そうして私は、呪_師になる   作:みつじ

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※ 嘔吐表現あり



第二話:視える世界と見えない世界

「色々と言ったけど、少し考えてみてほしい」

 

 夏油さんは家まで送ってくれ、私が玄関のノブを掴んだときにそう言った。

 

 ……一体何を?

 そう思ったけど──ひどく、疲れていた。

 

 昨日も今日も、たくさんのことを経験した。

 夏油さんとの出会って、お化けの力を目の当たりにした。しかもそれが私の力のせいだの……もう、この運命から逃れられないだの……頭も心も、限界だった。

 

 一度だけ頷いて見せ、家に入った。

 

 

 

「おかえりー、遅かったのね」

「ちょっと寄り道してて」

「そう、ご飯できてるよ」

 

 母がいつもと変わらない様子で出迎えてくれた。

 私の後ろに、こんなに大きく膨れ上がったお化けがいるのに。

 

「……あとで食べる」

「じゃあお風呂入っちゃいなさい」

 

 お節介な母に促されるがまま、脱衣所に入る。

 そこで母がぴたりと動きを止める。

 

「顔色悪いけど……学校で何かあった?」

「……ううん、今日は体育あって、疲れただけ」

「なあんだ」

 

 母は笑って、リビングに戻った。

 

 くるりと振り返って、ふと洗面台にある鏡が目に入る。

 

「……あれ?」

 

 ふと、疑問に思った。お化けの体から、血のようなものが吹き出すのを目の前で見たのに……自分の体も制服もきれいだったから。

 

「……もう、よくわかんない」

 

 呟いて、全部を脱ぎ捨てる。ガチャン、と音を立てて浴室に入った。

 足元はひんやりするのに、ムッとした暑さを感じる。

 

 相反するものに、

 

 "りょおいき てんかいぃ〜……"

 

 この世のものとは思えない呻きを思い出した。

 

 

 

 シャワーを頭から浴び、しばらくお湯の感触に浸る。

 

 鏡を見ても、何もいない……はずだった。

 でも、視線を逸らして周りを見ると、()()()いる。

 

 片方は、浴室が狭いせいか天井にミチミチになるくらいくっついていて、もう片方は羽虫のように飛んでいる。

 体を洗い終え、浴槽に浸かる。自分が体を動かすたび、お湯がちゃぷんと音を立てた。

 

『ねぇ、ねぇ、お風呂って、怖くないの〜?』

 

 気付けば、洗い場にお化けが座り込んでいた。

 浴槽のフチに前足を掛けて、こちらの様子を伺っている。その姿はまるで猫のようだったけど、大きさは大型犬ほどもあった。

 その周りをふよふよと漂うものがある。栗みたいな形の顔に、ぷよぷよとしてそうなこじんまりした体がくっついている。背中から小さい羽が生えていて、ぷるぷる震わせている。……あんなもので本当に飛べるのだろうか。

 

 猫のお化けは、じっと水面を見つめている。私もつられて覗き込むと、そこに映るのは……やはり、自分だけ。

 瞬きをしたら、ほんの一瞬、何かが揺らいだ気がした。

 

 私が返事しないからだろうか。浴室はしん、と静かだった。

 

 ちらりと猫のお化けを見る。まだ水面を見ているようだ。時折、ひくひくと鼻を動かしている。

 ……こんな冷静な気持ちでお化けを見れたのは初めてだった。

 だからだろう。少しだけ、いつもと違っている。

 

「……ううん、怖くないよ」

 

 ふと思い立って返事をしてみる。

 すると、お化けはパァっと表情を明るくさせた。

 

『ななこちゃんが、お返事くれたぁ〜!』

 

 大きく開けた口には、人の体を簡単に噛みちぎってしまいそうな歯が並んでいた。

 

「嬉しいの?」

『だってぇ、初めてだよぉ。やっとくれたねぇ、ずーっと待ってたんだからぁ』

 

