こういった話も書いてみたかったのです。

一応気持ち程度のグロ注意です。

おそらく続きません。

1 / 1
風が吹く。
それだけだった。
瞬間、命がゴミのように散らされたのだ。


現代ファンタジー風のギャグ短編

「疲れた」

 

ふと、そう思った。

 

とにかく、そう疲れたのだ。

 

眼前には一面の血の海。

どこもかしこも赤、ピンク、赤、赤、たまに黄色。

 

一体何度目であろうか。

 

冷静に考えてみてほしい。

仲の良い友人たちが会って数分後には物言わぬ肉となって散らばっているのである。

おかしくはないか?

ふざけるな、私がおかしくなりそうだ。

 

あまりにも命が軽すぎる。

 

「それがこの国の普通ときた」

 

もったいないなんてものではない。

もったいない婆さんが憤るぞ。

 

魔法なんて便利なものがあるんだから、もっとお上は上手く使ってほしい。

いや、"使った"結果がこのザマなのか。

クソみたいな実験しやがって。

 

思わずため息が出る。

お願いだからもっと自分を大切にして欲しい。

 

 

一息。

 

疲れた。

しかしやることはやらねばならない。

 

「どこまでいっても社畜精神だな」

 

だがそれが役割だ。

ご友人たちのためにもう一働きといこう。

自分で言っておいて何とブラックなことか。

悲しい、悲しいよ私は。

しかしお上の肥え豚どものためではないのだ。

私たちの絆のため、仁義とも言えるのか?

 

とにかく、そういった超越したもののためだ。

 

一振り。

おもむろに取りだす。

ただのナイフ、そうただのナイフだ。

 

「私も忌避感が薄れつつあるな」

 

まぁそれこそ今更だろう。

決意、決意だ。

 

「ほら、生き返れ生き返れ」

 

 

 

 

"漣切り"

 

料理にはそんな技法がある。

たこのような表面がツルツルしていて、凹凸がない食材に、無理やり凹凸をつけて切り付けることで醤油やタレの馴染みをよくする、いわゆる飾り包丁の一種だ。

手順としては単純に、包丁を立てて引いて寝かして押す、この繰り返し。

 

さて、何でこのようなことを説明したかと言うと

 

 

グニュ

 

 

 

うーん、気持ち悪い。

何が悲しくてこんなことをやらなければいけないのか。

 

"肉"を切り分ける。

 

生温かい液体は気にしないでおく。

 

痛覚も、無視だ。

 

立てて引く。

 

寝かして押す。

 

少し切れ味が落ちたか?

終わったら研いでおくか。

 

引く。

押す。

引く。

押す。

引く

心頭滅却、心頭滅却、わすれろわすれろ

切る

きる

きる

きる

きる

きる

きる

きる

きる

きる

きる

きる

きる

きる

きる

きる

ああ半分ほどきた。

意識が途切れる際の際。

命の際にてそれは、

 

 

励起する。

 

 

 

『私は否定する』

 

 

 

物理的にぐらつく視界の中で、肉塊だったものが動き始める。

 

音を立てて。

 

人へと戻っていく。

 

 

はは、ぐちゃぐちゃいってらぁきもちわ

 

 

 

 

 

 

 

 

──唐突に覚醒する

まるでテレビでもつけたかのように。

 

「やぁ、おはよう。調子はどう?」

「…最悪だよ」

 

良い朝だねじゃないんだよ、君。

もう昼じゃないか。

目覚めなければ良かったのに。

 

「えーと、で、はじめまして?」

「そうなるね。で、何回目なの?」

「さすがに20超えてからは数えるのをやめたよ。発狂ゲージが限界だった」

「黄色いゲージが溜まってそうだね」

 

なんでコイツはそんなどうでもいい記憶は残ってるんだよ。

 

そう、はじめましてだ。

これをすると皆いい感じに一部記憶がすっぽ抜ける。今回もいい感じにぶっ飛んでるな。

正直に言って、不便この上ない謎仕様だが…

まぁ、"壊れる"よりはいいのか?

 

「じゃあ、まずは反省会かな。みんないい加減気軽に死ぬのはやめてほしい」

「そう言われても記憶にないからなぁ。でも好きで死にかけているわけではないと思うよ。多分君がいれば死なないって信用からなんじゃない?」

「別に死なないわけじゃないよ。ちゃんとみん な"死んでる"。それを蘇生…というか巻き戻し?ているだけ」

「時間の遡行だったっけ?」

「いや、事象の否定だね」

「なにそれチートじゃん」

「だから毎回首切ってるんだよ。代償ってやつ」

「え、痛そう」

「死ぬほど痛いよ、死んでるから。あぁこれジョークね。才能ジョーク」

「笑えないよそれ」

 

事象の否定

それが私の才能。

特定の事象の今を否定して、書き換える能力。

だから否定以外もできなくはないのだけれど、それ以上となると一回の首切り程度では代償が釣り合わなくなる。そうなってしまうとどうしようもないため、否を突きつけて事象を無効化するくらいしか私には使えない。

 

一応"踏み倒す"ことも出来るにはできる。

でもなぁ…

 

「さすがに不可逆的に持ってかれると困る」

 

そうなれば実質的な死だ。

何事も死ねば終わりなのだ、本来は。

 

そう思うと現状で十分ではある。

あるのだが…

 

「私の才能を過信しないで欲しいんだよなぁ。命はさぁ、ひとつしかないんだよ?」

「無理でしょ。自分で言うのもなんだけど、倫理観終わってるじゃん、この国」

「だよねぇ」

 

いささか国が終わっているのだ。

 

つくづく思う。

なんで滅びないんだろう、この国。

 

 

 

ダダダダダダダダダダダダダダダダダダ

ふと、やかましい足音が近づいてくる。

思い当たるのは1人だけ。

 

ガラガラガラッッ

勢い良く扉がスライドする。

君それいつか壊れるよ?

 

「ナガレ君いる!?」

「いるよー、今日も元気だねソラさん。一体どうしたの?」

「一級が現れたの!先生がクラスAは全員召集命令だって!」

「えーっと、着替え終わってからでいい?」

「ASAPでね!!!」

 

 

つくづく思う。

頼むから滅びてくれよ、この国。




tips─才能発現実験
とある国にて、後天的に魔法のような能力を生み出そうという実験が行われた。当初、国連はあまりに倫理的観点が欠如していると強く当該国を批判。国際的に孤立しはじめるが、強い国づくり、国防のためには必要であると主張を曲げることはなく、当実験を続行。
国は多数の犠牲者を出しながらもある程度の成果を収め、成功例を集めて国防のための教育施設、もとい軍事施設を創り上げた。
その中でも特に優れていると評価されたモノを集めたクラスは、"不死の軍隊"として国も高く評価しており、国防の新たなる要として注目している。


名を、クラスAという。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。