花の魔術師もどきと英雄王もどき、神ゲーに挑まんとす 作:ロクデナシな文字書き
「マーリン……!」
「こらこら、そんな顔しないでおくれよ。……で、いつまで喚くの?」
キャスパリーグに歩み寄ってニッコリと笑いかける。物凄く嫌そうな表情をされたので注意して、とっとと本題に入る。おおっとキャスパリーグの目がパッチリしたぞぅ。
「貴様……その、なんだ。そう云う奴だったか」
「ちょっとやめておくれよせっかくカッコつけてるんだよこっち?!」
まるで友人がまさかのドSだったのかと言わんばかりの冷たい視線に抗議する。
確かに今の声の急降下は不味かったかなとは思うけど、それはなくないか?!
なんてこった、と溜め息を吐いて気を取り直す。再び足元に視線をやれば、不安げな表情をしたキャスパリーグがキョドキョドしていた。
「んんっ……キャスパリーグ。彼に折角のお言葉を頂いたわけだけど、今の気持ちは?」
「別に、幽閉しなくてもいいかなとは思った……よ」
しかしその表情は曇っている。ちらちらとギルガメッシュを見ているが、その視線はかなり不安定だ。それはまるで、自分の気持ちに素直になれない子どものようだった。
はいはい、なるほど。どうせアレだろう。ボクの
「いや、人間舐めすぎじゃない?」
「は?」
何言ってんの、と此方を見るキャスパリーグ。そっちこそ舐めすぎだろと見つめ返してやる。ちょっと言い方は良くないけど、どれだけ自分が強いと過信してるんだ。
「つまりキャスパリーグは自分が暴走するのが怖いんだろう? 結果として人を傷つけることが怖い。殺してしまうのが怖い。壊してしまうのが怖い」
「……それはっ……まぁそうだ」
「何、ボクに言われると腹が立つ? いやいや、だったら自分で気付きなよ。キャスパリーグくらい人間なら普通に抑えられるけれど?」
そう、キャスパリーグは世間知らずだ。
この世界にはきっと、キャスパリーグ以上の化け物がいる。けれど、今もなお世界は続いている。それは確かに、この世界に生きる人々が、プレイヤーが、少なくとも守ることができていることの証明。
「確かに、キャスパリーグのその力は恐ろしいよ。幾つかの世界はその力で滅びた」
おっと、これは言わない方が良かったかな。まぁキャスパリーグがいるんだ、どうせ並行世界線にも対応してくれるだろう。
キャスパリーグはすっかり顔を伏せていて、きっと自身の脅威を憎んでいるんだろう。
けれど。
「けれどね、世界は広い。キャスパリーグのことくらい、誰かしら止めるさ。もちろん、私たちも止めてやるよ。だろう?」
「当たり前であろうが。貴様の開放を勧める以上、責任ぐらい持ってやるわ」
ドヤ顔で答えるギルガメッシュ。流石王様。
ふっと笑って、思いっきり両手を広げる。風に銀色の髪が靡く。きらりと、光を反射した。
「ボクがいる。ギルガメッシュがいる。キャスパリーグ以上の化け物だっている」
「『もしも』を怖がらなくて良い。世の中にはその『もしも』に備えている人がいて、案外なんとかなるものさ」
「……本当に?」
迷子の子供のような表情で、キャスパリーグは此方を見上げて問いかける。
「ああとも。だから、征こう。世界は未知に溢れている。自由に、本当に美しいものに触れてきなさい。おまえはまだ、世界を知らなさすぎる」
「世界を開拓するんだ。知るために、償いのために。大丈夫、ボクたちがいる。後ろを見ず、ただ前だけを向きなさい」
「さぁ、征こう。キャスパリーグ!」
一步、キャスパリーグへと歩み寄る。しかし手は差し伸べない。ただただ、キャスパリーグを待つだけ。
それは、キャスパリーグ自身で決めることだから。
待つ。数秒の沈黙は、酷く長く感じられた。風が吹く。太陽が煌めく。花が笑う。日差しの粒が舞う。ボクは心の中でそっと呟いた。
おまえはボクとは違って外に出るべきだからね。
そして、それに呼応するようにキャスパリーグがついに口を開いた。
「……そうだね。ああ、そうだとも。ボクは全くもって知らないな、世界を」
その表情は、まるで春の青空のように晴れやかで。
「マーリンに言うのは正直癪に障るけど……ありがとう、二人とも。目が覚めたよ。ボクは無知だ。だから、知ろうと思う」
いつになく柔らかなものだった。
「改めて、ありがとう。マーリン、ギルガメッシュ。ボクを導いてくれて」
「フン、王たるもの導けて当然よ。精々
「ちょっっと気になる部分があったけど? ……まぁいいや。何がともあれ、良かったよ。あまりにもおまえらしくなかったからなぁ」
微笑むキャスパリーグに、肩を組み鼻を鳴らすギルガメッシュ。
私はニッコリと笑って、ちょいと杖でキャスパリーグを突いた。どつかれた。
「いたた……ところで、どうやって戻るんだい? 正直最初にいた場所なんて覚えていないのだけど」
辺りを見回せば、一面花畑。正直最初に何処にいたか覚えていない。もう一度あそこに戻らないといけないならちょっとまずいな。
「それなら、安心してくれ。あくまでこれも夢の一つだから。もうすぐ目覚めるはずさ。その時は、ボクもそっちに行くよ。あんなこと言ったんだ、責任取ってくれよ?」
「ハッ、言うではないか。貴様ごとき
「あったりまえだろう、ボクの使い魔なんだから。いくらでも頼れよ」
「マーリンうるさい」
「酷い!」
と、やり取りをしている内に段々と眠気がやってきた。瞼が重く、思考が上手く回らない。早速か、随分と手が早いようで。
「じゃあ、また向こうで」
視界の端にちょこんと居座るキャスパリーグの姿がぼやけ始める。その姿が、以前よりよっぽど美しく見えた。それはまるで、一人の少女を救った別のキャスパリーグのようで。
それはそれとして。カッコつけて終わりたかったんだけど、そっちだけそれっぽくして終わるのは酷くない?
おのれキャスパリーグ、と睨みつけようとして、そしてそのまま意識がブラックアウトした。
『幾年月を渡る白き幻獣は発見された』
『無知なる獣は孤独より開放された』
『ユニークシナリオ「
『称号「白き幻獣と邂逅せし者」を獲得しました』
『称号「ありふれた幻獣の隣人」を獲得しました』
『称号「
『スキル「幻獣の加護」を獲得しました』
『アイテム「夢魔の花衣」を獲得しました』
『アイテム「夢魔の仕込み杖」を獲得しました』
『アナザーワールドクエスト「フェイト・クロニクル」が進行しました』
アナザーワールドクエスト:とある世界より来たりし英雄たちの残滓を拾い集め、それを継ぐ「後継」