 グルグルグル……喉を鳴らして目を細めている。こうして見ていると、本物の猫のように見える。サイズはちょっと規格外だけど。

 

「そうだっけ」

『そうだよぉ』

 

 のんびり返事をするのを聞き、それもそうか、と思った。

 今の今まで、無視して遠ざけることばかりを考えていた。でもお化けは消えない。それどころか成長して話せるようになった。しかも、あんな妙な魔術を使う始末。

 

『今まで構ってほしくて仕方なかったけど、あんなことしなくてよかったんだねぇ』

「……」

 

 "あんなこと"に思い当たる節があり、思わず黙った。

 

 もしかして、今まで舌を出して怖がらせて来たのは、ただ遊んでほしかっただけ?

 

「……ごめんね」

 

 無意識に、口からぽろりと言葉が溢れた。ハッとして口を手のひらで覆う。

 お化けはまた、パァっと顔を綻ばせる。

 

『別にいいよぉ〜大丈夫だからねぇ、アタシが守ってあげるからねぇ』

 

 お化けは──みぃちゃんはふふん、と得意げに鼻を鳴らしている。

 そこで、みぃちゃんがいつもそう繰り返していることに気づく。

 

「……何から、守ってくれるつもりなの?」

 

 みぃちゃんは、目を細めたまま、

 

『それは、思い出さなくて、いいよ』

 

 いつもの間延びした声ではなく、冷たい声ではっきりとそう言った。

 

『……それとも、ななこちゃんは…思い出したい?』

 

 みぃちゃんの真っ黒い瞳が、真っ直ぐにこちらを見ている。

 

「……ううん」

 

 私は思わず目を逸らし、首を横に振った。

 それを知ることが、自分にとって正解かわからなかったから。

 

 

 … … …

 

 朝起きて、学校へ行き、授業を受ける。

 みんなが変わらない毎日を過ごすなかで、私にだけ変化が訪れていた。

 

 まず、自分の周りを漂うのが、みいちゃんだけじゃなくなった。

 お風呂場で見た可愛くない妖精みたいなものも、ふよふよ浮かんで着いてくる。何も話さない。まるで、私と出会ったころのみぃちゃんのよう。

 

 そして──私は、視えるようになっていた。

 

 みぃちゃん以外の、お化けが。

 

 彼らは道行く人の肩に乗っていたり、建物の陰に潜んでいたりする。それを誰も気にしていない。視線を向けているのは自分だけだ。

 姿かたち、大きさはそれぞれで、なんとなく気配の濃度に差があった。

 それが何を示すのかわからなかったが、そんな中でみぃちゃんの気配がいちばん濃い。

 

 "特級呪霊"

 

 夏油さんや悟さんは、みぃちゃんのことをそう呼んでいた。

 

 特級という文字を携帯で調べてみる。

 "特別の等級"

 "一級よりもさらに上の等級"

 この言葉通りの意味だとすれば……つまり、みぃちゃんはお化け──呪霊のなかで、かなり上の方だということだ。

 

 そこまで私が育てた?

 今思えばまだ可愛げのあった、あんなぽてぽてとしたお化けから?

 

 ただ、側にいただけで?

 

 

 ざぁ、と風が吹く。髪をふわりとかきあげられたことで、意識が外へ向く。

 

 私は学校の帰り道に、消しゴムとシャーペンの芯を買いに来ていた。

 

 みぃちゃんはやっぱり側にいる。

 猫のようだった姿は、今はカエルのよう。建物の壁に張り付いている。大きさは軽自動車ほどもあって、確かな存在感がある。

 私が進むペースに合わせて、『ゲコッ』と鳴きながら、びょーんとジャンプをしている。

 

 誰もそちらを見ない。

 

 視えていない。

 

 それがあまりに()()すぎて逆に怖かった。

 だって私には視えているのに。まるで、私だけが別の世界に取り残されているみたいに。

 

 

 どうして、私が。

 

 幾度となく考えたことだった。

 

 でも、夏油さんに言わせれば、これはもう私が産み落とされたときから始まっていたらしい。

 これが私の世界で、人生で、これからも背負っていくものらしい。

 

 ──なんのために?

