現在、地球ではセルという人造人間が未来からやって来ていた。
セルが完全体となるためのパーツである人造人間17号、18号を破壊するか、セル本人を破壊するかしなければ地球の平和はない。少なくとも命を狙われている孫悟空は殺されてしまうだろう。孫悟空とその仲間達はセルの完全体化を防ぐために行動していた。
精神と時の部屋での修行を止めて出て来た孫悟空と孫悟飯は仲間達から現況を聞く。
トランクスとクリリンの話によれば、ベジータが調子に乗りすぎたせいでセルが完全体になってしまったという。完全体となったセルは恐ろしい強さを持ち、悟空と同じように精神と時の部屋で修行したベジータやトランクスが手も足も出なかったらしい。
セルは完全体となったことで目的を失ったが、セルゲームという武闘大会を開くと宣言した。
出場選手がセルと1対1で戦い、負ければ次の選手がセルと戦う。セルの勝ち抜き試合方式だ。
そんな話を聞いた悟空は「よし、ちょっと完全体になったセルを見てくる」と瞬間移動する。
「……孫悟空か」
草原にポツンと寂しく作られた正方形のリング上に悟空は移動していた。
同じリング上には完全体となったセルが立っており、ゆっくりと悟空へ振り向く。
「どうだ、ここが地球の運命を決めるセルゲームのリングだ」
「運命を決めるにしちゃセコいリングだ」
「……ふっふっふ」
しっかり考えて作ったリングを『セコい』と言われてセルは少しショックを受ける。
「……確かに、少し寂しいかもしれんな。柱の飾りでも作っておこう」
「いやその前にまず作らなきゃならねえもんがあんだろ。おめえ、トランクスから聞いたが天下一武道会を再現するとか言ったらしいじゃねえか。そのわりに観客席もねえし、選手の控え室もねえ。もし観客が来たらそこらの原っぱにずっと立たせるつもりか?」
悟空のダメ出しは止まらない。
「天下一武道会の会場と比べてどうだ、おめえが作ったのはセコいリング一箇所だけ。さっきの言動からもう完成させたつもりでいたんだろ? おめえそりゃダメだろ。どうやら完全体になっても想像力は完全じゃなかったらしい。これならいっそ天下一武道会の会場を借りた方が良かったんじゃねえか?」
「…………私が完璧なリングを作り上げてやるさ。天下一武道会以上のな」
「まあそれはいいとしてだ」
あれだけ文句を言ってそれはいいはずない。セルは少しイラッとした。
「そもそも、オラにはセルゲームっちゅうもんを開催する理由が分からねえ」
「試したいんだ。完全体となった私の力をな」
「だったら別にこんなことしなくてもオラ達が戦ってやる。おめえはわざわざテレビを使ってセルゲームの告知したらしいが、はっきり言って無駄だろ。今、地球にオラ達以上につええ奴が居る可能性はあんまねえと思う。つまりおめえが戦うべき相手はオラと仲間内だけで、オラ達はいつでもおめえと戦う。つまりセルゲームをやる必要がねえ」
正直、セルも似たようなことを考えてしまっていた。
孫悟空の性格からして挑まれた戦いは拒まない。いつでも戦える。
「……私は、人間共の恐怖に引き攣った顔を見たいんだよ」
「遊園地のお化け屋敷にでも行ってこい」
「いやそういう話じゃなく」
「そういう話だろ。おめえ、適当なこと言ってオラ達と戦う理由が欲しいだけなんじゃねえんか?」
ハッとセルは息を呑む。
完全体となったことで目的は達成され、これからの目的が見えなくなってしまった。だから恐怖に引き攣った人間共の顔が見たいなんてことを言い挑発してでも悟空達と戦いたかった。それがこれからの目的となる。人造人間17号も何か目的が欲しいからなんて理由で悟空を抹殺しようとしていたが、今のセルも似たような状態なのだ。
「なあ、みんなはオラが説得するからさ、悪いことは止めろよ。おめえに殺された人間達はドラゴンボールで生き返らせた。セルゲームの件も、開催しなかったらただの悪ふざけっちゅうことになるだろ。オラはよ、戦うなら楽しく戦いてえんだ。地球人の命をかけた戦いなんて純粋に楽しめねえ。おめえが悪いことしねえってんなら、いつでも相手になってやるからよ」
「ふっ、仲間達が納得するかな?」
「まあ何とかなるだろ。オラの仲間は最初、殆ど悪い奴等だった。ヤムチャは盗賊、天津飯は殺し屋、ピッコロは大魔王、ベジータは惑星を侵略していた。過去は変わらねえが、人間は変われる。それをたぶん、あいつら自身がよく分かってる。……ベジータは変わってるか微妙なラインだけんどな。今じゃ誰も殺さず、悪いこともせず暮らしてる」
「17号と18号はどうする。私はあの二人を返したりせんぞ」
「そこはみんなにも考えてもらってさ、なんか方法がねえかみんなで探しゃいいじゃねえか」
セルはセルゲームを開催する理由を失った。
どうせ長い人生になる。世界中から強い奴等を集めたいと思っていたが、自分で捜しに行くのも面白い。ノリで地球人全滅なんて口走ってしまったが、地球人を全滅させてしまうと楽しみが減ってしまうかもしれない。笑みを浮かべたセルは地球人全滅という発言を撤回した。
「まあいい。貴様の口車に乗ってやろう。ただし! セルゲームは止めても開催予定日に私と戦ってもらうぞ!」
「ああ、おたげえ良い勝負にしよう」
それから悟空はセルを連れて神殿に行き、仲間達に事情を説明して説得。
クリリンとトランクスはかなり不満そうだったが最終的には二人も折れてくれた。
セルはというと約束通り悟空と戦って満足し、その後は強い奴等を捜す旅に出た。
――そして7年の時が過ぎる。
人造人間17号と18号の件は無事に解決していた。
セルは悟空と戦って実力を上げ続け、17号と18号を吐き出しても完全体を維持出来るようになったのだ。今ではこれぞパーフェクトセルなんて言って調子に乗っている。まあそんなパーフェクトなセルも悟空に追いつかれそうなのだが。
「孫悟飯か」
「セルさん、お久し振りです」
気を感じて振り返ると、何やらおかしなダサい恰好をした孫悟飯が居た。
「……孫悟飯か?」
「え、そうですよ見て分からないんですか? それはそうと実は近々天下一武道会が復活予定なんです。それを知ったお父さんがセルさんとも天下一武道会で戦いたいって言ってきて。どうせならみんなで出ようって話になったんですよ」
「ふっふっふ、天下一武道会か。いいだろう。将来私も武道会を主催したいからな、参考になりそうだ」
「じゃ、参加ですね。僕これから17号さん達にも声を掛けてきます」
「ああ。……あ、待て。あいつらには声を掛けるな」
「え、いやいやそういうわけにはいきませんよ。なぜですか?」
「…………気まずいだろ」
セルが仲間になる話 終