はがない性転換-僕は友達が少ないアナザーワールド-   作:トッシー00

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プロローグ1です。

※前ににじファンというところで私が掲載していた小説です。


羽瀬川小鷹という少女

 リア充なんで非日常の世界の話だろうが……。

 

 なんて呟き街をうろつくそいつは当然非リア充。

 周りのカップルや友達と話をしながらわいわいやってるやつらを後ろ目に、ぼけぇ~っと家まで一人で帰宅。

 彼女はなんで失敗したのだろうか、どこで悪いことをやらかしたのだろうか。

 

 と、原因は日常での努力から怠っていると言えば話は長くなる。

 確かに小さなヘマをしたのは事実だ。しかし高2になりたてのその少女はまず、年頃の女の子っぽくしようと努力することなく毎日を過ごしている。

 

 羽瀬川小鷹という"女"は、まず今時の女子っぽくないのである。

 

 おしゃれなどせず、彼氏を作ろうと青春を謳歌しようともしない。

 というより彼女、彼氏どころか"友達"を作る気すらない。正確には"作れない"と言った方が正しいのだがそう断言してしまえば彼女が可哀そうだ。

 

 まず見た目の話だ。髪の色がおかしい。そこから入ってしまえば話は8割消化できる。

 イギリス人の母と日本人の父の間に生まれた彼女、その髪の色は綺麗な金髪……だったら美少女だったであろう。

 そんな彼女の髪の色は、父親の黒と母親の金がヘンテコに混ざった……例えるならば『ヤンキーがかっこつけて金髪にしようとしたら、染めるのに失敗しちまったぜ!てへへ』という色である。

 人は見た目で印象を与えるならば、彼女はそこから失敗している。遺伝子だからとはいえ見た目から入る我々人類からすれば理由にも言い訳にもならない。

 

 もう一つ、彼女は常に死んだ魚のような目をしている。それはまるでこの世界を憎んでいるような……そんな目にも見える。

 黒一色。そこに光はなく見つめたら最後、ブラックホールのように吸い込まれそうだ。

 ヘンテコな髪の毛、死んだような目。総合的な容姿は"中の上のちょっと下のくらいかな?"的な微妙な例えが絵になるようなただの少女である。いや、もうこの要素で普通も減ったくれもあったものではなかろう。

 

 文字で書けばそんな彼女。その上におしゃれも下手くそで胸も小さくて、料理を作れば殺人兵器。家事全般も中二病まっしぐらの妹にまかせっきりという中身も乏しい。

 

 俗にいう、"残念な少女"である。少女の前に美の字もつかない、ただの残念な変な少女である。

 

 そして、彼女を象徴する決定的な残念な要素まで存在する。この上にまだあるのかって?そりゃあとっておきがあるわけですよ。

 

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 それは、小鷹が聖クロニカ学園という学校に転校した初日のこと。

 この残念な少女は転校初日に遅刻というドジまでやらかしてしまった。そこで救いようがないと言ってしまえば解決ですが本当に救いようがないのはこの後。

 遅刻をした理由は学校行きのバスと反対方向へ向かうバスに乗ってしまったからで、焦る彼女はすぐさま学校行きのバスを乗って学校へと向かう。

 先ほどまでバスの中で居もしない相手と友達になるためのエア会話で練習したのが無意味になってしまうくらいに汗を噴き出し身体も落ち着かなくなる彼女。

 そして朝のホームルームが始まって2時間くらい経ったころ、みんなが3時間目の授業をしていた。

 急いで教室へ向かわないと、ただでさえ自分は転校生……初日いきなり遅刻では印象が悪くなる。と元から印象の悪い彼女がそう思うのだから余計である。

 

 走る小鷹、それはもはや得物を追う鷹のように早く。そして死んだ目を強張らせて。

 急いだ。急いだ。急いで急いで……ようやく自分がお世話になるクラスを見つけ……そして。

 

 どがしゃーーーーーん!!

 

 びくりっ!とクラスの生徒ほぼ全員が驚いた。

 何が起きた?そう思い爆音の先を見ると……。

 そこにいたのは、教室の扉を"破砕"し、ぜ~は~と苦しそうに息をする小鷹だった。

 彼女はあまりに急ぎすぎたのか、勢い余って教室の扉に思いっきりぶつかってしまったのだ。

 その衝撃で扉は大きな音を立てて破裂し、扉の欠片が教室のありとあらゆるところに飛び散りぶつかる。

 パラパラパラ……と、怪獣がビルを壊した時と同じ音が流れた時クラスの生徒達は圧巻の表情を浮かべた。

 そのままゆっくりと、頭から大量に出血をする変な金髪の死んだ目の女は教壇へと向かい、そして……。

 

「て……転校生の……羽瀬川小鷹です(DEATH)」

 

 みんなの表情が凍りついたのがわかった。そして小鷹自身も、終わった……と悟った。

 その後彼女に話しかけようとする生徒は一人も……いるはずがなかった。

 

 ぼさぼさの濁った金髪、死んだような黒目、料理をすれば殺人兵器、容姿は微妙に上のラインと例えようのない。

 

 そして、とんでもない怪力を持った少女の名は……羽瀬川小鷹。

 

 友達の少ない彼女と、癖のある人たちが屯うここ、遠夜市の物語が……始まろうとしていた。


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