりのハヌーシュ号にはいない。

 二人きりの宇宙船は水音も喘ぎも漏らす事なく、真空の宇宙空間をただ進んでいった。

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