言い訳はここまでにして…。誤字脱字があったり展開がおかしかったりすると思いますが、一生懸命作ったので良かったら読んでいってください。
「今日からまたショーの練習を再開するワケだが、皆知っての通り時間は余り残されていない。主にこのオレのせいでな!」
「胸張って言ってどうすんの」
色々あったが何とか持ち直したワンダーランズ×ショウタイム。照りつける日差しの下に集まり現状を確認する。
自分に主な原因があることを自覚しつつも司が堂々としているのは、燻っていた期間を悔いず恥じず価値のあるものだったと思っているからだ。
『遅かれ早かれぶつかっていた問題だ。ズルズルと後ろに引き摺ってこれ以上深刻なものになってしまう前に病巣を取り除いたと思えば安い方だろう』
とは司の言葉。病巣を放っておけば気付かない内に命を脅かすほどに身体を侵していく。もしも取り除かずに置いていた場合、きっと司は本当の自分を見失っていただろう。知らず知らずのうちに着飾り続け、着脱不能な仮面と共に生涯を送っていた…かも知れない。
ま、知らんがな。そういって司は締めた。寧々の蹴りが太腿を捉えた。
「まだまだパフォーマンスは完成には程遠い。演出も未だ未完成。これから湧いて出る改善点なんかも沢山あるだろう」
そんな一幕をボンヤリと思い出しながら座長として音頭を取る。各々の瞳に灯る意志の色は違えど、見据える未来は一つだった。
「大急ぎで仕上げる。妥協せず精度を高める。本気と書いてマジにこれを両立させなくちゃいけないのはツライことだが、オレたちならばできる筈だ。各々持てる力と知識をフルに活用して。…そうだな、信じるって態々口にするのは野暮だから、オレからは一つだけ」
「足を引っ張ったら…殺すからな」
何処ぞの5kg増量したアイドルの如き発言を聞いた着ぐるみさんが激昂するのを何とか宥めて……夏のショーイベントに向けての稽古は再開した。
「最後の曲はキャストも観客も問わず皆んなで踊って濡れて、という感じで…。そうだな、噴水の水流を強くしてミストのようにできれば…」
「うーん。皆んなでかけ合いっこした方が楽しそうじゃないかな?」
「成程…。予め皆んなに支給しておいて、最後の曲で皆んなで一斉に、か。悪くないね。その方向で演出を作ってみよう」
「加減できなくなって皆んなびしょ濡れにならない?メイクとか衣装とか台無しになっちゃうけど」
「うんうん。それもまた夏だな」
「テキトー言ってる」
「寧々、演出プランを纏めておいたから見ておいてくれ。こういう風に噴水の向きや水流の強弱を変えていくから、それと音楽に合った動きを上手い具合にやって欲しい」
「それで王女が水を自在に操る能力を演出できるってワケね。動きが寸分でもズレるとチープになっちゃうから…頑張らなきゃ」
「何だか凄い神秘的なのが見れそうだね〜!」
「類のことだから実際に掌から水を出してみようとか言いそうだと思っていたが当てが外れたな」
「掌から…。可能かどうかは置いておいて、確かにそれは面白そうだね」
「あっ!それならあの変身スーツみたいなの着て、ぎゅーんっ!ってレーザーみたいにしてみるのはどうかな?」
「アイ◯ンマンのようなものかな。やってみる価値はありそうだね」
「あれ?オレやったか、これ?」
「…言い出しっぺ、何とかしてよ」
「うゔ〜、暑くて干からびそうだよ司くーん。動いてないのに暑いよぉ〜」
「ひっつくともっと暑くなるぞ…。しかし屋外ステージの弊害がここで如実に出るとはな…。自然のカーテンでは防ぎ切れん」
「ハンディファンじゃ足りない。首元を冷やす器具も使い物にならなくなってる。そっか、私たちここで死んじゃうんだ…」
「あ、マズイ。寧々の思考回路がオーバーヒートして有り得ん発言してるぞ」
「寧々ちゃん!?気をしっかり持って〜!?」
「ふふ…あの葉が落つる時、私の命も露と消える…」
「思ったよりも重症だね…。こんな事になるだろうと思ってネネロボにクーラー機能を付けたんだけど」
「神」
「凄い」
「カッコいい〜!」
といった感じで偶に脱線しながらも日々練習を重ね…。
「最後まで笑顔を保って、ここでターン、ポーズ!…よし、かなり仕上がってきたな!」
「ま、アンタが迷走してる間も練習してたし、これくらい当然」