 

 それは、初めて考えたことだった。

 みぃちゃんが視えること、呪霊を育てること、それはどうして存在するのだろう?

 私でないと意味がないのか?

 

 この力を持って、私はどうしたらいいの?

 

 "呪霊を祓って、非術師を守る"

 

 夏油さんはそう言っていた。非術師……それはきっとただの人を指す。

 呪霊が視えていない、一般人。

 

 弱きものを守れってこと?

 

 私も、強くないのに?

 

 

 頭の中がごちゃごちゃした。

 みぃちゃんのこと、自分のことについて、夏油さんは少しの情報をくれた。

 それによって疑問が明確化したが、答えを出せるのは自分ではない。

 

「……」

 

 この疑問を抱いて、私は何をするべきなのだろう……と足元を見つめた、

 

 

 

 そんなとき──、

 

 ガシャン!!

 

「きゃああぁ!」

 

 空気を切り裂く、金切り声が響いた。

 

 そちらを向くと、ある女性が地面にへたり込んでいる。その前には、ぐしゃりと大きな看板が落ちていた。

 

「急に看板落ちてきたくない!?」

 

 その近くにいた学生が話しながら、そちらへスマートフォンを向けている。画面はカメラモードだった。

 

 自分は、背筋に冷たいものが走り、ゾッとした。

 

 

 

 ──何か、いる。

 

 そろりと目線を上げると、看板があったであろうところに、ゲタゲタ笑う、得体のしれないものがいた。

 

『あ〜、同類かもぉ』

 

 みぃちゃんがふわっと浮いて、私の周りを漂う。

 

「……同類?」

『うん、アタシみたいなの、じゅれいって言うんでしょ〜?』

 

 みぃちゃんが周りに視えていないことなんかまるで無視して、言葉を返す。

 

『だから、あれはじゅれいぃ〜』

 

 みぃちゃんはぐいーんと伸びて、トカゲのようになった。

 

 得体のしれないものは、ある程度の高さから飛び降りて、女性の肩に乗っかっている。

 女性は顔を青ざめさせて、呪霊が乗った瞬間、ひぃ、と声を上げた。

 

「……」

 

 そこで、ふと思う。

 

 ……呪霊って、なに?

 

 私に憑いている呪霊──みぃちゃんは、すごくて強い力を持っている。でも私には使わない。私を守るといって、周りを漂っているだけ。

 夏油さんや悟さんに対しては、攻撃されただけ反撃した程度のものだろう。

 

 でももし、他の呪霊がそうじゃなかったら?

 

 

 アイツはきっと、悪意とかそんなものを持ってあの女性に憑いている。それは、"今の自分"にも明らかだった。

 

 そして、腑に落ちるものがあった。

 

 どうして呪術師が必要で、非術師を守らなければならないのか。

 呪霊が私たちに、何か危害を加えてくるから──?

 

「……みぃちゃん」

『なぁに〜?』

「どうして、みぃちゃんは私といるの?」

『ななこちゃんを守るためだよぉ』

「私のせいで成長しちゃって……どう思う?」

『う〜ん、ななこちゃんのせいじゃないよぉ』

 

 気付けば、みぃちゃんは私の肩にぽんっと顔を置いていた。

 爬虫類顔で、目をきゅっと細めている。

 

『ななこちゃんの()()()で、アタシはななこちゃんを守れるの〜。すごいでしょお?』

 

 みぃちゃんの顔がぐにゃりと歪んだ気がした。

 

『……ねぇ、すごいでしょ?』

 

 さっきと同じ言葉なのに、どこか違って聞こえた。

 ケタケタ笑って、ふわっと宙に浮く。体を少し丸めて、風になびくのを楽しんでいるようだった。

 

