タイトル通り、本当は他所の掲示板に投げるつもりだったのが荒れちゃったのでこちらに初投稿してみます。楽しんでいただけたのなら幸いですね。

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先生に勧められてのゲヘナ・トリニティの重鎮による交流を兼ねたお茶会。果たして上手くいくのでしょうか?


初めての交流会

今日はシャーレのカフェでティーパーティーとの交流会、気後れするつもりはないけれど……

(やっぱり、少し難しいかしらね)

エデン条約を推進していた桐藤ナギサはおそらく問題ない、長く療養していた百合園セイアも"ゲヘナと事を荒立てる"などという危険行為に手を出すつもりはないだろう。

問題は聖園ミカ。トリニティとゲヘナが嫌いあっているのは周知の事実であり、今のティーパーティーで一人もそれを表明しないというのはそれはそれであまり宜しくない事にも繋がるだろう。となると嫌味の一つでも……と覚悟して向かったのだが。

「あ、来た来た☆今日はよろしくね♪」

待っていたのは、予想を裏切る聖園ミカの姿だった。

「あれ?なんかポカーンてしてない?」

「君の姿に呆気に取られているのだろう、ゲヘナの生徒としては当然の反応だと思われるが」

「ミカさんに驚くという事は先生の仰った通りの方のようですね、落ち着いていて聡明です」

「二人とも、それはどういう意味かなー?」

楽しそうに談笑を始める三人に割って入るように話しかける、この疑問はどうしても解消しておくべきだと思ったから。

「その…貴女はゲヘナが嫌いなんじゃ…?」

「ん?嫌いだよ、今でも変わんない」

返ってきたのはこれこそという予想通りのもので、だからこそ尚更意味がわからない。

「なら、どうして……」

「仲良くしようとするのかって?先生に言われちゃったのもあるし、ナギちゃんやセイアちゃんもうるさいし、それに……」

「それに…?」

「知らないままは良くないって知れたから、かな」

そう語る彼女の顔からは複雑な感情が読み取れて、恐らくは先生によって何かしらの影響を大きく受けた結果が今なのだろう。それならば自分のやるべき事は……

「そう……それじゃあ、今日は少しお互いのことを知り合う機会にしましょうか」

先生からの頼み通り、ゲヘナとトリニティで分かりあうために努力する事だ。

 

 

「ふーん……?」

じっと見つめてみる。ちょっと居心地悪そうだけどそれだけ、怯んだりする様子もない。やっぱり風紀委員長ってだけあって肝が据わってるのか、それとも……

「トリニティ(わたし)にこんな目で見られるのは慣れてる?」

「このくらいならむしろ好意的に近いわ、ゲヘナ相手だと仕方ないとも思うけれど」

思った以上に涼しい顔、ナギちゃんは止めたそうにしてるけど止めてこない。これも交流には必要なことだもんね。

 

じっと見つめられるその視線、込められているのは興味から来る好奇心と……うっすらと、それでも確かに見え隠れする嫌悪感。まあそれも仕方がないことだし、だからこその交流の場だ、このくらいならゲヘナ相手に穏当で好意的というのも嘘ではないもの。

「改めて自己紹介から始めましょうか。ゲヘナ学園風紀委員長の空崎ヒナよ」

「トリニティ総合学園、まだ一応ティーパーティーの聖園ミカ。早いとこ後任出して欲しいんだけどね」

「ミカさん…!」

「すまない、今の話は」

「聞かなかった事にしておくから心配しないで、マコトに言うつもりなんて更々無いわ」

面倒事が増えるだけだし……なんて本音を隠して伝えると、あからさまにホッとした様子の百合園セイアに聖園ミカに対してお説教を始める桐藤ナギサ、これがこの三人の距離感というやつなのかしらね…?

用意された紅茶に口を付けて落ち着くのを待つことに………!?

「美味しい……!」

思わず口をついて出てしまった、それでもそれは確かな本音。普段飲み物にはあまり頓着しない(でもアコのコーヒーまでいくと困る)私でも分かるくらいに美味しい紅茶、やはりトリニティは違うのかと驚いているとニヤニヤと笑う聖園ミカの顔がこちらを見つめていて

「でしょー?ナギちゃんの紅茶はいつもすっごく美味しいんだからね!」

我がことのように自慢げに語るその笑顔からは嫌悪感も見られず、無邪気な少女の心からの笑みに見えた。

 

 

 

「………」

ナギちゃんのお説教を聞きながらも私の警戒心はゲヘナの風紀委員長へ、今ここで暴れたりしたら止められるのは私だけなんだから仕方ない。先生は"ヒナならそんな心配はいらない"って言ってたけど

(それでも、まだ私は信じられないよ)

空崎ヒナの、ゲヘナの本当の姿、それをこの目で確かめるまでは警戒を解くつもりはなかった。はず、なんだけど………

「美味しい……!」

視線で追い続けていた行動、紅茶を一口味わってから見せたその表情は喜びに満ちてキラキラと輝いているみたいで

「でしょー?ナギちゃんの紅茶はいつもすっごく美味しいんだからね!」

笑ってしまうのが止められない。そういえば先生も言ってたっけ?"衣食足りて礼節を知る"だったかな、美味しいものが十分に食べられる環境だったならサオリ達はああはならなかったかもしれない、食べられるというのは当たり前のようでそれだけ大切なことなんだ、って。

……ん?それってつまり

「いつもは美味しいお茶とか飲まないの?風紀委員長ってそれなりに偉いはずだよね」

トリニティで言うならツルギ委員長と同格、むしろあそこの風紀委員会って万魔殿と並び立つーとか言われてるから、ゲヘナではもっと偉いかもしれない存在だよね?