「でも、やっぱり司くんが居るともっと楽しいね!無事に戻ってきてくれて本当に良かった!」
「自称とは言え長が抜けると全体の士気に関わるからね。これはえむくんに同意かな」
「よせやい。そう褒めたって何も出んぞ」
ワンダーランズ×ショウタイム最大の懸念点とも言えるダンスも、初めの頃に比べると一体感や精度が増して良いものに仕上がってきた。
これは暑さに負けず弛まぬ研鑽を積んだ結果。努力の対価は成功では無、いが、確かな自信と実力を身に付けていっている。
櫻子の言葉が思いの外効いて迷子になっていた時はどうなるかと思ったが、各々が熱意を持って努力していることで酷い出来栄えのショーをせずに済みそうだ。司はそう安堵の溜息を吐いた。
「それじゃあ明日はリハーサルをして、その他諸々の準備に入る。イベント本番は目前だ!この調子で最後まで駆け抜けるぞ!」
己を鼓舞するようにして腹から声を出す。夏のショーイベント本番はもう既に三日後までに迫っている。波に乗るワンダーランズ×ショウタイムの前に障壁はない。あったとしても壊して前に進むだけ。
今、四人が思い描く未来は失敗ではない。ましてや成功でもない。誰彼構わず笑顔の渦に巻き込む『大成功』。それが今のワンダーランズ×ショウ
タイムに必要なものだと誰もが確信していた。
夏の日没は遅いことは誰もが知っている当然のことだ。それが夏至を通り越してまだ数日しか経っていない日なら尚更。
青い空は様相を変えて赤く濡れる時刻。司はまだワンダーステージに残って一人でステージに立っている。爽やかで素直な青年の表情を貼り付けながら。
「1、2、1、2!ここはキレよく……っと!?」
何度も何度も繰り返し、納得できるまで踊りの練習を続けている司。物語序盤でのダンスは激しくキレの良いダンス。導入とも言えるそれを「まあまあ」の出来で披露したくない司は、一人残って練習を続けるが…。
しっかり休憩を挟みながらとは言え、一日中今回のショーの為に動き回っていた疲労は溜まる。思い通りに上手く動かなかった足がもつれて尻餅をついてしまった。
溜息を吐いて、スマホから流れる音源を止める。そのまま大の字に寝そべり思考を回しながら休憩していると、額に冷たい感覚が走る。ニュータイプの悪寒的なものではなく物理的に。
「びっ……くりした。居るなら声掛けてくれても良かっただろう」
「その溜め具合だと相当驚いたみたいだね。不安にさせた仕返しだと思って甘んじて受け入れて欲しいな」
悪戯が成功して無邪気な笑顔を見せるのは類。彼が額に当てたのはよく冷えたスポーツドリンクだった。
仰向けになっていた体を起こしてスポーツドリンクを飲み喉を潤す。冷んやりとした甘塩っぱい感覚が口に広がり、鼓動が脈打つ音が鮮明に聞こえる。まるでガソリンが充填された車のような心地だった。
喉を潤した後は首の後ろだったり手首だったり、神経が多く通っている箇所に冷えたペットボトルを押し付けて涼む。
「…ふぅ。差し入れ助かったぞ類。しかし、いつから居たんだ?」
「んー…10分前くらいからかな。真剣な顔だったし邪魔しない方が良いだろうと思ったんだけど、頑張ってる人を見るとこうやって何かお節介を焼きたくなる」
彼らしいとも彼らしくないとも取れる優しい表情で放たれた言葉に、司にむず痒さが走る。人知れずしていると思っていた努力が見られていて、加えて手助けされたとなれば誰でも羞恥の感情を抱くだろう。
肌が擽られる感覚から逃げるように司は口を開く。
「お前はどうしてここに居たんだ?」
「それは司くんと殆ど一緒だよ。少し納得の行かなかった所があったから、ステージを多角的に見てみようも引き返してきたんだよ」
殆ど一緒、という言葉にギクリと肩を跳ねさせる。司の内面はどうやら見透かされているようだった。
「…今、一番置いて行かれているのはオレだ。当然だがな、オレは皆んなより圧倒的に練習量が足りていない。オレが自棄にも迷子にもなっている間だって、皆んなオレの再起を信じて練習をしてくれてたんだろう」
3人は司がいないとどうにも上手く行かなかったと言うが、それもその筈。個々の実力が洗練されようともぽっかりと空いた人一人分の穴は埋められない。裏を返せば、個人の実力はしっかり伸びていたのだ。