 

 だけど、私はじっとみぃちゃんを見てしまった。

 

 "私の、おかげ"

 

 それには、少し、救いがあるような気がしたから。

 

 

 

「みぃちゃん、お願いがあるの」

 

 見上げれば、みぃちゃんは少しだけ顔をこちらに向けた。

 

「あの人を助けたい」

 

 あの女性が、呪霊が視える人なのかはわからない。だけど怯えているその姿が、()()()()()()と重なった。

 

 終わりの見えない恐怖、不安……負の感情にがんじがらめになって出口が見えない。

 きっと、助けてほしいはずだ。()()()()に戻りたいはずだ。

 

「あの呪霊はたぶん、みぃちゃんみたいに守ってくれないよね?」

『くれないねぇ、アタシはななこちゃんが好きだからねぇ』

「……じゃあ、お願い。あの呪霊をどうにかしてほしい」

 

 みぃちゃんはにたりと笑う。

 

『いいよぉ、ななこちゃんの頼みなら』

 

 

 

 そこからは──地獄絵図だった。

 

 みぃちゃんの体が、ズズズ、と不気味に伸びていく。ミシ、ミシ、と骨が軋む音が響き、皮膚の内側で何かがうごめいた。

 次の瞬間、蛇のようにうねりながら、呪霊へと一直線に飛びかかる。

 ガバッと口を開けて、呪霊を丸呑みにした。飲み込まれたはずの呪霊が、喉の奥で暴れている。

 

『もぉ〜じっとしてよぉ』

 

 そのとき、みぃちゃんの喉が裂けた。そして、そこから腕のようなものが飛び出す。

 

『あれぇ、おかしいな〜』

 

 みぃちゃんは特に気にした様子もなく、ぐにゃりと体を丸め、今度は犬のようなものに姿を変えた。

 そして、呪霊をぺっと吐き出した。みぃちゃんだったものはそれに近づく。何かを引き裂く音がして、内臓が冷えるような寒気がした。

 ぐあっと大きく口を開けて……その呪霊を、食べ──、

 

 その頃にはもう、自分が頼んだくせに耐えられなかった。 "それ"の絶叫を聞いた瞬間、私は視線を逸らした。

 

 口の奥に胃液の酸っぱい味が広がる。吐き気が込み上げ、喉の奥が焼けるように痛い。

 指が震えて、膝が崩れた。人に見られているとわかっていながら、私は建物の陰で吐いた。

 

 だって、最後に聞こえた"それ"の叫び。その声は人間のものではない。

 だから、あれは、違う。自分に必死に言い聞かせる。

 

 

『ななこちゃぁん、だいじょうぶぅ? ごめんねぇ、つい食べちゃったぁ……』

 

 吐き気が治まったころ、みぃちゃんが私の隣でしょんぼりしていた。

 

『今度はちゃぁんと残すねぇ』

 

 姿が犬っぽいせいか、"きゅうん"と悲しげな鳴き声が聞こえてきそうだ。

 

「……ううん…残さなくていいよ」

 

 自分が頼んだせいではあったし、もし次こんなことがあれば見ないようにしよう……と思った。

 気味が悪いことには慣れてきたつもりだったが……私は、シリアルキラーやスプラッター系の映画は苦手だ。これからも得意になることはない。

 

 ふらつきながら振り返る。もう女性のそばに呪霊はいない。顔色も少しだけマシになっているように見えた。

 

「……いいなぁ」

 

 あの人は祓われて。

 

 私の隣には、呪霊。

 

『ななこちゃんは優しいねぇ』

 

 だけど、少しずつみぃちゃんの存在が当たり前になってきていた。隣にいても、怖くない。おかしくない。

 ──それが、何よりもおかしいのに。

 

 みぃちゃんの存在が、自分の証明になるような……そんな気さえした。

 

 

 

 

 

「──やっぱり、君はこっち側なんだね」

 

 背後から声がした。

 バッと振り返れば、夏油さんが立っていた。

 

 ……こっち側? ……どういう意味?