「その、アコ……副官というか行政官なんだけど、彼女がコーヒーを淹れてはくれるんだけど……」

そこで口ごもる、まあここまで言ったら内容話したようなものだし言い難いのも分かるけど。

「不味いわけか、理由は時間の不足かな?紅茶もそうだがしっかりと時間を取れないと驚くほどに不味くなるものだからね」

「セイアさんは少し歯に衣を着せるべきでは…?」

「変に誤魔化しても事実は変わらないだろう、図星だと彼女の表情が言っている」

「うん……私のことを思って頑張ってくれてるし、実務面ではとても頼りになる、それにかなりの無理をさせてしまっている自覚もあるからあまりハッキリと言うのは憚られるのだけど」

「美味しくないのは変わらない、って事だね。その行政官?さんとやらに頼らないとコーヒー飲めなかったりするの?」

「自分でも淹れられるけど、アコが用意したがるのよ……気持ちは本当にありがたいのだけどね?」

なるほど、どうやら目の前の風紀委員長はアコとやらに慕われてるけどそれが悩ましい、と……なんて言うか

「ひょっとして、悩みの内容ってどこもあんまり変わらなかったりする?」

私は割と好き勝手やってたけど(今?出来ない立場にされてるよ!)ナギちゃんとか派閥の内部調整に苦労してるのをよく見たし。セイアちゃんは…そうでもなかったかな?予知夢でその辺どうにかしてたのかもね。

「上に立つ者である事も、他に気にすべき組織が存在する事も、何より三大校で粛々と職務を果たさんとしている事も一致しているからね。トリニティとゲヘナで、そこに大きな違いは無いのかもしれない」

「そうですね……私としてもシスターフッドや救護騎士団の動きは注視しなければなりませんし」

「私はむしろ万魔殿に注視される側みたいだけど、その内容がくだらなくて……」

「くだらない?」

もっとバチバチやり合ってるんじゃないの?トリニティではそんな感じだけど、なんて思いながら具体的な内容を聞き始める。……この時は気づかなかったけど、多分この段階で風紀委員長…ううん、ヒナちゃんへの隔意はほとんど無くなってたんだろうね。

それで聞いた話はと言えば……

「何それ、やっぱりゲヘナってろくでもないところじゃんね、ナギちゃん」

「ミカさん!?」

「大丈夫よ、マコトが面倒な嫌がらせをしてくるロクデナシなのは事実だから」

「そこは認めていいのですかヒナさん…!?」

「ここでの会話はオフレコだ、気にする必要もないだろう。それにしても思った以上に馬鹿馬鹿しい嫌がらせばかりだったが」

「風紀委員会の方はまともに聞こえるだけに、余計にそう感じる〜!」

思わず憤ってしまうなんて、私はすっかりこの小さなゲヘナ生に絆されてしまっているみたいで。

先生が会わせる相手として選んだ理由も、こんな交流会を開こうとした理由も、結局は風紀委員長ちゃんなら上手くやれるって分かってたからなのかな?

そこからようやく本格的に始まった交流のためのお茶会。話の種は互いに尽きないけれど、今回は主にゲヘナ風紀委員長の普段の苦労話が多かったかな?まあ、私たちが積極的に聞きたがっただけなんだけどね☆

………ゲヘナにも色んな生徒がいる、それはトリニティと何も変わらない。トリニティにだって面白半分で誰かをいじめて笑うような生徒もいれば(かつての私も似たようなものだったしね)、ゲヘナの生徒でも秩序を重んじてそのために日々身を粉にして働いている生徒もいた。そんな事、ちょっと考えてみれば当たり前のことなのに。

「ここまでお膳立てしてもらって、ようやく気付けたのかぁ……」

どうしよう、自分がお馬鹿だと思ってちょっと自己嫌悪してるかも。口に出したらセイアちゃんが普通に肯定してから口撃してくるから言わないけどね?

「あの、一体なにを…?」

「んーん、何でもないっ。それよりもさ、これからもお茶会よろしくね?『ヒナちゃん』☆」

「……ええ、こちらこそよろしくお願いするわ、『ミカ』」

この日、私に初めてゲヘナ生の友達ができましたとさ☆

 

 

「…………ふぅ」

三人と別れてシャーレを出ての帰り道、考えるのは彼女の笑顔。

「ゲヘナ嫌い、のはずだったと思うのだけど」

途中までは確かにその片鱗が見えていたし、そこを分かりあうために今回のような交流会が開かれた。それは分かるのだけど……

(あそこまで急に…?いえ、疑うにはあまりにも言動が素直に感じられるのも確かで……)

トリニティはドロドロ、だなんて言っていたけれど、私の疑心もそれと似たようなものみたいで

「次はあなたの話を聞かせてほしいものね、ミカ」

また次の機会、それを楽しみに思う気持ちが互いに変わらないものだったと理解して真に友人になれたのは、次のお茶会での事だった。

……そして、その前に

 

「お帰りなさい委員長、トリニティとの交流会はお疲れ様でした。よろしければどうぞ!」

帰ってきたら差し出されたアコのコーヒーを見て、本格的に紅茶党に鞍替えしようかと検討するのが先だった。……だって、美味しくないんだもん。




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