司は置いて行かれている現状が悔しく思うと同時に嬉しくもあった。
司の独白は続く。
「ショーは一回一回が勝負だ。一度だって失敗しても良いショーなんて存在しない。これは曲げられないオレのショーへ懸ける想いだ」
例えば…失敗してしまったショーが一回あったとして。大局的に見れば確かにそれは星の数ほどあるショーの内の一つだろう。
しかし、その一回が全ての人だっている。『次』のショーを見られない事情を抱えている人がいる。そう思う度に失敗なんて断じて許されないと司は思うのだ。
身近にそんな人が居たからこそ、一回一回のショーを素晴らしいものにしたいとより一層強く思う。それは司にとって、理性も感情も自分の何もかも全部後回しになる程に大切なこと
「でも…等身大のオレは頭が固くて繊細で、オマケに臆病だ。その想いが呪いに変質して、誰かを信じられない孤独なオレができた。オレは街灯のない薄暗い道を歩く子どもでしかなかった。そんなオレをお前たちは月明かりのように照らして道を示してくれた。…お前たちと肩を並べてステージに立つんだ。生半可なクオリティのまま出るワケにはいかない」
司は求めていた。
自分のやりたいことを全力でやっても笑ってくれる。手を取り合って隣を歩こうとしてくれる仲間を。貶す、妬む、落ち込むのではなく。どんなペースでも良いから共に歩んでくれる仲間を。
司は見つけたのだ。
互いが互いにやりたいようにやって、笑い合って、それも良いなと肩を組んで走っていける仲間を。振り回し振り回される関係を心地良いと思える仲間を。
司はそれがとても嬉しかった。嬉しかったからこそ、それを仇で返すワケにはいかないと燃えている。
並々ならぬ熱を司が放つ様を、類は目を細くして見る。あれだけの辛い過去を経験しながらどうしてこうやって熱意を滾らせることができるのだろうか。素直に疑問に思った。
そんな疑問に、司は照れ臭そうに答えた。
「憧れを捨て切れなかっただけさ。どんなに痛くて辛い経験をしたって、あの時に焦がれた憧れにまだ手を伸ばしたいと思ってしまったんだ。ショーの輝きに目を灼かれてどうしようもないんだよ、オレは」
人の夢は終わらない。魂が震えたものはいつまで経っても色褪せない。どれだけの色を塗り重ねられたって、心奪われた色は確かにそこに存在している。
意外と俗物的だと類は思った。でも、その方がずっと泥臭くて良い。
「僕も練習に付き合うよ」
「良いのか?かなり時間がかかると思うぞ」
「良いよ、最後まで付き合うよ。一人じゃ寂しいだろう」
「…まあ、やるなら一人より二人だな。それじゃあ頼む」
きっと、どれだけ大切な仲間だと思っていたとしても、相容れない部分はある。ヤマアラシのジレンマのように近付くことで傷ついてしまうことあるだろう。
人とは成長する生き物だ。そして寄り添える生き物だ。類はきっと求めていたのだろう。自ら歩み寄り理解しようとしてくれる仲間が。理解こそできなくとも肯定してくれる仲間が。
相反する部分はあるけれど、本質は似たもの同士。類は司との関係をそう名付ける。それは二人の間に友情が芽生えた瞬間だった。
そして、夏が始まる。
☆
イベント初日。テレビCMや動画サイトの広告、公式サイトでの宣伝の効果もあってか、初日からかなりの観客がフェニックスワンダーランドに訪れていた。
そして、それはワンダーステージも同じく。ショーの開始15分前にはもう既に客席が満杯に埋まっていた。
「スゴ…。平日なのに結構お客さん集まってる」
「この数は正直想定外だな。それだけフェニランの夏イベントは注目度が高かったということか」
「それもあるけど、僕たちワンダーステージに期待してくれてる人も、SNSを見ると一定数居るみたいだよ」
「ほんとだ〜!あの人とか、あの女の子とか!前にも来てくれてた人だよ〜!」
「観客の顔を覚えてるのか?凄まじいな」
「えむって割と視野が広いよね」
舞台袖でモニターに映る観客の様子を見ながら話す。オアシスを模したセットや噴水装置を興味深そうに眺めていたり、客席の下に置いてあった水鉄砲を触っていたりしている。観客の心をそこそこに掴めているようだ。
「よーし、それじゃあ円陣を組むぞ。こっちに集まれ」