 

 わからないまま、私は否定しなかった。

 

「七瀬さんの術式は、呪霊操術に近いのかな?」

 

 返事がないことを、特に気にも留めてなさそうな夏油さんは話し続ける。

 

「二級呪霊の討伐任務が出てね。着いた先で別の呪霊が出現したと連絡があった。そして、向かってみたら七瀬さんがいたんだ」

「……そう、ですか」

 

 私の隣に並ぶ彼は、今の状況を丁寧に説明してくれた。

 二級呪霊……呪霊にもいろいろあるってこと?

 

「考えてくれた?」

「……なんのことですか?」

「君は、呪術を学んだほうがいいって話だよ」

「……」

 

 あれはそういう意味だったんだと理解したのと同時に、こんなに早く答えを出せるとは思わなかったと驚く。

 

「……きっと、勉強したほうがいいですよね」

「そうだね、自分の身を守るためにも」

「……それに、たぶんみぃちゃんのためにも」

「……」

 

 夏油さんが、ほんの少しだけ目を細めた。

 

 私はみぃちゃんを振り返った。いつの間にかふわふわ浮いていたのを見、思い出す。

 

 "きちんと躾けないと、そのうち七瀬さんも取り込まれるんじゃない?"

 それはみぃちゃんを指して言ったのか、私に取り憑く呪霊が新たに増えたことを指しているのか……わからなかったけど。

 

「……私、編入します。……えーと、なんて学校でしたっけ?」

「正式名称は長いよ。私たちは呪術高専って呼んでる」

「……呪術高専」

 

 そして、そこで勉強する。

 まずは呪霊のこと。それはきっとみぃちゃんに繋がるはずだから。

 そして呪術師のこと。それは……まだわからないけど、私の世界を変えるきっかけになるかもしれないから。

 

「編入の件は一応、私のほうから先生には軽く伝えたよ」

「……編入って簡単にできるんですか?」

「さあ、事務的なところはわからないな。……でも、決めたんだろ?」

 

 夏油さんは、どこか挑発的に笑った。その目には、"期待"と──、

 まるで獲物を観察するような、冷静な光が宿っていた。

 それは妙に張り詰めたものであり、思わず息が詰まった。喉がひゅ、と鳴る。

 だから私は、ただ頷いて返事した。

 

 そのとき、夏油さんが歩き出した。「送っていくよ」と言っている。その大きな背中を追った。

 

 

 

 チリン──、

 

 どこからか、かすかに鈴の音が聞こえた。

 けれど、風は吹いていない。それなのに、"ここ"で鳴った。

 まるで、誰かが意図的に鳴らしたよう。

 

 ちらりと隣を見る。夏油さんは不思議そうに見下ろした。

 ……彼には聞こえてなさそうだった。

 

 

 ──チリン、

 

 まるで記憶の奥底で、誰かが私を呼んでいるような──そんな感覚。

 

 ……みぃちゃんは、自分のことを思い出してほしそうにしている。

 なのに、どうして()()()()()()()()()()()()と言ったんだろう。

 

 私が忘れているのは……ひとつだけじゃない?

 

 なかなか思い出せないモヤを抱えているのは、気持ちが悪かった。

 それは、みぃちゃんが思い出してほしい記憶かもしれないし、そうじゃないほうかもしれない。

 それすらわからないほど、曖昧なもの。

 

 鈴の音と、"みぃちゃん"という名前。そして死んでほしくないと懇願する、幼少期の自分の声。

 ……浴室で拒否したまま、押し込めてしまっていたほうがいいだろうか?

 

 それとも、あのとき、勇気を持って聞いていれば──、

 

 

 

『ななこちゃぁん』

 

 にんまり笑うみぃちゃんが、消えなかったかもしれない。

 

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