黄金の精神を持つ上条さんの力が歪んだ形で"顕現"するお話。

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連載未定。検討中。勢いで書いちゃいました


幻想知らずのパープルヘイズ

 

獰猛。

 

それは爆発するかのように襲い、そして消える時は、嵐のように立ち去る

 

 

幻想

 

それは才能、若しくは叡智によって描かれる、人間のための、人間による、人間を超えた力。

 

 

 

 

 

【幻想知らずのパープルヘイズ】

 

 

 

 

上条当麻はどこにでもいる少年だった。

 

首の付け根に、まるで"星"を象ったような奇妙な痣が生まれつきあったことと、常人を遥かに超えた不幸体質であった事以外は。

 

幼少期の頃から、その歪な不幸は絶える事なく彼を襲った。外に遊びに行けばケガをするし、喧嘩に巻き込まれもした。それでも元気に明るく過ごせていたのは両親の献身的で真っ直ぐな愛情と、彼が元来持っている心の強さ故だったのだろう。曲がったことは許す事が出来ず、トラブルと知りながらも進んで“正す”ために立ち向かう彼の心には間違いなく『黄金の精神』が輝いていた。

 

 

それは、五歳の頃だった。

 

 

それは本当に偶然の事件。デパートで開催されていた『古代エジプトの希少物の展覧会』へ両親と共に遊びに行った時。見知らぬ男に突如腹部を刺されたのだ。

 

後に分かった事だが、この犯人は重度の麻薬中毒者で犯行時には心神喪失状態。後に留置場で舌を嚙み切って自害したらしい。

 

幸いにも、上条少年が負った傷はそこまで深くはなかった。だが、その日から原因不明の高熱で30日間も入院生活を余儀なくされる事になる。

 

原因は不明。そう、不明だった。

 

まるで不幸の化身とばかりに、周囲は彼を気味悪がった。試練のように幾重にも積み重なって愛息子を襲う不幸に、両親は涙を流し続け、ただ祈るばかり。

 

一方で、上条当麻が高熱による苦しみの中で感じていたのは……

 

 

純粋な“怒り”だった。

 

 

それは両親に向けてでも、自分を刺した犯人にでも、自身を貶す外野に対してでもなく、自分自身の境遇に対して。

 

そして、それを運命づけたであろう天上の神々に向けて。魘されて霞む意識の中で、彼は轟々と怒りの炎を燃やし続けたのだった。    

 

『黄金の精神』の裏で燃える『獰猛な怒り』。それは荒れ狂う破壊の力となって顕現する。

 

彼が生まれ持っていた『幻想を殺す力』は、それに相反する『異能の力』に毒され、飲み込まれ、そして、“混ざった”。

 

不安定な矛盾の果てで生まれたのは『獰猛で歪な紫』。

 

異能の力を冒し、喰らい尽くす毒の化身だった。

 

 

 

≪10年後………≫

 

 

 

季節は既に夏。窓の向こうから聞こえるミンミン…と煩い蝉の鳴き声に反応し、モソモソとベッドの中で蠢く影が一つ。

 

カーテンの隙間から覗く清々しい朝日の光を見て彼はゆっくりと古びたタオルケットと共に上体を起こした。ベッド脇の目覚まし時計は時刻を刻むことを放棄して沈黙している。

どうやら電池切れを起こしてしまったらしい。仕方ない、と枕元に置いていた携帯電話を開いてみれば時刻は既にAM9:00。一般的な高校生なら学業を始める時間。

 

「あーあ。不幸だー。」

 

抑揚のない棒読みの言葉でお決まりの台詞を口にすると、上条当麻は大きな欠伸と共に伸びをした。

 

 

 

そして、時刻はAM10:00。通勤・通学のラッシュも鳴りを潜め、人通りが少なくなり始めた大通りに彼の姿はあった。どれだけ急いでも遅刻は遅刻。30分だろうが1時間だろうが、早く着こうが遅く着こうが結果は変わらない、と開き直った彼はバス代節約も兼ねてダラダラと徒歩で学校を目指している。

 

「今にも落ちてきそうな空…ってな。」

 

身長175㎝は高校一年生という年齢からすれば平均より少し高いくらいだろう。第二ボタンまで開けた白いワイシャツの向こうには黒いインナーが見える。その黒と同じくらい濃い真っ黒な髪を、後方にオールバック気味に撫でつけたウルフヘアー。鋭さを孕んだ整った顔立ちに、一際目立つのは“紫色の瞳”。その珍しくも奇妙な色の瞳で雲一つない空を見上げる彼は、誰に語りかけるでも無い独り言を呟いた。

 

そんな彼を嘲るように、大量の排気ガスを撒き散らし、数台の大きなダンプが彼の横を通った。運悪く偶然吹いた生温い夏風がそれを巻き上げて彼の顔面に見事に直撃した。

 

「げほっ…げほっ!!くそっ…バス使うんだったかな。……いや、金の無駄か。」

 

鬱陶しい排気ガスを手で払って恨み節を呟くも、ふと我に返って溜息を吐く。そう、彼は学園都市230万人の中でも最低辺の人間=レベル0なのだ。与えられる奨学金は僅かで、彼は少なからず節制生活を余儀なくされている。

 

「レベル……ねぇ。」

 

レベル0。つまり無能力者。学園都市での研究にも寄与出来ず、異能の力もない“一般人”。

 

だが、その指標自体が最早間違っているという事を上条当麻自身は良く理解している。彼には歴として『力』があるのだから。それは、学園都市の精密機器でもその実態を捉えられない不視の力。

 

上条が抱いていた…、否、抱き続けている怒りの果てに生まれた異能の姿。

 