恒例となったショー開始前の円陣。惰性で続けているワケではなく、士気を高める重要なプロセスだと皆思っているため口を挟むことはしない。
いつも通り座長たる司が口を開こうとする。が、少しだけ考え込む素振りを見せた司は寧々の方に視線を向ける。
「今日は寧々に音頭を取ってもらおうか」
「は?なんで?」
「いつもオレばかりじゃ飽きるだろう。味変ってヤツだ」
「寧々ちゃんがやってくれるの〜!?楽しみだな♪」
「うん。良いんじゃないかな」
「ちょっと二人まで…はぁ、やればいいんでしょ」
期待のこもった視線から逃げられないことを悟った寧々は、非常に面倒くさそうな顔をしながらも…真剣に考えて、そして強い力を感じる瞳を以て音頭を取る。
「この夏のショーイベント。この本番に至るまで色々あった。初めてやることに戸惑ったし、歪み合いもしたし。順風満帆とは行かなかった。けど、私たちは今、万全の準備をしてここに居る。ワンダーランズ×ショウタイムとして誇れる状態でここに居る。…これから私たちに待ち受けるのはきっと、キラキラ輝くものだけじゃないけど…。その先には絶対に特大の歓声と万雷の拍手が待ってくれている!」
「「「おう!」」」
「私たちも観客も!皆んな巻き込んでぶっ飛んだ楽しいショーにしよう!」
「「「おう!」」」
「ワンダーランズ×ショウタイム、出陣!せーのっ!」
☆
『ねぇおとーさんっ!今年のオアシス祭も楽しみだね!』
『ああ。我らに恵みを下さるオアシス様へ感謝の踊り奉納する…。今年の夏も暑くなりそうだ』
えむと類が演じる親子がゆっくりと歩きながらそんな会話をして、舞台袖に引っ込むと同時に大きく愉快な音楽が響く。背景に映し出す映像や着ぐるみたちが入り乱れる様子でオアシス祭が賑わう姿を演出している。
司が演じる青年が軽やかな動きで人混みを掻き分けながら壇上へと出てきた。
『今年もこの時期がやって来た…。この時のためにずっとダンスの練習をしてきたんだ。オアシス祭のメインダンサーの座は俺のモノだっ!』
背景に映し出される映像とリンクさせて、司はその場で走る演技をする。
オアシス祭の会場に到着した青年はボレロを模した音楽を背景に、キレのあるダンスでアピールする。自分のダンスこそオアシスに奉納するに相応しいのだと言わんばかりの表情で。
激しくキレのあるダンスに観客は湧く。アクロバティックな動きをすれば歓声が上がる。少なくないブランクがあったと感じさせないダンスは人の心を動かしていた。
『…騒々しい』
場面は変わって薄暗い王城が映し出される。能面のような表情を貼り付け、忌々しい様子で呟く寧々扮する王女。夏の暑さとは正反対の背筋が凍る冷たさを感じさせる。
水を自在に操る魔法の力を持つ王女。その強大な力は人々の恐怖を煽ってしまい魔女と糾弾され排除される。それを恐れた父である国王は王女をできる限り外に出さないようにした。それが王女の心を荒ませる。
『どうして私はあそこに居られないの。何も悪いことなんてしてない。勉強も頑張って、良い子でいるようにしてたのに…。この力だ。生まれ持ったこの力が悪いんだ。最初から居場所なんて無かった。私が居なくたって世界は変わらない。夏になるとそれを眼前に突きつけられる。…やっぱり私は夏が嫌いだ』
王女の独白で一度舞台は暗転し、夜のオアシスを映し出す。ぴちゃり、ぴちゃりと水が静かに跳ねる音と共に、こっそり王城を抜け出してオアシスの元へやって来た王女の姿が現れる。
ドン、と王女が右足で強く踏み締めれば噴水の水流が強くなる。白魚のように滑らかな指で円を作ればその通りに水が動く。彼女の人生を狂わせた神秘の力の演出。
そして、歌とダンス。水を自在に操る力で彼女だけの水のステージと演出を作り出し、心の赴くままに歌い踊る。
『夢見ていた舞台──♪私一人だとしても♪それが良い、今は世界に私一人で──♪踊り明かしたい────♪』
「「「…おぉ〜っ!」」」
神秘的な演出と、透き通る歌声と踊りに観客から感嘆の声と称賛の拍手が贈られた。
踊り終えた王女が息を切らしている所に、偶然居合わせた司演じる青年が恐る恐ると言った風に声を掛ける。
『…貴方、あの力を見て…なんとも思わないの?』
『なんとも思わないワケないじゃないですか!とても美しくて…見惚れてしまうようでした!』
『……ふふ。そう』
夜のオアシスでの語らいを通して心を通わせていく二人。
貴女のその魔法の力があればもっと祭りを盛り上げられる。共に壇上に立ってくれはしないだろうか。
そう青年は誘うも人前でそれを見せるつもりはない王女はすげなく断る。
ならば、この時だけでも共に踊りたいと食い下がる。その熱に負けて王女は青年の手を取り、緩やかに踊り出した。
三拍子の緩やかで優雅な音楽に合わせて、水も楽しそうに跳ねる。水のリングを作り出し、この時間を慈しむようにして踊る二人に観客は思わず吐息を漏らした。
そして、祭り当日。豪華絢爛に飾り付けられた会場に足を運ぶ青年。しかし、肝心のオアシスからは水の一滴も出ていない。客も運営も一緒くたになって動揺の渦に呑まれていた。
『ど、どうしましょう!?オアシスから水が出なくなっちゃうなんて前代未聞ですよ〜!?』
『くっ、何故こんな事態に…っ!原因と解決策を早急探すぞ!』
そして、青年含めた多くの人間が事態の改善の為東奔西走する。しかしそう簡単にどうにかする術は見つからない。苦渋の決断の末、青年は王女の下へ訪ねて行った。
王城に駐屯する衛兵を掻い潜り、つまらなそうに窓の外を眺めていた王女の下に辿り着き、必死な声で叫ぶ。
『お願いします!貴女の力が必要なんだ!皆んなの想いが詰まったあのオアシスを、どうか…!』
『ですが、それは…。私のこの魔法を皆に見せてしまう…。皆、私を魔女だと糾弾してしまう…』
『俺がなんとかします!俺がなんとかして貴女を傷つかせないと誓います!何があっても貴女の味方だと…命を賭けたっていい!』
その言葉に折れた王女は青年と共にオアシスへと赴き…その力を以てオアシスを復活させた。
国民も観光客も初めはその強大な力に慄くも、青年の主張と国を想う王女の心根に胸を打たれ、王女を褒め称える声が波のように波及していく。王女は人々に認められ受け入れられた嬉しさを胸に、青年と共に祭りに参加する。
『さあ皆んな!音楽に合わせてジャンプだ!』
テンションを上げるアップテンポなビートがワンダーステージを包む。壇上に立つ者と客席で見守る者の境界を超えて、皆んなが笑顔でジャンプをして腕を振って思うがままに楽しんでいる。
『それじゃあラストっ!皆んなでびしょ濡れになって楽しんじゃおう!水鉄砲の準備だーっ!』
司、えむ、類、そして着ぐるみたちは水鉄砲や威力の弱いバズーカを持ってワンダーステージを縦横無尽に動き回る。寧々は壇上から噴水の動きに合わせて腕を振り、ステージ全体に爽やかな雨を降らす。
皆んなびしょ濡れになるのも構わないまま、黄色い声を上げながら思い思いに水鉄砲を発射する。
そこには確かに今を極限まで楽しむ笑顔があった。
『本日はご来場いただき、ありがとうございました!』
『『『『ありがとうございました!』』』』
『私たちの夏はまだまだ始まったばかり!皆んな!最高の夏を過ごして行ってね!』
その興奮のまま、深々と頭を下げて舞台袖に帰って行くワンダーランズ×ショウタイムに割れんばかりの歓声と拍手が贈られる。
夏のショーイベント初日。紛うことなき大成功で舞台を終えた。
☆
「観させてもらったわ、天馬さん」
「相変わらず所々粗は目立つけれど…多少は良くなってきていると思ったわ。人を笑顔にするショー。それを目指すのに値するくらいに」
「それに何より、貴方自身とても楽しそうだったわ。これまでとは違って、やりたいことがやれる自由にときめいているような…」
「………」
「まあ、そうだな。とても楽しいと思えたよ。真っ新な状態でやれたんだからな」
「その点では青龍院さんには感謝してるよ。あの言葉が無ければ、もっとズルズルと引き摺っていたかもしれない」
「感謝?おかしなことを仰るのね」
「貴方を惑わせたと、そう思われないの?」
「必要なことだと割り切っているんでな」
「まあ、後は…夏のせいにでもしておこうか。夏のせいでセンチメンタルになっているのだとでも思っておいてくれ」
これで夏イベは終わりになります。読んでくださりありがとうございました。
次回からはちょっとした閑話を挟みつつ、『全力!ワンダーハロウィン!』に入る予定です。