「へへへ。いいじゃん!遊ぼうぜ。」

 

「なぁ、無視しないでさぁ。」

 

「美人っすねぇ、大学生?」

 

ふと、薄暗い路地の向こうから下卑た声が聞こえて上条は足を止める。太陽の光も疎らに入るその路地の向こうで、何やら良からぬ事が行われようと、または起きようとしていることは自明だった。普通の人間ならこんなトラブルに飛び込む事はしないだろう。だが、彼は普通じゃない。 歪んだ黄金の精神の持ち主だった。

 

「……ま、どうせ遅刻だし。」

 

そして止めた歩みを再開させる。学校へ続く大通りでは無く、仄暗い路地裏へと。

 

 

 

 

(………だるっ。)

 

仄暗い路地裏の袋小路に似つかわしくないその女性は、鬱陶しい現状に内心で盛大に溜息を吐いた。背後には煤と埃で汚れた雑居ビルの壁。目の前には下品な笑みを隠しもしない三人の男たち。風体からしてスキルアウトだろう。安物の香水の匂いとタバコと酒の匂いに鼻が曲がりそうになる。

 

「なぁ…いつまで無視してんだよ?あぁ?」

 

目を閉じて澄ました表情を崩さずに腕を組む女性に、キャップを被った舌ピアスの男が痺れを切らして声を荒げる。その様子に、女性は怯える事も無く、ただ呆れた様子で溜息を吐く。

 

面倒過ぎて気ノリしないが、そろそろ鬱陶しさもピークを越えようとしている。手間をかけずにに処理(・・)してやろうかと組んでいた腕を解いたその時。

 

「おーっす。みーなさーん。何やってんでせうかー?」

 

この場の雰囲気に似つかわしくない程に軽い声が響いた。

 

(……あ?)

 

女性は目を開けた。その視線の先には、三人のスキルアウト。その更に向こうに立つ一人の少年。先程の声の主はこの少年のものに違いないだろう。服装からして高校生だろうか。後方に強く撫でつけたウルフヘアーに、紫色の瞳が印象的な以外は普通の少年だった。

 

「あぁ!?」

 

「んだてめぇ!?」

 

「勝手に入ってきてんじゃねぇぞガキがぁ!」

 

三人のスキルアウト達の反応から見て友好的な関係では無さそうだし、そもそも知り合いという訳でも無さそうだ。とすれば、態々この鬱陶しいトラブルに自分から飛び込んできたという事だろう。

 

(喧嘩好き?それともバカなお人よしか…?)

 

どちらにしろ面倒だな、と女性は舌打ちを漏らす。スキルアウト達はすっかり標的を件の少年に切り替えて周囲を囲む。不良なりに鍛えているのかそれなりに逞しい腕で、スキンヘッドの男が少年の胸倉をガッと掴んだ。

 

「あーっとっと。乱暴はやめてー…。」

 

両手を上げて感情の籠らない棒読みでテンプレ通りの言葉を吐く少年にスキルアウト達の罵詈雑言は加速していく。遂に、胸倉を掴んでいたスキンヘッドの男が思い切り少年の頬を殴り抜いた。

 

「っ……痛たた…。」

 

投げ捨てられていた空き缶と、瓦礫が散乱する地面に少年は勢いよく倒れ込む。鍛えられた男の一撃に、少年の口元には薄っすら血が滲み始めた。

 

(……しょうもなっ。)

 

結局は首を突っ込むだけ突っ込んだ弱者の戯言か、と。女性は心の中ですっかり興味を失ってその場から立ち去ろうとする。その時だった。

 

(………っ!?)

 

思わず女性は立ち止まって振り返った。形容し難い不気味な恐怖が体を這い回っている。それは例えるなら絶対零度の氷柱で背中をじっくり撫でられているような感覚。いつ、その鋭い先端で体を貫かれるかという不安。その感覚は、間違いなく今、視界の先で地面に腰を降ろしている少年からだった。

 

「ひっ……。」

 

自分ですら固まるような恐怖なのだ。近くで彼を囲んでいるスキルアウト達も当然、それ以上のものを感じているに違いない。その証拠に、三人は固まり震え、少年を殴り倒したスキンヘッドの男に至っては震える足で涙を流し、失禁すらしてしまっている。

 

ドドドドドドドドドッ

 

目には見えない。だが、確かにそいつ(・・・)がいるのを誰もが感じている。まるで獲物を品定めしている猛獣が放つような威圧感が場を支配していた。

 

「……やめろ。”パープルヘイズ”。」

 

少年の凛とした声が鮮明に響く。例えるなら真夏の夜に響く風鈴や鈴虫のように。その言葉を合図としたように、奇妙な恐怖と威圧感は嘘のように消え失せた。固まる三人のスキルアウトと女性。それを余所に、件の少年は呑気にズボンに付着した埃を払いながらゆっくり立ち上がる。

 

「よいしょっと……すみませんね。こいつ(・・・)、俺にもあんまり抑えが効かないんで。」

 

親指でクイッと自分の隣のスペースを指す少年。当然、そこには誰もいない。

 

何もいない。

 

じゃ、と手を振って踵を返して少年は立ち去る。

 

大通りに向かって歩き出す上条当麻の背中を、麦野沈利は茫然と見つめていた。

 

 

 

 

獰猛。

 

これは歪な物語。

 

 

 

 

 

 

ーいいぜ。その幻想。俺が貪り食ってやるよ。ー

 

ー幻想?ざけんな!これは現実だよ!私の現実!!てめぇが食い散らかせると思うなよ!ド素人がぁ!ー

 

 




To be continued‥‥?

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